Bigband & Group(その1)
(一番下が最近記事です)



GEORGE RUSSELL / NEW YORK,N.Y. (1959)

ジョン・コルトレーン(ts)ビル・エヴァンス(p)ボブ・ブルックマイヤー(tb)アート・ファーマー(tp)ベニー・ゴルソン(ts)フィル・ウッズ(as)チャーリー・パーシップ(ds)マックス・ローチ(ds)ジョン・ヘンドリックス(ナレーション)1959年録音
まさにNYの音風景。チャーリー・パーシップとマックス・ローチのドラムにのってのジョン・ヘンドリックスのカッコいいナレーションが印象的なアルバム。なんかこれ大好きなのだ。コルトレーンもエバンスも最高。そしてそれよりもなによりも、この雰囲気。なんだこれは。

THE DAVE BRUBECK QUATET / In Europe (1958/CBS)
58年にコペンハーゲンで行ったライブの音源。3曲目でデズモンドが5分以上ずっとひとりでソロ取ってまして、このアルバムのハイライトのひとつ。ブルーベックのソロは他の3人が作り上げた「ムード」をぶち壊すかのような前衛性を備えていたことがよく分かります。なにげに深い。デイブ・ブルーベックは「タイムアウト」のイメージで随分損してます。

SUPERSAX /SUPERSAX PLAYS BIRD (1973/capitol)
ウォーン・マーシュ、メッド・フローリー、ジョー・ロペス、ジェイ・ミグリオリ、ジャック・ニミッツ(以上sax)、コンテ・カンドリ(tp)ロンネル・ブライト(p)バディ・クラーク(b)ジェイク・ハナ(ds)
チャーリー・パーカーのアドリブラインをそのままそっくりサックス・アンサンブルで聴かせてしまうというグループ。昔からこのアルバムは名盤とされてますが、何枚かあるスーパーサックスのアルバムの中でも最もカッチリとした音作り。キャピトルってことで雰囲気的にもいい感じ。

SUPERSAX /Salt Peanuts(1974/capitol)
トロンボーン(カール・フェンタナ)の参加がポイントになってるこのアルバム、前作同様に最高。前作よりアレンジがややビッグバンド風になっているところが聴きやすい。チャーリー・パーカーのアドリブラインの面白さっていうのが浮き彫りになってます。

COUNT BASIE /COUNT BASIE and The Kansas City 7 (1962/impulse)

勝手な話ですがこのアルバムは僕の中でどことなくNYなのです。フランク・ウエスのフルートといいサド・ジョーンズのtpといいフランク・フォスターのtsといい、すべてが最高。品があります。ぽつりぽつりと音を置いていくベイシーのピアノとフレディ・グリーンの気持ちよくスイングするギターは30~40年代の雰囲気、サド・ジョーンズの趣味のいいペットとフランク・ウエスのデトロイト経由フルートは50年代の雰囲気、フランク・フォスターとエリック・ディクソンのモダン風味のtsは60年代の雰囲気…。まさにモダンジャズの歴史が詰まってるといった感じ。

QUINCY JONES / The Quintessence(1961/impulse)
クインシー・ジョーンズ(arr)
クインシーの音楽の響きはサントラっていうイメージがあるのですが、このアルバムもそんな雰囲気を持っています。ひたすらカッコイイです。マーキュリー時代のサウンドも結構好きですが、こっちの方が格調高い気がするのはメンバー数のせいでしょうか?それにしてもフィル・ウッズのアルトは目立ちます。クインシーの音はいつでもゴージャスです。

MODERN JAZZ SEXTET(1956/verve)

ディジー・ガレスピー(tp)ソニー・スティット(as)ジョン・ルイス(p)パーシー・ヒース(b)チャーリー・パーシップ(ds)スターキー・ベスト(g)
バード&ディズではなくスティット&ディズがフロント。バードが死んだ翌年にディジーのグループ出身のメンバーを集めて録音されたアルバム。スティットはパーカーそっくりとか言われていたそうですがパーカーとスティットでは表現される世界観がまるで違います。パーカーはパーカーの、スティットにはスティットの世界がそれぞれあるのです。ここでもスティットは一時期やめてたアルトで自分自身の即興を繰り広げます。ところでこのアルバム、僕はA面が凄く気に入っています。まずA-1、スティットの特徴はパーカーと違ってトーンが一定なところなのですが、この一定のトーンによって進められるスティットのソロのあとをうけ、ディジーがそのマネなのか前半のソロを一定のトーンで繰り広げます。後半からいつものディジーの盛り上げ方で盛り上げていきます。アップテンポのA-2はまさにビバップ。各メンバー即興で勝負。

BOB MINTZER BIG BAND / Only In New York (1994/dmp)
ボブ・ミンツァー(ts,b-cl,vo)、ジェイ・アンダーソン(b)他

1989年の「URBAN CONTOURS」とかと同様、音によるNYスケッチとでもいうような内容。しかし80年代のミンツァーにあったフュージョン的雰囲気は消えてすっかりモダンジャズです。ベイシーやバディ・リッチやルイ・ベルソンのビッグバンドのように物凄いスイング感があるわけでもなく、ギル・エバンスやクインシーのようにオーケストレーションのカラーリングが独特ってわけでもないんだけど、何故か面白い。曲が全部オリジナルだからなのか、それともアレンジが実は巧妙に聴きやすく出来てるのか…。

THE BRIAN SETZER ORCHESTRA / VA VOOM ! (2000)
「ゲッティン・イン・ザ・ムード」の名でカバーされてる「イン・ザ・ムード」は本作のハイライト。とにかく楽しさに満ちたアルバム。初期のブライアン・セッツァー・オーケストラはどこかこじんまりとしてて、はじけ具合も空回りっぽかったのに、ここに来てフル・スウィング。ドゥワップの要素も加わった「愛という名の欲望」のカバーや徐々に盛り上がったいく「マック・ザ・ナイフ」のカバーも素晴らしい。スウィング・ジャズとロカビリーとジャイヴがごちゃまぜに混ざりあって、実に楽しい世界です。ただ、評価の高いインスト曲の「キャラバン」は他の曲と同様にヴォーカルヴァージョンにして欲しかった。でもロッキンなギターが笑えます。かつてジャズはダンス音楽だったわけだけれども、ビバップ革命以降すっかり鑑賞音楽になったわけです。しかしダンスミュージックとしてのジャズを復活させようと今まで様々なアーチストによる様々な試みが行われてきました。80年代の「アシッド・ジャズ」や90年代のヒップホップとジャズとの融合、近年の「クラブ・ジャズ」等等…ジャズで踊ろうって人達がいつの時代にもいるわけですが、僕はこのブライアン・セッツァーの「ネオ・スウィング」がいちばん自然に体が動いてしまいます。特にこのアルバム。最高です。あ、でもこれ、ジャズというよりはロカビリーの方が近いか…。

SUPERSAX & L.A.VOICES (1983/columbia)
チャーリー・パーカーのサックスソロのパートをそのままサックスのアンサンブルで再現してしまうスーパーサックスの演奏を聞いていると、メロディ・メイカーとしてのパーカーの姿が浮き彫りになってきます。どの部分も「歌」になっている!これは本当に凄いこと。また、LAヴォイシスのモンド~ラウンジ的ヴォーカルコーラスはパーカーのフレーズと実に綺麗に組み合わさって、パーカー音楽の新たな聴き方を示唆しているかのようでもあります。

BOB MINTZER HORN MAN BAND / PAPA LIPS (1983/CBS)
ボブ・ミンツァー、デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー、ローレンス・フェルドマン、ロジャー・ローゼンバーグ(sax)ランディー・ブレッカー(tp)他
ミンツァーのビッグバンドの初期のもの。ビッグバンドなのにどこかフュージョンっぽいのはこのメンバーだからなのか…?いや、ミンツァーの曲調のせいなのかも。フュージョンっぽいメロディを持つ曲なのにビッグバンドでの豪快な演奏。個々のソロもなかなか決まってますが、それ以上に雰囲気を楽しみたいアルバムです。ちなみにこのアルバムのジャケットはかな~り気に入ってます。

NOTE MANOUCHE / Note Manouche (VIVO)

マルセル・ロフラー(accordeon)マンディーノ・ラインハルト(g)ジェラルド・ミュレール(b)ジョセリト・ロフラー(g)
マルセル・ロフラーのアコーディオンが冴えわたるノート・マヌーシュのアルバム。マヌーシュ・スウィング・ブーム(?)に乗って2003年に日本盤が出ました。1999年の録音です。ローゼンバーグ・トリオやロマーヌなどのような怒濤の疾走感に加え、ミュゼットのような独特の雰囲気をも味わえます。アコーディオンがここまで気持よく歌ってくれると聴いてる方は夢見心地。プレイそのものよりも雰囲気に飲まれるアルバムか。

THE MODERN JAZZ QUARTET / The Last Concert (1975/warner)
ジョン・ルイス(p)ミルト・ジャクソン(vib)パーシー・ヒース(b)コニー・ケイ(ds)
ライブ録音でLP2枚組。室内楽風の趣きのあるそれまでのMJQとはうってかわってやたらとノリのいいアルバム。特にパーシー・ヒース。ずいぶんとスインギーです。ベースのノリがこうだからなのか他のメンバーもいつもよりノリがいいような感じ。ジョン・ルイスなどはヨーロッパ趣味の外面をすっかり忘れたかのような黒い演奏。ミルト・ジャクソンはどの曲のテーマ部もややくずし気味で通していてこれまたノリがいい。MJQはこのライブで一度解散。このアルバムは文字どおりMJQの集大成ということが出来ます。75年という時代にこの内容。素晴らしすぎ。

29TH STREET SAXOPHONE QUARTET / Watch Your Step (1985/New Note Records)

Ed Jacson(as) Bobby Watson(as)Rich Rothenberg(ts)Jim Hartog (bs)
サックス4人によるアンサンブル。とは言えワールド・サキソフォン・カルテットのように極端にフリーに走ることはなく結構オーソドックス。考え抜かれたアレンジはなかなかノリが良く面白いです。15分に及ぶ4曲目だけ映画「ワイルド・スタイル」を思い出させるかっちょいいナレーション/ラップが聞けます。リズム楽器がひとつも入って無いのにリズムを強く感じてしまう作品。

MANHATTAN JAZZ ORCHESTRA/Some Skunk Funk(2002)

デヴィッド・マシューズ(cond,arr,p)他

マンハッタン・ジャズ・クインテットですっかり評価を落とした感のあるデヴィッド・マシューズですが、こういったフュージョン・ライクな作品ではやはり本領を発揮します。基本的にアレンジで聞かせるアーチストです。ランディ・ブレッカーの「Some Skunk Funk」なんて僕はオリジナルよりこちらの方が好き。ジェームス・ブラウンの「I Got You」も凄くカッコイイ。そもそもデヴィッド・マシューズはジェームス・ブラウン・グループのアレンジャーだったわけで、こういったファンクではまさに右に出る者はいません。特にこのバージョン、途中で4ビートに変化する所なんて鳥肌もんの素晴らしさ。このアルバムは全体的にフレンチ・ホルンやチューバといった低音楽器が効いてます。また、「L.A. is My Lady」でのルー・ソロフのソロはチャック・マンジョーネっぽくてニンマリしてしまいます。

The DIRTY DOZEN BRASS BAND/The New Orleans Album (1990/columbia)

今やすっかり普通のファンク・バンドになってしまったダーティー・ダズンですが、このアルバムの頃まではなかなか面白かった。特にこれなんかはニューオーリンズ・アルバムとわざわざタイトルに持ってくることからも分かるように非常に楽しいニューオーリンズ独特のリズムがいっぱいのアルバムです。特に1曲目「Inside Straight」と8曲目「Snowball」の楽しさは格別。「Snowball」は2003年の「We God Robbed-live in New Orleans」にもライブヴァージョンが収録されてますが、こちらのオリジナル・ヴァージョンの方が断然素晴らしい出来です。

WYNTON MARSALIS & The LINCOLN CENTER JAZZ ORCHESTRA/ The Big Train  (1998/columbia)

ウイントン・マルサリス(tp)他
僕は子供の頃電車が大好きで、汽車の音が入ってるLPレコードを文字どおり擦り切れるほど聞いてました。そのLPのジャケットには子供の頃の僕が描いた電車の落書きが沢山描いてあったりします。子供の頃の僕の電車好きは本当に半端ではなく、ほとんど毎日近くの駅まで電車を見に連れて行ってもらってたし、どこに出かけるにも電車のオモチャを持って出かけてました。また、電車に乗ればオモチャを片手にひとり盛り上がってました。そこらへんのことは今だによくおぼえています。さて、このアルバムはウイントン率いるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラの長い長い組曲。汽車が出発するところから始まります。すべて楽器だけでこの出発音が奏でられ、これから始まるアメリカ横断鉄道の旅への期待感が高まります。列車でゆっくり移動しながらその土地土地で変わる風景や匂いなどが音楽によって表現されているかのようです。列車で見知らぬ街をつぎつぎと訪れる楽しさ。そんなわくわく感が味わえます。途中には踏切りなんかがあったりラストには汽車が汽笛を鳴らしながら徐々にストップする情景なんかが音によって描かれていたりして、これまた秀逸。ピアノの使い方からもうかがえるようにエリントン楽壇を意識したようなオーケストラですが、エリントンのような臭みが全く無いところがいかにもウイントンらしい。そしてまたそこが評価の分かれ目なのでしょう。僕はこの組曲自体の面白さにハマってしまったので、そういったジャズ的評価とは関係ないところで楽しめます。とにかく文句なしの傑作。こんな楽しいアルバムはそうそうありません。凝りに凝ったイージーリスニングとも言えそう。

THE MODERN JAZZ QUARTET /The Sheriff(Atlantic/1964)

ジョン・ルイス(p)ミルト・ジャクソン(vib)パーシー・ヒース(b)コニー・ケイ(ds)
メロディアスな曲をわざわざラフに演奏してみせるA-1からしてひき付けられます。ジョン・ルイスには『ザ・ジョン・ルイス・ピアノ』(Atlantic/1957)という実に素晴らしいソロアルバムがありますが、この『ザ・シェリフ』でもそのときのような重みのあるピアノの音で独特のソロを展開。もうミルト・ジャクソンなんてオマケみたいなもんです。とはいえやっぱミルト・ジャクソンのほうが目立ってるんですが…。

Modern Jazz Quartet /Blues On Bach(Atlantic/1973)
ジョン・ルイス(p,harpsichord)ミルト・ジャクソン(vib)パーシー・ヒース(b)コニー・ケイ(ds)
バッハの曲に基づいたジョン・ルイスの曲と、ブルースとが交互に入ってるアルバム。このバッハの曲に基づいた曲(これらの曲ではジョン・ルイスはハープシコードをひいています)でのコニー・ケイのセンスが実に素晴らしい。コニー・ケイでなければこういった洗練されたパーカッションの音は出せません。また、これらに挟まれる形で収録されているブルース曲の数々もどれも秀逸で、ミルト・ジャクソンも抑制の効いた品のあるプレイで格調高く仕上げています。こういったジャズ・ミーツ・クラシック的なアルバムって普通のジャズファンが最も嫌うもののひとつだと思いますが、このアルバムはそういったものの中でも最も優れたアルバムのひとつでしょう。バッハはあくまでも素材であり、中身は完全にジャズです。

Modern Jazz Quartet /DJANGO (prestige/1953-55)
ジョン・ルイス(p)ミルト・ジャクソン(vib)パーシー・ヒース(b)ケニー・クラーク(ds)
先日パーシー・ヒースが亡くなった。これでM.J.Qのメンバーは全員いなくなってしまった…。んで、ひさしぶりにこの名盤を聴いてみたわけです。懐かしさとともに感じるのはベースの安定感とヴァイブの歌わせ方の素晴らしさ。このアルバムはM.J.Q.のオリジナルメンバーでの録音で、ドラムがケニー・クラークなんですが、これが実に素晴らしい。コニー・ケイもいいが、やはりケニー・クラークのセンスのよさは抜群。特にベースの音との関係で聴いてみるとその素晴らしさがよく分かります。僕はかつてジャズを本格的に聴きはじめた頃にこのアルバムを頻繁に聴いていました。パウエルの「シーン・チェンジズ」とともに大好きな1枚でした。そういや「コンコルド」も「フォンテッサ」も好きだったな…。それにしてもこのアルバムは今聴いても昔と同様に感動できる。真の名盤。

COUNT BASIE KANSAS CITY SEPTEM /Mostly Blues...and some others (1983/pablo)

カウント・ベイシー(p)スヌーキー・ヤング(tp)エディ・ロックジョウ・デイビス(ts)フレディ・グリーン(g)ジョー・パス(g)ジョン・ハード(b)ロイ・マカーティ(ds)
僕は1962年のベイシーの「カンサスシティ7」(impulse)が本当に大好きで、それ聴いてると気分はN.Y.なわけです。シンプルなベイシーのピアノといい、心地よいフレディ・グリーンの職人的リズム・ギターといい、適度な混ざり具合が美しいホーンといい、何もかもが完璧。62年というジャズ史にとっては甚だ微妙な年代にあれだけの時代を超えた素晴らしい音楽が作れるというのは、とんでもない事(ちなみにパブロには「カンサスシティ7」なる同じ題名のアルバムがありまして、こちらの方はちょっと皆元気すぎて62年版の「粋」には遠く及びません)。んで、話は83年の本作「モーストリー・ブルース」に移るわけですが、あの「カンサスシティ7」から21年後のアルバムで、こちらも「カンサス」なわけで、やっぱり7人。こちらもなかなか素晴らしいのですよ、これが。特にジョー・パスの加入が大きい。フレディ・グリーン中心に出来上がる鉄壁のリズムセクションにジョー・パスが加わるだけで実に豊かな音楽になるから不思議です。特に1曲目なんか最高で、62年の「カンサスシティ7」にも入れても遜色ないほどの素晴らしさ。ベイシー・グループとジョー・パスがこんなにも合うとは…。ノーマン・グランツに大感謝です。願わくばホーンの音色をもう少しうしろに持っていって欲しかったところですが…。

COUNT BASIE & HIS ORCHESTRA /Atomic Basie(1957/roulette)

カウント・ベイシー(p)サド・ジョーンズ(tp)エディ・ロックジョウ・デイビス(ts)フランク・ウェス(as)フランク・フォスター(ts)フレディ・グリーン(g)ソニー・ペイン(ds)エディ・ジョーンズ(b)他
N.Y.を想起させるアルバム、ナンバーワンとでも言いたいくらいにニール・ヘフティの作曲とアレンジが都会的なアルバム。ベイシー・オーケストラはアレンジャーによって表情ががらっと変わります。このアルバムなんかは最も都会の匂いがしますね。中でも4曲目「Flight Of the Foo Birds」!僕はどんなときでもこの曲が流れてくれば御機嫌です。これほどまでにN.Y.のイメージがピッタリくる曲も他に無いでしょう。とにかく「超」がつくほど大好きな曲です。ところで僕が持ってるこのアルバムはフランス盤CD(Vogue)で、全11曲入り。現在はこれに5曲プラスして「コンプリート・アトミック・ベイシー」なるCDが出ている模様。

ScoLoHoFo / Oh ! (blue note/2002)

ジョン・スコフィールド(g)ジョー・ロヴァーノ(ts)デイブ・ホランド(b)アル・フォスター(ds)

メンバーそれぞれの名前の頭だけとって並べたScoLoHoFo(スコロホフォ)。安直ではあるが実に分かりやすい名前(笑)。4人のメンバーがそれぞれ自作の曲を持ち寄り、セッションしてみましたって感じのアルバム。ジョンスコとロヴァーノがフロントなので、やはり抽象的な展開になってはいるものの、何か一本芯が通っている印象…。何度も聴いているうちにホランドの存在感を強く感じるようになった。もちろんジョンスコもいつも通りの変態プレイだしロヴァーノも分かったような分からないような不思議なフレーズを紡ぎだし、それぞれ持ち味を出していて素晴らしい。が、やはりホランドの例のノリで全体がまとめられているようです。ジャズはベースだ!とはよく言われますが、もしこのグループのベースがロン・カーターだったら全く違ったものになってたんだろうなあ、なんて思ってしまいました。ホランドのベース、やはり強烈です。

THE BLUE NOTE SWINGETETS (blue note /1944-46)

タイニー・グライムス(g)ジョン・ハーディー(ts)アイク・ケベック(ts)ベニー・モートン(tb)ジミー・ハミルトン(clarinet) 他

プレ・モダン期のシブ目の演奏をまとめて聴けます。4弦ギターのタイニー・グライムスはロッキンなノリが楽しいし、のちにこのBNレーベルで重要な役を担うことになるアイク・ケベックはやっぱりあの音色だし、ベニー・モートンはJ.C.ヒギンボサムにも通じるブルース臭があるし、ジョン・ハーディーはいかにもプレ・モダンなマッタリした吹き方だし…。でもやっぱりタイニー・グライムスが一番存在感あるか。

The Sextet Of Orchestra U.S.A./Mack The Knife and Other Berlin Theatre Songs Of KURT WEILL (RCA/1964-65)

ジョン・ルイス(p)エリック・ドルフィー(as,bcl)マイケル・ズワーリン(tb)ニック・トラヴィス(tp)リチャード・デイヴィス(b)コニー・ケイ(ds)サド・ジョーンズ(cor)ジェローム・リチャードソン(as,bcl)ジミー・レイニー(g)
クルト・ワイルの曲をジャズでやる、というありがちなコンセプトでありながら、内容は相当充実。特にA面で暴れまわるドルフィーが印象的です。ジョン・ルイスの「オーケストラUSA」のピックアップメンバーから成るこのセクステット・オブ・オーケストラ・USAはリズムセクションがしっかりしているおかげか全体的にコクがあります。もちろん個々のメンバーの実力のなせる技なわけですが、リチャード・デイヴィスとコニー・ケイの強力な土台があってこそ。単なる企画ものに収まらない濃厚な「ジャズ」がここにはあります。ジャズファンなら誰でも知ってる「マック・ザ・ナイフ」はこのヴァージョンが極め付け。例の明るいメロディがここでは妙なアヤしさに変わり、そのメロディにかぶさるようにジェローム・リチャードソンのアルトサックス超絶ソロやジミー・レイニーのギターソロなどがかぶさります。こんなにカッコイイ「マック・ザ・ナイフ」はかなり珍しいかと…。

Metropole Orkest, John Scofield, Vince Mendoza / 54 (Emarcy Records/2009)

John Scofield(g) Vince Mendoza(Cond)

ジョンスコがオランダのオーケストラMetropole Orkest と共演した一枚。これはすごい。ジョンスコ既成曲のオケバージョン。ジョンスコはぜんぜん変わらずいつものギター。なのにバックのオケはモンド風というか映画音楽風というか。で、この響きがなんとも素晴らしいのだ。ジョンスコはジャム系とかもういいからこの手のアルバムをもっと出して欲しい。ジャケも最高ではないか。

DUKE ELLINGTON / Symphonic Ellington」(1963)

今さらながらこの物凄さに驚く。エリントンの「変さ」加減はそこらへんのフリージャズの遥か上を行く。このアルバムはもう20年くらい前に買ったものだしたまに聴いたりするんだけど何故かいつも新鮮な響き。不思議なもんだ。 そんなわけで本作、いつものエリントンオーケストラにストリングスオーケストラが加わった大編成。ストリングスが加わったことによってエリントン独特の臭みが少なくなったような感じもするけど、逆にそれを補って余るほどの面白い響きが出てきてます。この狙いはほんとすごいな。間違いなくエリントン芸術の極地のひとつ。

3 COHENS / FAMILY (Anzic Records/2011)

Avishai Cohen(tp) Yuval Cohen(ss) Anat Cohen(ts,cl) Aaron Goldberg(p) Matt Penman(b) Gregory Hutchinson(ds) Jon Hendricks(vo 7と10のみ)

この1曲目、なにかに似てるんだがなかなか思い出せない。昔の外国アニメだったかなんだったか。そこまで出てるのに思い出せない気持ち悪さ(笑)。ついでにこのアルバム、なんだか音的に90年代のニオイがちょっとするんだけど、それがまた何故なのかがあと一歩のところでよく分からない。だからなのか、どうもスルー出来ないのだ、これ。いつもどこかが引っかかる。ミンガスやエリントンの匂いも感じさせつつのストレートアヘッドな3管ハードバップ。意外にこういう王道が最後には生き残るのではないかと思ってみたり。ジョン・ヘンドリクス御大はオマケと思いきや結構馴染んでて面白い。

We3 / Amazing ( Kind of Blue Records/2011)

Dave Liebman(ts,ss, fl,) Steve Swallow(el-b) Adam Nussbaum(ds)

リーブマン、なんだかまったりと吹いてるなあと思って聴いてると、3曲目でようやくであのリーブマンが。一度のりだすと止まらないこの感じ。こういうリーブマンはかなり好き。とはいえ全体的には静かな印象か。こじんまりしたドラムとベースなのでよけいにそう感じる。10曲目ではほのぼのとしたインディアン・フルート吹いてます。

Medeski Scofield Martin & Wood / MSMW Live In Case The World Changes Its Mind (Indirecto Records/2011)

John Medeski(key) John Scofield(g) Billy Martin(ds,per) Chris Wood(b)

ジョン・メデスキの、音に対する感性はジミー・スミスらのモダンジャズ系オルガン奏者よりもむしろキース・エマーソンなんかに近い。ハモンド独特の音色によるハーモニーよりも、音そのものにカタルシスを感じさせるように妙に歪ませる。美しさよりも発散。このライブでは特にそこのところがよく現れてて、曲によってはほとんどプログレだったりする。とはいえドラムのビリー・マーティンがジャムバンドなノリで叩くもんでやっぱりジャムバンドってことになるのかなこれは。ジョンスコとMM&Wは以前に「A GO GO」と「Out Louder」で共演してるが、ライブになると一体感が凄い。

COUNT BASIE / Basie At Birdland (Roulette/1961)

ベイシーは好きすぎて困るくらいで、「Atomic Basie」(Roulette)とか、あるいはスモールグループでの「Count Basie and the Kansas City 7 (impulse)」(←これは無人島盤)とか聴いてると、なんだかもう他の音楽とかいならいんじゃないかって気にもなってくるんだけど、この黄金のベイシー楽団のルーレット時代のライブ「Basie At Birdland」もなかなか凄い。音のまとまりは有名な「April In Paris」(1956年)の方がいいけど、リズムやノリに焦点を当てればこちらも負けてない。とはいえ、50年代後半~60年代前半にかけてのベイシーは全部凄くて、ハズレは無い。

Art Blakey And The Jazz Messengers / The Witch Doctor? (Blue Note/ 1961)

Lee Morgan (tp) Wayne Shorter (ts) Bobby Timmons (p) Jymie Merritt (b) Art Blakey (ds)

「モーニン」からこのアルバムあたりまではピアノがボビー・ティモンズなわけだが(途中ウォルター・ビショプJr.やウォルター・デイビスJr.が代役を務めたことがある)、とにかくボビー・ティモンズがいた時代のジャズメッセンジャーズは最強。ベニー・ゴルソンとハンク・モブレーというアクの強いサックスの後釜としてショーターが入ってもまだこの黒いねばりがあるのは、ボビー・ティモンズのおかげ。とはいえこのティモンズのねばりのある黒々としたピアノがコテコテにならずに意外に爽やかに聴こえちゃうのはブレイキーのセンスのおかげ。ブレイキーのドラムはその風貌から何やら荒々しいイメージがあるって人も多いかと思うけど、実はものすごく繊細に計算されている。本作はブルーノートにおけるティモンズ入りメッセンジャーズの最後となる作品。この後フラーが加わった3管のインパルス盤「Impulse!!! Art Blakey!!! Jazz Messengers!!! (Alamode)」を最後にティモンズはメッセンジャーズを去る(ついでにリー・モーガンも去る)。もちろんこの後のショーター、ハバード、フラー、シダー・ウォルトンらのモーダルなメッセンジャーズもそれはそれでいいのだが、ジャズメッセンジャーズの失速の始まりもまたこのモード時代だった。それはそうと、ジャズメッセンジャーズはスイング感が最大の聴き所でもあったので、ファンキーなティモンズはこのグループの土台だったんじゃないかなあって気もする。ティモンズがいた頃の粘り気のある音はちょっと特別だった。このアルバムはファンキーなハードバップからクールなモードへと移り変わる狭間のなんともいえない微妙な空気がよく出ていて、すごく面白い。ファンキーな肉体的なノリとモードの理性的なノリがいい感じでブレンドしてる感じが、なんだかいい。ティモンズとショーターがいた時代のジャズメッセンジャーズはちょっと格別だな。

RUSSEL GARCIA AND HIS FOUR TROMBONE BAND (FRESH SOUND/1955)

Russel Garcia(cond, arr) Frank Rosolino(tb) Herbie Harper(tb) Maynard Ferguson(tb)��Tommy Pederson(tb) Dick Houlgate(bs) Marty Paich(p) Red Mitchell(b) Stan Levey(ds) Al Hendrickson (g) Gerry Wiggins(p) Chico Hamilton(ds) Frances Fayes(vo)

典型的なアレンジ重視のウエストコースト・ジャズの極みというか。これは最高すぎる。クロード・ソーンヒルからマイルス「バース・オブ・ザ・クール」に至るギルをも凌駕するんじゃないかってくらいのアレンジの色彩感。ここまで心地良いアレンジはそうあるもんではない。4本のトロンボーンと1本のバリトンサックスという低音のアンサンブルにギターが入るから、なんかギル・メレなんかも思い出す。

Gerald Wilson Orchestra / State Street Sweet (Mama Records/1995)

先日亡くなったジェラルド・ウィルソンの名作。西海岸のオーケストラということで、ホーン群の迫力よりもハーモニーの綺麗さの方が際立つ。どこかラウンジ・テイストもあって心地よい。どの曲も短めに決めてて飽きさせない。ギターのソロだけどこか90年代的な臭いがするのが面白い。

Hanna-Fontana Band / Live At The Concord (concord/1975)

Jake Hanna (ds) Carl Fontana (trombone) Herb Ellis (g) Plas Johnson (ts) Bill Berry (tp) Dave McKenna (p) Herb Mickman(b)

あまりにも最高すぎる。コンコード・レーベルの最高傑作のうちのひとつ。夏の野外ライブなので、よく聴くと「ジー、ジー」という虫の声が聞こえてくるのもなんだかいい感じ。カール・E・ジェファーソンが個人的な趣味で集めたようなモダン・スウィング系のメンバーばかりで、特にケントン・オーケストラでお馴染みのカール・フォンタナは素晴らしい。僕の大好きなハーブ・エリスももちろん好調。初期コンコードは本当にいいアルバムばかりだ。

The Natural Seven (RCA VICTOR/1955)

Al Cohn(ts) Freddie Green(g) Joe Newman(tp) Frank Rehack(tb) Milt Hinton(b) Nat Pierce(p) Osie Johnson(ds, vo)

カウント・ベイシーの1930年代のカンサスシティ・セブンにあやかったというわけでもないだろうが、このナチュラル・セブンはどことなくベイシーのいないベイシーというか、少しダレたベイシー的な感じがあったりする。一般的にはジャケの最初に大きく名前のあるアル・コーンのリーダー作みたいな感じになってるものの、目立つのはやっぱりフレディ・グリーン。少し古臭くてぬるいモダン・スウィング風セッションをビシっと引き締めているのがフレディ・グリーンのサクサクという気持ち良いギター。ポール・ゴンザルヴェスにも似た様なメンバーのアルバムがあるけど、こちらのアル・コーンはポール・ゴンザルヴェスほど厚かましく無いので、どこか爽やかで”ナチュラル”です。

Art Blakey and the Jazz Messengers / 'S Make It (Limelight/1964)

Art Blakey(ds) Lee Morgan(tp) John Gilmore(ts) Curtis Fuller(tb) John Hicks(p) Victor Sproles(b)

ジャズ・メッセンジャーズのLimelight時代の最初のアルバム。Limelight時代ってばキース・ジャレットやチャック・マンジョーネの入った「Buttercorn Lady」(1966年)があるけどそれは本作の2作後のこと。ここでは60年代の黄金時代を飾ったリー・モーガンやカーティス・フラーがまだ残っていますが、印象は随分変わってます。LA録音ということもあってなのか1曲目がいきなりウェストコーストっぽいアンサンブル。全般的にジュークボックス的に小気味よい曲が並んでいて、理屈抜きに楽しいアルバムといった感じでしょうか。ショーター時代の「ひねり」や重さが消えて、ひたすらノリがいい。ジュークボックスにスリーサウンズ(ちなみに僕はジーン・ハリスのピアノが特別に好き)なんかと並んでたら嬉しくなる。


(文:信田照幸)


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