Bigband & Group(その2)
(一番下が最近記事です)


Duke Ellington / Festival Session (Columbia/1959)

Duke Ellington(p) Cat Anderson, Shorty Baker, Willie Cook, Fats Ford, Ray Nance, Clark Terry(tp) Britt Woodman, Quentin Jackson, John Sanders(tb) Jimmy Hamilton (ts, cl) Johnny Hodges, Russell Procope(as) Paul Gonsalves(ts) Harry Carney(bs) Jimmy Woode, Joe Benjamin(d)Sam Woodyard, James Johnson (ds)

デューク・エリントンの音楽には、隅々にまでエリントンの神経が行き届いているので、どんな小さなパートであってもエリントン臭が強く残る。誰のソロであっても、そこにはエリントンの意志のようなものが宿る。マイルス・デイヴィスにも似たようなところがあるけど、エリントンの場合はそれこそ徹底的にエリントンの意志が音楽すべてに貫かれているようだ。ここ2年ばかりエリントンのアルバムをランダムに片っ端から聴き倒してきてそんなことを思った次第。で、このアルバム。エリントンにしては珍しく音の処理の仕方がモダンなせいか、曲それぞれの複雑な構成がクッキリと整って見えてくる。1曲目のパーディドなんて、複数のメロディが交互に混ざり合いながらひとつの旋律を浮き上がらせるような、何とも凄い仕組みがはっきりと見える。どことなくストラヴィンスキーなどをも思い浮かべてしまいます。そして当然のことながらしっかりとスウィング感もある。こういったホンモノに接すると、自分の中の何かがバージョンアップされるような気分になります。

Count Basie Orchestra / Basie Plays Hefti (Roulette/1958)

Count Basie(p) Freddie Green(g) Wendell Culley, Thad Jones, Joe Newman, Snooky Young(tp) Henry Coker, Al Grey, Benny Powell(tb) Frank Wess, Marshal Royal(as) Frank Foster, Billy Mitchell (ts) Charlie Fowlkes (bs) Eddie Jones(b) Sonny Payne(ds) Neal Hefti(arr)

ちょうど物凄い数のアルバムを連発していた時期のベイシー楽団。その中に埋もれるように存在するのがこのアルバム。しかし埋もれさせるには勿体無い。ニール・ヘフティのアレンジのおかげでモダンな雰囲気でいっぱい。中でも「Cute」という曲。とにかく好きなのだ。曲自体もキュートで素晴らしいのだが、同時にソニー・ペインの超絶ドラムが凄すぎる。

Art Blakey and the Jazz Messengers / In This Korner (concord/1978)

Art Blakey(ds) Valery Ponomarev(tp) Bobby Watson(as) David Schnitter(ts) James Williams(p) Dennis Irwin(b)

ジャズ・メッセンジャーズのスウィング感はまずこのドラムから生まれるということがよく分かる名作ライブ。ジャズの本質はスウィングにあり。アート・ブレイキーのドラムは繊細でありながらも突進力が凄く、各ソロイストに合わせてそれぞれパターンを工夫しながらスウィングします。アート・ブレイキーはシンバルの使い方が滅茶苦茶かっこいい。どんなアーチストでもジャズ・メッセンジャーズに在籍している間は輝いているけどそれはこのドラムのおかげ。というわけでこのアルバム、1曲を除いてすべてオリジナル曲。どれもテーマもアレンジもとにかく素晴らしい。マッコイ・タイナーの影響が垣間見えるジェームス・ウィリアムスのピアノも躍動感があって爽快。ジャズメッセンジャーズの歴史の中ではマルサリス兄弟時代の直前ということもあって全くといっていいほど注目されない時代の作品だが、これはジャズ・メッセンジャーズのアルバムの中でも上位に食い込む名盤。 

Duke Ellington and His Orchestra / The Duke's D.J. Special (FRESH SOUND/1959)

Duke Ellington(p)johnny Hodges, Russ Procope(as) Paul Gonsalves(ts) Jimmy Hamilton(ts,cl) Harry Carney(bs)Cat Anderson,Ray Nance,Clark Terry,Shorty Baker(tp) Britt Woodman,John Sanders,Quentin Jackson(tb) Jimmy Woode(b) Jimmy Johnson(ds)

まるでジュークボックス用に録音したかのごとく、どの曲も短くまとめてあって、全12曲。どれも強烈にかっこいい。エリントン楽団は組曲のような長尺のものよりもこのような短い時間の曲の方が面白味が分かりやすいのではなかろうかと最近思うようになった。この手のものでは、有名曲ばかりの「The Popular Duke Ellington」があるけど、本作はレア曲も多いのでエリントン聴いてるときにありがちな「またこれか」感が無く、新鮮な気分で何度も聴ける。

Paul Desmond & The Modern Jazz Quartet (1971)

Paul Desmond (as) Milt Jackson (vib) John Lewis (p) Percy Heath (b) Connie Kay (ds)
1971年12月25日ニューヨークのタウンホールでのライブ。西のデイブ・ブルーベック・カルテットの顔ポール・デズモンドが東のモダン・ジャズ・カルテットと共演したちょっと珍しい顔合わせのライブ。このレコードは大学生のときにさんざん聴いたものなんだけど、当時はMJQよりもポール・デズモンドの方が好きだったので、何の違和感も無く聴けた。がしかし、のちにMJQの方が好きになってからはどうも物足りない(特にジョン・ルイス)とも思うようになった。とはいえそこはやはりMJQ、聴けば聴くほど味が出てくるような演奏。録音日時を見れば、クリスマス。クリスマスライブならこういう和やかなものもアリかなあ。ニューヨークのクリスマスを思い浮かべながら聴けます。

Duke Ellington / Ellington '66 (1965)

Duke Ellington(p) Cat Anderson, Herb Jones, Cootie Williams,Rolf Ericson,Ray Nance, Mercer Ellington(tp) Lawrence Brown, Buster Cooper,Chuck Connors(tb) Jimmy Hamilton(cl, ts) Johnny Hodges, Russell Procope(as) Paul Gonsalves, Harry Carney (ts) Peck Morrison, John Lamb(b) Sam Woodyard(ds)
ポピュラーソングのカバー集のようなアルバム。で、どの曲もみな強烈なエリントン色に染まった演奏となっている。エリントン・オーケストラというのはメンバーひとりひとりがそれぞれ強烈な個性を持った集団で、それぞれが自分だけの独自の奏法を持つ。それらアクの強いメンバーが束になってハーモニーを作り出すので、そのハーモニーもまたアクが強い。なのでエリントンでしかありえない謎めいた豊かなハーモニーとなる。このアルバムは素材がポピュラー・ソング(ビートルズまである)ということもあって、そのエリントン・ハーモニーの異様さ(=面白さ)がはっきりと聴き取れます。
 

Duke Ellington / Jazz Party (Columbia/1958)

Duke Ellington(p) Jimmy Woode(b) Sam Woodyard(ds) Cat Anderson, Shorty Baker, Ray Nance, Clark Terry, Andres Ford (tp) Quentin Jackson, Britt Woodman, John Sanders(tb) Jimmy Hamilton(cl, ts) Johnny Hodges(as) Russell Procope (cl, as) Paul Gonsalves (ts) Harry Carney (bs) Dizzy Gillespie(tp) Jimmy Rushing(vo) etc.
デューク・エリントン楽団のライブ盤。1958年の「JAZZ PARTY」というテレビ番組での演奏。9人のパーカッションが入る曲があったりディジー・ガレスピーがゲストで登場したりカウント・ベイシー楽団のヴォーカルのジミー・ラッシングが登場したりと何かと楽しいアルバム。中でもパーカッションの入るMalletoba SpankとTymperturbably Blueはとにかく凄い。ちょうどこの当時のモダンジャズ界はハードバップ全盛期だったりモードジャズが登場したりフリージャズが登場したりと激動の時代なのだが、そんな流行とは別次元に高くそびえ立つエリントン楽団の圧倒的なジャズが素晴らしすぎる。異質なものたちが異質なままで奏でる異様なハーモニーがエリントンの特質でもあり美しさでもある。

Art Blakey & The Jazz Messengers / In Concert (Steeple Chase 1962)

Art Blakey(ds) Wayne Shorter (ts) Curtis Fuller(tb) Freddie Hubbard(tp) Cedar Walton(p) Jymie Merritt(b)
最近出た未発表音源。1962年2月15日デンマークのコペンハーゲンでの演奏。時期的には「Three Blind Mice」の1ヶ月前ということになる。1961年の「Mosaic」からフレディ・ハバードとシダー・ウォルトンが加入するので、ハバードとシダー・ウォルトン加入後初のツアーからの音源だろうか。元気いっぱいのハバードが印象的。フラーは前作のインパルス盤から引き続き残っている。で、このアルバム、音質はあまりよくないけどジャズメッセンジャーズ全盛期の熱気がよく伝わって来るライブだ。3管なのもいいけどブレイキーの切れ味も凄くいい。ブレイキーだけに関して言えば、ちょうど「The African Beat」(1962年1月録音 アフリカ音楽とジャズの融合を試みた実験作)直後のクリエイティブな時期に当たる。


(文:信田照幸)


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