EARL KLUGH アール・クルー


EARL KLUGH/EARL KLUGH (Blue Note /1976)

アール・クルー(g)デイブ・グルーシン(Rhodes, etc) リー・リトナー(g)Charles Meeks (b) ルイス・ジョンソン(b)ハーヴィー・メイソン(ds)他
すべてのフュージョン・アーチストの中で一番好きなのがアール・クルー。これは記念すべきファーストアルバム。それほど好きなアルバムじゃないけど、でも記念すべきファースト。ホーンセクションやコーラス等が入っているハデなトラックよりもシンプルなトラックのほうが僕は好きです。だからA1,2あたりはアール・クルーのギターを殺してしまっているようで、ちょっとキツイ。しかしガットギター・プレイ自体はこの時点ですでに完成されていて実に素晴らしい。
<曲ごとのレビュー>
A1
当時の典型的なクロスオーバーな音で、どこかドナルド・バード的ブラックネスを感じるネバっこいリズムとバックのホーン&ストリングス。デイブ・グルーシンとラリー・ローゼンのプロデュースはまさに時代に即した音づくりです。クルーのギターはサウンドの中に溶け込むように構成されています。グルーシンの曲。
A2
これまた時代の音です。クロスオーバー、あるいは当時のソウルのパターンです。ここでもクルーのギターは主役というよりサウンドの中に溶け込んでいます。
A3
アール・クルーの曲。ようやく来ました。これこそ黄金のクルー節です。この曲のパターンが「マジック・イン・ユア・アイズ」(1978年)「ハート・ストリング」(1979年)「ドリーム・カム・トゥルー」(1980年)といったアール・クルーの頂点へと繋がります。
A4
アール・クルーのアドリブ・センスを生かした曲で、グルーシン&ルイス・ジョンソン&ハーヴィー・メイソンの曲です。ルイス・ジョンソンとメイソンの強力なリズム・セクションに乗ってクルーのメロディアスなソロが長々と展開されます。ファースト・アルバムにしてすでに完成されたギタリストであることがよく分かるテイクです。
B1
アール・クルーの曲。アルバム「ロー・ライド」収録の「ナイト・ドリーマー」などに繋がる哀愁漂う曲です。こういったラテン系のノリもまたクルーのひとつのパターンです。ここでの激しいソロのやりとりは、のちのクルーのアルバムには見られなくなったもので、デビュー作としての力の入りようが分かりますね。
B2
こういったカバーはアール・クルーの得意中の得意ジャンル。テーマの歌わせ方、ソロパートの見事な構成、どれを取っても素晴らしい。さわやかさ満点のテイクです。
B3
ビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビー」。アール・クルーとビル・エバンス…。どうもイメージが違い過ぎますが、ギターのソロだけで奏でられるこのトラックの前半部を聴けば分かるようにクルーは完全に自分の曲にしてしまってます。ゆったりとした解釈が新鮮です。
B4
アルバムのラストを締めくくるのはクルーの曲。テーマ部がくり返されるだけの単純な曲なのに、本当にいい曲です。バックのホーン&ストリングスも控えめでいい感じ。このアルバムのベストトラック。

EARL KLUGH/Living Inside Your Love (Blue Note /1976)

アール・クルー(g)デイブ・グルーシン(key)ジェフ・ミロノフ(g)ウィル・リー(b)ルイス・ジョンソン(b)スティーヴ・ガッド(ds)ハーヴィー・メイソン(ds)他
プロデュース:デイブ・グルーシン&ラリー・ローゼン
前作ほどの派手さが消えてほどよい感じに仕上がってるクルーの第2作目。前作同様ブルーノートから。今回は前作の西海岸録音から一転NY録音です。ソウル色を強調したプロデュースではあるものの、全体的にはあの「ハート・ストリングス」の世界を少し垣間見ることが出来て興味深い作品です。
<曲ごとのレビュー>
A1
デイブ・グルーシンのキャッチーな曲「キャプテン・カリブ」。なんともアール・クルーにピッタリな曲です。パっとした明るさの裏ではウネりまくるベースが聴こえてきます。ファーストのA面にあった派手さもやや薄くなり、いよいよアール・クルーの真骨頂の兆しが見え隠れしています。
A2
「悲しいうわさ」のカバー。このブラックネスはアール・クルーから自然に湧き出たものというよりはデイブ・グルーシンとラリー・ローゼンが無理矢理作り上げたものだけど、クルーのギターは実によくハマっています。ガットギターでソウル!ちょっと珍しいですね。
A3
さあ、ようやく来ました、アール・クルーの曲です。ややラテン調のミディアム~アップテンポの曲で、中間部のクルーのソロも冴え渡り、聴きごたえ十分。
B1
これもクルーの曲。バックコーラスとストリングスの使い方がソウルっぽくてかっこいい。しかしクルーのギターはブラックネスからは距離を置き、メロディラインを大切にしたような流麗なスタイルを貫き通します。
B2
メロウなギターと美しいストリングスの絡み合いが聴き所です。グルーシンの曲で、凝りに凝ったバックのストリングス・アレンジが都会的です。
B3
バカラックの曲。全編ギターソロです。名器ベラスケスの美しい音色を堪能出来ます。
B4
クルーの曲。さりげない曲だけどクルー独特のポップさがよく出ています。ベースソロが白熱してきた所でフェイドアウトってのはちょっと不満だけど、このさりげなさ加減がいいのかも。

EARL KLUGH/Finger Paintings (Blue Note /1977)

アール・クルー(g)デイヴ・グルーシン(key)スティーヴ・ガッド(ds)リー・リトナー(g)アンソニー・ジャクソン(b)ルイス・ジョンソン(b)ハーヴィー・メイソン(ds)ラルフ・マクドナルド(per)トム・スコット(horn)ジェローム・リチャードソン(horn)他
プロデュース:デイブ・グルーシン&ラリー・ローゼン
クルーの大ヒット作です。そしてブルーノートLAが最後に放ったヒット作でもあります。そしてグルーシン&ラリー・ローゼンのプロデュースはこのアルバムまで。クルーのギターは前2作よりもさらに好調。この「音」がいいんですよね。ベラスケスっていう名前のあるガットギターだそうで、後年ピックアップ付きのガットギターに移ってしまって残念に思う僕なんぞにとってはこの時期のクルーの「音」は貴重なのです。ところで、このアルバムのB面からクルーの必殺パターンが始まります。必殺パターンとはこの後の3枚のアルバムのことなんですが、こういったカントリー風味を生かしたメロウなサウンドっていうのはアール・クルーの専売特許のようなもんで、他の誰も真似なんか出来ません。このアルバムのB面はエンドレスで聞いていたい…。本当に気持ちいい~。
<曲ごとのレビュー>
A1
クルーのポップさ全開の曲。このアルバムはこの曲とA3のおかげでヒットしたともいえるでしょう。
A2
ジェームス・テイラーのカバー。何故だかジェームス・テイラーとアール・クルーとは相性ピッタリです。まるでアール・クルーの曲であるかのようにハマっていますね。「Magic In Your Eyes」以降の必殺パターンのひな形ともいえる重要な曲。
A3
クルーの曲で、テレビやラジオ等でもよく使われてた曲。ノリのいいラテン・フレイバー溢れたポップな曲。バックのホーンとストリングスがいかにもグルーシンって感じですね。
A4
デイブ・グルーシンの曲で、これまでだったら1曲目に登場してるんでしょうがクルーの曲があまりにいいので4曲目に埋没したかのように思えてきます。ちなみにホーン・アレンジはトム・スコットです。
B1
さあ、このB面からアール・クルーの頂点ともいえる極上のパターンに入ります。前の2作はソウル色を前面に出したグルーヴィーな作りのものでしたが、アール・クルーの本来の姿はこの曲に見られるようなカントリー色の強いリラクゼーションにあるような気がします。実にゆったりとした気持ちのいい曲です。
B2
オーリアンズの75年の曲「ダンス・ウィズ・ミー」のカバー。オーリアンズのジョン・ホールの曲です。LPのライナーノーツ(竹村淳)には「ジム・ホールの曲」なんて書いてありますが…、J.Hallと書いてあるのでジム・ホールだとでも思ったのでしょう(爆)。さわやかさ満点の曲。テーマ部の歌わせ方が素晴らしいですね。
B3
クルーの曲。「サマー・ソング」という名のとおりのカラっとした仕上がりの曲。フェンダーローズの入り方がキュートな感じです。
B4
ラストを飾るのはこれまたクルーの曲でメロウなゆったり感がいい感じです。控えめなフェンダーローズもこのメロウ感に貢献。ソウル色のないこういったリラックス感はアール・クルーならではですね。

EARL KLUGH/Magic In Your Eyes (United Artists /1978)

アール・クルー(g,etc)グレッグ・フィリンゲインズ(el-p)スコット・エドワーズ(b)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)ジーン・ダンラップ(ds)ヒュービー・クロフォード(b)チェット・アトキンス(g)他
邦題「瞳のマジック」。ここからの3枚のアルバムがクルー必殺3部作なのです。このパターンがアール・クルーの真骨頂でしょう。これまではデイブ・グルーシン&ラリー・ローゼンがプロデュースだったけど今回はブッカー・T・ジョーンズ。このプロデュースが本当に素晴らしい。アールクルーのギターを生かすにはどういったバックが良いのかということを考え尽くした作りです。プレイ自体の素晴らしさは言うまでもないのですが、なんといってもこの雰囲気。聴いてるだけで気分がよくなってくる。半分はハリウッド録音で残り半分はナッシュビル録音。ここに来てついにカントリーの総本山ナッシュビルに進出。
<曲ごとのレビュー>
A1
タイトなバックに乗ってアール・クルーの爽やかなガットギターが歌います。グレッグ・フィリンゲインズの浮遊感のあるエレピも爽やかです。A面の1~3は全部クルーの曲。
A2
メロウなパターンの典型で、クルーの曲でこのパターンにハズレはありません。メロウとはいってもクルーの場合は夜よりは昼の方が似合うのが不思議です。ねばりのあるベースも極度の黒さを排したプロデュースのおかげで自然に溶け込んでいます。
A3
これまたメロウな昼下がりとでもいった風情の名曲。ここで注目すべきはロイド・グリーンのペダル・スチール・ギターの使用。ついに露骨なカントリーっぽさが出てきました。黒人アーチストなのにカントリー、という不思議さ…。カントリーといってもチャカチャカしたウエスタンとは正反対のゆるやかなリラックスしたスタイルです。
A4
この出だしのスペイシーなシンセが何度聴いてもよく分からない…。なんなんだろう、これは?ちなみにこれはグレッグ・フィリンゲインズの曲で、そのままアール・クルーの曲といっても通用しそうなメロディアスな曲。スコット・エドワーズとジーン・ダンラップの重量感のあるリズムセクションにも注目。
B1
ヴィンス・ガラルディの曲をゆったりとしたノリで聴かせます。ソロパートでのガットギターの最高音がなんとも印象的です。
B2
重いバックビートが印象的な曲。クルーの曲です。ギターソロを存分に披露してくれています。
B3
ペダル・スチール・ギターが全編に渡って使われるカントリー風味の曲。ここではなんと、アール・クルーあこがれのチェット・アトキンスと共演しています。チェット・アトキンスはカントリー・ギター界の巨匠で、アール・クルーもまともに影響を受けているという存在。2人の余裕あるやりとりが聞き物です。
B4
ミディアム・スローなラテンっぽい曲。B2と似たような重量感を感じる曲調で、クルーのソロパートも大きく取って聴きごたえ十分。
B5
ナッシュビル録音のカントリー風味満点の曲。やはりスチールギターの存在は大きいですね。ひたすらリラックス出来る曲です。B面は2、4、5がクルーの曲。

EARL KLUGH/Heart String (Liberty/1979)

アール・クルー(g,etc)フィル・アップチャーチ(g)グレッグ・フィリンゲインズ(el-p)チャールズ・ミークス(b)ヒュービー・クロフォード(b)ヴィクター・ルイス(ds)ラルフ・マクドナルド(per)他
アール・クルー5枚目のアルバムにして初のセルフ・プロデュース作品。2作目以来のNY録音です。そしてアルバムすべて自作曲というものこれが初。クルーの作る曲っていうのはどれも凄くメロディアスなものばかりで、この当時日本のラジオやテレビなどでもクルーの曲が使われたりしてました。ガットギターでこういう音楽をやる人っていうのはそのほとんどがブラジル系音楽なんですが、クルーの場合は違います。クルーのお気に入りがチェット・アトキンスだということからも分かりますがカントリーっぽさがそこここに見受けられるのです。このカントリーっぽさこそクルー最大の特徴で、他のガットギター・フュージョンでは味わうことの出来ないものなのです。ちなみにこの作品のアレンジはデヴィッド・マシューズで、クルーとマシューズはこの後たびたび一緒に仕事をすることになります。アール・クルーのアルバムの中でも屈指の名作。
<曲ごとのレビュー>
A1
メンバーはアール・クルー(g)の他はグレッグ・フィリンゲインズ(el-p)フィル・アップチャーチ(g)チャールズ・ミークス(b)ヴィクター・ルイス(ds)ラルフ・マクドナルド(per)という布陣。。バックに薄く入るフィル・アップチャーチのワウのカットギターがなにげに雰囲気を決めています。パーカッションとエレピの音の組み合わせはあの「ワインライト」(グローバー・ワシントンJr)を彷佛させます。これもまた「ワインライト」とともに現在のスムースジャズの源流のひとつと言えるでしょう。前作のカントリーな雰囲気から一気に都会的な雰囲気へ。
A2
1曲目と同様、N.Y.のスタジオ系ミュージシャンとの演奏。この時代の雰囲気をよく伝えている曲です。
A3
この曲とB2は当時のアール・クルーのレギュラーメンバーとの録音。Darryl Dybka(el-p),Mickey Roquemore(p),ヒュービー・クロフォード(b),ジーン・ダンラップ(ds)ラルフ・マクドナルド(per)という布陣。この曲は前半と後半に別れていて、前半はストリングスをバックにした静かな曲調、後半はいつものフュージョン・スタイルです。珍しくクルーのソロがたっぷりと取ってあり、聞きごたえ十分。
B1
前作のカントリー路線を継承するなごやかな曲。午後のくつろぎのひとときって感じでしょうか。
B2
そのくつろぎ感をここでも継承。クルーの典型的なパターンの曲で、やさしいメロディラインが心地よいです。
B3
ガットギターのソロ。テクのひけらかしは一切なし。終始なごやかに気持ちよく聞かせてくれます。
B4
これまたいい曲ですね。B2と似た路線で、当時のAMラジオやテレビなどで使われていたかもしれません。アール・クルーの曲っていろんな所で使われていたんですよね。初めて聞くはずなのに何故か知ってるってパターン、結構ありました。マシューズのストリングス・アレンジメントも光ります。
B5
1曲目のリプライズ。こっちはストリングスのみをバックにガットギターでしっとり聞かせます。

EARL KLUGH/Dream Come True (Liberty /1980)

アール・クルー(g,etc)ミッキー・ロックモア(key)ダリル・ディブカ(el-p)デヴィッド・ブリッグス(p)ロイド・グリーン(g)ペリー・ヒューズ(g)マイク・リーチ(b)ジーン・ダンロップ(ds)ドクター・ギブス(per)
アール・クルーの曲の中でも最も有名な「ドック」と「ドリーム・カム・トゥルー」が入っている超名盤。そして大ヒット作。グローバー・ワシントンで言えば「ワインライト」に当たるでしょうかね。ここらへんまでのアール・クルーはガットギターの音も素晴らしく、アルバムの作りもガットギターに合わせたような無理のない音の組み合わせで実に素晴らしいのであります。この時代、ラジオ等のCMではアール・クルーの曲が頻繁に使われていました。それほど人気があったとは記憶にないんですが、つまり聴き心地がいいんですね。近年のスムースジャズのコンセプトにも通じる心地よさがあります。
<曲ごとのレビュー>
A1
ややアップテンポの調子いい曲です。いや~、名盤の始まり方にふさわしいですね。さわやかな風が吹き抜けて行きます。
A2
来ました!アール・クルーの代名詞ともいえる曲「ドック」です。アール・クルーなんか知らんって人もこの曲だけはきっとどこかで聞いたことあるはず。ラジオやテレビなどのBGMとして昔から定番ですね。ミッキー・ロックモアとダリル・ディブカのエレピの音色も印象的です。問答無用の名曲。
A3
こういったフラメンコタッチの曲もクルーの得意技。マシューズのアレンジもなかなか凝ってます。
A4
前の曲でさんざん盛り上げておいて、ここでカントリー・タッチのくつろぎ。素晴らしいです、この流れ。ペダル・スチールギターのぽよよ~んとした響きとクルーのガットギターの組み合わせって何故だかピッタリですね
B1
スペイシーなベースラインがスティービー・ワンダーあたりを彷佛させます。アルバム中もっともテンポが早くノリのいい曲。エレピ、ベース、ギターそれぞれが持ち味を最大限発揮してジャムった感じの曲です。
B2
南国系のリズムにカントリーをのせた面白い曲。メロディーラインが美しいから様になるんですよね。
B3
これまたアール・クルーの代名詞ともいうべき曲「ドリーム・カム・トゥルー」。僕は「ドック」よりこっちの方が好きなんです。とにかく心地よい。こんなに気持ちいい曲が他にあろうか?これまたテレビやラジオのBGMなどでお馴染みです。これぞ永遠の名曲!
B4
バカラックの曲。クルーのギターが気持ちよく歌ってます。マシューズ指揮のオーケストラも気持ちよく鳴っています。名盤を締めくくるにふさわしいクオリティの曲です。

EARL KLUGH/Late Night Guitar (Liberty /1980)

アール・クルー(g)デヴィッド・マシューズ(アレンジ)
なんと、ムード音楽です。いわゆるジャズで言うところのウィズ・ストリングスです。スタンダード・ナンバーばかりやってます。ガットギターでウィズ・ストリングス系のムード音楽っていえばチャーリー・バードがいますが、だいたいそれと似たような作りになっています。マシューズのセンスは素晴らしいです。

How To Beat The High Cost Of Living (Columbia /1980)

アール・クルー絶好調の1980年に出たヒューバート・ロウズとの双頭アルバムで、サントラです。どちらかというとロウズの方が目立ってますが、クルーも爽やかさで対抗。サントラとうこともあってかあまりフュージョンくささは無く、かつ自由なソロパートも少ないです。しかしこんな状況下にあってもクルーがギターをひけばたちまちあの世界が立ち現れてくるんだからビックリです。

Bob James&EARL KLUGH/One On One (Tappan Zee /1980)

ボブ・ジェームスはのちにフォープレイというグループを作ってヒットを飛ばすことになりますが、このアルバムはまるでフォープレイの前身であるかのようです。しかし内容的にはアール・クルーのアルバムそのものという感じです。

EARL KLUGH/Crazy For You (Liberty /1981)

アール・クルー(g)レイ・パーカーJr(g,b,ds,etc)フィル・アップチャーチ(g)ハイラム・ブロック(g)シルベスター・リバース(p)グレッグ・フィリンゲインス(syn)ロニー・フォスター(el-p)ネイザン・イースト(b)ルイス・ジョンソン(b)リッキー・ローソン(ds)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)ヒュービー・クロウフォード(harmonica)他
とにかく参加人数が凄い。当時ベンソンに次ぐほどのスターとなったアール・クルーのアルバムはレコード会社も力の入れようが違います。まず、オーケストラだけで64人のクレジットがあります。そのオーケストラにしたってバックで薄く使われる程度。豪華といえば豪華です。そしてそれ以外にベースやギターやドラムやキーボードなどのメンバーが曲ごとに違ってたりして…。たとえばベースだけを見てみると、レイ・パーカーJr、ネイザン・イースト、ルイス・ジョンソン、ゲイリー・キング、チャールズ・ミークス、と5人も使っている。そしてプロデュースはクルー本人で、全曲自作。LAとNYで半年間かけて録音。凄いですねえ…。ところでアール・クルーの音づくりはこのアルバムから大きく変貌を遂げます。ブラコン色が強いトラックが増えたとはいうものの、あまり統一感がありません。クルーのギターはいつもどおりなんですが、こうも曲ごとにアレンジが変わると聴く方の耳は大変です。全体的に黒さを感じます。
<曲ごとのレビュー>
A1
レイ・パーカーJrがギター、ベース、ドラム、アレンジで参加してるキャッチーなナンバー。これはたぶんヒットしたんでしょう(実は当時のチャートを知らない)。クルーのギターとメロディーはいつもどおりなんですが、ノリがいつもより黒く、レイ・パーカーの影響がモロ出ています。
A2
フィル・アップチャーチのワウ・ギターといいロニー・フォスターのヴォコーダーといいソウル~ファンクの要素が入っていながらあまり黒さを感じないのはやはりクルーのガットギターのせいでしょうか。相変わらずメロディラインが美しいです。
A3
ベースがルイス・ジョンソンだからか、ディスコ~ファンク系のノリです。こういったノリはこれまでのクルーには無かったものですが、うまくガットギターを乗せてグルーヴ感溢れる曲に仕上げています。
A4
カントリー調の軽いノリの曲です。それまでのクルーのカントリー路線とはまたちょっと違ったカントリーっぽさ。ややフォーキーな要素が入っているからでしょうか。クルーの曲の中でもこういったものは珍しいですね。
B1
Calypso Getawayの題名のとおり、冒頭にトロピカルな音を入れて、全体的にも南国っぽいムードです。パウリーニョ・ダ・コスタのパーカッションが効いています。どこかリゾート感覚漂う雰囲気で、旅行にでも行きたくなってきますね。
B2
フラメンコっぽい曲調で、デイヴィッド・マシューズがリズムとアレンジを担当してます。パコを意識したか(?)、クルーのソロも熱いです。
B3
薄いストリングスをバックにいつものリラックスしたクルーのギターが響きます。アーバンフュージョンとでもいったくつろぎです。
B4
90年代のアール・クルーに通じる音ですね。典型的なクルーのパターンです。ラストにきてやっとこのノリが出てきました。

EARL KLUGH &Bob JamesTwo Of A Kind(Capitol /1982)

One On One とは逆に、こちらはボブ・ジェームス的な内容。ボブ・ジェームスはアコースティック・ピアノも弾いていてますますフォープレイ度が増しています。しかしB-1は完全にアール・クルーのあの世界です。

David Matthews Orchestra /Delta Lady (GNP /1982)

マシューズ名義ながら、どこから聴いてもアール・クルーのアルバム。クルーのリーダー作との違いはこちらのほうがやや黒いってこと。ただマシューズの作る曲は何故かどれもクルーが作った曲っぽくなっておりまして、アール・クルーのギターがメインであることからも分かるように、このアルバムの主役アール・クルー。もう絶好調の頃のアール・クルーは敵ナシって感じですね。

David Matthews Orchestra /Grand Connection(electric bird/1982)


「デヴィッド・マシューズ・オーケストラ・ウィズ・グローヴァー・ワシントンJr&アール・クルー」として売り出されたレコード。グローヴァーにしてもアール・クルーにしても原盤レコード・ジャケットには数あるメンバーのうちのひとりとしてしかクレジットされていないのに日本盤では大々的に紹介されてるんだから当時の人気ぶりの凄さがよく分かります。なんといってもビッグ・バンドのフル・オーケストラ作品なのでアール・クルーの出番はソロのときだけってな感じなのですが、それでも爽やかなソロをとるクルーはやはり魅力的。グローバーとクルーの初共演作品です。

EARL KLUGH/Low Ride (Capitol /1983)

アール・クルー(g)グレッグ・フィリンゲインス(key)ポール・ジャクソン(g)ルイス・ジョンソン(b)レイモンド・ポンズ(ds)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)ロニー・フォスター(key)他 プロデュース:アール・クルー
永遠の名作「バック・イン・セントラルパーク」が光ります。冒頭の「バック・イン・セントラルパーク」とラストの「ナイト・ドリーマー」の2曲だけでもいいくらいです。「バック・イン・セントラルパーク」は天気のいい日などは何故だか必ず頭の中に流れる位くらい僕の体に染込んでる曲。不思議です。そして、ラストの「ナイト・ドリーマー」。昔ラジオのCM(青レコ・ダイマナイト・ポップの青山レコーディング・スクールのCM)でも使われていたんですよ。これまたなんとも気持ちのいい曲なのです。始まり方がとにかく良くて…ていうか、このイントロがすご~くよくて、あとは全部オマケです。アルバム全体としてはスムースジャズのさきがけのような音作りになっていまして、ガットギターの音もかつてのシブい音から伸びのある音へと変化しています。「瞳のマジック」「ハートストリング」「ドリーム・カム・トゥルー」の必殺三連発アルバムなどの頃に比べるとカントリー色がかなり後退しており、ソウル色が濃くなってきているのは前作と同じ。
<曲ごとのレビュー>
A1
僕の中ではこの曲は永遠の名曲です。気持ちいいときには必ず頭の中に流れます。気持ちよくないときもこの曲を頭の中に流せば必ずハッピーな気分になります。
A2
リズムを強調したなかなかブラックなノリのある曲。
A3
リズムが凝りに凝ってます。この曲に顕著なように、このアルバムではかなりリズムってことを意識しているような気がします。
A4
非常に美しいメロディを持ったこの曲。リズムが重いのです。それまでのクルーのパターンではタイトにきめているはずの曲調ですが、こういったスケールの大きいリズムもなかなかいいものですね。
B1
アール・クルー必殺のゆったりとしたカントリー・パターンです。A4同様に非常に美しいメロディが印象的。このくつろぎ感はアール・クルーだけの専売特許といった感じですね。
B2
いつものクルー調のメロディながらやはりリズムがひと味違ってます。グレッグ・フィリンゲインズのエレピがファンキーです。
B3
ゆったりとしたカントリー・パターン。今度はバックに薄いストリングスです。アーバン・カントリーとでもいうんでしょうか。N.Y.の朝とでもいった都会的雰囲気が素晴らしい。
B4
僕のアール・クルー狂いは実はこの曲との再会から始まりました。この曲、昔ラジオのテーマ曲として使われていまして、その頃は単にカッコイイ曲だなあ、くらいに思ってたのです。そして、大学1年生のとき、たまたま乗った先輩の車の中でこの曲に再会しました。「おおっ!」これってレコードになってるのかあ、なんてマヌケなことを思いつつ、誰の曲なのかってのは先輩に聞きはぐり、それからまた数年。すっかりモダンジャズとクラシックしか聞かなくなってた頃に、何故だかアール・クルーが気になりレコードをまとめて購入。年代順に聞いているうちに、アール・クルーってこんなに良かったけ?などと思うようになり、このアルバムのラストでのけぞりました。こ、これは!!こんな所に隠れていたのか、この曲~!しかもカッコイイ!何度聞いても素晴らしい、このイントロ!この流れるギター、よく聞けばポール・ジャクソンのギターではないですか。ポール・ジャクソン一世一代のウルトラ級名演です。そしてそれに絡むクルーのガットギター。もう何も言葉はありません。

SUPER GUITAR DUO / Hotel Califprnia(mercury/1983)

アール・クルー(g)Hiroki Miyano(g)プロデュース:テオ・マセロ

日本人ギタリストとのデュオ作品。アール・クルーはゲストとしての演奏です。全6曲中5曲に参加しています。スーパーギター・デュオという名前から、あのスーパーギター・トリオ(パコ、マクラフリン、ディメオラ)を連想しますが、内容は意外にリラックスしたもので、白熱した場面でも余裕が感じられる音です。クルーはサポート的立場ながらも。しっかりと素晴らしい演奏を聞かせてくれます。

EARL KLUGH/Wishful Thinking (Capitol /1984)

アール・クルー(g)バリー・イーストモンド(key)ルイソ・ホッパー(b)テッド・トーマス(ds)サミー・フィギュロア(per)ロニー・フォスター(key)フィル・アップチャーチ(g)ドナルド・グリフィン(g)デヴィッド・サンボーン(as)他 プロデュース:アール・クルー
ここにきて初めてレゲエ曲がお目見えします(A-3)。前作同様スムースな音作り。アール・クルーのセルフプロデュースです。B-1はドン・セベスキーがオーケストラをアレンジ。他3曲、デヴィッド・マシューズがアレンジしてます。キャピトル・レーベル第2弾はいかにもキャピトルらしい落ち着いた都会的な音作りです。
<曲ごとのレビュー>
A1
さりげなく始まるこの曲。いつものクルー節は健在で、爽やかな曲調。クルーのガットギターの音色も美しい。メロディ・メイカーとしての資質が光りますね。
A2
ややラテンタッチのミディアム・スロー曲です。A1同様いつものクルーの曲調。カラリとした明るさの中に都会的きらびやかさを降り注いだような、そんな感じ。途中少しだけバシャバシャした感触のシンセがかぶりますが、この時代を反映しているようで興味深いですね。しかし音の作り自体はそれほど安っぽくなっていない所がクルーの凄いところかもしれません。
A3
レゲエタッチの曲ではあるものの、南国ムードをそれほど強調するわけでもなく、都会的に仕上がってます。キャピトルというレーベルのマジックでしょうか。
A4
デヴィッド・マシューズのアレンジしたオーケストラだけをバックにしたギターソロ曲。とにかくバックのオーケストラが物静かで、曲のメロディーラインの素晴らしさだけが浮き立ちます。アール・クルーの作曲家としての実力の非凡さを感じてしまいます。夢見心地のトラック。
B1
ドン・セベスキーのアレンジしたオーケストラが光る曲。爽やかな朝といった風情を感じます。
B2
マシューズのアレンジしたホーン郡がビッグバンド・ジャズっぽさを醸し出しています。ベースはロン・カーターです。このバック、ジャズ的ビッグバンドというよりはモンド音楽的にアレンジされたビッグバンドっていう感じで、なかなかオシャレな仕上がりです。それにしてもこのメロディ…、美しいですねえ…。
B3
かつてのカントリーっぽい路線から都会派(?)路線へと徐々に変わってきたアール・クルーの姿がこの曲に端的に現れています。ゲストにデヴィッド・サンボーンです。音の感触もしっとりと、どこか夜の雰囲気すら漂います。
B4
静かなギターソロから一転、パーカッションも目立つリズミカルでノリのいい曲になります。ベンソンのブラコンっぽい路線に近付いています。しかしガットギターなのでやはりいつもの「あの」世界なのです。

EARL KLUGH/Nightsongs (Capitol /1984)

ロン・カーター、トゥーツ・シールマンスらが加わったウィズ・ストリングス。デヴィッド・マシューズとドン・セベスキーがアレンジ担当。A面1曲目はギター・ソロによるファッツ・ウォーラー「浮気はやめて」。このスイング感はちょっと凄いです。これだけでクルーが並のギタリストではないってことが分かりますね。B面にもソロがもう1曲入ってます。他のストリングス入りのトラックはなんとなくイージー・リスニング。これはこれでアリかなと…。


EARL KLUGH/Soda Fountain Shuffle (Warner Bros. /1985)

アール・クルー(g)ルイス・ジョンソン(b)ハーヴィー・メイソン(ds)グレッグ・フィリンゲインス(key)ポール・ジャクソン(g)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)他 プロデュース:アール・クルー
このアルバムのレビューを新しく書き換えた(2014年)。最近このアルバムを聴きかえしている。これ、アール・クルーのアルバムの中でも唯一僕が納得いかないというか、なんだこりゃ的に思ってたもので、いわば悪しき80年代サウンドと捉えてたわけなんだが、ここにきて急に事情が変わった(笑)。「悪しき80年代サウンド」から「懐かしき80年代サウンド」へと、僕の中で評価が変化。なんだか全部が懐かしくて許せる(笑)。まるでハートカクテル(笑)のサントラのような80年代サウンドの感触。にもかかわらず、メロディはあのアール・クルー特有のものなんだから、どうにも不思議なアルバムだ。今ごろになってやっとこのアルバムが理解出来たというか、30年近く経ってやっと追いついたというか�。80年代サウンドの典型で、あの時代の面白い部分が凝縮されている。

EARL KLUGH/Life Stories (Warner Bros. 1986)

アール・クルー(g)グレッグ・フィリンゲインズ(key)トム・ホール(key)カルヴィン・ブライアント(b)ジーン・ダンラップ(ds)他
前作の打ち込み音の失敗(?)をふまえて今回はやはりあのメロウ路線。隠れた名盤です。アール・クルーはやっぱこうでなくちゃね。以前のカントリー色は控えめにメロウなワーナー版アール・クルーの出発点。このアルバムから「All Songs published by Soda Fountain Music Inc」というクレジットが登場。前作「ソーダ・ファウンテン・シャッフル」から名前を取ったようです。力入ってます。
<曲ごとのレビュー>
A1
カルヴィン・ブライアントのファンキー・ベースがいいじゃないですか。前作は無かったということにして(?)、ブラコン調でメロウにしっとりと展開します。ストリング・アレンジはドン・セベスキーです。
A2
ブラコンというか、スウィート・ソウルというか、なんとも甘い雰囲気漂う夜のドライブ・ミュージックです。このギターの音だから様になるんですよね。これがサックスとかだったらちょっとベタベタになってしまいます。
A3
打ち込みが入ってますが、これくらいならあまり気になりません。クルー独特のポップな曲調とバックの軽やかさがピッタリです。
A4
こういった明るいカラっとした路線はクルーの得意とするところ。しかし以前のようなカントリーっぽいほのぼの感はありません。ブラコン的しっとり感に変わってきたクルーです。
A5
アール・クルーのアルバムには必ず1曲は名曲といえるものが入っていますが、このアルバムではこれでしょう。バックの音がやや80年代してますが、まあこれはこれでいいでしょう。
B1
ドン・セベスキーのアレンジしたオーケストラだけをバックにしたギターソロ。「サンディエゴ・サンセット」という題名のとおり、美しい情景が浮かんできます。
B2
トロピカルな曲です。クラシャー・ベネットのパーカッションをバックにしたシンプルで楽しい曲。これはクルーにしては新しい手法です。南国ムードが心地よいです。
B3
お得意のフラメンコ・タッチの曲。珍しくマイケル・ブレッカーがサックスで参加。デヴィッド・マシューズのオーケストラ・アレンジをバックにクルーのソロとブレッカーのソロが対決。ただ、ブレッカーはソロ一発だけのお仕事だったようで(いつものことか…笑)、このソロ以外は出てきません。
B4
ギターのソロです。途中からクルー自身の演奏のマンドリンとかのオーバーダビングがかぶさりますが、基本的にはギターソロ。くつろぎのひとときです。
B5
1曲目のリプライズはパーカッションの賑やかな曲調です。

EARL KLUGH / Just Between Friends (Wounded BirdRecords/1986) 


サントラ盤。すべてPatrick Williamesの作曲。ドン・グルーシン、ハーヴィー・メイソンらが参加。いかにも80年代的な音作りで、アール・クルー独特のあの世界を期待するとちょっと肩すかしをくらうが、変わり種ということでこれもまたアリかも。アール・クルーのギターに関しては全くいつもの通りで、ギター・ソロのラスト曲などは短いながらも名品。 

EARL KLUGH & George Benson / Collaboration (Warner Bros. /1987)

かつてアール・クルーはジョージ・ベンソンのグループのギタリストとして活動してたわけで、師弟コンビでのアルバムです。ベンソンのアクの強さにあらためて感心してしまいますが、クルーのギターだって十分個性的。クルーの爽やかさが聞き所です。

EARL KLUGH/Whispers And Promises (Warner Bros. /1989)

アール・クルー(g)ロニー・フォスター(key)ポール・ジャクソンJr(g)フレディ・ワシントン(b)ハーヴィー・メイソン(ds)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)他
クルーらしく明るい曲調で始まります。レゲエ調ありタンゴ調ありビッグバンドありで、ヴァラエティに富んでます。ただ、この打ち込みの音が…。ということで、これまた過渡期のアルバムです。ギターの音も初期のガットギターから相当変わっていまして、たぶん「MOVE」のジャケットに出てるギターだと思うのですが、伸びがあるけど深みに欠けるといった音色。
<曲ごとのレビュー>
1
音の感触が変わってきました。今のスムースジャズとかに近い感じですね。相変わらず楽し気な曲調です。
2
あれあれ?妙な打ち込みが…。ハーヴィー・メイソンのドラムだけでもよかったのにおかずの音が打ち込みで入ってます。…まあ、それはそうと、これまたいいメロディです。
3
静かで綺麗な曲です。クルーのギターとクルー自身によるキーボードだけで出来た曲。メロディの美しさが際立ちます。
4
マシューズのアレンジしたビッグ・バンドがバック。こういった趣向で固めたアール・クルー・ウィズ・ビッグバンドってアルバム作ってもいいのでは。クルー独自のキュートなメロディが印象的な曲。
5
レゲエ調でありながらも南国を感じさせない作りはスティーリー・ダンを彷佛させます。ハーヴィー・メイソンのスケールの大きなドラムが光ります。
6
おおっっと、また打ち込みだ~。バシャバシャいっている~!アール・クルー、一生の不覚!(笑)
7
レイ・マンゼロールのサックスから入るこの曲。90年代のクルーを暗示するかのようです。クルー・ファンの僕としましては、サックスは不要と考えるのですが…。
8
この音の感触は典型的な80年代のそれでしょう。特にドラム。こういった感触はあまり好きではないのですが、でもやっぱりアール・クルー。このギターとあのメロディが出てきただけで許してしまえるのです…。特にこの曲はこの音の感触にしては大健闘で、夢心地の世界を展開しております。素晴らしいです。
9
またまたレイ・マンゼロールのサックスが活躍。スラッピング・ベースがファンキーです。まるでマーカスがプロデュースしたサンボーンの曲のよう。クルーにしては珍しいノリですね。
10
なんと、タンゴです。ドミニク・コルテッセのアコーディオン、マイケル・ウルバニアクのヴァイオリン、エディ・ゴメスのベース、ウォーレン・バーンハルトのピアノ、そしてアレンジはドン・デベスキーです。

EARL KLUGH/Solo Guitar (Warner Bros. /1989)

なんと、ソロギターです。クルーのテクニシャンぶりが如何なく発揮されています。チャーリー・バードのガットギターによるソロ「SOLO FLIGHT」やジョー・パスのガットギターのソロ「ソング・フォー・エレン」などと比べてみると、アール・クルーの持つ独自のテーマの歌わせ方が際立ちます。ラグ調「ペーパー・ムーン」からはじまる夢心地のアルバム。

EARL KLUGH/Midnight In San Juan (Warner Bros. /1991)

う~ん。Whispers And Promisesよりぜんぜん良くなって来てるではないですか!メロウに展開するアルバムです。南国っぽい熱ささえ感じます。ていうか、こういう熱さはいらないからカントリーっぽくやって欲しかったなあ…なんていうのは贅沢ってもんですね。

EARL KLUGH/The Earl Klugh Trio (Warner Bros. /1991)

アール・クルー(g)ジーン・ダンラップ(ds)ラルフ・アームストロング(b)
アール・クルー初の本格的ジャズアルバム。トリオ編成です。いきなり「奥様は魔女」のテーマ曲から始まります。僕なんぞはもうこれだけでオッケーなんですが、他の曲(スタンダード中心)もなかなか良いのです。ローランド・カークの怪演で有名なI Say A Little Prayerなんかもやってます。ジャズ・ギタリストとしてのアール・クルーも魅力的です。

Bob James&EARL KLUGH/COOL(Warner Bros. /1992)

ボブ・ジェームスとアール・クルーの相性って相当いいと思うのです。今年(2003年)はボブ・ジェームスとアール・クルーとでアメリカでツアーをやってたそうで、近々またこの2人でアルバムでも出すのでしょうかねえ?それともクルーがフォープレイに入ったりして…。ってことでこのアルバムなのですが、「もうひとつのフォープレイ」という位置付けのような、そんな内容なのです。クルーのアコースティック・ギターを最高に生かしたボブ・ジェームスの手腕は素晴らしいのひとこと。内容的にはボブ・ジェームスの作品ですね。

EARL KLUGH/Move (Warner Bros. /1993)

ここでもメロディ・メイカーとしてのクルーが冴えています。特に5曲目。あの「ハートストリング」前後の頃のようなメロディ展開に嬉しくなります。以前のカントリーっぽさがやや復活してるのも嬉しいです。爽やかさ満点のアルバム。

EARL KLUGH/Sounds And Visions (Warner Bros. /1993)

トリオ第2弾はバックにストリングスが付いてます。イージーリスニングでも一流のアール・クルーなのでした。


EARL KLUGH/Sudden Burst Of Energy (Warner Bros. /1996)

90年代のアール・クルーを代表する一枚。1曲目の題名が「Happy Song」。ついに開き直ったか?カントリー風味がまたまた戻ってきました。いや、これはカントリーというよりスムースジャズっぽい音ですね。往年の気持ちのいいアール・クルーが帰ってきました。3曲目はウルトラ級の名曲。こういうのが出て来るからアール・クルーは好きなのです。

EARL KLUGH/The Journey (Warner Bros. /1997)

気持ちよさげなジャケットと同じような気持ちいい内容のアルバム。この明るさこそアール・クルーなのですよ。このメロディとこのギターの音…。それだけで十分!内ジャケではかつてメインで使ってたガットギター”ベラスケス”を持ってますが、このアルバムでのギターの音を聴くかぎりピックアップ付きのギターを使用している様です。前作とともに90年代の代表作です。

EARL KLUGH/Peculiar Situation (Windham Hill /1999)

ワーナーからウィンダムヒルへの移籍第一弾は打ち込みも多用したアルバム。すっかりスムースジャズになってしまいましたね。アール・クルーの熱烈なファンを自認する僕としてはいささか不満です。このアルバムの曲もやはりメロディ・センスが凄くいいものばかりなので余計に不満です。アール・クルーに打ち込みは似合わないと思うんですが、どうでしょう?でもまあ、これだけ気持ちいいメロディを聞かせてくれるんだからそれだけでもイイっちゃイイんですがね。

EARL KLUGH / Naked Guitar (KOCH RECORDS / 2005)

ソロアルバムとしては1999年の「Peculiar Situation」以来6年ぶり。ギター・ソロのアルバムとしては1989年「Solo Guitar」以来2枚目となります。本作はとにかく音質が素晴らしい。名器ベラスケスの鳴りが非常に美しいアルバムです。技の冴えは相変わらずで、全体的に落ち着いた表情。つぎはスタンダードではなく自分の曲のギター・ソロを出して欲しいところです。クルーの定番「DOC」とか「DREAM COME TRUE」とかをソロギターで聴きたいなあ…。 �


EARL KLUGH / The Spice Of life (KOCH RECORDS / 2008) 

待ちに待ったアール・クルーのフュージョン作品。ベラスケス一本でスタンダードを弾いた「NAKED GUITAR」以来3年ぶりの新作だけど、フュージョンアルバムとしては1999年の「PECULIAR SITUATION」以来なんと9年ぶり!本当に嬉しい!!90年代後半に「Sudden Burst Of Energy」(96年)「The Journey」(97年)という名作を残し第2の黄金時代到来か、と思ってたらその後何故か地味になってしまって少し心配だったのだ。しかしながら本作を聴いてひと安心。あのアール・クルーが戻ってきた。ひさしぶりということもあってか、いろんな要素を詰め込んだ形にはなってるけど、でもいいのだ。ひたすら心地よいアール・クルーのフュージョンが復活したというだけで満足。カラリとしたギターも健在。リズムが打ち込みではなくヒューマン・ビートなのも嬉しい。やっぱりアール・クルーはこうでなくちゃ。そして、早くも次の作品への期待も高まるってもんです。 

EARL KLUGH / HAND PICKED (TELARC/2013)

Earl Klugh (g)

ギターソロのアルバム。3曲だけ、ビル・フリゼール、ジェイク・シマブクロ、ヴィンス・ギルがそれぞれ参加してデュエットになってます。これまでのギターソロのアルバムたちに比べると随分リラックスしているというか、どれもこれも非常にゆったりとしていて、ほとんどリラクゼーション・ミュージックみたいな感じ。ビンテージ・ギターの音色をじっくりと味わうにはちょうどいいかも。


(文:信田照幸)


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