GUITAR(その1)


CHARLIE BYRD,BARNEY KESSEL,HERB ELLIS /Great Guitars(1974/concord)

チャーリー・バード(g)バーニー・ケッセル(g)ハーブ・エリス(g)ジョー・バード(b)ジョニー・レイス(ds)1974年録音
ハーブ・エリスとジョーパスとのデュオによって始まったコンコード・レーベル。オーナー兼プロデューサーのカール・E・ジェファーソンの趣味でその初期のカタログはギターものばかりなのだが、その人選が実に素晴らしい。ジョージ・バーンズをはじめジョージ・ヴァン・エプス、ジョニー・スミスなど埋もれかけていたジャズギタリスト達を引っぱり出してきたというだけでも評価してもいいのでは。このアルバムの主人公チャーリー・バードもジェファーソンにふたたび発掘されたうちのひとりといえるでしょう。バードの場合60年代にゲッツとのボッサアルバム(ヴァーヴ)で大ヒットを飛ばしてましたが、あんなものがチャーリー・バードの実力なんかじゃない。そもそもガットギターだからボッサ、という短絡的な発想でバードにボサノヴァ・アルバムを大量に作らせるレコード会社なんて信用しちゃイカンのです。また、リバーサイドからは純粋ジャズ・アルバムを多数出しておりましたが、あまりにも地味でした。で、コンコード。ジェファーソンはこのチャーリー・バードがアドリブセンス抜群であるジャズギタリストであることを見ぬいていた。この時代にハーブ・エリスとケッセルとの共演でジャズアルバムを録音したことはデカかった(そもそもはバードがこの2人との共演を望んだそうです)。このアルバムはその3人の最初のライヴをアルバム化したもので、音楽的なリーダーはバード。ジャズ界では圧倒的な評価を得ていたエリスとケッセルですが、ガットギターの独特な音色でフルスイングするチャーリー・バードの前ではすっかり脇役。バードはここからが真のジャズマンとしてのキャリアだ、と言ったら言い過ぎか?


CHARLIE BYRD,BARNEY KESSEL,HERB ELLIS /Great Guitars � (1976/concord)

チャーリー・バード(g)バーニー・ケッセル(g)ハーブ・エリス(g)ジョー・バード(b)ウエイン・フィリップス(ds)1976年録音

グレイトギターズの2枚目のアルバムで、ライブ録音+ライブ録音。冒頭の「LOVER」からして楽しい雰囲気に溢れてます。彼等の演奏はブルージーなものではなく、どことなく「カントリー風」プラス「ブラジル風」なのが特徴。もちろん「ブラジル風」なのはチャーリー・バードがいるからで、ナイロン弦のガットギターっていうのはやっぱ目立ちます。このアルバムでもチャーリー・バードが全開。いや、エリスもケッセルもいいんだけど、チャーリー・バードの音はズバ抜けて気持ちイイのです。

Great Guitars(CHARLIE BYRD,BARNEY KESSEL,HERB ELLIS )/Straight Tracks(1978/concord)

チャーリー・バード(g)バーニー・ケッセル(g)ハーブ・エリス(g)ジョー・バード(b)ウエイン・フィリップス(ds)1978年録音

グレイトギターズの3枚目で、スタジオ録音作品。ここにきてブラジル色がさらに濃くなってきた、って感じです。スタジオ録音なのでバードのナイロン弦ガットギターの音もなかなかいい感じに出ています。ギター3本で何故このような独特なハーモニーが出せるのかというと、ひとりナイロン弦ガットギターが入っているからで、エリスとバレルだけではこういった不思議な音を出すのは無理。やはりチャーリー・バードは偉大です。ここではバードのアドリブはエリス&ケッセルらのヒルビリー調とはかなり違っていて、どことなくブラジル&ラテン風味。メランコリックな味わいもあります。

Great Guitars(CHARLIE BYRD,BARNEY KESSEL,HERB ELLIS )/Great Guitars At Winery (1980/concord)

チャーリー・バード(g)バーニー・ケッセル(g)ハーブ・エリス(g)ジョー・バード(b)ジミー・スミス(ds)1980年録音

グレイトギターズ4枚目にして最高傑作。ライブ盤です。まとまりがよいです、それまでの3枚に比べて。あといつものことながら、バードのギターが冴え渡ってます。聴いててなんともここちよい。ジャケのように気持ちよく、ほのぼのとしたアルバムです。かなり頻繁に聴くアルバム。とにかく大好き。

Great Guitars(CHARLIE BYRD,BARNEY KESSEL,HERB ELLIS )/At Charlie's Georgetown (1983/concord)

ャーリー・バード(g)バーニー・ケッセル(g)ハーブ・エリス(g)ジョー・バード(b)チャック・レッド(ds)1983年録音
グレイト・ギターズとしてのアルバムは一応これがラスト。このあと、「グレイトギターズ・リターンズ」というアルバムがあって、ラリー・コリエルとマンデル・ロウがゲストの作品がありますが、それはあくまでも余興。内容のテンションからいってグレイトギターズのシリーズは実質上これが最後といっていいでしょう。冒頭の「Where Or When」からもう「あの」世界です。ニューヨークあたりのバリバリのモダンジャズとは全く違ったほのぼのとした世界。手クセの強いハーブ・エリス、カントリー的なノリもあるバーニー・ケッセル、そしてブラジリアン・テイストに溢れたチャーリー・バード。この3人かかもし出すノホホンとしたジャズは唯一無比。この音はクセになります。

CHARLIE BYRD / BLUEBYRD (1978/concord)

チャーリー・バード(g)ジョー・バード(b)ウェイン・フィリップス(ds)1978年8月録音

アンドレス・セゴビアに師事して学んだチャーリー・バードのテクはそこらへんのギタリストとは全く比べ物にならないくらい正確な音を出しますが、そんなことはどーでもいい。ときにボサノバ・ギタリストなんて言われることもありますが、このアルバム聴けばバリバリのジャズギタリストであることがわかります。冒頭のエリントンの曲では全開。バラード曲では味のあるアドリブ。ボサでは流麗なブラジリアン・ジャズ。どこをとってもワン・アンド・オンリーなチャーリー・バード先生なのでした。ちなみにこのアルバムはチャーリー・バードのアルバムの中でも最も「モダンジャズ」なアルバムです。

CHARLIE BYRD / Isn't It Romantic? (1984/concord)

チャーリー・バード(g)ジョー・バード(b)チャック・レッド(ds)

ジャケがいきなりムード音楽っぽいですが、実際演奏のほうもムード音楽を意識したかのようなエレガント(笑)な演奏ではじまります。しかしそこはさすがチャーリー・バード。しっかりと「ジャズ」です。いや、イージー・リスニング度も結構高いかな?アルバム全体で統一感があって、かなりの良盤。

CHARLIE BYRD / AU COURANT (1998/concord)

チャーリー・バード(g)チャック・レッド(vib)ジョー・バード(b)

アップテンポの曲ではまるで現代版レッド・ノーヴォ・トリオとでもいうような演奏。やはりヴァイブが効いてます。コンコードでのチャーリー・バードはいろんな編成でアルバムを作ってくれてまして、そのどれもが高水準なのですが、特にこのアルバムなんかは最高水準といってもいいでしょう。

CHARLIE BYRD / Solo Flight (1965/riverside)

チャーリー・バード(g)

ガット・ギター1本によるソロ。70年代になるとジョー・パスがギター・ソロで名をとどろかせますが、60年代のこのチャーリー・バードも凄い。ジョー・パスのような派手さとは正反対の演奏。しっとりと聞かせてくれます。リバーサイド時代のチャーリー・バードって低音をかなり強調してるからかすごく重厚な印象があります。でもこのアルバム、聴くたびにほっとする。なんというか、せかせかしてる日常にポコっと穴を開けてくれるような…そんな感じ。

CHARLIE BYRD /The Washingtn Guitar Quintet(1992/concord)

チャーリー・バード(g)ジョン・マーロウ(g)ジェフリー・メイエリックス(g)ミルナ・シルセン(g)ラリー・シニッツラー(g)他
ギター5人だけによるクインテット(ラスト三曲だけここにハワード・アルデン(g)とカルロス・バルボサ・リマ(g)、ジョー・バード(b)、チャック・レッド(ds)が加わります)。ガット・ギターだけによるアンサンブルがこんなにも美しいとは…。まあ、分かってはいるんだけど、聞くたびに圧倒されます。コンコード・レーベルはギター好きのオーナー、カール・E・ジェファーソンが聞きたい音楽だけを作ってるような所があって、これなんかはまさにそんな1枚でしょう。ブラジル色とマヌーシュ(フランス)色が濃厚。

CHARLIE BYRD / Crystal Silence (1973/Fantasy)
冒頭チック・コリアの「500 Miles High」で始まって意表をつかれます。しかもこの曲、珍しくエレキを使ってる…(ちなみに他にも1曲エレキを使用してるテイクあり)。ファンタジーはチャーリー・バードをフュージョンとして売りに出そうとしたのか、試行錯誤的な内容になってます。まとまりがない…。でもガットギターを持ったバードはいつものごとく悠然と演奏してます。CD化はまず無いだろうな…。

CHARLIE BYRD /Hit Tip (clumbia)
ある意味最初のピークだったコロンビア時代のアルバム。このLPには詳しい録音データが書いて無いので録音日はわかりませんが、60年代後半のものです。1曲目がいきなり「恋は水色」でズッコケますが、その後は映画曲のカバーなどでいい感じです。B面には「UP UP AND AWAY」や「SUNNY」なんかもやってましてこの時代のフュージョンあるいはイージーリスニング・ジャズの王道を行ってます。チャーリー・バードがもしCTIに行っていれば…と、想像してしまうアルバム。ちなみにこのアルバムはテオ・マセロのプロデュースです。

CHARLIE BYRD /BYRD & BRASS (1986/concord)

チャーリー・バード(g)ジョー・バード(b)チャック・レッド(ds)THE ANNAPOLIS BRASS QUINTET(tp,french horn,tb,tuba,etc)
いつものトリオにブラスのクインテットを加えた作品。このホーン群がギル・エバンスっぽくてなかなか良い。ベーストロンボーンやチューバ等の活躍でそのように聞こえるだけなのかもしれませんが、雰囲気出てます。チャーリー・バードに関しては文句ナシの出来。もう少しソロ・パートが多くてもよかったかなって気もしますが、これはこれでアリでしょう。あと、このアルバム、どこかクリスマスっぽいきらびやかさがあって気持ちいい。

LAURINDO ALMEIDA & CHARLIE BYRD / Tango (1985/concord)

ローリンド・アルメイダ(g)チャーリー・バード(g)ジョー・バード(b)チャック・レッド(ds)

チャーリー・バードのトリオにアルメイダが入った編成。なんとタンゴ集。ここに収録されてる"TANGUERO"って曲が本当に好きで、普段なにげない瞬間にふと頭によぎったりします。とにかく凄くいい曲で、演奏自体も凄くイイ。他の曲も結構面白くて、ガットギターでタンゴってだけでも面白い。タンゴってば、よくあるパターンがピアソラのリベルタンゴとかを勇ましくカバーってのがありますが、このアルバムはピアソラなんかやってないんで安心。チャーリー・バードはこのコンコード・レーベルでブラジル音楽、マヌーシュ、イージー、モダンジャズ等等いろんな種類のアルバムを出してますがそのどれもが魅力的。

LAURINDO ALMEIDA-CHARLIE BYRD / Brazilian Soul (1980/concord)

ローリンド・アルメイダ(g)チャーリー・バード(g)ミルト・ホランド(per)ボブ・マグヌソン(b)
アルメイダとバードの2人は組んで何枚もアルバムを出してまして、そのどれも素晴らしい。ここではブラジリアンに徹していますが、やっぱジャズになってるところがアルメイダ&バード。

CHARLIE BYRD / Du Hot Club De Concord (1995/concord)

チャーリー・バード(g)フランク・ヴィノラ(rhythm guitar)ジョニー・フリゴ(violin)マイケル・ムーア(ds)HENDRIK MEURKENS(harmonica)

チャーリー・バードはコンコードに移ってからモダンジャズの他にボサノヴァ、タンゴ、ショーロ、クラシック、イージー・リスニング、等等いろんなジャンルのアルバムを出してくれてまして、これはマヌーシュ・スウィング。 とはいえマヌーシュ特有のせき立てられるかのような怒濤のリズムっていうのはなく、あくまでマヌーシュの香りだけを使ったチャーリー・バード音楽といった趣き。ジャンゴのDu Hot Club De FranceをもじったDu Hot Club De Concord。ほのぼのとしたゆる~いノリばかり。アコーディオンの代わりにハーモニカが入ってまして、これがなかなか効いてます。フランスだと思って聞いてたらいつのまにやらブラジルへ…って感じ。

ALMEIDA,BARBOSA-LIMA,BYRD / Music Of The Brazilizn Masters (1989/concord)

ローリンド・アルメイダ(g)カルロス・バルボサ・リマ(g)チャーリー・バード(g)LARRY GREBADIER(b)MICHAEL SHAPIRO(ds)
ブラジリアン・マスター達の至芸を堪能出来るアルバム。グレイト・ギターズがモダンジャズの3人組だったのに対しこちらはブラジルの名手3人組。もちろん全員ガットギター。3本のガットギターのハーモニーから生まれる響きは限り無く美しく、まさに極楽気分。このアルバムはとにかく大好きで、僕の長年の愛聴盤。

Great Guitars / The Return Of The Great Guitars (1996/concord)

チャーリー・バード(g)ハーブ・エリス(g)マンデル・ロウ(g)ラリー・コリエル(g)ジョン・ゴルドスビー(b)ティム・ホーナー(ds)
バーニー・ケッセルが病気でリタイアしたことにより自然消滅したかにみえたグレイトギターズはなんとその後釜にマンデル・ロウを据えて新生グレイトギターズとして復活。ベースとドラムも新しくして心機一転で出したアルバム。特別ゲストでラリー・コリエルが参加しています。コリエルはエミリー・レムラーとのデュオ作品をコンコードから出しています。ということでこの新生グレイトギターズなんですが、やはりそれまでのグレイトギターズとは感触が全然違います。ケッセルの穴はこれほどまでに大きかったのか…というのが最初の感想。しかし、よくよくプロデューサーを見てみると、カール・E・ジェファーソンではないのですね、これ。ジェファーソン亡きあとはジョン・バークがコンコードのプロデユースのほとんどをやってるわけで…それで納得です。つまり、これまでのグレイト・ギターズはバード、エリス、ケッセルにプラスしてカール・E・ジェファーソンが居たということで、ジェファーソンが居てはじめてグレイトギターズも成り立ってたというべきかもしれません。しかしまあ、これをグレイトギターズとして聴いてるからいけないわけで、普通のコンコードのギターものを思えばこれはこれで素晴らしい内容。やはりチャーリー・バードの存在の大きさが光ります。こういうジャズギター複数の構成という場ではガットギターは目立ちます。ハーブ・エリスもマンデル・ロウもそれぞれの持ち味を出していまして、聴き所満載です。

HERB ELLIS & CHARLIE BYRD / Guitar/Guitar (1963-64/CBS)

ハーブ・エリス(g)チャーリー・バード(g)キーター・ベッツ(b)ハディ・ディペンシュミット(ds)

まずA面1曲目のハーブ・エリスのギターの音でコケる。なんだこの音は?ハーブ・エリスでこの音ってのは珍しいのではないのか?サイケっぽい…。とはいえこのハーブ・エリスの音、B面になるとやっとまともになります。てことはわざわざこの音色にしたってことでしょう。一見堅実で保守的に見えるエリスですが、この時期は実験精神旺盛だったんでしょうか?それとも当時のポップスを意識したのか?というわけで、これはチャーリー・バードとハーブ・エリスの双頭アルバム。70年代コンコードではこの2ギター編成ものはたくさん出ますが、チャーリー・バードとハーブ・エリスって組み合わせはありませんでした(ケッセルを入れた3ギターならありましたが)。コンコードではハーブ・エリスがバーニー・ケッセルやカル・コリンズ、リーモ・パルミエル、そしてジョー・パスなどと組んで2ギターの数々の名作を発表しました。このアルバムでは相手がチャーリー・バードということで全体的にボッサな雰囲気。チャーリー・バードのガットギターの素晴らしさが光ります。B-1のジャズン・サンバは70年代になってもチャーリー・バードは頻繁に演奏しています。

CHARLIE BYRD /Byrd's Word ! (riverside/1958)

チャーリー・バード(g)ボビー・フェルダー(tb)バック・ヒルts)ケネス・パスマニック(basoon)T.カーソン(p)ケーター・ベッツ(b)バーテル・ノックス(ds)他
メンバーに見慣れぬ名前が並びますが、スタジオミュージシャン達でしょうか。コンセプトはイージーで聴きやすいジャズってことだったかもしれません。しかし1958年という時代がそれを許さなかった…。ジャズの歴史上1958年前後はどんなアルバムでも名盤になるという魔法がかけられているのです(笑)。本作もまた例外ではありません(誉めすぎ)。リバーサイド時代のチャーリー・バードはどこか暗いイメージがありますが、これはスカッと抜けるような正統派都会のジャズ(笑)。N.Y.でもなく西海岸でもなく、ワシントンD.C.でのレコーディング。


(文:信田照幸)


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