Guitar(その2)


KENNY BURRELL / Moon And Sand (1979/concord)

ケニー・バレル(g)ロイ・マッカーディ(ds)ジョン・ハード(b)ケネス・ナッシュ(per)1979年録音
時代だからなのかコンコードレーベルだからなのかは分りませんが、ここではいつもの緊迫感がなくゆったりとしたリラックスプレイです。しかも1、2、3、5はガットギターを使っています。バレルがガットギタ-使うことは別に珍しくありませんが、これほど間を多くとったブラジル風(?)プレイはバレルにしては結構珍しい。この時代のコンコード・レーベルはハーブ・エリス、チャーリー・バード、バーニー・ケッセル、カル・コリンズといった白人プレーヤーが多く在籍していてカントリー風味やブラジル風味の素晴らしいアルバムを出したりしていますが、バレルまでがなにかその影響を受けたかのような感じです。ところでこのアルバム、パーカッションのケネス・ナッシュが素晴らしい。バレルのガットギターにピッタリとはまって雰囲気を盛り上げています。このパーカッションが入るせいか、バレルのギターがなにげにブラジルっぽく聴こえてきて快適です。全曲ガットギターでやってくれればなあ…。とはいえ70年代バレルの名作です。

ROY CLARK & JOE PASS / Play Hank Williams(vanguard/1994)

ロイ・クラーク(g)ジョー・パス(g)ジョン・ピサノ(rhythm-g)ジム・ハガード(b)コリン・ベイリー(ds)1994年録音
ジョー・パスの遺作がこれ。なんと、カントリーを題材にしたジャズ・アルバム。カントリー風ジャズとでもいうべきか…。70年代のハーブ・エリスとのデュオ作品群と同じようにこれもギター&ギター(リズムセクションは入るが)のデュオ作品。ロイ・クラークがまず堅実にテーマ部を弾き、その後にジョー・パスが例のごとくジャジーに崩して弾く、というパターン。こうやってカントリー界のスター・ギタリストと比べるとジョー・パスのあまりに強烈な個性が引き立つようです。ジョー・パス特有の多彩なフレーズの洪水がよく目立ちます。にしてもこのあまりにも素晴らしいアルバムを聴くたびに、ジョー・パスの早すぎる死が惜しい…。


RON ESCHTE / The Sunset Hour (1998/Holt Recordings)

ロン・エシュテ(g)トッド・ジョンソン(b)ティム・マクマホン(ds)1998年録音
コンコードのハウスギタリストとして活躍してたロン・エシュテのアルバム。彼はずっとジーン・ハリスのカルテットの一員として活動し、地味ながら素晴らしい演奏をコンコードのジーン・ハリスのアルバムで披露してました(89年の「リッスン・ヒア」は最高)。しかしこのアルバムはコンコードではなく、Holt Rcordingsというレーベルからで、トリオ編成。曲はなんとすべてプロデューサー(兼オーナー?)のデヴィッド・ホルトのオリジナル曲という力の入りよう。余程このロン・エシュテのプレイが気に入ってたんでしょう。スタイルとしてはケッセルに近い。カラっとしてて、西海岸特有の明るさと抜けのよさがあります。また、ブラジリアンテイストもちらほら。この手のジャズギターCDってたいがいジャズのスタンダードばかり並べてしまうってパターンが多いのですが、そんな中このアルバムの存在は貴重。だって全部初めて聴く曲。そういうのってフュージョンならまだ分るがモダンジャズです。貴重です。そして、イイです。

JOHNNY SMITH / Moonlight In Vermont (1952-53/Roolette)

ジョニー・スミス(g)スタン・ゲッツ(ts)サンフォード・ゴールド(p)エディ・サフランスキ(b)ドン・ラモンド(ds)他
ぼよよ~ん、って印象のこのアルバム。春にピッタリ。ウエストコースト・ジャズの典型的なパターンといえば、ギターではやはりバーニー・ケッセルでしょうが、このジョニー・スミスの場合はスタジオ・ミュージシャンとしてのお仕事がメインという、これまた典型的な西海岸アーチストなので、まあ聴くほうもそんなもんだろーなー、くらいに思って聴いてたほうが楽しめるかと。ちなみにこういったなごみ系のアーチストは僕は大好きです。また、このアルバムはゲッツやズート・シムズなんかも参加してるので、そっちのほうでも楽しめます。

KENNY BURRELL / Midnight Blue (1963/Blue Note)

ケニー・バレル(g)スタンリー・タレンタイン(ts)メイジャー・ホリーjr(b)ビル・イングリッシュ(ds)レイ・バレット(cconga)
バレルの代表作。文句ナシの名演「チトリンス・コン・カーネ」でいつもやられます。この頃のバレルのギターの音色は本当に大好きで、サヴォイやプレスティッジにもこの頃のバレルの諸作がありますが、どれも最高。あまり出来不出来の激しい人では無いので好きな人にはどれも必携盤。中でもこのアルバムの存在感はズバ抜けています。バレル&タレンタインのコンビはタレンタインのリーダー作でもたくさんあるのでそっちも必聴。バレルの音色はいかにも「モダンジャズ」です。

BILL FRISELL / Blues Dream (2001/nonesuch)

いつもながらのカントリー風味たっぷりのジャズアルバム。「Good Dog , Happy Man」(1999)に管楽器を加えた編成になっています。広大な「アメリカ」の景色が思い浮かぶようなアルバム。アメリカはアメリカでもジャズの本場ニューヨークではなく、ヴェンダースの映画とかに出てくるような、だだっ広いアメリカ。

BILL FRISELL / Good Dog Happy Man (1999/Nonesuch)

カントリー・フレイバーに溢れたアルバム。ジャケもいい感じで、内容はまるでこのジャケットのような感じ。最初は別に何も感じなかったのですが、聴くたびにだんだん良さが分かってきて、今ではすっかり大好きなアルバムになってしまいたした。

KENNY BURRELL / KENNY BURRELL (1957/Prestige)

ケニー・バレル(g)セシル・ペイン(bs)トミー・フラナガン(p)ダグ・ワトキンス(b)エルヴィン・ジョーンズ(ds)

このようなデトロイトから出てきたアーイスト達にょるアルバムは他にもあって、「JAZZMEN DETROIT」(ケニー・クラーク)や「
 DETROIT NEWYORK JUNKTION」(サド・ジョーンズ)などはそのものズバリのアルバムタイトルですが、いずれもバレルが印象的です。50年代のバレルの音は本当にイイです。本作のブルージーさこそバレルの本質。

KENNY BURRELL / At The Fivespotcafe(1959/bluenote)
なんでこんなに音が悪いのだ?ベースの音がほとんど聞こえないではないか!?せっかくバレルが好演してるのに…。でも後半のハナ(p)ブレイキー(ds)ベン・タッカー(b)のカルテット演奏はそれを差し引いてもスリリングで面白いです。ところでこのアルバム、ずっとバレルっぽくないイメージがあったんですが、原因はブレイキーのアフタービート・ドラムにあった。なんてアクが強いんだ、ブレイキーは!

KENNY BURRELL / Introducing KENNY BURRELL (1956/Blue Note)

バレルの初リーダー作。キャンディドのコンガが非常に効いてます。この1曲目の明るさがバレルの揚々たる前途を象徴しているかのようです。それにしてもこのギターのいかにもな音。素晴らしい。

KENNY BURRELL and The JAZZ GUITAR BAND/ PIECES OF BLUE AND BLUES (1988/Blue Note)
ケニー・バレル(g)ロドニー・ジョーンズ(g)ボビー・ブルーム(g)デイブ・ジャクソン(b)ケニー・ワシントン(ds)
チャーリー・バード、ハーブ・エリス、バーニー・ケッセルらのグレイト・ギターズに対抗して作ったわけじゃないと思うけど、こちらも3ギターにベース、ドラムという構成。これが大成功。70年代以降のバレルってばほとんどマンネリで、マンネリならまだしも、どうにもテンションが落ち気味ですが、ここに来てやってくれてます。グレイト・ギターズがブラジルやカントリーを想起させるのに対しこちらは「ブルース」。もともとバレルはブルース・フィーリングたっぷりのギタリストなので当たり前っちゃあ当たり前なんですが、3人のギターでこんな「ど」ブルースやってくれるっていうのはなんとも楽しい!特に1曲目!なんともまったりと気持ちのいいブルース!4曲目ではバレルはバンジョーを弾いています。

KENNY BURRELL and The JAZZ GUITAR BAND/ Generation(1986/bluente)
PIECES OF BLUE AND BLUESと同一メンバーによる演奏。というかこっちのほうが先なんですが…。PIECES ~よりはやや単調ですが、それでもこれは面白いアルバムです。

BARNEY KESSEL /Spontaneous Combustion(1987/contemporary)
バーニー・ケッセル(g)モンティ・アレキサンダー(p)ジョン・クレイトン(b)ジェフ・ハミルトン(ds)
天気が良くて気温もひさびさに暖かくてなんとも気持ちのいい日、この陽気につられてバーニー・ケッセルを聴いた。ケッセルのギターはパリっとしてて実に気持ちがいい。ウェストコースト・ジャズ特有の明るいアドリブラインと軽いギターの音。もうこれだけで気持ちのよさ倍増。レコードラックに埋まってたこのアルバムを取り出してきてよかった…。コンテンポラリー・レーベルは80年代であっても相変わらずカラっとした音づくりです。

HERB ELLIS / Soft Shoe (1974/concord)
ハーブ・エリス(g)レイ・ブラウン(b)ハリー・スウィーツ・エディスン(tp)ジョージ・デューク(el-p, p)ジェイク・ハナ(ds)

コンコード・レーベルのオーナー兼プロデューサー、カール・E・ジェファーソンはハーブ・エリスのようなカントリー・ライクなギタリストがお気に入りだったらしく、カル・コリンズやジョージ・バーンズ、ジョージ・ヴァン・エプス、ハワード・アルデンなどの同じような系列のギタリストのレコードなども沢山作っているけど、ハーブ・エリスのレコードは一体何枚あるんだ?ってくらい沢山作っています。コンコード・レーベルのカタログの最初の10枚のうち6枚がハーブ・エリスってのも考えてみれば凄い。ということで、本作はコンコード・レーベルの第3作目。前の2作がハーブ・エリスとジョー・パスのデュオ&リズムセクションだったのに対し、今回はピアノ・トリオ&ハーブ・エリス、それに加えてハリー・スィーツ・エディスンという布陣。ノリとしてはウエストコースト系。スィーツの開放的なペットがこのアルバムの明るさを象徴しています。ハーブ・エリスのプレイはいつでもどこでも一緒で、ここでも例のごとくネバリのあるカラっとした演奏。晴れた日に聴きたいアルバムです。

HERB ELLIS / After You've Gone (1974/concord)
ハーブ・エリス(g)レイ・ブラウン(b)ハリー・スウィーツ・エディスン(tp)ジョージ・デューク(el-p, p)ジェイク・ハナ(ds)プラス・ジョンソン(ts)
「Soft Shoe」のメンバーにプラス・ジョンソンをプラスしてライブ録音されたのが本作。コンコードのカタログの6番目の作品です。前作よりハーブ・エリスのギターが大きくフィーチャーされています。ほのぼのとした雰囲気のアルバム。スィーツとプラス・ジョンソンの明るいホーンセクションが楽しげです。

HERB ELLIS,JOE PASS / JAZZ CONCORD (1972/concord)
ハーブ・エリス(g)ジョー・パス(g)レイ・ブラウン(b)ジェイク・ハナ(ds)
このアルバムからコンコードレーベルが始まったわけで、記念すべき第一作目。ジャズギター・アルバムの中でも名盤とされています。僕はコンコードの中では「グレイトギターズ」のシリーズが一番好きなのでこのアルバムを聴く機会はグレイトギターズほどは無いのですが、それでもこのアルバムのシブいノリは結構好きです。コンコードはこの後この2ギター&ベース、ドラムという構成でいろんなアーチストのアルバムを出しています。

CAL COLLINS,HERB ELLIS / Interplay (1981/concord)
カル・コリンズ(g)ハーブ・エリス(g)レイ・ブラウン(b)ジェイク・ハナ(ds)
コンコードお得意の2ギター&ベース、ドラム。エリスやケッセルのようなプレイをするカル・コリンズを迎えたハーブ・エリス盤ととらえてもいいでしょう。ライブなので非常に和んでますが、所々ワザの見せ所があったりなんかして結構いいアルバムです。

BARNEY KESSEL,HERB ELLIS / Poor Butterfly (1977/concord)
バーニー・ケッセル(g)ハーブ・エリス(g)モンティ・バドウィグ(b)ジェイク・ハナ(ds)
ケッセル&エリスのコンビネーションはパス&エリス以上で、気持ちいい。70年代のコンコードのギターものはどれもハズレがありません。っていうか全部ワンパターンっていう言い方もある…。でもこういうのが好きな人にとっては堪らない。

BARNEY KESSEL / Swinging Easy! (1968/BlackLion)
バーニー・ケッセル(g)ケニー・ナッパー(b)ジョン・マーシャル(ds)
ケッセルのギターはこういったさりげなさが良いです。3人編成というシンプルな音作りの中にウエストコースト仕込みの技がさりげなく発揮されている感じ。聴いていて爽快です。

HOWARD ALDEN ,GEROGE VAN EPS / 13 Strings (1991/concord)
ハワード・アルデン(g)ジョージ・ヴァン・エプス(g)ジェイク・ハナ(ds)デイブ・ストーン(b)
コンコードの飾らないギタリスト、ハワード・アルデンが超ベテランの7弦ジョージ・ヴァン・エプスを迎えて出来たしぶ~いアルバム。ジョージ・ヴァン・エプスの不思議なコード感覚が聞き所です。アルデンとの相性もかなりいい。にしてもこのアルバム、いかにもカール・E・ジェファーソンの趣味で作ったって感じがする(笑)。

HOWARD ALDEN ,GEROGE VAN EPS / Seven And Seven (1992/concord)
ハワード・アルデン(g)ジョージ・ヴァン・エプス(g)
こちらは2ギターでのデュオ。コンコード・レーベルのカタログの2番のハーブ・エリス&ジョーパス「セブン・カム・イレブン」をふまえてSeven And Sevenなんでしょう。こちらもジョージ・ヴァン・エプスの数少ない録音ってこともあって貴重。ギターマニア必聴の珍盤。

HOWARD ALDEN,FRANK VIGNOLA,JIMMY BRUNO / Concord Jazz Guiter Collective (1995/concord)
ハワード・アルデン(g)フランク・ヴィニョーラ(g)ジミー・ブルーノ(g)ジム・ハガード(b)コリン・ベイリー(ds)
コンコード70年代~80年代にかけての最高のシリーズ「グレイトギターズ」と同じ編成でコンコードの若手ギタリスト達が挑戦したアルバム。グレイトギターズにも負けていません。ヴィニョーラとブルーノが何曲かでアコギを弾いて、ますます「新」グレイトギターズです。本家のグレイトギターズはチャーリー・バードのガットギターの音がかなり印象的なんですが、こちらはそういった特別な何かっていうものが無いだけ普段の自分達の音で勝負って感じ。がしかし、フランク・ヴィニョーラのアコースティック・ギターの音はなかなかポイント高い。エレクトリックばかりじゃ音がこもってしまうし。こういうアルバムはグレイトギターズの大好きな僕なんぞにとっては本当に嬉しい。

HOWARD ALDEN / Snowy Morning Blues (1990/concord)
ハワード・アルデン(g)リン・シートン(b)デニス・マーシャル(ds)モンティ・アレクサンダー(p)
堅実なプレイ、中庸を行くそのスタイル、そしてウエストコースト系の音色…となんとも地味な印象のあるハワード・アルデンなんですが、リーダー作でも地味…。しかし常に安定したプレイなので気持ちよく安心してギターサウンドに浸れます。このアルバムはモンティ・アレクサンダーがゲスト参加。アルデンとの相性はかなりよい。全体的にカラっとした空気のあるアルバムです。

LAURINDO ALMEIDA / Artistry In Rhythm (1984/concord)
ローリンド・アルメイダ(g)ボブ・マグヌソン(b)ミルト・ホランド(ds)
僕はかつてコンコード・レーベルのギターものがあると見さかい無く買っていたことがあるので、うちには沢山のコンコードのCDとレコがあるのです。このアルバムもそのうちのひとつ。ローリンド・アルメイダってばボサノバ系やイージーリスニング・ジャズのアルバムを沢山だしているのであまり良いイメージが無かったんですが、これ聞いてぶっ飛びました。すっかり愛聴盤になってしまってます。ガットギターの音色の気持ち良さといい、選曲の面白さといい、プレイのさりげなさといい、僕の好みにピッタリ。ジャケットのオウム貝のイラストが意味不明ですが…。

ED BICKERT / I Wish On The Moon (1985/concord)
エド・ビッカート(g)テリー・クラーク(ds)スティーヴ・ウォレス(b)リック・ウィルキンス(ts)
非常に面白いコードワークで知られるエド・ビッカート。ポール・デズモンドとのCTI盤でも好演してました。このアルバムはそのビッカートのリーダー作で、ワンホーンを配したアルバム。テナーなんかいらないからトリオでやって欲しいところなんですが、このスタイルでトリオとなると相当地味になりそうです(でもそこがいいんだけど…)。ビッカートのコードワークは引き降ろすタイプではなく、各音を同時に弾くというやり方で、無駄な音が無く美しい和音感覚を楽しめます。このアルバムがワンホーンであることの理由のひとつにビッカートのギターはバックに回ったときにこそその魅力が最大限に引き出せるっていうのがあるのかもしれません。

Herb Ellis And Remo Palmier / Windflower (1977/concord)
ハーブ・エリス(g)リーモ・パルミエル(g)ジョージ・デュビビエ(b)ロン・トラクスラー(ds)
40年代にパーカーらと共演してたリーモ・パルミエルは70年代に復活しまして、このアルバムではパルミエルの端正でクールなギターが堪能出来ます。ハーブ・エリスは相変わらずのカントリー・タッチで、パルミエルとの対比が面白いです。パルミエルはバッキングに回ったときにまるでオルガンのような音を出し、これがなかなか心地よい。あとコンコードにしては珍しくベースが主張してるな、と思ったらジョージ・デュビビエでした。

Herb Ellis And Red Mitchell/ Doggin' Around(1988/concord)
ハーブ・エリス(g)レッド・ミッチェル(b)
レッド・ミッチェルとのデュオ。ハーブ・エリスはどんな編成であっても同じギターなのでファンにとってはありがたいところです。ベースだけがバックなのでエリスのソロの組み立て方がハッキリと浮き彫りになってます。

Herb Ellis And Joe Pass /Seven Come Eleven(1973/concord)
ハーブ・エリス(g)ジョー・パス(g)レイ・ブラウン(b)ジェイク・ハナ(ds)
言うまでもなくコンコード初期の名盤。今思うとなんでジョー・パスをパブロ・レーベルに取られてしまったのか…。そりゃノーマン・グランツとカール・E・ジェファーソンとじゃ知名度も違うしギャラだって相当違うのでしょうが。コンコードの専属だったら「ヴァーチュオーゾ」も無かったかもしれないけど、きっとこのアルバムのような素晴らしいギターアルバムが沢山出来てたと思うのですが…。いや、パブロに沢山あるジョー・パスのアルバムの数々も好きなのです。ただ、カール・E・ジェファーソンだったらきっとジョー・パスと他のいろんなギタリストとのデュオなんかを企画してくれてたんじゃないかなあ…なんて思ってみたりもします。個人的にチャーリー・バードとのデュオなんていうのが聴きたかった…。

JOE PASS / Summer Nights (1989/Pablo)

ジョー・パス(g)ジョン・ピサノ(g)ジム・ハガート(b)コリン・ベイリー(ds)
6月の晴れた日。まだ夏というには早すぎて、かといって梅雨の天気でもなくて、それでもなんとなく湿っぽい空気。うちの前の公園には緑がたくさん出て来て草なんかもぼうぼうに生えてて、緑の匂いも空気の中に入り込んでちょっと青臭い匂いがして…。そんな日に聴きたいアルバム。ジョー・パスの作品の中ではこれがいちばん好きかも。

JOE PASS / I Remember Charlie Parker (1979/Pablo)
ジョー・パス(g)
ジョー・パスがアコギ1本で作り上げた素晴らしいアルバム。ヴァーチュオーゾのシリーズもいいけれど、このアルバムはいかにもアコギですってところが実に爽快。

GEORGE BARNES/ Plays So Good(1978/concord)
ジョージ・バーンズ(g)ディーン・レイリー(b)ダンカン・ジェイムズ(g)ベニー・バース(ds)
カントリーっぽいギターが持ち味の重鎮ジョージ・バーンズ。ロニー・ジョンソンらのブルースマンやチェット・アトキンスらのカントリー・ミュージシャンなどとも共演してる大御所がコンコード・レーベルへ録音したのはルビー・ブラフとの双頭カルテットでのアルバムが最初ですが、こちらはジョージ・バーンズのギターに焦点を当てた素晴らしいアルバム。シングルノートを中心としたホーンライクなプレイでスタンダードの数々を料理しており、なんとも気持ちの良いアルバムです。「On A Clear Day」とかは本当に気持ちいい!

TINY GRIMES / Callin' The Blues (1958/Prestige)
タイニー・グライムス(g)J.C.ヒギンボサム(tb)エディ・ロックジョウ・デイビス(ts)レイ・ブライアント(p)ウェンデル・マーシャル(b)オジー・ジョンソン(ds)
いきなりジャケットからして名盤の匂いが漂ってます…。実際とんでもない名盤です。タイニー・グライムスのギター音はまるでふとい針金でも弾いてるかのようにゴリゴリいってます。かつてはスカートはいてギター弾いてたり(そういうジャケのアルバムがあります)ブルーノートに録音があったりチャーリー・パーカーと共演したり…と、物凄い猛者なのですが、このアルバムではゆる~いホノボノとしたを演奏してます。それにしてもタイニー・グライムスのようにホーンに負けないギターってそうそうあるもんではありません。

JOE PASS / Virtuoso 2 (1977/Pablo)
ジョー・パス(g)
「ヴァーチュオーゾ」の第2弾。こちらの方は音がややラインで取ったっぽい音。前作よりも音数が少ない分余計にそう感じるのかもしれません。夜にしみじみとジャズを聞きたいときにピッタリのアルバム。チックの曲(2曲目と8曲目)を持ってくるところが意外か。

JOE PASS /Intercontinental(1970/MPS)
ジョー・パス(g)エバーハルド・ウェーバー(b)ケニー・クレア(ds)
ジョー・パスのアルバムの中でも非常に地味なアルバム。ドイツのMPSからなんでジョー・パスが?っていうのもあるけど、ベースがエバーハルド・ウェーバーってところもなんか不思議です。のちのパブロでのジョー・パスが明だとすると、こちらは暗。別に暗いわけではないんだけど、こういう感じ。たまにはこんなジョー・パスもよい。

JOE PASS / Virtuoso (1973/Pablo)
ジョー・パス(g)
「キャッチ・ミー」でデビュー後、どちらかというとずっと主流からはずれた位置にいたジョー・パス…。物凄い気負いと緊張感と気合いが感じられます。あまりに濃密なので聴いてる途中で息が詰まるほど。テイタムのソロなんかを思い浮かべてしまいます。パブロでの独自の路線でつぎつぎとアルバムを発表していき、そのほとんどがハズレなしという驚異の高水準。ライブ録音ではたまにオヤジギャグをかましてくれてますが、それもきっとこの圧倒的プレイがあるからこそ許されてる(?)。ジョー・パスの快進撃が始まったその第一歩、といったアルバム。

JOE PASS / For Django (1964/Pacific Jazz)
イージーリスニングのアルバムを出してた(やらされてた?)頃に出した純正ジャズアルバム。ウェストコーストらしい明るさを感じます。所々同じフレーズを連発していますが特に気になりません。ディスコグラフィーで当時の共演者を見ればわかりますが、ジョー・パスは元々スタジオミュージシャン的扱い、あるいはパシフィック・レーベルのハウスギタリストだったといえます。72年にコンコードのカール・E・ジェファーソンに引っ張られてハーブ・エリスとの共演作2枚でいよいよ本格的にジャズシーンに登場し、翌年ノーマン・グランツに引っ張られてエラとのアルバム「Take Love Easy」、そして待望のソロ「Vatuoso」…。長い下積みの時期に自分の腕に磨きをかけてたジョー・パスを伺い知る事の出来るアルバム。

DJANGO REINHARDT / Swingin' with Django (golden star)
1934年~1938年までのジャンゴの演奏のコンピでCD3枚組。ジャンゴのフォロワーと言われる数々のアーチスト達が出ていますが(クリスチャン・エスクーデ、ビレリ・ラグレーン、ロマーヌ、etc…)、ジャンゴの「音」はやはりジャンゴだけ。3枚をずーっと聴き通してあらためてそう思いました。ブっとい音、哀愁の旋律、そしてマヌーシュ独特のノリ…。すべてがこの人だけのものって感じで、やはり凄い。

DJANGO REINHARDT / DJANGOLOGY (1949/RCA)
かつてこのアルバムの冒頭の「マイナー・スイング」のジャンゴのソロを全部おぼえてしまうほどに聞き込みました。このアルバムはステファン・グラッペリとの再会セッションで、30年代のフランス・ホット・クラブ5重奏の形式そのままでやっています。お馴染みの曲ばかりですが、ジャゴのソロの組み立てが30年代とはやや違っているところに注目です。

Ramane /Acoustic Quartet (2002/Iris Music)
「ロマーヌ/アコースティック・カルテット」
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ロマーヌ(g)ヤヨ・ラインハルト(g)ファント・ラインハルト(g)パスカル・ベルヌ(b)
現代のマヌーシュ・スウィング(ジプシー・ジャズ)ではフェレ兄弟、ビレリ・ラグレーン、ローゼンバーグ・トリオ、チャボロ・シュミットなどとともに最高峰とも言われるロマーヌのなんとも最高のアルバム。なんといってもこのスイング感!爽快です。ジャンゴ・ラインハルトほど緊迫感が無いかわりに、ハッピーな雰囲気を持ち合わせています。超絶テクでアコースティック・ギターをこれほどザクザクと弾いてくれると本当に気持ちいい。マヌーシュ・スウィング特有の「哀愁」はほどほどに、こちらはハッピーに行きましょう~!って感じの音楽。

Ramane /Swing For Ninine (1992/Iris Music)
「ロマーヌ/スウィング・フォー・ニニン」
ロマーヌ(g)ローラン・バジャタ(g)マルセル・カゼス(cl)ミシェル・ゴードーリー(b)クロード・ガルシア(g)ジャン=ミシェル・エケリアン(ds)
ロマーヌのファースト・アルバム。マヌーシュ・スウィングというよりもスウィングジャズ的なアルバム。フロントにクラリネットがいるからでしょうか?ロマーヌのギターは「Acoustic Quartet」(2002年)のときほどの力強さはありませんが、明るいスイング感 が魅力的です。ロマーヌの作る曲はどれも素晴らしい!のひとこと。シャンソンっぽいノリがそこここに見られるのはやはりおフランスゆえ。

Ramane /Ramane & The Frederic manoukian Orchestra (Iris Music /2001)
「ロマーヌ/ロマーヌ&ビッグ・バンド」
ロマーヌ(g)他
バックにビッグバンドを配した作品。何曲かではギターの音がややエレキ的です。バックのビッグバンドはなかなかスウィングしていて気持ちよく、モダンなアレンジなのでマヌーシュ・スウィング的というよりは普通のモダンジャズ風でもあります。

Ramane /Swing Guitare(1993/Iris Music)
ロマーヌ(g)他
ロマーヌのセカンド・アルバム。ギター3人、ヴァイオリン、ベースというフランス・ホット・クラブ5重奏団と同じ構成ですが、内容はかなり違います。

Ramane & Stochelo Rosenberg / elegance (2000/Iris Music)
「ロマーヌ&ストーシェロ・ローゼンバーグ/エレガーンス」
ロマーヌ(g)ストーシェロ・ローゼンバーグ(g)ジル・ネチュレル(b)
ロマーヌ7枚目のアルバムはローゼンバーグ・トリオのリードギタリスト、ストーシェロ・ローゼンバーグとのデュオ作品。デュオといってもウッドベースが入るのでスィング感はかなり凄い。どちらもジャンゴ直系のマヌーシュ・スウィング・ギターでグイグイと弾きまくります。ボーっと聴いてるとどっちがどっちだか分からなくなりますが、ストローシェの方がやわらかい感じでソロを組み立てます。

HERB ELLIS/JOE PASS /Two For The Road (1974/Pablo)
ハーブ・エリス(g)ジョー・パス(g)
この2人によるアルバムはコンコードからすでに2枚ほど出ていましたが、いずれもb,dsつきのものでした。しかしこちらはリズムセクションなしの全くの2人によるデュオ作品。コンコードはハーブ・エリスの本拠地だったので今回はジョー・パスの本拠地パブロ、って感じでしょうか?コンコードに慣れてる耳で聴くと録音の仕方でちょっと聴きづらい部分もあるのですが、なにせエリス&パスなもんで悪いはずありません。特にバッキングに回ったときにエリスのプレイは物凄い。このスイング感は他のプレイヤーでは絶対に出せないでしょう。かつてオスカー・ピーターソン・トリオで強烈なスイングでならしてたエリスのこと、やはりこのバッキングは聞き物です。

BIRELI LAGRENE / Gipsy Project(2001/DREYFUS)
ビレリ・ラグレーンはマヌーシュ・スウィングだけでなくフュージョンやロック等にも手を染めているが、僕はマヌーシュ・スウィングでのビレリがいちばん好き。現代のジャンゴといわれるビレリのギターは単に技術だけではない何かが確実にあるしアップテンポでの迫力は相当なもの。このアルバムはジャンゴ関連の曲ばかりを演奏したマヌーシュ・スウィング。バックのリズムギターの煽り方もかなりのものだけどそれに一歩も引かないビレリは実に見事。ゲスト参加のリシャール・ガリアーノ(アコーディオン)のフレンチなスパイスも効いてます。

BIRELI LAGRENE /Standards(1992/blue note)
ビレリ・ラグレーン(g)アンドレ・チェカレリ(ds)ニールス・ペデルセン(b)
ビレリはアコースティック・ギターとエレキギターとの2つの顔を持っていますが、こちらはエレキ編。エレキになると実に普通のジャズギタリストになるから不思議です。特にこのアルバムは4ビートのスタンダードばかりやってるので余計に普通に感じます。がしかし、落ち着いた4ビートに乗ってゆったりとギターを奏でるビレリもなかなかに魅力的です。

HOWARD ALDEN / My Shning Hour (2002/concord)

ハワード・アルデン(g)
7弦ギターを操るハワード・アルデンのギターソロのアルバム。カール・E・ジェファーソンがいなくなってもコンコードはこういったアルバムを出してくれるから素晴らしい。オーソドックスなスタイルで別にこれといった飛び道具があるわけではないハワード・アルデンなのでソロとなるとかなりキツいかも…と思いきや、これがなかなか面白い。7弦ギターなのでベース音がかなり強調されて少し変わった響きが出てます。ジョー・パスのヴァーチュオーゾ・シリーズなんかと比べてみるとさらに面白いかも。ハワード・アルデンのアルバムにしては珍しく、くつろぎよりもスリルを感じます。

WES MONTGOMERY / WES MONTGOMERY TRIO (1959/Riverside)
ウエス・モンゴメリー(g)メル・ライン(org)ポール・パーカー(ds)
ケニー・バレルのギターを借りて録音したと言われるウエスのデビュー作。メル・ラインのオルガンのチープな音が凄くいい感じなのです。ラウンジっぽい雰囲気があって同時期のジャズギターのアルバムとはちょっと違ってます。そんで、そこがかっこいい。僕は大昔このウエスのオルガントリオの数枚のアルバムが大好きで、『Portrait Of Wes』なんて「これがいちばん好きなアルバムだ」といろんな人に言ってたくらいです。今思えばウエスのギターというよりメルヴィン・ラインのオルガンが好きだったんだなあってことだったんですがね。

JOHN ABERCROMBIE / Novenber (1993/ECM)
ジョン・アバークロンビー(g)マーク・ジョンソン(b)ピーター・アースキン(ds)ジョン・サーマン(bs,b-cl)
典型的なECMサウンド。そしてアバークロンビーのアルバムの中でも特に好きなアルバム。曲によって入ってくるジョン・サーマンが効いてます。アバークロンビーの間延びしたような…時間感覚が変わってるような、なんとも不思議なタイム感覚が最大限生かされてます。ECMのいつもの寒々としたジャケットもこの音楽にはピッタリって感じ。ECMレーベルは不思議なもので、どんなアーチストであっても似たような音作りになります。マンレッド・アイヒャーの手腕が優れてるってことなのかもしれませんが、たまに「ああ、またかよ…」って思うことも…。特にピアノトリオ系が…。

TAL FARLOW / TAL (1956/Verve)
タル・ファーロウ(g)エディ・コスタ(p)ヴィニー・バーク(b)1956年NY録音
バップ系ギタリストの中でもずば抜けてスリリングなタル・ファーロウはかなりのお気に入りです。特にこのアルバムなんかは一体何回聴いたのか…ってくらいに聴きました。今でもよく聴きます。1曲目のIsn't It Romanticだけリラックス・ムードで、2曲目からはバップのスリル満点の演奏がつづきます。50年代といえばケニー・バレルという人気者がいますが、後年の影響力からいえばタル・ファーロウの方が上だったかもしれません。バーニー・ケッセルもジム・ホールも最も尊敬する先輩としてこのタル・ファーロウをあげています。このアルバムはそんなタル・ファーロウの圧倒的なプレイを聴くことができる名盤。あ、あとサイドのエディ・コスタの超個性的なピアノも聞き物となっております。

WES MONTGOMERY /Solitude (1965/BYG)
ウェス・モンゴメリー(g)ハロルド・メイバーン(p)アーサー・ハーバー(b)ジミー・ラヴレイズ(ds)ジョニー・グリフィン(ts…1曲のみ)
ウェスの分かりやすさはソロ時のメロディの組み立ての分かりやすさにあると思います。単音~オクターブ奏法~コードというパターンの中に、ウェスは実になめらかにメロディを紡ぎ出していきます。ウェスのビデオを見るとウェスはギターを弾きながらいつも笑顔。ウェスのプレイはなかりの超絶技巧だと思うのですが(信じられないことに親指1本だけで弾いてる!)、それなのに余裕の笑顔…。その余裕ぶりがちょっと恐いくらいですが、実はこの笑顔こそウェスの音楽にとって大事な要素だったりする。この2枚組のライブアルバムでもいつもと変わらぬウェスの音が詰まっています。得に圧巻はC面のMISTER WALKER。アップテンポでエキサイティングな表情をみせながらも何処か余裕さえ感じるウェスのプレイ。この音のひとつひとつがウェスの笑顔から生まれたものだと思うと、音楽の面白さも倍増(?)。ウェスの音は常に陽性です。

TCHAVOLO SCHMITT / Alors?...Voila ! (2000/iris music)

チャヴォロ・シュミット(g)ロマーヌ(g)フィリップ・ドゥードゥー・キュイユリエ(g)イオニカ・ミニューヌ(acordion)フローラ・ニクレスク(vln)ジル・ナチュレル(contrabass)

伝説のマヌーシュ・ギタリスト、チャヴォロ・シュミットをロマーヌがプロデュースした作品。曲も5曲ほどロマーヌが提供しています。まるでロマーヌのアルバムのように聞こえますが、これはロマーヌのクセのある曲からはじまるせいか。アコーディオンが加わったトラックの粋な雰囲気はいかにもフランスって感じ。雰囲気だけでなくプレイ自体も皆小粋にスマートにきめてます。チャヴォロ・シュミットが弾きやすいようにとロマーヌがいろいろとセッティングしたそうですが、このリラックスした雰囲気作りはなかなかに素晴らしい。いうまでもなくこのアルバム、チャヴォロ・シュミットのパワフルなスイング感が聞き物。あとこれはエンハンスト仕様になってまして、パソコンで3つの動画が見れます。そのうちのひとつ、ロマーヌとチャヴォロ・シュミットが壮絶きわまるデュオを繰り広げておりまして、度胆を抜かれました…。

JEFF LINSKY / Angel's Serenade (1994/concord)

ジェフ・リンスキー(requinto guitar) KENNY STAHL(fl)SEWARD McCAIN(b)MICHAEL SPIRO(per)KARL PERAZZO(per)CLAUDIA VILLELA(vo)

クラシック・ギターよりひとまわり小さいレキント・ギターを使い華麗で奔放なプレイを見せるジェフ・リンスキー。そのとんでもない実力のわりにはアルバム数が少ないのです。このアルバムなんかはボッサ系のウルトラ級名盤だと思うのですが、現在ではかなり入手困難なのではないでしょうか?いくつかのスタンダードを除いてはすべて自作曲。そしてそのどれもが素晴らしい。

ALMIR SATER / Instrumental (1985/RIO RECORDS)

アルミール・サテル(g)他

アコースティック版パット・メセニー、あるいはブラジル版ピーター・ムーン、はたまた民族音楽系ライ・クーダー…といった感じのアルミール・サテルのアルバム。10弦ギターを弾いてます。ムジカ・カイピーラ(田舎の音楽)と呼ばれるブラジルの音楽をルーツに持つギタリストだそうです。この素朴でありながらも広大な自然をイメージさせるギターはなんとも不思議な魅力に満ちています。

JOE PASS / My Song (1993/TELARC)
ジョー・パス(g)ジョン・ピサノ(g)Tom Ranier(p)Jim Hughart(b)コリン・ベイリー(ds) 
ジョー・パスのアルバムにしては珍しい始まり方で1曲目がスタートします。が、ジョー・パスが出てくればやっぱりあの世界。とはいえこのアルバム、ジョー・パスのひとり舞台というよりもグループとしての表現も大事にしてるように感じます。

JOE PASS / Songs For Ellen (1992/pablo)
ジョー・パス(g)

ジョー・パスのアコースティック・ギターのソロによるアルバム。どうやらガット・ギターを使用してるようなのだが、いまいちガットギターっぽく聞こえないのはジョー・パスがピックを使って演奏しているからなのか?まあそんなことはさておいて、このアルバムはリラックス度満点でなんとも心地よい。いつものピックアップ付きのアコギとは違い、ガットギターは細かな響きや息づかいなどもそのまま出てしまうような楽器なので、そういった部分でもジョー・パスの技と心を堪能出来るアルバムです。

BILL FRISELL / The Intercontinentals (2003/nonesuch)

ビル・フリゼール(g)他

一服の清涼剤のようなアルバム。ウードなども加わって民族音楽色がかなり強いものになっています。ヴォーカル曲なんかはどこかのアラブの音楽のようです。でもフリゼールのビロ~ンとしたギターはいつもと同じ。この人はアルバムごとにコンセプトがハッキリしています。だからこそ完成度も高いのか。アラブ系音階が楽しい。

HERB ELLIS and FREDDIE GREEN / Rhythm Wille (1975/concord)

ハーブ・エリス(g)フレディ・グリーン(g)レイ・ブラウン(b)ロス・トンプキンス(p)ジャイク・ハナ(ds)
コンコードのカタログの第10番目の作品がこれ。コンコード第1作から10作まで全部ギター関係のアルバムなのですが(しかもそのうちの6作はハーブ・エリスがらみ)、どれも名盤の誉れ高いものばかり。もちろんこのアルバムも名盤中の名盤。ジャケットはコンコードの中でも間違い無くナンバーワン。なんとも素晴らしいジャケット・センス。さて、カール・E・ジェファーソンはハーブ・エリスがお気に入りであることは分かってるのですが、実はカウント・ベイシー楽団もお気に入りだそうで、だからこそフレディ・グリーンを呼んできたのでしょう。言うまでもなくモダン・ジャズ史上最も偉大なギタリストのうちのひとりです。ベイシー楽団の要でもあり、生涯リズムギターしか弾かなかった頑固者。この「ミスター・リズム」フレディ・グリーンにハーブ・エリスを組み合わせるとは…、なんて素晴らしいアイデア。エリスのクセのあるギターのバックではあの「音」が気持ちよく鳴ってます。まさに至福の音空間。

JOE PASS / Blues For Fred (1988/pablo)

ジョー・パス(g)

ジョー・パスがフレッド・アステアに関連した曲ばかりを演奏したギター・ソロのアルバム。上手いだけの人っていうのはそれこそゴマンといるわけで、そんな人にはあまり興味がないのです。しかしジョー・パスは上手いだけではない何かがある。人を引き付ける何かがあるわけで、だからこそギター1本でアルバムを沢山作ってもぜんぜん飽きない。このギター・ソロのアルバムもジョー・パスのセンスのいいギターの歌わせ方でじっくりと聞かせてくれます。

TAL FARLOW / The Swinging Guitar Of TAL FARLOW (1956/verve)

タル・ファーロウ(g)エディ・コスタ(p)ヴィニー・バーク(b)

もうこの音色だけで満足!って言いたくなるほど「50年代のあの感じ」。何故かフィニアス・ニューボーンJrの「ヒア・イズ・フィニアス」やテディ・ウィルソン「フォー・クワイエット・ラヴァーズ」やMJQ「コンコルド」のジャケットが頭に浮かんでくる…。僕の中では「あの感じ」ってのはそれらのジャケ(内容は関係ない)のイメージになってるようです。
というわけでこのアルバム、太い音でバリバリとソロを取るタル・ファーロウといい、例の独特のうねりを見せるエディ・コスタといい4ビートのお手本のようなヴィニー・バークといい、みんなが絶好調。滑らかなバップ・フレーズの数々、ギターの音色、そして全体から醸し出されるあの雰囲気…これぞモダンジャズ!

TAL FARLOW / Fuerst Set (1956/xanadu)
タル・ファーロウ(g)エディ・コスタ(p)ヴィニー・バーク(b)/ (3のみ)ジーン・ウィリアムス(vo)1956.12.録音
71丁目のボブ・ファースト氏のアパートにて録音されたプライベート録音。当時ボブ・ファーストのアパートはかつてのミントンズのようにミュージシャンのたまり場のような所だったそうです。タル・ファーロウは56年に「タル」(3月)と「スウィンギン・ギター・オブ・タル・ファーロウ」(6月)という生涯の代表作を残していますが、このアルバムはこれらと同じ年に録音された貴重な音源です。前記2作に比べるとこちらはかなりリラックスした演奏で、しかも一曲一曲がかなり長く、タルの至芸を堪能出来ます。

KENNY BURRELL /Blue Muse(2003/concord)

ケニー・バレル(g,vo)トム・ラニア(p,key)ジェラルド・ウィギンス(p)ハーマン・ライリー(sax)ロバート・ミランダ(b)シャーマン・ファーガソン(ds)
バレル通算96枚目のアルバム。いや素晴らしい!ギター・プレイの素晴らしさはいつものことながら、なんと前作にひきつづきバレルが4曲も歌ってます。これがなんとも味があって、しかも�Cなんかはバックに薄くストリングスが入ってて極上のメロウなラウンジ音楽(この曲だけですが)。ベンソンもビックリな曲です。�Dではお得意のガットギターを弾いて歌ってます。�Iのラウンド・ミッドナイトでは1955年のマイルス・デイビスのヴァージョンと同じギルのアレンジ・ヴァージョンを使用。バレルのvoのあとに例のジャッジャッジャーッジャッ、ジャッジャ~~ってやつが入ります。かなり面白い。ブラジリアン・フュージョン色の強い�Bはかなりの極楽音楽。この路線だけで一枚作って欲しいほど。バレルのアルバムにしては珍しく随所にいろんな趣向をこらしてありまして、ぜんぜん飽きません。とにかく近年のジャズ・ギター・アルバムでこれほどコーフンしたのも珍しい。

BARNEY KESSEL / Some Like It Hot(1959/contemporary)
バーニー・ケッセル(g)アート・ペッパー(as)ジョー・ゴードン(tp)ジミー・ロウルズ(p)モンティ・バドウィッグ(b)シェリー・マン(ds)ジャック・マーシャル(g)
「イージー・ライク」とともに50年代ケッセルを代表するアルバム。ソロ回しからなにからきっちりかっちりとした典型的な西海岸ジャズです。ケッセルのギターの音が太くて存在感が大きいのが嬉しい。ペッパーもジョー・ゴードンもなしでケッセルのみで聞きたかった。どの曲もサクサクと調子よく進んでいきます。まぬけなジャケットが?ではありますが…。

TAL FARLOW /Autumn In New York (1954/verve)

タル・ファーロウ(g)レイ・ブラウン(b)チコ・ハミルトン(ds)ジェラルド・ウィギンス(p)

のちの超絶盤「スウィンギン・ギター・オブ~」や「タル」(いずれも1956年作品)ほど太い音ではないし、エディ・コスタ&ヴィニー・バークとの超個性的な、いかにもN.Y.ってな音でもない。しかもL.A.録音。がしかし、タルにとって3枚目となるこのリーダー作もタルのあの世界です。バックがウエストコーストのメンバーだからといってケッセルのようにはならず(当たり前か)、ソロ内容は完全にタルの世界。さすがミンガスとレッド・ノーヴォに鍛えられただけあります。バレル登場以前の最高のモダン・ジャズギターです。

RUDY LINKA / Czech It Out ! (1994/enja)

ルディ・リンカ(g)ジョージ・ムラーツ(b)マーヴィン・スミッティ・スミス(ds)
この1曲目の「Old & New」できまりでしょう。始まり方からしてかっこいいです。ニューオーリンズ系のリズムにのってジョン・スコみたいなギターが勇壮に出てきます。そういえばこの出だしのドラムってウィントン・マルサリスの「スタンダード・タイムVol.1」の1曲目の「キャラバン」にそっくり。こういうのはかなり好きです。全編このノリで行ってくれたらもっと良かったのですが、曲ごとに表情がいろいろ変わります。しかしベースのジョージ・ムラーツとドラムのマーヴィン・スミッティ・スミスがしっかりしてるので、このジョン・スコとアバークロンビーとメセニーをごちゃ混ぜにしたようなスタイルのギターでもしっかりと聴けるものになってます。

KENNY BURRELL/Groovin' Hight(1981/MUSE)


ケニー・バレル(g)ラリー・リドレー(b)ベン・ライリー(ds)
この頃のバレルは小編成のアルバムばかり作ってて、これもトリオ編成。ちなみにLPの帯には「バレルのトリオ演奏はジャズの分かる大人のための音楽です」なんて書いてある(笑)。いよいよモダンジャズ受難の時期になっていたということがうかがえます。80年代の初頭、通説では新伝承派の登場やOTB等の勉強派(?)の登場などでアコースティックがふたたび盛り上がってきた時期とされますが、実情はなんとも細々としたブームだったのでしょうか…。さてさて、このバレルのアルバムはそんな時代に作られた非常にしぶいアルバム。ガレスピーの有名なグルーヴィン・ハイから始まりますが不思議と静かな印象。この落ち着きがイイんです。

HERB ELLIS,RAY BROWN,MONTY ALEXANDER/Triple Treat (1983/concord)


ハーブ・エリス(g)レイ・ブラウン(b)モンティ・アレキサンダー(p)
コンコードの顔、ハーブ・エリスとレイ・ブラウンにジャマイカ生まれのモンティ・アレクサンダーが加わったトリオ。ナット・キング・コール・トリオ、オスカー・ピーターソン・トリオの布陣。そもそもハーブ・エリスとレイ・ブラウンはオスカー・ピーターソン・トリオのメンバーだったわけで、あの「ザ・トリオ」とも言われた黄金のピーターソン・トリオの再現か、ともとれる企画。がしかし、このTriple Treatはちょっと違います。ここではハーブ・エリスが強烈な個性とともにリーダーシップを発揮しています(特にA面)。その点ではピーターソン・トリオよりもタル・ファーロウ・トリオに近いスタンスかも。ハーブ・エリスの独特のノリの強烈さはコンコード・レーベルではお馴染みですが、こういったピアノトリオ編成になると余計に際立つような気がします。B面になるとモンティ・アレキサンダーのラテンの血が騒ぎだし、明るい太陽が差し込んでくるかのよう。…とはいえ実はこのアルバム、全体をグイグイと引っ張っているのはレイ・ブラウンの強靱なベース。とにかく最初からレイ・ブラウンのノリが凄い。

BARNEY KESSEL, SHELLY MANNE, RAY BROWN /The POLE WINNERS Exploring The Scene ! (1961/comtemporary)

バーニー・ケッセル(g)シェリー・マン(ds)レイ・ブラウン(b)
ポール・ウィナーズのシリーズもこのへんまでくるとあまり知られてないかも。これはポール・ウィナーズとしての第4作目。それまでの路線そのままにコンパクトでスインギーな作り。いかにもウエストコーストな音ですが、レイ・ブラウンの強靱なベースのおかげで、軽いという印象はありません。軽くはないけどノリが凄い。とにかくどんな曲でもスイング。シンプルでありながらこれだけ音楽が踊っているというのは、やはりこの3人のセンスの素晴らしさなのでしょう。ジャズという音楽のエッセンスが詰まっています。

BILL FRISELL / NASHVILLE (1997/nonesuch)

ビル・フリゼール(g)ジェリー・ダグラス(DOBRO) 他

ビル・フリゼールのカントリー路線はここから始まります。実に見事なカントリー&ブルーグラス。すべてアコースティックでドラムもいないのでブルーグラス寄り。ここではなんと言ってもジェリー・ダグラスとの共演が聴きどころでしょう。何せあのジェリー・ダグラスだからさぞ凄まじいテクで引っ張っていくかと思いきや、意外にリラックスムード。フリゼールもいつもに増してリラックス。とはいえフリゼールの作品独自のシリアスさが残っていることも確か。ジャズの匂いは全くないけどシリアスなジャズファンもじっくり聴けるアルバムではあります。

PAT METHENY / TRIO 99→00( 1999)

パット・メセニー(g)ラリー・グレナディア(b)ビル・スチュワート(ds)

ギタートリオという地味な編成。もしメセニーがこういう編成のものばかり出してたらひょっとして好きなギタリストになってたかもしれない(実はメセニーはあまり好きではない)。こういったシンプルな構成で、何の仕掛けも無しに勝負してくれるとメセニーの個性と特徴が浮き彫りにされてきて、非常に面白く聴ける。

PETER SPRAGUE ピーター・スプレイグ (ピーター・スプラッチ)/Musica Del Mar ムジカ・デル・マール (concord/1983)


ピーター・スプレイグ(g)ジョージ・ケイブルズ(p)ボブ・マグナッスマン(b)エディ・ムーア(ds) 
プロデュース:カール・E・ジェファーソン
今やすっかりブラジリアンなギタリストピーター・スプレイグの、これがソロデビュー作(ちなみに日本盤LPではピーター・スプラッチという名前になってます)。かつてボストンではパット・メセニーとともにジャズを学んだそうで、その後アート・ペッパー、チャールス・マクファーソン、トミー・フラナガン、エディ・ハリスらと共演してきた経歴を持つ28歳(当時)。とはいえ地味な存在だったピーター・スプレイグ。彼に目をつけたコンコードのカール・E・ジェファーソンはエライ。カール・E・ジェファーソンはそれまでカル・コリンズやエミリー・レムラーやハワード・アルデンなんかをコンコード・レーベルで育ててきましたが、このピーター・スプレイグもなんとかなると思っていたのかも(まあ、結果彼等のようなスター・プレイヤーにはなれませんでしたが…)。ジャケではガットギターを持っているのにガットギターを弾いてるトラックは2曲のみ。全部ガットギターでやってもよかったのでは…。残りのトラックは普通にエレキです。ごくごくマトモなモダンジャズ・アルバムで、コンコードらしいスインギーさはハワード・アルデンに多少似ています。ところでこのジャケ、どことなくアール・クルーのファーストに雰囲気が似ていますが…、そっち路線でやってくれたらもっと評価されたかもしれません。その後のピーター・スプレイグの活動ぶりを見るにつけ本当にそう思います。とはいうものの、これはかのカール・E・ジェファーソンのプロデュース作。典型的なコンコード色に染めてしまった功罪はさておき、コンコードのギター作品が好きな僕にとっては実に心地よいアルバムです。

BARNEY KESSEL/ Soaring (concord/1977)

バーニー・ケッセル(g)モンティ・バドウィッグ(b)ジェイク・ハナ(ds)
この時代のケッセルのリーダー作の中でも最上位に位置付けられるアルバム。60年代までの単音のキレ味がない分重厚なコードワークで聴かせます。バックの控えめなサポートも素晴らしい。ジャケットのごとく爽快な作品です。

CAL COLLINS /Cincinnati To L.A. (concord/1978)

カル・コリンズ(g)モンティ・バドウィッグ(b)ジェイク・ハナ(ds)
これがカル・コリンズのデビュー作。このときカル・コリンズは45歳!ブルーグラスをルーツに持つギタリストだけど、ジョージ・バーンズを洗練させてケッセル風味をふりかけたようなスタイル。まさに正統派。ときおりカントリーっぽいスウィング感を見せてくれるのが持ち味です。いかにもコンコード!って感じの音が嬉しい。

CAL COLLINS /Blues On My Mind (concord/1979)

カル・コリンズ(g)ラリー・ヴーコビッチ(p)ボブ・メイズ(b)ジェフ・ハミルトン(ds)
カル・コリンズの2枚目。名盤。心なしか前作よりものびのびと演奏してます。余計な気負いが抜けて、本来の明るいタッチの演奏を展開しております。この明るさはかつてマンドリン奏者だったというところから来るのかもしれません。実はこれ、バックの演奏も凄くイイのです。このスウィングするリズムに乗ってカル・コリンズも本領発揮。A-1が特に素晴らしい。


(文:信田照幸)


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