LENNIE TRISTANO レニー・トリスターノ


LENNIE TRISTANO / Live In New York (1945-49)

Lennie Tristano (p) Lee Konitz (as) Warne Marsh (ts) Billy Bauer (g) Arnold Fishkin (b) Harold Granowsky (b) Denzil Best (ds) Jeff Morton (ds)

レニー・トリスターノの音楽にくつろぎは無い。いつもどこか聴く方に緊張を強いるというか、軽く聴き逃せない凄みのようなものがある。即興の可能性を究極まで追求していった結果こうなってしまった、みたいな、何やらただ事ではない風格がある。ビバップのようにリズムに関して工夫があるわけではなく、リズムはクラシカル。がしかし、そこがまた逆にアドリブラインの奇妙さを際立たせている一因にもなっている。この初期の音源は1947年のグループ演奏(「Cool and Quiet」captol)と1945年のソロ演奏、1949年のグループ演奏ライヴの3本立て。どれも考えに考え抜かれたような音の連なり。特にグループ演奏の方の完璧さは物凄い。また、この時期の録音すべてにおいていえることだが、ビリー・バウアーの演奏はずば抜けている。

LENNIE TRISTANO / Out On A Limb (1945-47)

Lennie Tristano (p) Bob Leininger (b) Clyde Lombardi (b) Billy Bauer(g) Leonard Gaskin (b)

端整な名盤。冒頭の1945年のソロ4曲からしていきなり凄い。冷徹なメロディラインと端整なタッチ。トリスターノのクールジャズはもうすでにこの時期に完成されていたことが分かる。トリオ編成になってもメロディの探究心はメンバー全員に行き渡っていて、緊張感が走る。

LENNIE TRISTANO / Cool and Quiet (1947/capitol)

Lennie Tristano (p) Lee Konitz (as) Warne Marsh (ts) Billy Bauer (g) Arnold Fishkin (b) Harold Granowsky (b) Denzil Best (ds)

名作。A面がレニー・トリスターノでB面がバディ・デフランコというレコード。このあまりに完璧なグループ表現は、完成度が高すぎて寒気がする程。同時期のビバップに見られるような破綻も全く無い。オリジナリティという点からも抜群で、後年このようなトリスターノ系クールジャズを受け継いだアルバムはトリスターノ以外では数少ない。

Charlie Parker with Lennie Tristano Complete Recordings (1947-1951)

Charlie Parker (as) Lennie Tristano (p) Kenny Clarke (brushes) Dizzy Gillespie (tp) John LaPorta (cl)��Billy Bauer (g) Ray Brown (b) Max Roach (ds) etc.

チャーリー・パーカーとの全レコーディングをまとめたもの。何と言っても冒頭の2曲。パーカー、トリスターノ、そしてケニー・クラークが軽くブラシで新聞紙(電話帳という説もある)を叩いているというトリオ編成。これは本当に貴重なドキュメントです。これまで、チャーリー・パーカー「BIRD'S EYES 1/4」というレア盤(名盤です)に入っていましたが、こうやって表舞台にこの音源が登場してくれて嬉しいかぎり。トリスターノはパーカーのように章節に対してワンテンポずらしてみたりということをほとんどせず、またフレーズをタブルタイムで展開して緩急を付けたりということをしてもパーカーのようにスピード感が変わることが何故か無い。また、パーカーは既成曲のフレーズをアドリブラインに盛り込んだりレスター・ヤングのフレーズを持ってきたりということをしますが、トリスターノはそういうことをせずあくまで自分のフレーズのみ。この厳しさがトリスターノ系クールジャズにまとわりつくある種の禁欲的な雰囲気を感じさせる要因でもあります。1947年のラジオ音源(3-19)と1951年のメトロノーム・オールスターズ(20-24)の音源はビバップ&クールジャズの混成チームによる演奏。パーカーの圧倒的プレイが目立ちますが、ビリー・バウアーの素晴らしさも全開。

LENNIE TRISTANO / Live At Birdland (1949)

Lennie Tristano (p) Warne Marsh (ts)Arnold Fishkin (b) Jeff Morton (ds)

前半がグループ演奏で後半がソロ。前半の方の音質はあまり良くない。が、やっぱり凄い。マシュがかなり良いが、やっぱりビリー・バウアーのギターに聴き入ってしまう。ちなみにソロは45年のもの。

LENNIE TRISTANO / Crosscurrents (1949)

Lennie Tristano (p) Lee Konitz (as) Warne Marsh (ts) Billy Bauer (g) Arnold Fishkin (b) Harold Granowsky (b) Denzil Best (ds)

音質が素晴らしく良い(capitol音源)。熱気というよりは、冷徹な緊張感の方が勝る。アンサンブルの完璧さはウエストコースト・ジャズにも匹敵するが、感触はまるで反対なのが面白い。トリリスターノのグループの演奏としてはほぼ完璧なもの。

Lennie Tristano / Wow (1950)

Lee Konitz (as) Warne Marsh (ts) Lennie Tristano (p) Billy Bauer (g) Joe Shulman (b) Jeff Morton (d)

音質はそれほどよくないが、内容は凄い。1曲目の「Wow」の密度は当時のビバップと同質のもの。それぞれの曲が比較的長いので、独特のアドリブラインを十分に堪能出来る。ビリー・バウアーによって録音されたものなので、ギターの音がとてもよくとれていて嬉しいかぎり。

Lennie Tristano / Descent Into The Maelstrom(1951-1966)

Lennie Tristano (p) Sonny Dallas(b) Peter Ind(b) Roy Haynes(ds) Nick Stabulas(ds)

1曲目のソロ曲「Descent Into the Maelstrom」(1953年)の物凄さは、のちのフリージャズの先駆けとも捉えることが出来るほど。何度聴いても不思議な新鮮さがある。ジャズ史上の中でも特異な名演ではないか。また、7曲目のトリオ演奏も凄い。ロイ・ヘインズがシンバルでリズムを取りながらスネアによるアクセントで徐々に煽る。そしてトリスターノも珍しくそれに乗る形でテンションを上げていきます。 �


Lennie Tristano / Live in Toronto (1952)

Lennie Tristano (p) Lee Konitz (as) Warne Marsh (ts) Peter Ind(b) Al Levitt(ds)

このライヴでのトリスターノのテーマ部の崩し方を見ると、ビバップと同じようにトリスターノにとって曲のテーマ部とは一種の標識のようなものだったのだということが分かる。テーマ部は、これからこのようなコード進行でやるますよ、という紹介にすぎない。だからこそその後のアドリブ部がクローズアップされて聴こえてくるようになる。6曲目に置けるトリスターノの力強いタッチは本作のハイライト。この切れ味はパウエルとはまた違った味わい。ところでこのライヴ以降メンバーにビリー・バウアーの名前が無いのが非常に寂しい。

Lennie Tristano / Lennie Tristano (1955/atlantic)

Lennie Tristano (p) Peter Ind (b) Jeff Morton (ds) Lee Konitz (as) Gene Ramey (b) Art Taylor (ds) 

おそらく最も有名なトリスターノの作品。というかこれしかCDショップに置いてないという感もある。本作が代表作として出回ったのはトリスターノにとってはたして幸運なことだったのかどうか…。とはいえ名作であることに違いは無いのだが。冒頭のテープ逆まわしピアノからいきなり度肝を抜かれる。そもそも雰囲気が尋常では無い。「Descent Into the Maelstrom」ほどではないが、聴いてる方は息継ぎが出来ないような感触。

Lennie Tristano / New York Improvisations (1955-56)

Lennie Tristano (p) Peter Ind (b) Tom Weyburn(ds)

リズムセクションは相変わらずリズムを刻むだけの存在ではあるものの、それだからこそトリスターノのアドリブの自由がきくというわけなのだろうか。とにかく徹底してベースとドラムはリズムを刻むことしかしていない。しなしながら音質がいいのでピーター・インドの凄さはダイレクトに伝わってくる。トリスターノは瞬間瞬間が実験であるかのように、さまざまなアイデアで音列を紡ぎ出していく。

Lennie Tristano / The New Tristano (1960-62)

Lennie Tristano (p)

トリスターノのソロ。なにやら孤高の感じが禅の修行僧っぽいというかなんというか…。40年代の鋼鉄のタッチはやや鳴りをひそめ、それなりに物腰も柔らかくなってはいる。が、アドリブラインのひねくれ方は全く変わらず。アドリブの可能性の追求は40年代からずっと変わらずに続いているのだ。 

Lennie Tristano / Note To Note (1964-65)

Lennie Tristano (piano) Sonny Dallas (bass) Carrol Tristano (drums)

もはやあの40年代のトリスターノではない。鬼気迫る雰囲気が無いかわりに、音が和やかな表情になった。これはもうトリスターノ流ラウンジ・ピアノとでも言えばいいのだろうか。和音をひとつひとつ楽しみながら弾いてるような感じ。

Lennie Tristano / Concert in Copenhagen (1965)

Lennie Tristano (piano)

枯淡の境地。超リラックスのトリスターノ。左手は何故ウォーキングに行き着いたのか…。これはもう常人には理解不能の境地なのかもしれない。メロディラインがそれなりに聴き易いので分かりやすいかというと、実はよく分からない謎の部分が残る。これはビデオも残っているが、同年のベルリンでのライブもビデオで残っており、そちらの方がトリオということもあってかテンションは高い。 


(文:信田照幸)


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