Organ/オルガン


JIMMY SMITH /Groovin' At Smalls' Paradise Vol.1 (1957)

ジミー・スミス(org)エディ・マクファーデン(g)ドナルド・ベイリー(ds)1957年録音
50年代のジミー・スミスは別格。マイルス・デイビスをして「奇跡」といわしめたジミー・スミスの分厚いハモンド演奏をこのアルバムでは堪能することが出来ます。場所はハーレムのスモールズパラダイス。いきなりスローテンポの「アフター・アワーズ」です。とにかく濃い。ジミー・スミスは60年代からだんだんと薄味になっていきますが、このアルバムはベッタリと濃い(でもコテコテ系じゃない!)。そしてブルージー。あまり話題にのぼることの無いギターのエディ・マクファーデンもここではブルースを快演。ケニー・バレルじゃなくてもこの時代は皆こういう演奏してたんですね、ハーレムでは。しかしまあ、ジミー・スミスのこの音。今の耳で聴くと多少モンド~ラウンジっぽく、おしゃれかも。演奏内容は密度の濃いジャズです。


JIMMY SMITH / Home Cookin' (1958)

ジミー・スミス(org)ケニー・バレル(g)パーシー・フランス(ts)ドナルド・ベイリー(ds)1958、59年録音
ジミー・スミスのブルース集。スローなシー・シー・ライダーから始まります。ギターがバレルであることからも分るように、かなーりブルージー。サックスのパーシー・フランスはビル・ドゲットのコンボにいた人で、いかにもR&B出身って感じのブルーススケール中心の演奏。ドラムのドナルド・ベイリーはジミー・スミス・トリオのレギュラーメンバー。あまり目立ったことをしないからこそジミー・スミスのオルガンにマッチしてます。それにしてもこのアルバム。主役のスミスは当然イイとして、特に目立つのがバレル。この存在感あるブルージーなギターワークと音色はやはり凄い。アルフレッド・ライオンの音作りというのはやっぱとんでもないもんだったんだなあ、などと感心。このアルバム、ジャケも含めてほんとに最高です。


SHIRLEY SCOTT / On A Clear Day (1966)

シャーリー・スコット(org)ロン・カーター(b)ジミー・コブ(ds)1966年録音

シャーリー・スコットのハモンドはフットペダルを使わない上に、あまり音を重ねないので普通のハモンド奏者の演奏よりもスカスカな印象があります。しかし、それはそれでひとつの個性。単音のモンドチックな響きはウェス・モンゴメリー・トリオのメル・ラインに通じるものがあって、ラウンジ度は満点。このアルバムはジミー・コブがバシバシたたいてるので、かろうじてム-ド音楽になるのをまぬがれてはいるものの、やはりどこかムード音楽っぽいアルバムです。こういうのってなんか日本橋三越ってイメージなんだけど、分かってもらえるかな?とりあえず僕の超お気に入りのアルバムです。

LONNIE SMITH / Move Your Hand (1969 / Blue Note)
この表題曲。ロニー・スミスが歌ってます。これがまたイイ。90年頃のJB'Sのライブでは、開演前にこれがかかってまして、もう演奏が始まる前からみんなヒートアップ。超盛り上がります、これ。R&Bよりのロニーのハモンドもねばっこくてイイ。

SHIRLEY SCOTT WITH THE LATIN JAZZ QUINTET (1960 / Prestige)
ドルフィーとも共演歴のあるラテン・ジャズ・クインテットが、ここではシャーリー・スコットと共演。どことなくモンドな雰囲気が…。シャーリー・スコットのオルガンのスタイルから来るものだとは思うのですが、やっぱこういう雰囲気は文句なしにカッコイイ。フィル・ディアズのヴァイブが効いてます。

JIMMY SMITH /The Cat (verve)
バックのビッグ・バンドも調子のいい名盤。ヴァーヴお得意のパターンですが、このパターンでは最も成功した1枚でしょう。ウエスとの共演盤も結構いいけど、このアルバムのまとまりかげんはヴァーヴのジミー・スミスの中ではいちばん。かなりお気に入り。

JIMMY SMITH /Back At The Chicken Shack (blue note /1960)
ミッドナイト・スペシャルと同日録音のこのアルバム。どちらかというと僕はこっちのほうが好きなのです。冒頭のオルガンの音色だけでこのアルバム全体カッコよさが伝わってくるかのようです。メンバーもバレル(g)にタレンタイン(ts)とくればもう文句なし。


JIMMY SMITH /Portuguese Soul (verve/1973)

サド・ジョーンズのビッグバンドをバックに従えてのアルバムですが、これがなんともイージーとシリアスとも微妙なラインを行ったり来たりしておりまして、僕なんぞはこういうの大好きなのでたまらないわけなのです。静かにメロウに始まって極上の雰囲気を作り出しております。全体的に漂うモンドな雰囲気はジミー・スミスにしては珍しいんじゃないでしょうか。A面が最高。ところでジミー・スミスというアーチストはデビュー当時の50年代を頂点に60年代~70年代~80年代~90年代~…とどんどん下り坂になっていくっていうのが僕の勝手な印象なんですが、70年代という中途半端な時代に突然湧いた奇盤という感じです、このアルバム。ジャケットのデザインがもう少し良ければラウンジの名盤としてもてはやされたかもしれないのになあ…。

JIMMY SMITH /Plays Fats Waller (blue note /1961)
オルガン・トリオの名盤。実にくつろぎます。ファッツ・ウォーラーの演奏よりもずっとスローな展開でいかにも60年代バップ的なのですが、この時代においてもハモンドはジミー・スミスの独壇場で、これだけのヴァリエーションで楽しませてくれるのはこの人だけ。ウォーラーの自演もいいけどこっちはもっと素晴らしい。ラウンジっぽさもあります。

CHARLIE EARLAND / Black Drops(1970/prestige)

チャールズ・アーランド(org)ジミー・ヒース(ts,ss)ヴァージル・ジョーンズ(tp)クレイトン・プルデン(tb)メイナード・パーカー(g)ジミー・ターナー(ds)
この時代のいかにもなコテコテ系プレスティッジです。チャールズ・アーランドの2枚目。前作はデビュー盤にしてウルトラ級名盤の「ブラック・トーク」でしたが、それをも上回る素晴らしいアルバム。出だしのスライの「シング・ア・シンプル・ソング」から飛ばします。とにかくカッコイイ!しかし僕はA面ラストの「LAZYBIRD」でのけぞった。コルトレーンの「ブルー・トレイン」に入ってるこの曲。チャールズ・アーランドはそのままストレートにカバーします。ジミー・ヒースがいつになくパワフルです。B面のラストも4ビートなのですが、4ビートは何ゆえにこんなにカッコイイのか…などと思ってしまうようなグルーヴ感なのでした。Black PowerよりもPsychedelicを感じてしまうスペイシーなアルバム。

LARRY YOUNG / UNITY (1965/blue note)

ラリー・ヤング(org)ジョー・ヘンダーソン(ts)ウディ・ショウ(tp)エルヴィン・ジョーンズ(ds)

昔、なんのコンピ盤だったか忘れてしまったが、コンピ盤にこのアルバムの2曲目の「モンクス・ドリーム」が収録されていて、それはそれは何度も聴いたもんです。だから僕にとってはラリー・ヤングといえばグラント・グリーンのバックでかっこよくキメるラリー・ヤングではなく、トニー・ウィリアムスのライフタイムでの暴れ回るラリー・ヤングでもなく、まさにこのアルバムの時期の音のイメージがあります。このアルバムのひとつ前は名演「プラザ・デ・トロス」が収録されてる『イントゥ・サムシン』ですが、グラント・グリーンのアクの強さに押され気味だったからなのか、このアルバムではギターなし。いよいよ新主流派路線宣言とでもいうべき布陣です。前作同様ドラムはエルヴィンですが、フロントには勢いに乗るジョー・ヘンダーソンと、のちにジャズ・メッセンジャーズで爆発するウディ・ショウが。ちなみにこのフロントの2人は当時のホレス・シルヴァー・クインテットのメンバー。このメンバーを相手に例のソウル色の極めて薄いハモンド・オルガンを鳴らしまくるわけで、少しとらえ所のない不思議な音空間を作り上げます。ハモンド・オルガンにつきもののブルージー、R&B色、ソウル色といったものがほとんど無いラリー・ヤングの音は近年ブームのジャムバンド系の音に非常に近いもので、モードを基調としたウネウネ感が特徴。昔のジャズ本にはよく「オルガンのコルトレーン」などと書かれてあるけど、コルトレーンのような息苦しさや宗教臭さとは無縁です。ラリー・ヤングはこのアルバム前後がいちばん好きかな…。

JIMMY SMITH /HOUSE PARTY~THE COMPLETE JIMMY SMITH'S SUPER JAM Volume 1(1957/blue note)


ジミー・スミス(org)リー・モーガン(tp)カーティス・フラー(tb)ジョージ・コールマン(as)ケニー・バレル(g)エディ・マクファーデン(g)ドナルド・ベイリー(ds)1957.8.25.録音
1.J.O.S. 2.WHAT IS THIS THING CALLED LOVE 3.JUST FRIEND 4.CHEROKEE 5.BLUES AFTER ALL
この「ハウス・パーティー」の旧盤CDではオリジナルと曲が違ってまして、オリジナル「ハウス・パーティー」(現在出てるCDもオリジナルと同じ)に入ってる曲はJust FriendとBlues After Allの2曲のみ(一応曲目も書いておきました)。何故こうなったかというと、この旧盤CDは録音日順に収録されてて、その都合上こうなったようです。パウエルの「アメイジング~」の旧盤CDの曲順が「Bouncing With Bud」から始まるってのと同じこと。というわけで、このCD。とにかく最高。もう大騒ぎです。この日のセッションはとにかく凄い。まずはオリジナル『ザ・サーモン』に入ってるJ.O.S.から始まります。まずはジミー・スミスのフットペダル・ベースに注目。この独特のスイング感はジミー・スミスならでは。この快感が味わいたくて頻繁にジミー・スミスのアルバムに手がのびるほどです。リー・モーガン、カーティス・フラーらのソロも大いに盛り上がり、テンション上がりっぱなしのアルバムです。CHEROKEE(これはオリジナル「ハウス・パーティ」にも「ザ・サーモン」にも入ってません)での鼻血の出るような盛り上がりっぷりも見事。リー・モーガンの長いソロがカッコイイ。

JIMMY SMITH /The Sermon ! (1957-58/blue note) RVG Edition

ジミー・スミス(org)リー・モーガン(tp)カーティス・フラー(tb)ジョージ・コールマン(as)ケニー・バレル(g)エディ・マクファーデン(g)ドナルド・ベイリー(ds)ルー・ドナルドソン(as)アート・ブレイキー(ds)
1.THE SERMON 2.J.O.S. 3.Flamingo
20分にも及ぶタイトル曲「ザ・サーモン」の徐々に盛り上がるファンキー節も凄いけど、やはり上記でも紹介した「J.O.S」が凄い。RVGリマスターによって音質がアップしたのか、例の軽快なフットペダルも実に小気味よく聞こえてきます。このようにパキパキとはじけるようなハモンドオルガン・ソロはジミー・スミスだけの特権のようなものですね。

JIMMY SMITH & WES MONTGOMERY / The Dynamic Duo (1966/verve)

ジミー・スミス(org)ウェス・モンゴメリー(g)オリヴァー・ネルソン(arr)
ジャケのウェスの帽子がイカス!おしゃれです。ヴァーヴ時代のジミー・スミスのアルバムの中でも名作「ザ・キャット」とともに目立つのがこのアルバム。なんといってもウェスが入ってる(というかデュオ扱い)ってのがいいですね。そもそもウェスのレギュラーコンボにはメルヴィン・ラインがいたので、ウェスとハモンドオルガンって組み合わせは何も珍しいものじゃないんですが、ジミー・スミスのダイナミックなオルガンとウェスのギターって組み合わせ自体が聞き物なわけです。かつてのジミー・スミス&ケニー・バレルとかと比べてみるのもまた楽し。A面のにぎやかさもいいけど、B1やB3などに見られるスモールコンボでの2人のやりとりに強く引き付けられます。B2は「ザ・キャット」に入ってそうなハードボイルドな雰囲気。

JIMMY SMITH /At Club "BABY GRAND" Wiiilmington, Delaware vol.1 (blue note/1956)

ジミー・スミス(org)ソーネル・シュワルツ(g)ドナルド・ベイリー(ds)

1曲目から文字通りの大噴火。アルフレッド・ライオンがジミー・スミスの演奏を録音しまくった気持ちがよく分かります。マイルスも驚いたという初期ジミー・スミスの音源はどれも凄いですね。そんなわけでこれはジミー・スミス初のライブ録音。猥雑な感じのライブハウスの雰囲気がいかにも初期ジミー・スミスっぽい気もします。演奏自体も、のちの洗練されたジミー・スミスとはまたちょっと違った、パワーとフットワークで押し切るようなエネルギッシュなスタイル。ライブならではの熱気とでもいうんでしょうか。1曲目は何度聴いても圧倒されます。そしてザ・プリーチャー。この曲はジミー・スミスの為にあるのではないか、という程にハマりすぎ。これだけ熱気がありながら、いわゆるコテコテ系ではないってところが大きな大きなポイント。どんなに汗臭くても洗練されたモダンジャズなわけです。60年代半ば以降にわらわらと湧いて出たコテコテ系ファンキーオルガンの数々は一度聴けばお腹イッパイって感じで当分聴きたくなくなりますが(そんなのは僕だけか?…笑)、この初期ジミー・スミスには不思議な洗練感があって繰り返し聴きたくなります。

MILT BUCKNER / The New World of Milt Buckner (Bethlehem/1962-1963)

Milt Buckner (org) Gene Redd (vib) Bill Willis (b) Phillip Paul (ds)

ミルト・バックナーってばチャーリー・パーカーの「Summit Meeting At Birdland」での共演(1曲)がとても印象的だけど、ここではなんとイージーリスニング・ジャズ。なにやら日本橋三越にでも来たような気分になります。たまにコテコテ風にMilt Bucknerが煽ったりしますが、それでもヴァイブがうしろで鳴ってるわけで、やっぱり日本橋三越。最高です。買い物とかしたくなります。ところでこれはジャケがベツレヘムっぽくない気がするんだけど、なんでこうなったんだろ?いつものウェストコースト的デザインでもよさそうなものだが。オハイオ州シンシナティーという微妙なところで録音されたからこうなったのかな(関係ないか)。40年代にライオネル・ハンプトン楽団にピアニストとして在籍してた頃のミルト・バックナーはともかく、オルガンでのミルト・バックナーはそれほど冒険しないところがちょっとラウンジっぽくていですね。

Johnny "Hammond" Smith/ Talk That Talk (New Jazz/1960)

Johnny "Hammond" Smith(org) Oliver Nelson(ts) George Tucker(b) Art Taylor(ds) Ray Barretto(congas)

ハモンドオルガンの名作。初期のJohnny "Hammond" Smithはどこかラウンジ的で、何もかもが最高。僕はハモンドオルガンでは60年代のMelvin Rhyneが滅茶苦茶好きなんだけど、それに匹敵するほどに最高なのがこの時期のJohnny "Hammond" Smith。ハモンドオルガン奏者は60年代に入ってからブルーノートやプレスティッジ、リバーサイドあたりに大量に出てくるが、R&B色が強すぎてコテコテ感が強すぎるものが多い。そこでこのJohnny "Hammond" Smith。ベーシストがいるからか、まるでエレクトーンのマヌケな演奏でも聴いてるかのようなイージーな感覚!この感性が素晴らしすぎ。いや、たしかにR&B的感覚もあるし、バップのスリリングさもあるのだが、なんといってもJohnny "Hammond" Smithの音の重ね方というか、ハーモニー感覚が圧倒的に洗練されてて都会的なのだ。こういうものは実はなかなか無い。どこかラウンジっぽさもある。音空間が映像的なのだ。

SAM LAZAR / Space Flight (Argo/1960)

Sam Lazar(org) Grant Green(g) Willie Dixon(b) Chauncey Williams(ds)

ベースにウィリー・ディクソンが入ってるところからして、いかにもな感じのシカゴの音が出てきそうなもんだけど、意外にも洗練された音作り。とはいえさすがにR&B臭もすごい(リズムのせいか?)。R&B臭といえばハモンドではあのベビーフェイス・ウィレットがいるが、サム・レイザーは音色と和音の選び方が洗練されてて都会的なので、ベビーフェイス・ウィレットのような臭みは少ない。グラント・グリーンはブルーノートでベビーフェイス・ウィレットとよく組んでたけど、サム・レイザーとの組み合わせの方が合う気も。ちなみにグラント・グリーンのファーストアルバムはこの翌年の録音。にしてもサム・レイザーのハモンドは響きが素晴らしい。とりあえずシカゴってことで、ラストは「マイ・ベイブ」で盛り上がります。

Freddie Roach / Mo' Greens Please (blue note/1963)

Freddie Roach(org) Conrad Lester(ts) Kenny Burrel(g), Eddie Wright(g) Clarence Johnston(ds)

これはもうジャケのデザインからして名作。特にリード・マイルスのレタリング・センスはずば抜けている。それはそうと、内容の方も文句無しの名作。似たような立ち位置のベビー・フェイス・ウィレットに比べると、ウィレットが真っ黒なR&Bなのに対し、フレディー・ローチの方はロンドンのモッズたちが好みそうな少しキッチュな感じのオルガンR&B。やはりバレルが効いている。ハモンドオルバンのアルバムはギターのセンスによって臭みが変わる。フレディ・ローチはフットペダルのベースのノリがちょっと凄い。

Jackie Daivs / Big Beat Hammond (Capitol/1960)

Jackie Daivs(org) Irving Ashby (guitar) Joe Comfort (bass) Weedie Morris (drums)

ジャズ史ではほとんど全く語られることのないジャッキー・デイビス。だいたい黒人のハモンドオルガンっていうえばゴスペルやブルースの匂いがするもので、ジャズファンはそのアクの強さこそを愛するものだが、ジャッキー・デイビスにはそれが一切無い。多くのハモンド奏者がゴスペル経由なのに対しこの人はまるで賛美歌経由みたいな涼しさがある。そしてそのソウル的コテコテ感が無いところがジャズファンには受けないだろうが、何故か僕にはツボだった。ジャズというよりイージー・リスニングとして聴いた。クリスマスの時期なんかに流れるオルガンのイメージ。あるいは日本橋のデパートなんかで流れそうな感じとでも言おうか�。オルガン系イージーリスニングが好きな人は必聴だけど、シャーリー・スコット的なモッズ感のあるジャズが好きな人などもこれはお気に召すのではなかろうかと。プレイの方は堅実で端正。Capitolレーベルってところからも想像つくと思うけど、カクテルピアノのオルガン版的なところもある。ギターとドラムはオマケ的な扱い。ちなみにこの人のCapitolにおける最初のアルバム「Hi-Fi Hammond 」(Capitol/1956)はゆったりとしたバラード主体のアルバムで(org, g, dsのトリオ)、そちらもまたどこかスペースエイジ的な心地良さがある名作です。 

Johnny "Hammond" Smith / Black Coffee (Riverside/1962)

Johnny "Hammond" Smith (org) Seldon Powell (ts) Eddie McFadden(g) Leo Stevens(ds)

雑なR&Bといった大雑把さがたまらないアルバム。NYのとなりのコネチカット州でのライブ。「Talk That Talk」 (New Jazz/1960)でのラウンジ感もどこへやらといった感じで思いっきりブラックなR&Bで始まるけど、徐々にJohnny "Hammond" Smithの洗練された音使いが顔を出してきます。とはいえSeldon Powellのホンカー・テナーがそれをまたぶち壊してソウルジャズのコテコテ世界へと強引に持っていくところが凄い。5曲目のJohnny "Hammond" Smithのソロが白熱していく途中、客だか誰だかが煽る声が入ってて、それ以降ラストの「He's A Real Gone Guy」まで一気に盛り上がっていくところがまた凄い。スタジオ録音ではまずあり得ないような高揚感。 

Johnny "Hammond" Smith / Mr. Wonderful (Riverside/1963)

Johnny "Hammond" Smith(org) Houston Person(ts) Sonny Williams(tp) Eddie McFadden(g) Leo Stevens(ds)

ジョニー・ハモンド・スミスはバックに回ったときのセンスが抜群にいい。洗練された色合いのつけ方はメルヴィン・ラインに通じるものを感じます。なので、たとえばこのアルバムなどによく現れているけど、ソウルジャズというよりはバップに近い。このアルバムを聴いて、ジャズメッセンジャーズにジョニー・ハモンド・スミスが加わってたら案外面白かったんじゃないかなあとか思ってしまった。

Charles Earland / Soul Crib (Choice/1969)

Charlie Earland(org) George Coleman(ts) Jimmie Ponder(g) Walter Perkins(ds)

ファンク~ソウルばかりの印象のあるチャールズ・アーランドも初期は多少モダンだったわけで、このアルバムには元マイルス・クインテットの、そして新主流派の名作「Maiden Voyage」(ハービー・ハンコック)にも参加してたジョージ・コールマンもいたりなんかして、いつものコテコテな音とはずいぶん趣が違う。がしかし、やはりここは何をやってもソウルになるチャールズ・アーランド。モダンのはずがいつの間にかやっぱりだんだん黒くなっていっちゃうわけで、アルバムが進むにつれ、行儀の良かった音も徐々にソウルへと変化。しまいにはミンガスみたいな掛け声まで聴こえてきます。とはいえジョージ・コールマンがいるからか「マイルストーンズ」なんかもやってて、ぎりぎりモダンの面目を保ってるような感じ。ちなみにこのアルバムの次があの「Black Talk!」 (Prestige/1969)で、完全にあちらの世界へと行ってしまいます。

Mel Rhyne / Remembering Wes (Savant/1999)

Mel Rhyne(org) Royce Campbell(g) Ray Appleton(ds)

僕の特別好きなオルガン奏者がこのメル・ライン。特に50~60年代初頭にかけてのウェス・モンゴメリー・トリオでのメル・ラインの演奏はどれも本当に最高。コテコテ感が薄くややラウンジ寄りで、音色の質感の選び方とハーモニーのセンスが独特なのだ。これらの微妙な塩梅が素晴らしい。ジミー・スミスももちろん大好きだけど、1960年前後の時代のメル・ラインは別格。というわけでこのアルバムはウェスの死後約30年経ってからかつてのボス、ウェスを追悼するような形のアルバム。編成も当時と同じギター、オルガン、ドラム。1曲目はウェス・モンゴメリー・トリオのファーストにも入ってる曲の再演。メル・ラインは60年代半ばにウェスの元を離れた後すっかり地味になるけど、何故か90年代に復活し、Criss Crossレーベルを中心に大量にアルバムを残した。ウェス・モンゴメリー・トリオ時代のようなきらめきは無いけれど、程よいラウンジ感に溢れたオルガンは健在で、特にこのアルバムのような少人数編成だとメル・ライン独特の音色がよく分かって面白い。 

Jimmy Smith / "A New Sound, A New Star" Jimmy Smith At The Organ vol.1 (blue note/1956)

Jimmy Smith(org) Thornel Schwartz(g) Bay Perry(ds)
最初期のジミー・スミスの音は、主音部(右手)がパーカッシブでひとつひとつの音を短く区切るかなり特殊なもの。サックスですべての音をタンギングで出すかのような、ちょっと切羽詰ったような音になる。この奏法はアップテンポになると物凄いスウィング感が出る。本作はジミー・スミスのデビュー盤で、とにかく圧倒的な演奏が聴ける。60年代以降あまりやらなくなったパーカッシブな奏法全開。のちのブルージーでアーシーなスタイルもいいが、この時期のハードバピッシュなジミー・スミスは他の誰にも似てなくて特に素晴らしい。


(文:信田照幸)

 

(c)1999 Teruyuki Nobuta

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