<Other Inst.>(一番下が最近記事です)

ROB McCONELL / Trio Skeches (1993 / concord)

ロブ・マッコーネル(valve tronbone)エド・ビッカート(g)ニール・スエンソン(b)1993年録音
ビッグ・バンドのリーダーとして活動を続けるロブ・マッコーネルはコンコードに趣味のいいこじんまりとした作品をいくつか発表しており、このトリオ作品もそのうちの1枚。なんといってもエド・ビッカートの独特の音色ギターが光る。この人はかつてポール・デズモンドのもとでもギターをひいていて、そのときの雰囲気をここにもそのまま持ってきている感じがします。ロブ・マッコーネルは暖かみのあるトロンボーンが味わい深く魅力的です。リズムセクションがギターとベースだけなのでややラウンジ的か。でもそこがまた良い。

ART VAN DAMME / Lullaby In Rhythe (1971/MPS)
アート・ヴァン・ダム(Accordion)ヘリベルト・テウセク(vib)フレッド・ランキスト(g)ペーター・ヴィッテ(b)チャーリー・アントリーニ(ds)
アコーディオンの4ビートジャズ。バグパイプやウードでジャズやってる人がいるんだからアコーディオンでジャズやってたって別にいいんだけど、やっぱ珍味的になるのはいた仕方の無いところ。しかしこの人一応ダウンビート誌の人気投票で1952年から60年まで連続1位を獲得してるというんだからそれなりに評価も高いのだ。ところで、メンバー構成を見ればわかるように、ジョージ・シアリング・クインテットとなんとなく近いものがあります。そう。この人もラウンジ系の人。シアリングほどゆったりとしてるわけでは無いのですが、やはりどこか優雅…。というか、フランスあたりのカフェで流れてそうか(行ったこと無いけど)。冒頭のチェロキーではいちなり技を見せてくれていますが全体的にこじんまりとしたラウンジ・ジャズです。ラウンジ系としてはかなりの好盤。夜中にゆっくりと聴きたいところ(笑)。しかしこれはまだCD化されてないようなので、結構レア盤。探すだけの価値はあり。

MAX ROACH /Drums Unlimited (Atlantic/1965-66)
マックス・ローチ(ds)ジミー・メリット(b)フレディ・ハバード(tp)ジェームス・スポールデイング(as)他
A-2が凄くカッコイイ。A-1とA-3のドラムソロの曲に挟まれてなんとなく主役っぽい存在の曲なんですが、曲自体がカッコイイ。ローチのドラムとかハバードのソロとか、そんなことどうでもいいのです。ジミー・メリットがなんでこんないい曲作ったのか謎なところもまたイイ。さて、ローチですが、「驚異の」とか「怒濤の」とかいう形容詞からが最も似合わないスタンダードなドラム奏者で(ちなみに前者はトニー・ウィリアムス、後者がエルヴィン・ジョーンズ)、ここでもお手本のような技ありドラムをたたいてます。「リッチvsローチ」(マーキュリー盤)のようにハデハデなところはぜんぜん無くて、地味。しかしじわじわと面白さが伝わってくるアルバム。

ART BLAKEY & The Jazz Messengers /A Night At Birdland Vol 1&2 (bluenote/1954.2.21)
アート・ブレイキー(ds)ホレス・シルヴァー(p)クリフォード・ブラウン(tp)ルー・ドナルドソン(as)カーリー・ラッセル(b)
60年代以降のブレイキーよりも過激なドラムなのです。たまに聴くとこの物凄さにやられる。クリフォード・ブラウンのベストと言いたい作品。

ART TAYLOR / A.T.'S Delight (1960/bluenote)
アート・テイラー(ds)スタンリー・タレンタイン(ts)デイヴ・バーンズ(tp)ウィントン・ケリー(p)ポール・チェンバース(b)ポテト・ヴァルデス(conga)

「ムーブ」が凄い。アート・テイラーのドラムはバディ・リッチの機関銃ドラムを思わせるような煽り方で小気味良いのです。デイヴ・バーンズもここでは快演。「ククー&フンジ」でのタレンタインはまるでロリンズ。このアルバムはアート・テイラーがブルーノートに残した唯一のリーダー作なのですが、あまり肩に力が入っていなくて自然なバップです。

ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS / Child's Dance (prestige/1972)

アート・ブレイキー(ds)ウッディ・ショウ(tp)ラモン・モリス(ts)ジョージ・ケイブル(p,el-p)スタン・クラーク(b)レイ・マンテイラ(congas)マニー・ボイド(flute)他
なにやら楽し気なジャケ。このジャケだけで買ってみたレコードなんですが、中身が凄かった。A面1曲目のブレイキーはいい意味で無駄な部分がそぎ落とされ、圧倒的なスイング感でグイグイと引っ張ります。50年代のメッセンジャーズと同等か、ひょっとしてあるいはそれ以上(?)って感じの怒濤の4ビートです。2曲目はハービーのあの曲に似てたりしますが、こっちはいかにも「都会風」。かっこいい。ところで1972年というある意味熱い時代に作られたアルバム。だもんで、あの時代の熱がそこかしこに感じられます。そんでビックリなのがB面。なんの情報もなしにB-2を聴いてこれがアート・ブレイキーだと分かる人なんてまずいないでしょう。誰が聴いても「おお?初期リターン・トゥ・フォーエバーの未発表音源か?」と思うはず(ちなみにこの曲はスタン・クラークの曲)。パーカッションの使い方もかつてのアフロ的なものからブラジル的なものへ変化してます。メッセンジャーズらしくないのにメッセンジャーズの熱を感じてしまう。こんなアルバム。あ、ちなみにこのレコード100円で買いました。このアルバムはベースのスタン・クラークの存在がかなり大きいです。A面2曲、B面2曲の計4曲からなるアルバムで、A面とB面とでは多少メンバーが違います。B-1のみサックスがバディ・テリーに、エレピがジョン・ヒックスに、そしてベースがスタン・クラークとミッキー・ベースの2人に、さらにパーカッションが4人加わって大変なことになっております。しかし不思議とアルバム全体に統一感があるんですよね。それも皆ベースのスタン・クラークの超絶プレイのおかげのようです。まずAー1の4ビートでのスタン・クラークの恐ろしいまでのウォーキング・ベースのノリに吹っ飛びます。録音の仕方が少し変わっているのか、スタン・クラークがあえてやってるのかは不明ですが、ダブルベース特有の「点」でのノリではなく「線」のノリでベースが聞こえてきます。こういった「線」のノリでのベースは実は僕はあまり好きではないですが、これほどまでに凄い4ビートで圧倒されるとこれはこれで文句の出ようもありません。フロントのウッディ・ショウ(tp)とラモン・モリス(ts)もモーダルにがんばっているんですが、スタン・クラークの前に影が薄いです。しかし御大ブレイキーだけはやはり別格で、この若造ベーシストを盛り上げるべくこれまた物凄いノリでドラムをたたいておりまして、ブレイキー&スタン・クラークといった内容になってます。A-2のタイトル曲は電化ブルーノートにいくつか見られるパターンの曲で、なかなかにさわやかなのですが、やはりスタン・クラークが目立ちます。しかしフルートを含めた3管フロントが気持ちよく、多少リラックスできる曲です。B面1曲目。全体を支配するローズの音色が印象的ではありますが、このパーカッション群はかなり快感。ブレイキーのブルーノートでのアフリカ3部作なんかは一体誰がどこたたいてるのかサッパリわからないくらいに渾然一体となった打楽器群の音が印象的で、それらは皆アフリカ系の感触。しかし、このB-1はどことなくブラジル風味です。別にブラジル楽器を使ってるというわけでは無いと思うのですがアフリカよりもブラジルの感触。そんなパーカッションにローズがからみ、さらにスタン・クラークが作ったメロデイラインがチック・コリアそっくりなのでまるでリターン・トゥ・フォーエバーのようなのですが、そのRTF路線に歯止めをかけるのがやはり御大アート・ブレイキーのドラムで、こうやって聴くとこの個性は凄いものがあるんだなあとあらためて感心してしまいます。この曲でもやはりスタン・クラークのベースが圧倒的なノリで暴れまわっている感じです。この曲は楽器が多いためA-1ほどの目立ち方ではないものの、ノリがパワフルに伝わってくるという点で他を圧倒しています。

ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS / STRAIGHT AHEAD (1981/CONCORD )
Art Blakey(ds)Wynton Marsalis(tp) Bobby Watson(as) Billy Pierce(ts) James Williams(p) Charles Fambrough(b) 
問題の81年のジャズメッセンジャーズです。このアルバムが出た当時油井正一先生いわく、「メッセンジャーズのアルバム中、過去20年間におけるベストアルバム」ということですが、62年~81年の間これを超える内容のアルバムが無いわきゃーな
いんだけど、たぶんウィントンの出現がそれだけ劇的だったということなんでしょう。だいたい今だにウィントンに関しての賛否両論があちこちであるほどにこのアーチストは問題児なわけなんですが、80年代以降これほどいろんなイミで話題に登った人も珍しい。ということでこのアルバムですが、聞き込むごとに感じるのはウィントンの特異性。それまでのモダンジャズの伝統的なエモーショナルな(ブラウニー然り、リー・モーガン然り、ハバード然り…)トランペットとはあきらかに違う感触のトランペットで、明らかに浮いて聞こえます。これは一体なんなんだろうとウィントンのソロをよーく聴いていくとわかるのですが、相当クラシカルです。まるで吹奏楽のトランペットでも聴いているかのような破綻の無さ。そして無表情さ。ハイノートを出すときだってトーンが一定なので、どこかさめて聞こえるのです。ジャズメッセンジャーズにいた頃はこのアルバムでのプレイのようにダブルタイムでのめちゃめちゃ細かいパラパラパラ~っていうソロを多く取ります。これがどうにも曲芸的で、同時期のサックス奏者リッチー・コールにも通じる何かを感じてしまうのですが、しかしそれらとは何かが違う。この超高速テクがあまりにも凄いのでついつい聞き入ってしまうのです(リッチー・コールの場合は聞き入ることがない…笑)。フロントのビリー・ピアスなんぞはこれにつられたのか猛然とダブルタイムで吹きまくるのですが、何故かこの人もあまり破綻が無く、安定しきった演奏。まるで先生の演奏ってな感じなんですが、ビリー・ピアスはこのあと実際に先生としても活動してたようです。あともうひとつウィントンのプレイで特徴的なのが、力をセーブした吹き方。これはクラシック的なのか吹奏楽手的なのか、リー・モーガンとかのように突然感情をぶちまけるかのようにプパ~ァァァ!っていうのはまずやらなくて、ずっと一定の音量で安定したトーン。これがそれまでのモダンジャズとは明らかに違う点。しかしこれはこれで、やはり影響力は相当大きかったようです。この81年という年にウィントンは「ウィントン・マルサリスの肖像」という有名なデビューアルバムを出すのですが、ここになると何故かアレンジに凝りだしてノリが悪くなってしまい、おまけにソロのスタイルも微妙に変化(音数を減らす方向へ行った)していて、何やらイージーリスニング的な「作られた」感触になっていきます。しかし、このアルバムではノリはブレイキー御大が仕切っているので当然良いのです。そんで、このフロント陣のアンサンブルの完璧さがなんとも面白い。各人のそれぞれ安定しているソロは、否定的に見れば無表情で冒険しなさすぎって言い方ができますが、肯定的に見ればこの余裕こそが80年代のスタイルの幕開け、ってところ。僕はこのBー2とB-3でのエキサイティングなリズムセクションとエキサイティングに見せかけるフロント3人のやりとりが面白く感じられます。とくにウィントンのパートは物凄い。いかにすればエキサイティングに見えるのか、なんてクールな顔して考えながら余裕で超絶テクニックを吹きまくる…、そんな感じ。ひょっとしてこのアルバムでエキサイティングだったのはブレイキー御大だけだったのかもしれません。

GEORGE LEWIS / Plays Hymns (1964/Milneburg)

ジョージ・ルイス(cl)Joe Robichaux(p)Placide Adams(b)
日曜日の昼下がりのような感じの、ほのぼの~としたアルバム。これほど「ジャズ」の雰囲気から遠いものも珍しい。いわゆるありがちなニューオーリンズ・スタイルではなく、クラリネット&ピアノ&ベースという編成で、しかもゆったりとしたナンバーばかり。聴いてると、まあこれでいいのだ…的気分になってきます。一応ヒム(賛美歌)集なんだけど、そんな気は全くしない。チンドン屋のソプラノサックス吹きがひとりで暇つぶしにひなたぼっこしながら吹いてるような、そんなジョージ・ルイスのクラリネットなもんだから神聖なヒムもどこかのほほんと聞こえてきます。

Grachan Moncur /Evolution(1963/bluenote)

グレシャン・モンカー3世(tb)リー・モーガン(tp)ジャッキー・マクリーン(as)ボビー・ハッチャーソン(vib)ボブ・クランショウ(b)トニー・ウィリアムス(ds)
グレシャン・モンカー3世の参加してるブルーノート盤に駄盤は無い。このアルバムもジャケからして名盤のニオイが…。新主流派を代表するとかなんとかいうよりも、当時のフリージャズとの絡みでみると興味深い。

ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS / Live At Sweet Basil (1985/paddle wheel)

アート・ブレイキー(ds)テレンス・ブランチャード(tp)ドナルド・ハリソン(as)ジャン・トゥーサン(ts)マルグリュー・ミラー(p)ロニー・プラキシコ(b)
ブレイキー爆発!このアルバムの前ではトニーもディジョネットも吹っ飛ぶ。とにかく壮絶。このB-1でのブレイキーには本当にのげぞった。ということでA-1、フロントが順々にソロを取っていくのですが、なんだかモダンジャズ史上の巨人達の亡霊が乗り移ってるかのような面白さがあります。まず1番手、ドナルド・ハリソン。ジョー・ヘンダーソンが、ウェイン・ショーターが…、つぎのジャン・トゥーサンではアンソニー・ブラクストンが、アイラが、サム・リバースが、…って感じのソロ。ジャズメッセンジャーズでフリーが出てくる所がちょっと面白い。そしてテレンス・ブランチャード。前任のウィントン・マルサリスとは対照的な情熱的なプレイだ、と思ってたらバックでブレイキーが煽りに煽ってて、とにかく物凄いノリ。このお祭り騒ぎのままA-2(ブルース・マーチ)になだれ込みますが、このメッセンジャーズのテーマ曲がこれまた凄い…。B-1はブレイキーの大暴れvs3管の大騒ぎ…。大変です。B-2は誰もが「またかぁ…」なんて思う曲「モーニン」なんですが、この「モーニン」はちょっと違う。大騒ぎです。面白いです。ジャズメッセンジャーズはひょっとして実は70年代以降が面白いのかも。そんで、このアルバムが頂点なのかもしれない。それくらい物凄いお祭り騒ぎっぷりで、全員が完全燃焼。このアルバムは音の感触も生々しいので余計に迫力があります。晩年のブレイキーは物凄い!

ELMER SNOWDEN / Harlem Banjo! (1960)

エルマー・スノウデン(banjo)クリフ・ジャクソン(p)トミー・ブライアント(b)ジミー・クラウフォード(ds)
大スキなアルバム。毎年春がくるとこれ聴きたくなる。もうひたすら気持ちいいです、バンジョーの音は。古いタイプのジャズだけど、どことなくモダンにも聞こえてきます。エリントン楽団にもいました。というか、エリントン楽団の元を作った人です。うちの「殿堂入りCD」のラックにおさまっている超お気に入り盤。

Yuka Kido/Refined(1992/toy's factory)

ユカ・キド(flute) ニールス・ペデルセン(b)ULF WAKENIUS (g) MARILYN MAZUR(per)
ペデルセンの自宅スタジオで録音されたアルバム。このひとつ前がデューク・ジョーダンをバックに従えたジャズアルバムでした。パーカッションのMARILYN MAZURが跳ねてて聴いてて非常に気持ちいい。ベース、ギター、パーカションがバックなので、フルートの音が邪魔されずにばっちり聞こえてくるところがいい。

Yuka Kido/XUXU(1993/deep blue)

ブラジルのミュージシャンをバックに擁した城戸夕果のミニ・アルバム。このDeep Blueレーベルの第一弾として五十嵐一生のアルバムとともに出たもの。このフルート奏者城戸夕果ですが、メロディーセンスがずば抜けており実に気持ちいい。このアルバムは一応ボッサ系ではあるものの、スチール弦を使ってるギターがちょっとボッサ系ではありません。がしかし、トータルでは完全にブラジル音楽になっております。

Yuka Kido/Rio Smiles(1994/deep blue)

バックのブラジリアン達に溶け込んでおりまして、城戸夕果のブラジリアンなノリもこれまた涼しげで素晴らしいアルバムであります。レゲエ調の曲も織りまぜつつ、極楽南国系音楽を作り上げております。ヴォーカル曲もいくつかあって、徐々に本格的ブラジル音楽への道を辿っていっております。ジャケがボンカレーみたいです。

Yuka Kido/ARACUA(1996/deep blue)

アラクアンという鳥の鳴き声をバックにフルートを吹くという最高の曲「アラクアン」を含む名盤。全体的にブラジリアン・フュージョンっていう感じの作りになってます。これもまたバックにブラジルのアーチスト達を配しているためか、ノリも完全にブラジル。初期のジャズくささが減ってきています。がしかし、僕はこのアルバムがいちばんお気に入り。

Yuka Kido/CASA(1998/deep blue)

最初と最後のフルート・ソロはどうも尺八みたいで…、いらなかったんじゃないか?あれさえ無ければもっともっと印象も良いものになってたはず。でも中のほうはもう本当に素晴らしい!!今回のバックは皆日本人ミュージシャン。日本録音も今回が初めて。だもんでブラジルっぽさはやや影を薄め、ついでにフュージョン色も影を薄め、独自のアコースティック路線を作り上げています。一部ちょっとジャパネスクっぽい感じの所なんかは坂田明とかのスタンスに近いか。


GRACHAN MONCUR Ⅲ / Some Other Stuff(1964/blue note)
グレシャン・モンカー3世(tb)ウェイン・ショーター(ts)ハービー・ハンコック(p)セシル・マクビー(b)トニー・ウィリアムス(ds)
凄いメンバーです。もちろん中身の方も凄いです。トニーのタイトなドラムといいショーターのミステリアスなソロといいモンカーの奇妙な曲調といい、いかにも新主流派。この冷たいテンションの高さはボビー・ハッチャーソンの同時期のリーダー作と並んでこの時代が生んだこの時代だけのジャズ。

LOUIE BELLSON / Air bellson (1997/concoed)
ルイ・ベルソン(ds)他
セプテット構成なのにビッグバンドっぽいこのルイ・ベルソンのグループ。なかなか凄いです。特に1曲目「Air Jordan」。ホーンセンションのアンサンブルが凄くカッコよくて、ソロパートなんか無いほうがいいんじゃないか、なんて思ってしまう。このホーンセクションの音はコンコードならではという感触で綺麗にまとまっているんですが、たまにそこがイージーに聞こえてきたりすることもあります。

CURTIS FULLER / The Opener (bluenote/1957)
フラーのブルーノート1作目。バド・パウエルの「Bud !」のB面にてすでにその非凡な才能を発揮していましたが、このリーダー作は「Bud !」に比べればやや地味です。しかしこのデビュー当時のフラーはなんとも独自の味があって、僕は気に入ってます。ベースのポール・チェンバースがこれまた素晴らしい。

CURTIS FULLER / Bone & Bari (bluenote/1957)
BNの2枚目のアルバム。バリトンとの2管ってことよりもピアノがソニー・クラークってところが要チェック。あの「ダイアル・S・フォー・ソニー」を思い浮かべてしまいます。

JAY JAY JOHNSON /The Eminent J.J.Johnson (1953-1955/Blue Note)
JJジョンソン(tb)クリフォード・ブラウン(tp)ジミー・ヒース(ts,bs)ジョン・ルイス(p)パーシー・ヒース(b)ケニー・クラーク(ds)
よく見ればリズムセクションが初代MJQ。イーストコースト的なノリはこのリズムセクションのおかげなのか、それともこの時代だからなのか。クリフォード・ブラウンが入ってることで人気があるアルバムかもしれませんが、JJの端正なtbも光ります。やっぱりJJはこの時代の音がいちばん味があると感じるのですが、どうでしょう。60年代に入るとJJの音は綺麗すぎて、たまに聞く気が起きないことも…。ところでこのアルバム、マイルス・デイビスの「ウォーキン」や「バグス・グルーヴ」と同じ雰囲気だなあと思ってたらリズムのパーシー・ヒースとケニークラークのコンビがこの2枚にも参加してました。

STEPHANE GRAPPELLI / Stephanova (1983/concord)
ステファン・グラッペリ(violin)MARC FOSSET(g)

グラッペリのヴァイオリンとマーク・フォセットのギターのデュオ。プロデューサーのカール・E・ジェファーソンの興味はひょっとしてこのギタリストの方にあったのではないかと勘ぐる僕ですが、どうなんでしょう。グラッペリはコンコードにこのアルバム以外にも「At The Winery」や「Vintage 1981」といった素晴らしい作品を残していますが、このアルバムも素晴らしいです。ギターとのデュオといういたってシンプルな構成のおかげでグラッペリの熟成されたヴァイオリンの音色を堪能することが出来ます。また、オーソドックスだけど味のあるマーク・フォセットのアコースティック・ギター(ガットギター)にも注目です。

ANDY NARELL / Behind The Bridge (1998/HEDAS UP)

アンディ・ナレル(steel pans) Dario Eskenazi(p)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)ルイス・コンテ(per)クレバー・ジョージ(g, cavaquinho)Steve Erquiaga(g)Paul Van Wageningen(ds)

スティール・パンの音のいかにも夏な音ではなく、このアルバムでのアンディ・ナレルの音はどこかラウンジっぽくて冬のどこかのホテルのラウンジって感じ。ずっとフュージョン畑で活動してたナレルですが、カリビアン・ジャズ・プロジェクトあたりからアコースティックな感じなものに移行したのか、このアルバムでは全編アコースティックでやってます。中でも絶品は6曲目で、なんとスティール・パンのソロ。なんとなくクリスマスっぽくて、なごんでしまいます。

JON HENDRICKS / Recorded In Person At The Trident (smash/1963)

ジョン・ヘンドリックス(vo)ノエル・ジュークス(ts)フリップ・ナネツ(p)フレッド・マーシャル(b)ジェリー・グラネリ(ds)
ジョージ・ラッセルの「ニューヨークN.Y」でかっこいいナレーションを担当してるのがこのジョン・ヘンドリックス。ヴォーカルを楽器のソロと同じように扱うヴォーカリーズという手法の名人で、このアルバムでもその恐るべき技を聞くことが出来ます。がしかし、僕がこのアルバムを好きな理由はただひとつ。「YEH ! YEH !」が入っているから。ジョージィ・フェイムでおなじみのこの曲。実はジョン・ヘンドリックスが作ったもの。西海岸でのライブなのでなんとなく全体的にカラっとした感じで、ラウンジっぽさもそこここに見受けられます。

RICHARD GALLIANO / New Musette (1991/label bleu)
リシャール・ガリアーノ(accordeon)フィリップ・カテリーン(g)Pierre Michelot(b)アルド・ロマーノ(ds)
フランス独自のジャズってばマヌーシュ・スウィングとミュゼット。このアルバムはミュゼット界の大御所リシャール・ガリアーノのライブ盤。フランスの香りのするアルバムです。ミュゼット特有の流れるようなフレーズをそのまま体で追っていくのはかなり快感です。ギターが少しうるさく聞こえるときもありますが、これはこれでこのグループの個性なのかなあと納得。

TOUMANI DIABATE / Djelika (1995/Hannibal)

トゥマニ・ジャバティ(Kora)Keletigu Diabate(Balafon)Basekou Kouyate(ngoni)

ラズウェル・ラッドとの共演盤「Malicool」も発表して、ついにジャズ界に殴り込みか!?との印象もあるトゥマニ・ジャバティ、95年の名作です。コラとバラフォン(木琴みたいなやつ)とンゴニ(小さな弦楽器)による素朴なアンサンブル。僕はトゥマニ・ジャバティやカンテ・マンフィーラやJALI MUSA JAWARAといったコラ奏者が大好きなんだけど、近年になって「Malicool」やJALI MUSA JAWARAのKora Jazz Trioなどのようにわざわざジャズを意識した音楽を作っていってくれるのはなんとも嬉しい。しかしジャズを意識したといってもいわゆるジャズイディオムを使うのではなく、あくまで自分達の「言葉」で演奏してくれてるところが面白い。これらはジャズとは言ってもやっぱり基本はマリの民族音楽なのであって、いつも「あの」雰囲気に戻っていくのです。このアルバムは特にジャズなんか意識してるわけではなくてそのままマリの音楽です。テーマ/即興というジャズのパターンがあるためあえてこのコーナーで紹介した次第。トゥマニ・ジャバティがタジ・マハールと共演しようがラズウェル・ラッドと共演しようが、やっぱり最後に戻っていくHOME/故郷のようなものがこのアルバムに詰まっています。マリの民族の「血」のようなもの、あるいはアフリカの生活の基本みたいなものを感じてしまうほど「濃い」音楽です。

JAY JAY JOHNSON /Dial JJ5 (1957/CBS)
JJジョンソン(tb)ボビー・ジャスパー(ts,fl)トミー・フラナガン(p)ウィルバー・リトル(b)エルヴィン・ジョーンズ(ds)
いきなりアドリブから始まるA-1にJJの気合いが…。その勢いのままA-2へ。聴いてて気持ちいいのはこのリズムセクションのおかげ。ウィルバー・リトルとエルヴィンの繰り出すリズムが面白いためフロントだ誰であれ楽しめそうです。このリズムセクションはよほど相性が良かったのか、この後「オーバーシーズ」という有名なアルバムを出すことになります。JJはいつでも同じようなプレイなのでこういった突出した何かが無いとちょっときついです。tbの至芸を堪能出来るJ & Kの諸作なんかも結構好き。

TOOTS THIELEMANS / The Brasil Project (1992/BMG)

トゥーツ・シールマンス(hca)イヴァン・リンス、ジャヴァン、ジョアン・ボスコ、ジルベルト・ジル、カエターノ・ヴェローゾ、ルイス・ボンファ、イリアーヌ、エドゥー・ロボ 他
トゥーツ・シールマンスがブラジルMPBのスター達を従えた傑作アルバム。トゥーツのハーモニカはブラジル音楽とこんなにも相性ピッタリだったとは。とにかく気持ちいい。モダンジャズ系やフュージョン系のアルバムでのトゥーツよりもさらにリラックスしたようなプレイが聞けます。アルバム全体に流れるしっとりとした空気が極楽へと誘ってくれますよ。ちなみにこの続編(vl.2)も出ています。

SAM PILAFIAN / Travelin' Light (1991/TELARC)

サム・ピラフィアン(tuba)フランク・ヴィノラ(g)マーク・ショーン(p)ジミー・ジョージ(rhythm guitar)ジョン・ギル(banjo)
レイ・ドレイパーがバップだったのに対し、こちらはスウィング。チューバのボ~っとした雰囲気で楽しげにスウィングします。でも実をいえばこれ、フランク・ヴィノラが目当てで買ったCDなのでした。マヌーシュの匂いのするフランク・ヴィノラはコンコードにもリーダー作があり、特にハワード・アルデン、ジミー・ブルーノらとの3人のギターのフロントによる「CONCORED GUITAR COLLECTIVE」(1995)はあのグレイトギターズ(チャーリー・バード、ハーブ・エリス、バーニー・ケッセル)に対抗して(?)作られたなんとも素晴らしいアルバムです。また、コンコードには本作の主役サム・ピラフィアンとフランク・ヴィノラとのデュオ作品「Cookin' with Frank & Sam」(1995年)というのもあります。このアルバムはピアノやリズムギターのスウィンギーなバックによってどことなく郷愁感漂うほのぼのとした仕上がりです。僕はとにかくこういうのが大好きで、エルマー・スノウデン「HARLEM BANJO !」、ジョージ・ルイス「George Lewis Plays Hymns」、トミー・マクック「Down On Bond Street」などのアルバムなどと同じような感触を感じます。

ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS / Buttercorn Lady (1966.1./emarcy)

アート・ブレイキー(ds)キース・ジャレット(p)チャック・マンジョーネ(tp)フランク・ミッチェル(ts)レジー・ジョンソン(b) ライトハウス(カリフォルニア)でのライブ録音

キース・ジャレットとチャック・マンジョーネが在籍していたときのジャズメッセンジャーズ唯一のアルバム。トニー・スコットのグループ、ローランド・カークのグループと渡り歩いてきてついにこのジャズメッセンジャーズに入ったのはキースが20才のとき。キースは鍵盤弾きながら同時にもう片方の手でピアノ線をジャランと鳴らすという当時のフリー/アバンギャルドに影響されたかのような珍しいプレイを見せる一方で、ねばっこいバッププレイや「サムホエア・ビフォー」でのような叙情的なスタイル、そして「チェンジズ」でのような息の詰まるようなスリリングなプレイをも披露しています。70年代以降のキースに比べるとかなり黒っぽいプレイです。そしてチャック・マンジョーネ。70年代にフュージョン界のスターとなったマンジョーネそのままって感じの流麗なメロディをつづけるテイクもありますが、意外に「必死」です(そりゃそうか)。リー・モーガンのようなリリカルさも持ち合わせてるのでちょっと驚き。また、曲も3曲提供しており特に1曲目なんかはホレス・シルヴァーっぽい超ファンキーでカッコイイ曲。ちなみにこの曲、キースにしかソロを取らせていなくてやや短かめ。ジュークボックスのシングル用として演奏されたんでしょうか。このアルバムから70年代半ばまで、つまりあのウイントン・マルサリスが加入するまでの間のジャズメッセンジャーズってば全くといっていいほどにジャズファンからは無視されつづけているようですが、実はこの時期は凄く面白い。本作の他にもこのページで紹介してるChild's Dance (prestige/1972)なんていう素晴らしいアルバムもあるし。この時期は、え?この人が?っていう面白味の他に、ブレイキーのプレイがとてもいい。50年代のマーチ風のスタイルからはるかに自由になったという感じで。とにかくノリが物凄い。ブレイキーも時代とともに微妙にスタイルを変化させているようです。

CHARLES LLOYD , BILLY HIGGINS / Which Way Is East (2004/ECM)

チャールズ・ロイド(as,ts,b,alto and C fl,p,taragato,tibetan oboe,per,maracas,voice) ビリー・ヒギンズ(ds,g,guimbri,syrian'one string',senegalese,guinean and indian hand drum,juno's wood box,per,voice),2001年1月録音
チャールズ・ロイドとビリー・ヒギンズによるデュオ。とはいえサックス&ドラムによる普通のデュオではなく、いろんな楽器による交感といった感じ。このCD2枚組のアルバムをくり返し聴いてて、これがチャールズ・ロイドとビリー・ヒギンズだと思わなければいいのか…、などと思ってしまった。どこかの民族音楽だとでも思えばさらに楽しめます。豊かで楽しげで人間味溢れる音。そういえばかつてジョゼフ・ジャーマンとドン・モイエによる似たようなアルバムがありました。しかしこちらの方がより「非ジャズ」(というか民族音楽度が高いっていうか…)っぽいかもしれません。世界中の音楽がごった煮で詰まってる、とでもいった感じでしょうか。ちなみにこのアルバムはビリー・ヒギンズのラスト・レコーディングだそうです。

BOB BROOKMEYER /BROOKMEYER (1956/RCA)

ボブ・ブルックマイヤー(tb)ハンク・ジョーンズ(p)オーシー・ジョンソン(ds)ミルトン・ヒルトン(b)他

ボブ・ブルックマイヤーのビッグバンド作品。ベイシーばりのノリを見せるA-1で調子良く始まったかと思いきやA-2ではゆったりとしたバラードで美しくキメる…。ソーンヒルのようなエーテルサウンドにならない代わりにラウンジ・テイスト溢れるピアノが効果的に使われています。ソロの回し方がテンポ良く、かつ小気味よくて気持ちいいです。

JIMMY GIUFFRE / Western Suite (1958/ATLANTIC)

ジミー・ジュフリー(cl,ts,bs)ボブ・ブルックマイヤー(tb)ジム・ホール(g)1958.12.3.NY録音

ビル・フリゼールの描き出す世界観を遡って辿っていくとこのジミー・ジュフリー3に辿り着く。なんてことはどうでもいいんですが、このアルバムの1曲目'WESTERN SUITE'は何度聴いても新鮮。ウエストコースト・ジャズらしくアレンジで聞かせます。とはいえこれ、NY録音。cl,b,gのトリオからcl.tb,gのトリオになったジミー・ジュフリー3の音の響きは実に美しい。このアルバムは1曲目の約18分をくり返し聴くアルバムです。

ROY HAYNES / People (pacific jazz/1964)

ロイ・ヘインズ(ds)フランク・ストロジャー(as,fl)サム・ドッケリー(p)ラリー・リドレー(b)
ひょっとしてこれ、永遠にCD化されることのないレコードなんではなかろうか…?「ウイ・スリー」「ジャスト・アス」「アウト・オブ・ジ・アフタヌーン」等のようにサイドメンが有名なわけでもないし、64年っていう微妙な年の録音だし…。しかし、冒頭のINVITATION。こんなINVITATION聞いたことない。なんだ、この不思議なドラムは?ここでのロイ・ヘインズのリズムの摩訶不思議な取り方は後継者も出ない程にワン・アンド・オンリー。フランク・ストロジャーのサックスも厚みがあって聞きごたえ十分。他の曲はといえばもちろんロイ・ヘインズお得意のパーカッシヴなドラムが炸裂してます。とにかくロイ・ヘインズのドラムがとんがってる1枚。「セルフレスネス」でのコルトレーンとの伝説的なバトルといい、このアルバムといい、かつてはチャーリー・パーカーのグループのレギュラー・メンバーだったロイ・ヘインズがこの時代になってもここまでとんがりつづけてることにちょっと驚きです。

山本邦山/銀界(1970/fontana)

山本邦山(尺八)ゲイリー・ピーコック(b)菊池雅章(p)村上寛(ds)
A面3曲、B面3曲の全部で6つのパートからなる組曲形式。尺八をフロントに立てた珍しいジャズ・アルバムですが、昔から名盤と言われているもの。山本邦山の尺八はあくまでもゆったりと響きます。音数の多い楽器ではないからか、メロディも普化宗尺八そのままという印象。しかしながらB面になると4ビートでリズムセクションがグイグイ引っ張りだし、尺八もどことなくフルートっぽくなってくるから不思議です。とはいえやはりアクの強い尺八。フウォ~っていう空気が漏れる音が4ビートに乗って気持ちよく泳いでいます。全体を通してゲイリー・ピーコックの絶妙な絡みがいかにも「ジャズ」してます。

ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS /Chippin' in (1990/Alfa)

アート・ブレイキー(ds)フランク・レイシー(tb)ブライアン・リンチ(tp)ジャボン・ジャクソン(ts)デイル・バーロー(ts)ジェフ・キーザー(p)エシエット・オコン・エシエット(b) 数曲でフランク・レイシーに替わりスティーブ・デイビス(tb)が入る。1990.2.録音
最晩年のアート・ブレイキーの一大傑作。ちなみにブレイキーのラスト作の「One For All」は90年4月録音。このアルバムはその2ヶ月前の90年2月に録音されたものです。とにかくブレイキーのドラムに驚き。この快感は同時期のトニー・ウィリアムスのはるか上をいってます。ほんとに凄い。時代によって微妙にスタイルを変えてきているブレイキーですが、この時代のブレイキーのドラムはシンバルのシャンシャンいうでかい音とこまめに入るスカっとするようなスネアが特徴。特に各人のソロのときなんぞは煽りに煽ってます。そしてこの4管の響きの美しさ。どのテーマ部も非常に魅力的で、音楽監督を担当したフランク・レイシーのアレンジ・センスにも驚きです。このアルバムは何故かCDウォークマンで聴くと超盛り上がります。とにかく何から何まで最高。

ART BLAKEY, DR.JOHN, DAVID "FATHEAD" NEWMAN/ Bluesiana Triangle (1990/windomhill)

アート・ブレイキー(ds)ドクター・ジョン(p,hammond organ,g,vo)デヴィッド・ファットヘッド・ニューマン(ts,fl)エシエット・オコン・エシエット(b)ジョー・ボナディオ(per) 1990.3.録音
怒濤の「チッピン・イン」の1ヶ月後に録音されたセッション・アルバム。ドクター・ジョンがヴォーカルを取る2曲目ではなんとブレイキーまで歌ってます。さらに7曲目「For All We Know」では全部歌ってます。ガラガラ声が存在感たっぷりです。シブイ。シブすぎる…。なんというか、心にジ~ンとしみますね。最高のブルースです。このアルバムは実になごやかな雰囲気で録音されたものらしく、みんなリラックスしたアフターアワーズ的雰囲気があります。ニューオーリンズ風味が楽しいです。

ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS /One For All(1990/A&M)

アート・ブレイキー(ds)スティーブ・デイビス(tb)ブライアン・リンチ(tp)ジャボン・ジャクソン(ts)デイル・バーロー(ts)ジェフ・キーザー(p)エシエット・オコン・エシエット(b)1990.4.録音
というわけでこれがブレイキーのラスト作。2ヶ月前に録音された前作のメンバーからフランク・レイシー(tb)とスティーブ・デイビスが入れ代わりました。やはりジャズ・メッセンジャーズは最後まで「濃い」ジャズを演奏し続けました。ジェズ・メッセンジャーズはどの時期を取っても時代を超えた熱さを提供してくれます。しかしこのアルバム、トロンボーンのメンバーチェンジがかなり大きい。前作での4管ハーモニーのめくるめく美しさは消え失せました。かわりに個人個人のプレイがクローズ・アップというわけなのですが、録音方式のせいかプロデュースのせいかどうも音にのびが無い。ドラムも同様、パタパタという平坦な録音。前作「Chippin' In」があまりに大傑作だったので余計に不満点ばかりが目に付いてしまいます。がしかし、これがラスト作かと思うと、やっぱりブレイキーの元気さが目立ちます。この半年後に亡くなるとは到底思えません。ジャズ・メッセンジャーズの有終の美を飾るアルバムは「Chippin' In」に譲るとして、このアルバムはブレイキーの最後のドラムをただただ堪能するためのアルバムなのかも。このアルバムに関するかぎりブレイキー以外のメンバーはすべてオマケです。

Richard Galliano New York Trio /Rby, My Dear (2005/DREYFUS)

リシャール・ガリアーノ(Accordion)クラレンス・ペン(ds)ラリー・グレナディア(b)

アート・ヴァン・ダムでは満足出来ないジャズファンを十分に満足させてくれる貴重なアコーディオン奏者リシャール・ガリーノの最新盤。トリオ編成です。ジャケから選曲から編成からどこまでもモダンジャズの装いですが、内容はミュゼット経由のフレンチ・ジャズといったところ。息づかいの微妙さの分かるアコーディオンの特性と音色を最大限に生かしきった実に美しい作品。わざわざNEW YORK TRIOなんてつけてるところからして気合いを感じます。

GEORGIE FAME/ 20 Best Classics

ジョージィ・フェイム(vo,organ)他

ジョン・ヘンドリックスのところでも書きましたが、1964年の「YEH YEH」がとにかく好き。カッコよすぎる。60年代、ロンドン、モッズ…。ジョージィ・フェイムの安っぽいオルガンもいいし、この洒脱なヴォーカルも素晴らしい。これほどオシャレな音楽が他にあろうか?ところでこの曲、僕は大学1年生のときに初めて聴きました。ジョージィ・フェイムでもなくジョン・ヘンドリックスでもなく、マット・ビアンコのヴァージョンで…。で、結局これが大学1年生のときの僕の通低音みたいなものでした。ジョージィ・フェイムのヴァージョンはその後しばらく経ってから知ったのでした。

ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS /A Night In Tunisia (1960/blue note)

アート・ブレイキー(ds)リー・モーガン(tp)ウェイン・ショーター(ts)ボビー・ティモンズ(p)ジミー・メリット(b)
冒頭の「チュニジアの夜」は何度聴いても快感。特に例のブレイクの所。チュニジアのブレイクってばパーカーですが、パーカーとは180度違った方向からこのパートを吹き切るショーターは本当に凄かった。この爆発直前って感じのニュアンスは本当に堪らない。また、出だしのドラム&パーカッションもこれまた聞き物。圧倒的なブレイキーのドラムにショーターとティモンズのパーカッション、そしてリー・モーガンのマラカスが絡み合います。このリズムの洪水の中から徐々にピアノが浮き上がってきて、つぎにサックスが浮き上がり、この曲の土台が出来た所でリー・モーガンが入ってくる…。かっこいい~。ちなみにこのドラム&パーカションはラストにもふたたび出てきまして、ここではブレイキーのドラムソロなども入ってさらに盛り上がります。数ある「チュニジアの夜」の中でも最も阿鼻叫喚度の高い名演です。

ART BLAKEY AND THE JAZZ MESSENGERS /Kyoto (Rverside/1964)

アート・ブレイキー(ds)ウェイン・ショーター(ts)フレディ・ハバード(tp)カーティス・フラー(tb)シダー・ウォルトン(p)レジー・ワークマン(b)ウェリントン・ブレイキー(vo)
ジャズメッセンジャーズにジャズ史に輝く猛者達が入っていたのは65年までで、このアルバムなどはメッセンジャーズが神憑かっていた最後の時代のもの。ブレイキーのドラムが何処かエルヴィンのように地を這うがごとく突進してるようで、時代の熱さを感じます。50年代のブレイキーのドラム・スタイルから確実に変化していることがこのアルバムでは良く分かります。また、61年からの3菅編成もここらへんになるとテーマ部だけでなく全体的に有機的に絡み合っているようで、充実してます。このアルバムの中でも白眉は「ニホンバシ」。これはなんと渡辺貞夫の曲。この曲のじわじわとした盛り上がりは同時期のコルトレーン・カルテットも真っ青ってくらいのもんで、モード期のジャズメッセンジャーズの中でも最も好きなものです。ポリリズミックに叩きまくるブレイキーですが、よく聴くとものすごく繊細。シンバル音の処理などとても気を使っているようです。このアルバムのタイトルは「キョウト」ですが、「ニホンバシ」にしてくれたらより一層愛着が湧いたんだがなあ…。

MAX ROACH / SOLOS (1977/baystate)
マックス・ローチ(ds)


マックス・ローチのドラムソロのアルバム。66年の名作「DRUMS UNLIMITED」でも2曲ほどドラムソロがあったが、これは全編ドラムだけのソロ。ローチのドラムは端正というか単調というか、ダイナミックな変化が少ないのでそれほど好きでは無かったりします。しかしこのアルバムは物珍しさも手伝ってか、なかなか面白い。Bー2のハイハットのみの演奏は驚異的。

KRONOS QUARTET & RON CARTER /Monk Suite (LANDMARK/1985)

1-4.ロン・カーター(b)クロノス・カルテット
5-6. 9.クロノス・カルテット
7-8.クロノス・カルテット、チャック・イスラエル(b)エディ・マーシャル(ds)

クロノス・カルテットの演奏するモンク集。聞き物はロン・カーター加入の前半5曲。ロン・カーターのクセの強いベースを大々的にフィーチャーして、ソロもたっぷりと聴くことが出来ます。クロノス・カルテットの弦楽四重奏の方は最初のうちは面白いけど、だんだんソロのロン・カーターの方にばかり耳が行ってしまいます。ある種イージーリスニング的なものでもあるけれども、モンクの曲の奇麗さが浮き彫りに。この「オフ・マイナー」は最高。 �

BUDDY DE FRANCO and OSCAR PETERSON Play GEORGE GERSHWIN (verve/1954)

バディ・デ・フランコ(cl)オスカー・ピーターソン(p)他

実にいい感じのムード。デフランコとピーターソンのソロがかなりカッコイイのでイージーリスニング風というよりはムードミュージック風といった方がそれっぽい(どっちもどっちか…)。ガーシュインの曲は何故だかクラリネットが合う。バディ・デフランコのバップ経由のクラリネットもこれまたピッタリです。ストリングスとホーンのバックが「いかにも」な雰囲気を作り出してて、こういうのが好きな者としては実に嬉しい。 �

GEORGE LEWIS /GEORGE LEWIS and his New Orleans All-Stars (riverside/1951-53)


A面:ジョージ・ルイス(cl)レッド・アレン(tp,vo)ジム・ロビンスン(tb)レスター・サンチャゴ(p)ローレンス・マレロ(banjo)アルシード・パヴァジョー(b)ポール・バーバリン(ds)
B面:ジョージ・ルイス(cl)ローレンス・マレロ(banjo)アルシード・パヴァジョー(b)アルトン・パーネル(p,vo)

10インチ盤レコードで、重量盤。ジャケがイイのであえて紹介。ニューオーリンズ・ジャズのジョージ・ルイスといえば、「Plays Hymns」というアルバム(あまりニューオーリンズ臭さが無くて普通に聴ける)が大好きでよく聴くわけです。ところがジョージ・ルイスの本領を発揮したコテコテのニューオーリンズ・スタイルのものとなると、ほとんどあまり聴きません…。でもたまに聴きたくなるときがあって、そういうときにはやっぱり雰囲気を出してレコードで。というわけで、このアルバムですが、こういう古い10インチLPで聴いてるとなんだかニューオーリンズのバーなんかにいるような気になってきます(とはいえ僕は酒を一滴も飲めないんですが…)。このアルバムはB面のカルテット4曲(オリジナルはRiversideの「George Lewis Quartet」で、8曲入りのLP盤)が特に素晴らしい。「ダラス・ブルース」と「ケアレス・ラブ」の味わい深いスローブルース演奏に酔いしれます。 




STEPHAN MICUSのコーナー


(文:信田照幸)


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