other inst.(その2)
*いちばん下が最新記事です


MARVIN PONTIAC (JOHN LURIE)/ The Legendary MARVIN PONTIAC Greatest Hits (strange&beautiful music/1999)

ジョン・ルーリー(vo,g,harp,as,key,sitar)エヴァン・ルーリー(p)ジョン・メデスキ(org)ビリー・マーティン(ds)マーク・リボー(g)スティーヴ・バーンスタイン(tb)エリック・サンコ(b)カルヴィン・ウェストン(ds)マイケル・ブレイク(ts)他

これまでもラウンジリザーズのアルバムの中でジョン・ルーリーがヴォーカルを取る曲があったんだから、これも普通にジョン・ルーリー&ザ・ラウンジリザーズとして出せば良かったものを…(笑)。「幻のブルースマン、マーヴィン・ポンティアック」というあまりにも微妙な冗談が今となっては作品の価値観の低下になるのではと危惧する次第であります。さて、このアルバムはどっから聴いても普通にラウンジリザーズのアルバムなわけで、つまりは実質的にラウンジリザーズの最終作とも言えるでしょう。全面的にジョン・ルーリーのヴォーカルをフィーチャーしてますが、ジョン・ルーリーの声というのは何だか楽器と一緒で、バックの楽器の質感と一緒なのが笑えます。このアルバムはブルースマンの作品ということになってますが、それにしてはぜんぜん「ブルース」臭さが無いわけです。いや、ちっともブルースじゃないわけです。そこが逆に嬉しかったりします。これまでどおりのジョン・ルーリーの音楽。ミニマル音楽的要素にギニアやマリの音楽風味を加え、グルーヴィーでさりげなくジャジー。98年の「Queen Of All Ears」の延長線上にある音です。ラウンジリザーズとしてのサウンドは徐々に変化はしてきていて、あの「ノー・ペイン・フォー・ケイクス」(1986年作品。僕はこの雰囲気に長年憧れ、この雰囲気に触れるとホっと出来るのです)からは少し離れてしまってはいるものの、それでもやっぱりあの雰囲気も少しは残っています。これ以降ジョン・ルーリーは沈黙しているけれど(一説によると神経性の病気でサックスが持てなくなり音楽は出来なくなったとか…)、またこのマーヴィン・ポンティアックのように冗談っぽく復活してくれると嬉しいんだが…。 

DON BYRON / Romance with the Unseen (blue note / 1999)

ドン・バイロン(cl)ビル・フリゼール(g)ドリュー・グレス(b)ジャック・ディジョネット(ds)

2004年の「Ivey-Divey」と同様、ドン・バイロンにしては珍しくストレートなアルバム。ストレートとはいえビル・フリゼールが入ってるからかグニャグニャしたところもちらほらと…。フリゼールの世界が半分、ドン・バイロンの世界が半分、みたいな感じか。ドン・バイロンはそのクラリネット自体が魅力的なので、特に変な仕掛けをしなくても十分魅力的なアルバムが出来上がります。 かなり最高。名作です。

DON BYRON / Bug Music (nonesuch/1996)

ドン・バイロン(cl, bs)スティーヴ・ウィルソン(as)ロバート・デベリス(ts)チャールズ・ルイス(tp)スティーヴ・バーンスタイン(tp)ジェームズ・ゾラー(tp)クレイグ・ハリス(tb)ユリ・ケイン(p)ポール・メヤーズ(banjo)デヴィッド・ギルモア(g)ケニー・デイヴィス(b)フェローン・アクラフ(b)ビリー・ハート(ds)ジョーイ・バロン(ds)ディーン・ボウマン(vo)

なんと、このフリー系のメンバーでスウィングジャズです。ちゃんとやってます(笑)。エリントン、レイモンド・スコット、ジョン・カービーの音楽をやってます。レイモンド・スコットなんか選ぶところがシブイ。不思議なことにこれ、普段スウィングをあまり聴かない僕でもぜんぜん面白いのです。中間派的なところもあるにはあるけどやっぱ基本はスウィング。なんでこんなに面白いのか。 

DON BYRON / No-Vibe Zone��Live at the Knitting Factory (Knitting Factory/1996)

ドン・バイロン(cl, b-cl)デヴィッド・ギルモア(g)ユリ・ケイン(p)ケニー・デイヴィス(b)マーヴィン・スミッティ・スミス(ds)

白熱したライブ盤です。ドン・バイロンの4作目に当たります。メンバーは見てのとおりM-BASE中心。とはいえM-BASEっぽさは無い。ギルモアのギターがちょっとうるさいけど、それ以外は最高。ユリ・ケインのピアノが結構強烈。ドン・バイロンも気持ちよく吹きまくってます。

DON BYRON / Don Byron Plays the Music of Mickey Katz (nonesuch/1993)

ドン・バイロン(cl)他

ミッキー・カッツがらみの曲やらなにやらがごちゃごちゃと入ってるアルバム。そのごちゃごちゃの中でもひときわ光るのが1曲目「プロローグ」と16曲目「エピローグ」。これは素晴らしい。これだけで価値あり。この2曲に挟まれるからこそ、このジャンルごちゃ混ぜの各曲も聴けるのではなかろうかと。

NEAL SMITH QUINTET / Live At Smalls (Smallslive / 2010)

Neal Smith (ds) Steve Wilson (as) Eric Alexander (ts) Mark Whitfield (g) Mulgrew Miller (p) Dezron Douglas(b)

NYのライブハウスSmalls Jazz Clubのサイトからストリーミングでリアルタイムのライブが見れるのだが、これがなかなか面白くて、たまに見たりしてるのだ(日本時間のお昼前後)。NYに行かずしてリアルタイムで演奏が見られるってのは本当に凄いことだ。80年代や90年代、今現在のジャズの情報が欲しくてラジオや雑誌をチェックしまくったりあちこちのレコードショップに行って情報収集してたのが阿呆らしく思えてくるほど。で、このアルバムは昨年のSmalls Jazz Clubでのライブ音源。まさに今現在のNYのストレートアヘッド・ジャズ。この、今現在というところに価値がある。5年後10年後にこれ聴くとどんな感想になるのか分からないけど、とりあえずこれだけ元気ならいいじゃないか、なんて思ってしまう。

MANU KATCHE / Playground (ECM/2007)

Manu Katche(ds) Mathias Eick(tp) Trygve Seim(ts, ss) Marcin Wasilewski(p) Slawomir Kurkiewicz(b) David Torn(g)

マンフレッド・アイヒャーのドキュメンタリーDVD「Sounds and Silence」に本編以外のおまけとしてManu Katcheのこのアルバムのプロモビデオが入っていたんだが、これが凄く良かった。本編よりいいんじゃないのかってくらいに印象に残る。で、その映像を念頭に置いて本作を聴くとなかなかいい感じなのだ。レコーディングは北欧ではなくてNY。そこがいい。とはいえ音だけ聴くとやっぱりあの北欧の音なんだが(笑)。ECMというのは要するにマンフレッド・アイヒャーの音なんであって、個々のミュージシャンはその音を実現するための素材のようにもみえてしまう。いや、実際素材なのではないか。このアルバムもManu Katcheがどうのこうのという以前に、完全にECMの音だ。どんな個性的なミュージシャンもECMという型にはめ込まれてしまう(その秘密の一端はDVD「Sounds and Silence」で見ることが出来る)。しかし本作ではManu Katcheのねばりのあるドラムが時折その型をはみ出していて、そこがなんだかNYなんだよなと(笑)。まあ、フランス人なんだけどさ。 

Aldo Romano / Inner Smile (Dreyfus Jazz/2011)

Aldo Romano(ds) Enrico Rava(tp) Baptiste Trotignon(p) Thomas Bramerie(b)

ワンホーンカルテット。エンリコ・ラヴァが入ってると必ず「森と動物園」を期待してしまうのがクセになってるのだが(笑)。もちろん本作もそんなわけはなく、普通の落ち着いたヨーロッパ調バップ。アルド・ロマーノのハキハキしたドラムのおかげでどの曲も小気味よく、心地よい。2曲目Moreや11曲目I'm Getting Sentimental Over Youなどのポピュラー系などは、どこかのオシャレなショップのBGMでもいけるかも(笑)。

ROY HAYNES / Cracklin' (prestige/1963)

Roy Haynes (ds) Booker Ervin (ts) Ronnie Mathews (p) Larry Ridley (b)

ロイ・ヘインズの小気味よいドラムというのはかなり独特でロイ・ヘインズでしか味わうことが出来ない類のもの。なのでどんなアルバムでもドラムにロイ・ヘインズが入ってればハズすことは無いとも言えるわけで、中古盤屋などではそれなりの指標ともなる。息が長いだけにリーダー作も意外に多いんだが、中でも「We Three」(1958)「Just Us」(1960)「 Out of the Afternoon 」(1962)、「Cracklin'」(1962)の時期は別格で、どれもこれもなんだか味わい深い(共演者の地味な「Just Us」でさえちょっと凄い)。また、これらのアルバムはかなり早い時期からCD化されてたのでロイ・ヘインズといえば僕なんかはまずの時期のものを思い浮かべてしまう(そういえばあのスネア乱打の「Selflessness」もこの時期の録音だった)。で、この「Cracklin'」だけど、1曲目の細かいドラム聴いただけで、格の違いというか、質の高さを実感してしまうのだ。豪快というのとは少し違った爽快感。ブッカー・アーヴィンも変化球的でいい。

TONY SCOTT / At Last (1959)

Tony Scott (cl) Bill Evans (p) Jimmy Garrison (b) Pete LaRoca (ds)

トニー・スコットのライブ盤。客がガヤガヤしてて雰囲気が凄くイイ。かなり最高。同時期のエバンスの有名ライブ盤も似た様な雰囲気だったが、やっぱライブはこういった適当さがいいのだ。シーンとした会場で目をつぶって眉間にシワを寄せて咳払いひとつ出来ないような雰囲気で聴くとか、どっかおかしいんじゃないか。で、このアルバム、まだトニー・スコットがちゃんとやってた頃(笑)のものなので相当出来がいいのだが、やっぱりエバンスに耳が行ってしまうのは仕方の無いところか。トニー・スコットはクラリネットということもあって軽やかで、バップなんだけど、とりおりオールドスタイルが見え隠れしたりアラビックなフレーズが出たりしてこの時代の普通のバップには無いような面白さもある。また、59年という時代を考えるとこのメンバー構成はかなり興味深い。 

CONRAD HERWIG QUINTET / A Voice Through The Door (Criss Cross/2012)

Conrad Herwig (tb) Ralph Bowen(ts) Orrin Evans(p) Kenny Davis (b) Donald Edwards(ds)

音のカラーリング(あるいは雰囲気)に気を使ってる感じのところが凄くイイ。ゴルソン・ハーモニーにも通じるようなテーマ部の歌わせ方とか、かなりツボ。Conrad Herwigはラテン系アルバムも出してるけど、ここではラテン風味は押さえ気味で(せいぜいボッサ風があるくらい)全体的にかっこいいハードバップ。土臭さのようなものは無く、端正。Criss Cross特有のもっさりした音の感触が好みでは無いものの、この2管の気持ち良さでそんなものはどうでもよくなる。 

Louis Cottrell Trio / Bourbon Street (riverside/1961)

Louis Cottrell(cl)��Emanuel Sayles(g) McNeal Breaux(b) Alcide "Slow Drag" Pavageau(b)

ニューオーリンズ・スタイルはあまり好きでは無いんだけど、これは別。クラリネット+ギター+ベースというシンプルな構成。このアルバム、主役のLouis Cottrellももちろんいいけど、脇役のEmanuel Saylesのギターが渋くて最高。ニューオーリンズというよりブルースといったほうが的確か。1曲目、バップの定番「Perdido」で始まるセンスが好き。かなり最高のアルバム。

Steve Davis / For Real (Posi-Tone / 2014)

Steve Davis(tb) Abraham Burton(ts) Larry Willis(p) Nat Reeves(b) Billy Williams(ds)

まるで1960年頃のブルーノートのような2管ハードバップ。スティーブ・デイビスは最後期のジャズ・メッセンジャーズで目立ってたアーチストだけど(「Chippin' In」とか最高すぎる)、このアルバムでも当時とまるで変わらないセンス。エイブラハム・バートン(なんか懐かしい名前だな)との2管のアレンジは何故かジャズ・クルセイダーズを思い浮かべてしまったが(褒め言葉です)、かなり最高。ここ最近聴いたバップの中でもいちばんカッコイイかな。ちなみにピアノのラリー・ウィリスはジャッキー・マクリーンの大名盤「Right Now!」(1965年)でピアノを弾いてたあのラリー・ウィリスです。 

Herbie Mann / Just Wailin'(NEW JAZZ/1958)

Herbie Mann(fl) Charlie Rouse(ts) Kenny Burrell(g) Mal Waldron(p) George Joyner(b) Art Taylor(ds)

この時代のケニー・バレルの安定感はちょっと凄い。バレルはブルーノートとプレスティッジが当時の主戦場だったけど、ヴァーヴやサヴォイやニュージャズにも録音が沢山あって、当時の人気の凄さが分かる。ハービー・マンのこのバップ時代の作品でも例のブルージーなトーンで圧倒的な存在感を見せています。それはそうと、このアルバムはチャーリー・ラウズとハービー・マンとバレルのハモり具合の雰囲気が都会的で(バレルのせいだと思うが)、かなりいい感じ。ハービー・マンだからといって侮ること無かれ。ブルージーなバップの隠れ名作。 

Steve Davis / Say When (Smoke Sessions Records/2015)

Steve Davis (tb) Eddie Henderson (tp) Eric Alexander (ts) Harold Mabern (p) Nat Reeves (b) Joe Farnsworth (ds)

ジャズメッセンジャーズにも在籍してた(しつこいようだが「Chippin' In」は名作だった)スティーブ・デイビス。いつも安定したいいアルバムを出してるし、この人の参加してるアルバムは当たりが多い印象。このアルバムはJJジョンソンのトリビュートということだそうだが、これまた凄い。冒頭の3管アレンジからしてどことなく50年代ブルーノートを思い起こさせるのが嬉しいところ。こういうストレートなハードバップは滅茶苦茶好きです。また、メンバーが強力。特に重鎮ハロルド・メイバーン。センスの良さが抜群で、かつてリー・モーガンのブルーノート盤に参加してたときよりもややスケールが大きくなったような、器の大きな演奏。 

Lawrence Marable Quartet featuring James Clay / Tenorman (Fresh Sound Records/1956)

Lawrence Marable(ds) James Clay(ts) Sonny Clark(p) Jimmy Bond(b)

ウエストコースト時代のソニー・クラークが聴けるアルバム。ソニー・クラーク作の曲も3曲あって、有名な「Minor Meeting」の初演がここに入ってるバージョンらしい。ブルーノートのバージョンと聴き比べると面白い。とはいえこのアルバムのリーダーはドラムのローレンス・マラブル。そのせいか何なのか分からないがピアノの音がややオフ気味なのが少し残念。その代わりと言ってはなんだが、ジェームス・クレイのサックスが太い音で入ってて、これがなかなか凄い。フレーズ面ではソニー・クリス的なこぶし回し軽快さがあって、音そのものはティナ・ブルックスやスタンリー・タレンタインなどに似た太さがあり、ときおりモダン・スウィング的な(中間派的な)古臭さも感じさせるという、なんか妙な個性。ベイシー楽団などにいそうな感じ。というわけで完全にジェームス・クレイ・カルテット的なアルバム。 

Joe Venuti / Fiddle On Fire (His Master's Voice/1956)

Joe Venuti(vln)��the Paul Whiteman Orchestra , George Barnes(g) Mundell Lowe(g) Al Caiola(g) Buddy Weed(p) etc.

ジョー・ヴェヌーティって人のイメージってば戦前のエディ・ラングとのデュオが強烈で、多くの人はあの時代の印象ばかりあるであろう大御所だけど、実はやたらと息の長いアーチストで、70年代までアルバムを出し続けている。そしてどれもが初期と同じようなレベルの優雅なというかややクラシカルなタッチの演奏だったりする。このアルバムは1956年、あのポール・ホワイトマン・オーケストラをバックに録音されたもの。3曲目などはなにやらラウンジ・ミュージックのようでもあってオシャレな感じが。

Dorothy Ashby / The Jazz Harpist (Regen/1957)

Dorothy Ashby(harp) Frank Wess(flute) Eddie Jones, Wendell Marshall(b) Ed Thigpen(ds)

この時代にハープのジャズというのは珍しいが、中にはバグパイプやウードのジャズもあることだし、それらよりはメジャーだろう。というのもドロシー・アシュビーは共演者に恵まれているからなわけで、ここでもフランク・ウェスが好演。というわけでこれはドロシー・アシュビーのファースト。フランク・ウェスのカルテットみたいな感じになってるけど、フランク・ウェスはこの後ドロシー・アシュビーの2枚目の「Hip Harp」(Prestige/1958)と3枚目の「In a Minor Groove (New Jazz/1958)」にもフルートで参加している。ドロシー・アシュビーのハープはこの1枚目がいちばんハープらしさが出ているような演奏。その後は徐々にギターっぽい扱いな感じになっていく印象がある。 

Bennie Green / Blows His Horn (Prestige /1955)

Bennie Green(tb, vo) Charlie Rouse (ts) Cliff Smalls(p) Paul Chambers (b) Osie Johnson (ds) Candido Camero (per)

ベニー・グリーンという人は、JJジョンソンやカイ・ウィンディング、あるいはカーティス・フラーといったモダンなトロンボーン奏者よりも、むしろJCヒギンボサムなどのオールド・タイプに近い。だからブルーノートから出しても土臭いソウル感がぬぐえないというか、そこが持ち味だったりする。ここでは同じように垢抜けない(というか土臭い)感覚のあるチャーリー・ラウズとの双頭。ベースにチェンバースがいてもキャンディドがソウルにしちゃって、なかなかファンキーです。4曲目「Say Jack」などはもうほぼコテコテR&Bなのだがチェンバースのベースがかろうじてモダンさを保っているといった感じ(これでロッキンなベースだったらほとんどタイニー・グライムスになるところ)。とはいえラストの「Hi Yo Silver」は完全にジャンプ・ブルース~R&Bとなってますが。

Jimmy Cleveland / Rhythm Crazy (EmArcy/1959)

Jimmy Cleveland(tb) Art Farmer(tp) Jerome Richardson(fl, ts, bs) Benny Golson(ts) Hank Jones(p) Milt Hinton(b) Osie Johnson(ds) Gigi Gryce(arr)

The Jazztet(アート・ファーマー=ベニー・ゴルソン)とThe Jazz Lab Quintet(ジジ・グライズ=ドナルド・バード)が混ざったようなモダンな雰囲気のあるアルバム。1曲1曲が短いところまで似ている。とはいえどこかモダン・スウィング風なというか古風なノリもあって、そこがまたイイ。トロンボーン奏者のアルバムというのはアレンジがカッコイイものが多いように思うのだが、これもまたアレンジ(ジジ・グライス)が素晴らしい。 

Gregory Porter / Take Me to the Alley (blue note/2016)

Gregory Porter(vo) Chip Crawford(p) Aaron James(b) Emanuel Harrold(ds) Yosuke Sato(as) Tivon Pennicott(ts) Alicia Olatuja(vo) Keyon Harrold(tp) Ondrej Pivec(org)

ジャズ・ボーカルというのは普段ほとんど全く聴かないのだが(トータルでボーカルアルバムは500枚程度しか聴いてないかもしれない)、このグレゴリー・ポーターは別。前作「Liquid Spirit」(2013)が出たときはビックリしてよく聴いたものだが、この新作もまた素晴らしいアルバムとなっている。とにかく声がイイ。歌い方は肺活量のあるクルーナーといった感じで、静かに歌っていてもその裏側の余裕が何やら凄い。声を張り上げないところがいいのだ。どこかビル・ウィザーズにも似てたりする。ジャズとしてもソウルとしても聴ける。全体的に落ち着いたトーン。

Jo Jones / Smiles(Black And Blue (1969)

Jo Jones(ds) Gerry Wiggins(p) Major Holley(b)Milt Buckner(org)Illinois Jacquet(ts)

なんでもないような曲でもジョー・ジョーンズのドラムの技に注目してれば聴けちゃうんだから凄い。両手両足の躍動感が音から見えてくるほど。このアルバム、9曲がジェリー・ウィギンズ・トリオでの演奏で残りの後半がイリノイ・ジャケーとミルト・バックナーらとのコテコテセッション。ベイシー・オーケストラではいつもジョー・ジョーンズとフレディ・グリーンの気持ちいいリズムに耳が行くけど、ソロ作になるとその小気味良いジョー・ジョーンズの技を沢山聴けるのが嬉しい。ジェリー・ウィギンズのしまりの無いピアノがなんともスウィンギーで、これまた嬉しい。 

Eydie Gorme / Blame It On The Bossa Nova(Columbia /1963)

Eydie Gorme(vo) Clark Terry(tp) Al Caiola(g) Mundell Lowe(g) Boomy Richards(sax) Johnny Pacheco(per)etc.

クラーク・テリー、マンデル・ロウ、アル・カイオラらの参加したポピュラー歌手イーディー・ゴーメのボサノバ・アルバム。このレコードがCD化した際に2曲ボーナストラックがついたということを今ごろ知って驚いた次第。このアルバムは僕が大学時代に最も繰り返し聴いたレコードのベスト10には入る。あまりに聴きすぎてその後全く聴かなかった。これを知るきっかけはテレビCMでこの中の「ギフト」が使われたこと。JTのCMだったかな(よく覚えてないが)。フルートの音色が妙にかっこよかった。で、このアルバム、ポピュラー歌手のものとはいえバックがとにかく素晴らしい。アレンジャーも凄かったんだろうけど(Nick Perito、Marion Evans、Billy May)、演奏がとにかくイイ。スタジオミュージシャンがそつなくこなしたというレベルを遥かに超えて、各ソロが冴えておりジャズとしても聴きどころが多い。

Max Roach / Easy Winners (soul note/1985)

Max Roach(ds) Cecil Bridgewater(tp) Odean Pope(ts) Tyrone Brown(el-b) Cecelia Hobbs, John McLaughlin Williams(vln) Maxine Roach(viola) Eileen Folson(cello) Ray Mantilla (per)

マックス・ローチという人はブラウン=ローチ・クインテットを除けば自身のグループのメンバーが地味なことも多く、それゆえブレイキーなどよりあまり聴く機会も無かったりするのだが、地味なメンバーの中でもサックスのオーディアン・ポープは僕はかなり好きで、このアルバムもそのオーディアン・ポープへの興味から聴いてみたらトランペットもエレベもそしてもちろんドラムも全部良かったという次第。パーカッションの入る1曲目なんかストリングスを含めすべてがスウィングしていて気持ちいいことこの上ない。ちなみにストリングスのマキシン・ローチとエイリーン・フォルソンはこの後、The Uptown String Quartet(これも結構好きです)のメンバーとして活躍。

Ralph Peterson Jr. / Back to Stay (Sirocco Jazz/1999)

Ralph Peterson Jr(ds) Bryan Carrott(vib) Beldon Bullock(b) Ralph Bowen(ss) Michael Brecker(ts) 
80年代末から90年代半ばくらいまでにかけてのラルフ・ピーターソンはSomethin' ElseとかDIWといった日本のレーベルで名前をよく見かけたものだが(当時のスウィングジャーナルでもスポンサーの関係で常連だったし)、Somethin' Elseから居なくなった途端に名前を見かけなくなったりして、やはり宣伝の力というのは大きいのだなあと思ってたわけです。そんな関係で日本人にとっての90年代ジャズのメインストリームというのはスイングジャーナルによく載ってたアーチストってことになりそうだけど、ラルフ・ピーターソンなんかはその代表格なのでは。というわけでそのラルフ・ピーターソン。Somethin' Else後はEvidenceから2枚のアルバムを出し(どちらもsax,vib,b,dsのカルテット)、その後Sirocco Jazzから出たのが本作。編成的にはEvidenceレーベルの編成+マイケル・ブレッカー(数曲だけだけど)となってます。で、そのブレッカーの入った1曲目が素晴らしい。手数の多いラルフ・ピーターソンのドラムが本当に気持ちいいです。

Joe Farnsworth / Time to Swing (Smoke Sessions / 2020)

Joe Farnsworth (ds) Kenny Barron (p) Peter Washington (b) Wynton Marsalis (tp, 1~4)
ドラマーのジョー・ファーンズワースの新譜。とても地味だけど秋の天気のいい日にぼんやりとBGMで流すのにちょうどいい感じ。最初の4曲だけトランペット入りのカルテット編成。で、そのトランペットというのがウィントン・マルサリス。1曲目はどこか昔のコンコード・レーベルのモダン・スウィング的なところもあるが、2曲目なんかは典型的なウィントンのパターン(ウィントンの2005年のアルバム「Live at the House of Tribes」ではこのジョー・ファーンズワースがドラム叩いてました)。この破綻の一切無いトランペットはジャズ的というよりイージーリスニング的と昔から捉えているのだが、如何か。後半はドラムソロ曲を挟んでピアノトリオとなるが、気持ちよくスウィングする6曲目がとてもいい。で、このアルバムで気づいたのだが、ジョー・ファーンズワースのドラムはどこかシェリー・マンっぽい。

Ches Smith and We All Break / Path of Seven Colors (Pyroclastic Records/2021)

Ches Smith(ds, per, vo) Miguel Zenon(as) Matt Mitchell(p) Nick Dunston(b) Sirene Dantor Rene(vo) Daniel Brevil(tanbou, vo) Fanfan Jean-Guy Rene(tanbou, vo) Markus Schwartz(tanbou, vo)
今年(2021年)聴いた新譜の中ではこれが一番繰り返し聴いたアルバムかもしれない。ジャズとハイチの伝統音楽(ブードゥー)とのコラボレーション。とても生命力溢れる音楽で、リズムのグルーヴ感がとにかく爽快。tanbouというハイチのコンガみたいな楽器もとてもイイ。リーダーのチェス・スミスはECMやclean feedなどにもリーダー作があって、ティム・バーンやマーク・リボーをはじめとした様々なクループにも参加してるけど、こんなに注目したのは今回が初めて。


(文:信田照幸)


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