Trumpet (その1)


MILES DAVIS / Milestones (1958/Columbia)

Miles Davis(p) Cannonball Adderley(as) John Coltrane(ts) Red Garland(p) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones (ds)

数あるマイルスのアルバムの中で最も好きなのがこれ。空気感や音の質感なども含め、すべてがお気に入り。キャノンボール~トレーン~マイルスの3管は、同時代のブルーノートでさえ匹敵するものが無いほどのかっこよさ。なにげにホーンのアレンジもいいんだろう。レッド・ガーランド・トリオだけで演奏される「billy boy」があるけど、これがまた最高すぎる。レコーディング中に音楽的違いから怒って(?)帰ってしまったというガーランドだけど、こんな最高の演奏をしてたのにもったいないなあなんてことを思ったりもする。ところでこのアルバムのCDにはオマケで3曲分の別テイクが追加されてるものが出てるけど、実はそれをまだ聴いていない。Milestonesはあくまで6曲で完結してなきゃ。なんて言いながらすごく聴きたい気もるすんだが。ちなみに僕はこのレコード、中学生のときに買って、買った当時は何が凄いのかサッパリ分かりませんでした(その頃はジャズってのはムード音楽の一種くらいにしか思ってなかったもんで。笑)。今じゃ僕の無人島盤候補ナンバーワンです。

MILES DAVIS / Miles In The Sky (1968/columbia)
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(p, el-p) Ron Carter(b) Tony Williams (ds) George Benson(g)

もう出だしのハービーのエレピの音だけでマイルス独特の空気になってるんだから凄い。トニーの時代はどれも本当にかっこいいけど、このアルバムの前後(ひとつ前がNefertiti、ひとつ後がFilles de Kilimanjaro)はとにかくいろんな工夫があって、何度聴いても新鮮な感じがする。このアルバムからはギターが入るし(1曲だけ)エレピも入るし、いよいよ新しい時代に突入するという雰囲気が満載だけど、やっぱりどこかモダンジャズのストイックさが残ってるところがいいのだ。

MILES DAVIS / FILLES DE KILIMANJARO (1968/columbia)
Miles Davis(tp) Wayne Shorter(ts) Herbie Hancock(el-p) Chick Corea(p, el-p) Ron Carter (b) Dave Holland(b) Tony Williams(ds)

ハービー~ロンと、チック~ホランドとの2つのセッションから成るアルバムだけど、統一感はある。トニーが相変わらず凄くて、トニーばかり聴いてしまいます。4ビートのモダンジャズからフュージョンへという変化の途上にあるエネルギーみたいなものも感じます。

MILES DAVIS /berlin '73 (1973)
Miles Davis(tp, org) Dave Liebman(ts, ss, fl) Pete Cosey(g) Reggie Lucas(g) Al Foster(ds) Mtume(per) Mike Henderson(b)

いよいよアガパンのスタイルになってきた頃のライブ。音は悪いが内容は凄い。マイルスのキレ気味のブロウは聴きもの。

MILES DAVIS / Four & More(1964/Columbia)
Miles Davis(tp) George Coleman(ts) Herbie Hancock(p) Ron Carter(b) Tony Williams(ds)

トニーの最も凄い演奏はこれ。とにかく凄い。昔さんざん聴いたものだけど、これは何度聴いてもテンション上がります。メンバー的に違和感ありありのジョージ・コールマンも滅茶苦茶いい演奏してます。スウィング感を追及したような、とにかく凄いノリ。

MILES DAVIS / Round About Midnight(1955-56/Columbia)
Miles Davis(tp) John Coltrane(ts) Red Garland(p) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)

これを聴きまくったのは大学生の頃。とにかく雰囲気がいいし、演奏がキレまくりだし、プレスティッジ時代とは明らかに何かが違うのが分かる。裏にギルのアレンジがある。

MILES DAVIS/Walkin' (1954/prestige)
Miles Davis(tp) Lucky Thompson(ts/1, 2)J. J. Johnson(tb/1, 2) David Schildkraut (as/ 3-5) Horace Silver(p) Percy Heath(b) Kenny Clarke(ds)

このへんの音は大好き。ホレス・シルヴァーの左手の動きの独特さかげんに注目してしまう。ラッキー・トンプソンの風呂場サックスだって味だと思えば結構いける。にしてもケニー・クラークのパーシー・ヒースの音。この「感触」が最高。

MILES DAVIS / PARAPHERNALIA(1969/JMY)
マイルス・デイビス(tp)ウェイン・ショーター(ts)チック・コリア(p)デイブ・ホランド(b)ジャック・ディジョネット(ds)
ディジョネットがマイルス・グループに参加して最初のアルバムはあの超駑級アルバム「1969マイルス」。1969年7月25日の録音ですが、こちらは1969年11月3日録音のライブ盤。あの「ビッチェズ・ブリュー」が1969年8月の録音だからこれはその3ヶ月後。この時期のいつものパターンなんですが、比較的ゆったりとはじまる「ディレクションズ」は怪しさも満点でチックも才気にあふれています。2曲目の「ビッチェズ・ブリュー」でのショーターとディジョネットのやりとりはあの「モト・グロッソ・フェイオ」を思い浮かべてしまうほど面白く、ここでもうひとりパーカッションがいたらなあなんて感じてしまいました。そのあとのチックのソロとかは別にフツーです。チックはフリー系のソロよりもTRFのファーストでのようなリズムに乗ったときのほうが好きです。ところでショーターとディジョネットの素晴らしいやりとりは3曲目の表題曲でも変わらず素晴らしい。そんで思ったんですが、ショーターの名盤「モト・グロッソ・フェイオ」はこの時期のエレクトリック・マイルスのライブの内容に非常に近いですね。エレクトリック・マイルスには無いメロディアスな部分をショーター流に盛り込んでブラジル風味をつけたのが「モト・グロッソ・フェイオ」のような気がしないでもない。

MILES DAVIS /Double Image (1969/Moon)
マイルス・デイビス(tp)ウェイン・ショーター(ts)チック・コリア(p)デイブ・ホランド(b)ジャック・ディジョネット(ds)
1969年10月27日の録音。「ビッチェズ・ブリュー」の2ヶ月後。音質は途中からよくなるという変なCDです。ラスト近く、ホランドのウォーキング・ベースがなんか清清しい。このメンバーの演奏にハズレはありませんが、このアルバムは特に素晴らしいです。例のごとくメドレー形式でフリーっぽい演奏。

MILES DAVIS/Blue Haze (1953-54/prestige)
マイルス・デイビス(tp)パーシー・ヒース(b)アート・ブレイキー、マックス・ローチ、ケニー・クラーク(ds)ホレス・シルバー、ジョン・ルイス、チャールズ・ミンガス(p)他
聴けば聴くほど味がある。サックスが入る一曲目を除いてすべてワンホーンのアルバム。マイルスの中でもあまり注目されないアルバムかもしれませんが、かなりいいアルバムです。3つのセッションから成り立っていますが、メンバーの違いから来るバラバラ感はあまり気になりません。ただ、ブレイキーがドラムを担当してるセッションはどれも雰囲気がかっこいい。今さらながらブレイキーのセンスに驚くばかりです。全体的にどことなく機嫌の良さそうなマイルスなので、聞いてる方はホッとするっていうか、ほのぼのしてきます。

MILES DAVIS/MILES DAVIS and MILT JAKSON (1955/prestige)
マイルス・デイビス(tp)ミルト・ジャクソン(vib)ジャッキー・マクリーン(as)レイ・ブライアント(p)パーシー・ヒース(b)アート・テイラー(ds)
このへんのマイルスはかなり好き。ミルト・ジャクソンがソロを取るときになんとなくMJQっぽく聞こえてしまうのはレイ・ブライアントがおとなしいからでしょうか。こうやって聴くとマイルスとミルト・ジャクソンってなかなか相性よさそうです。ファンキーの塊とかいわれるミルト・ジャクソンですが実はマイルスと同じような知的リリシズムを備えているように感じます。

MILES DAVIS/Bag's Groove(1954/prestige)
マイルス・デイビス(tp)ミルト・ジャクソン(vib)ソニー・ロリンズ(ts)ホレス・シルバー(p)セロニアス・モンク(p)パーシー・ヒース(b)ケニー・クラーク(ds)
55年に自身のクインテットを作るときに最初に声をかけたサックス奏者がロリンズだったそうで、もしロリンズがマイルス・クインテットに入ってたら本当に最強のグループになってたと思うんですが…。このアルバムのB面はまさにマイルス~ロリンズのフロントによる幻のクインテットの演奏。シルヴァー~ヒース~クラークのリズムセクションがかっこいい。曲によってはフロントのソロのときのホレス・シルヴァーのバッキングがおとなしい気がするんですが、A面と同じ理由からなのか?

MILES DAVIS /Bitches Brew (1969)
マイルス・デイビス(tp)ジャック・ディジョネット(ds)レニー・ホワイト(ds)ドン・アライアス(ds)Jim Riley(per)他
マイルスの中でも最も人気の高いアルバムではなかろうか?人気の原因はいうまでもなくこの圧倒的なまでの分かりやすさ。ここまでうまく編集したテオ・マセロの手腕はやはり素晴らしい。ちなみにこの時期のブートは結構出ていて、それらのライブを聴けば当時のマイルスの目指してた音楽というのがおぼろげに見えてきます。ごった煮なのにひとつの「リズム」で統一されているという快感が気持ちいい。そして、すべての楽器がある方向に向かって突進しているっていうその「感じ」。個々のソロ(結構みんな気合い入ってます)よりも全体から感じられるグルーヴ感を全身で感じていたいアルバム。

MILES DAVIS /In Concert (1972)

エレクトリック・マイルスのライブ盤の中でもかなり好きな「In Concert」。ピート・コージーなんか居ないほうがいいのだ。見よ、このマイケル・ヘンダーソンとレジー・ルーカスのねばりのあるコンビネーションを!ギターはレジーのワウだけで十分。そしてこのパーカッションの洪水。アル・フォスターのドラムはちっともファンキーじゃないけど、マイルスはドラムを白っぽくすることであえてFUNKを避けたのではないか。パーカッションがアフロ系ではなくインドのタブラなんか取り入れてるところなんかも象徴的。FUNK路線に走ったハービーとは実に対照的。この「In Concert」はあの「On The Corner」の4ヶ月後に録音された演奏。ライブなもんで「On The Corner」ほどスッキリとはまとまってないけど、こういった渾沌こそ69年以降のマイルスの魅力。

MILES DAVIS /On The Corner (1972)
昔はクラブDJ達に大人気とか言われてましたが、このアルバムは何故にこんなに普遍性を持っているのかといえば、要するにこのリズムではないでしょうか。マイルスは当時ヒップな黒人の若者達に聴いてもらいたかったと語ってますが、ヒップな黒人達がこれに飛びついたかどうかはともかく、大衆性という意味ではこの時代のハービーに大きく差をつけられてしまったことは事実(ハービーのヘッドハンターズの前座なんてこともあったらしい)。ではヘッドハンターズとオン・ザ・コーナーとでは何がそんなに違ってたのか…?曲自体のメロディというのももちろん大きいのですが、決定的なのはリズムです。おおまかに言ってヘッドハンターズはファンクのリズム、オン・ザ・コーナーはかなりロック寄りのリズム解釈なのです。スッキリと分かりやすいファンクにしたハービーは黒人だけでなく白人層にも受けた。がしかし、考え抜かれて試行錯誤してるのが音にそのまま残るオン・ザ・コーナーは一部の音感の良いファン(?)にしか受けなかった。(今ではどちらも大衆から非常に高い評価を受けてますが)。アガルタ・パンゲアなどになるともっと顕著になるのですが、マイルスは自分の音楽をあえてコテコテのファンクにしなかった。ファンクにしてしまうと黒人層だけにしかアピールしないと読んだのかもしれません。マイルスの目はおそらくもっともっとたくさんの人達へと向かっていた。白人にも黒人にも、いや世界中にアピールするようなリズム作り。その試行錯誤がこのアルバムから聞き取れます。そしてこのアルバムが今だに人気があるのは、その試行錯誤の途上にある独特のエネルギーの凄さ、今の耳でも新鮮な実験性、未完成の部分を残しているからこそ聞き手がその残りの部分を想像力で補えるという音楽的なゆとり、そしてなによりも進化の途上という勢いがそのままハッキリと現れてるリズム、それらによるものと思います。

MILES DAVIS AND HORNS (1951-53/ prestige)

マイルス・デイヴィス(tp)ジョン・ルイス(p)他に、1-4がアル・コーン(ts)ズート・シムズ(ts)ケニー・クラーク(ds)ソニー・トルイット(tb)レオナード・ガスキン(b)5-9がベニー・グリーン(tb)ソニー・ロリンズ(ts)パーシー・ヒース(b)ロイ・ヘインズ(ds)
1953年のセッション(1ー4)が実に素晴らしい。何が凄いってケニー・クラークのドラム。大雑把に見えながらも実にこまかくスイングするシンバル・ワークが最高です。ひたすらリズムセクションの一部に徹するかのようなジョン・ルイスのセンスのいいプレイも見逃せません。そして全員でガンガン飛ばしてい くように感じられる見事なアレンジ。アル・コーンとジョン・ルイスがアレンジを担当していますが、実に素晴らしい。もうこの4曲だけで名盤の仲間入りってことでいいのではないでしょうか。この頃の何処に行くのか分からないようなマイルスのプレイ、とてもいいです。

MILES DAVIS / The Musing Of Miles (1955/prestige)

マイルス・デイヴィス(tp)レッド・ガーランド(p)オスカー・ペティフォード(b)フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
たとえばB-1のガーランドの絶妙なイントロのつけ方。もうこれだけで「あの時代」のモダンジャズの雰囲気です。これこそジャズの「黄金時代」の音。このイントロにつづいて出て来るマイルスのクールなプレイがこれまた素晴らしい。少ない音数で語るアドリブはそのまんまアーマッド・ジャマル。B-2では不思議なイントロのナイト・イン・チュニジアが聞けます。全然フィリー・ジョーっぽくないフィリー・ジョーもなんか不思議。このアルバムは全体的にドラムがややおとなしくて、そこだけがちょっと不満か…。ちなみにこれはマイルス唯一のワンホーンで通したアルバムです。

MILES DAVIS /Get Up With It

トニーが抜けた後のエレクトリック・マイルスのアルバムの中でも絶対に外せないのがこのアルバム。32分に及ぶ「カリプソ・フレリモ」(1973年録音)だけで1枚のアルバムになってたら相当の人気盤だったに違いありません。マイルスの右腕テオ・マセロのセンスの素晴らしさここに極まれり、といったところか。アガ/パン期よりもファンキーです。怒濤のアフロ・ファンク・リズムで渾沌とした世界観を作り上げ一気に飛ばすマイルスは、ポップ化して分かりやすくなっていったハービー・ハンコックやチック・コリアやウェザーリポート等とは正反対の姿勢だったことが分かります。

MILES DAVIS / The Complete Live At The Plugged Nickel 1965 

トニーの居た頃のマイルス・グループは全部聴く価値あり。トニーの4ビートはどこかタテノリ感があって、スッキリとスマートに聴かせてくれます。特に60年代のトニーのプレイはどれもスマートです。そんなわけでこのプラグドニッケルのコンプリートもどこから聴いても素晴らしい。中には客が大声でしゃべったり騒いだりしてるものがあったりしますが、これも当時のライブハウスの雰囲気を伝えるものとして楽しめます。また、このプラグドニッケルで特に素晴らしいのはショーターで、同時期の爆発コルトレーンとは対照的にメロディラインを重視したようなスタイルで考え考えソロを紡ぎ出していきます。

MILES DAVIS /Jack Johnson (1970)
変化に富み、強烈なブラックミュージックになっているB面が圧巻。このB面は当時のマイルス・グループのライブ等でもお馴染みの展開ですが、テオ・マセロの巧みなテープ切り貼りの影響も大きいでしょう。途中「イン・ア・サイレント・ウェイ」が闇の中から浮かび上がってくる所なんか鳥肌もの。ところで、A面の方なんですが、僕は聴くときの気分によってぜんぜん違う印象をいつも受けてしまいます。あるときは、「マイルスのオリジナル・アルバム史上最も田舎臭くてダサい、もたつくロックのリズムに中途半端なブルース・フィーリングのギター、いっそのことバディ・ガイやジョニー・ギター・ワトソンに弾いてもらえばよかったのに…」なんて思うときもあれば、「殺伐とした雰囲気がなかなかかっこいいなあ…」なんて思うときもあるのです。マクラフリンのギターはたぶん永遠に好きになれないでしょうが、マイケル・ヘンダーソンのベースがあまりにカッコイイので、きっとこのA面も好きなんだと思うのですが…。

MILES DAVIS /The New Miles Davis Quintet(1955/prestige)

マイルス・デイビス(tp)ジョン・コルトレーン(ts)レッド・ガーランド(p)ポール・チェンバース(b)フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
歴史順に聴いてきてこのアルバムに辿りつくと、つくづくケニー・クラークとパーシー・ヒースの偉大さに気づかされます。だいたい「バグス・グルーヴ」なんてドラムだけでも存在感が物凄いことになってるし…。それにひきかえこのアルバム。僕の好きなフィリー・ジョーがドラムたたいてるってのになんだか 小じんまりとしてておとなしい。どうしたんでしょうか?そういえばこれより5ヶ月前録音の「MUSING OF MILES」からフィリー・ジョーが入りました。とはいえ、これはいわゆる50年代黄金クインテットの最初のもの。そう思って聴くとなんだか全体的に重みを感じます。特に3曲目以降。バックのトリオがやや単調なのがちょっと不満ですが、軽い感じで聴き流せるマイルスもたまにはいいか。

MILES DAVIS /MILES & MONK AT NEWPORT (1958)

マイルス・デイビス(tp)キャノンボール・アダレイ(as)ジョン・コルトレーン(ts)ポール・チェンバース(b)ジミー・コブ(ds)ビル・エバンス(p)
A面がマイルス・セクステットの58年の演奏で、B面がモンク・カルテットの63年の演奏。というわけで、マイルスはA面だけ。メンバーは「カインド・オブ・ブルー」組。でもノリはあの「マイルストーンズ」並。ちなみに「マイルストーンズ」から入れ代わったのはピアノとドラムです。マイルス・グループはキャノンボールが居た頃がいちばん好きだなあ。当時第2のパ-カ-と言われていたキャノンボール。マイルスはこのキャノンボールを前にするとかつてのパーカー時代の熱狂が蘇って来るのでは、なんて思ってしまう程。キャノンボールが入ってるだけでなんとなくごきげんなノリの演奏になるような気がしてしまうのであります。このアルバムも1曲目の「アーリューチャ」から飛ばします。「ストレート・ノー・チェイサー」と「トゥー・ベース・ヒット」なんかは「マイルストーンズ」のライブ版みたいな感じが…。「マイルストーンズ」こそ最高のアルバムと思う僕なんぞには、このアルバに堪らない魅力を感じてしまいます。B面もこのライブのつづきだったらどんなに素晴らしかったろう…。

MILES DAVIS /Miles Davis vol.1 (blue note/1952,1954)

1ー10(1952): マイルス・デイビス(tp)J.J.ジョンソン(tb)ジャッキー・マクリーン(as)ギル・コギンス(p)オスカー・ペティーフォード(b)ケニー・クラーク(ds)
11-15(1954): マイルス・デイビス(tp)ホレス・シルヴァー(p)パーシー・ヒース(b)アート・ブレイキー(ds)
マイルスのスタジオ音源というのは一種異様な緊張した空気が流れているものですが、この52年の音源には何故かそういったものが無い。どこかゆったりとして開放的な空気。その要因は明らかにリズムセクションにあるわけですが、マイルスのトランペットにも原因がある。でもこれはこれでいいかもしれない。んで、54年の音源になると、これはもういつものあの音世界なのです。どこかピリっとしていてマイルス作品独特の空気が流れている。ちなみにこの中間の53年の音源はVol.2.の方に入っています。年代順に比べてみると、マイルスがヤク中から立ち直る経緯のようにも聴こえるところがまたいかにもジャズっぽくて面白い。ところでこのアルバムの聞きものは54年の方の音源。特にThe LEAPにおけるブレイキーとシルヴァーの元祖メッセンジャーズ・コンビのノリが素晴らしい。シルヴァーの物凄いソロに後年のシルヴァーの大活躍ぶりをも予感させます。

MILES DAVIS /Miles Davis vol.2 (blue note/1953)

マイルス・デイビス(tp)J.J.ジョンソン(tb)ジミー・ヒース(ts)ギル・コギンス(p)パーシー・ヒース(b)アート・ブレイキー(ds)
マイルスのブルーノート盤は3枚あって、どれも名盤の誉れ高い充実した内容。しかし、「vol.1」に関してはやはり52年の録音がちょっと。「Something Eles」に関しては1曲目のわざとらしさがちょっと…。というわけでCD1枚まるごと肯定出来るのはこのアルバム。…なんてのは僕の勝手な暴言なのであまり信用しないでください。でもやはりこのアルバムに収録されてる音源は皆素晴らしい。アルフレッド・ライオン色が強く出ているようにも聴こえます。あのブルーノート特有の「音」でマイルスを堪能出来るうれしさ…。

 


(文:信田照幸)


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