Vibes
(いちばん下が最新記事です)


Boby Hutcherson / Happenings (1966/bule note)
ボビー・ハチャーソン(vibes)ハービー・ハンコック(p)ジョー・チェンバース(ds)ボブ・クランショウ(b)
60年代のボビハチのリーダー作は結構どれも魅力があります。デビュー当時のジョー・チェンバースとのコラボレーション的アルバムや、ジャッキー・マクリーンの「ワン・ステップ・ビヨンド」等への参加、ドルフィー「アウト・トゥ・ランチ」、グレシャン・モンカー「エヴォリューション」、アーチー・シェップ「オン・ディス・ナイト」…などなどに参加してたハッチャーソンはどこをとってもかっこいい!硬質の音もさることながら、作曲センスも光ります。ところで、このボビー・ハッチャーソンの印象は年代によっても随分変わります。個人的にはフュージョン作品(マイルストーン・レーベル時代も含む)以外は全部好き。90年代のマッコイ・タイナーとのデュオ作「マンハッタン・ムーズ」ではアコースティックの魅力いっぱいに最高の雰囲気と演奏を見せてくれてるし、これからもアコースティックだけでいって欲しい…。

Milt Jackson / Big Bags (1962/Riverside)
一体何枚のリーダー作を出して何枚のアルバムに参加しているのかサッパリわかりませんが、どんな所でも安定しているので安心して買えます。このアルバムはバックにビッグバンドをつけていますが、決してうるさくなく、うすーく都会的なブラスセクションって感じ。アレンジとコンダクトはタッド・ダメロンとアーニー・ウィルキンス。ミルトのヴァイブがホーンセクションの中を泳いでいるかのような、そんなアルバム。

Lem Winchester / Lem's Beat (1960/Prestige)
レム・ウィンチェスター(vib)オリバー・ネルソン(ts)カーティス・ペグラー(as)ビリー・ブラウン(p)ロイ・ジョンソン(p)ウェンデル・マーシャル(b)アーサー・テイラー(ds)
ミルト・ジャクソンをさらにソウルフルにしたようなヴァイブ奏者がこのレム・ウィンチェスター。特にこのアルバムはテナーで参加のオリバー・ネルソンがコテコテ感をアップさせています。

ORPHY ROBINSON / The Vibes Describes (1994/blue note)
かつてコートニー・パインのグループにいたオーフィー・ロビンソン。ファースト・アルバムがアシッド・ジャズのブームで話題になったりもしたことがありましたが、今じゃすっかり忘れ去られています。これはセカンド・アルバム。こっちのほうが100倍かっこいいです。マリンバとヴァイブを使い分けて結構シリアスなソロを展開しています。

Lem Winchester / Another Opus (1960)
ミルト・ジャクソンの名盤「オパス・デ・ジャズ」に対抗して作られたこのアルバム。こちらもかなりの名盤。「オパス・デ・ジャズ」とメンバーがだぶってるところが笑えますが、よほど自信があったのでしょうか。スムーズでブルージーなヴァイブです。

Milt Jackson / Feelings(1976/pablo)
ウィズ・ストリングスもの。トミー・フラナガン、レイ・ブラウン、ジェローム・リチャードソン、ヒューバート・ロウズ、パウリーニョ・ダ・コスタ、ジミー・スミス(ds)といったメンバーが参加しています。極上のラウンジ感覚です。ヴァイブといったモンド度高い楽器にストリングスが加わると本当に気持ちいいです。ノーマン・グランツのパブロ・レーベルはかなりジブ目のアーチストのアルバムが沢山でてるのでオーソドックスなジャズを聴きたいときには要チェックなのですが、これはその中でも結構異色。イージーリスニング一歩手前って感じが…。

McCOY TYNER & BOBBY HUTCHERSON / Manhattan Moods (1993/bluenote)
マッコイ・タイナーとボビー・ハッチャーソンのデュオ作品。ヴァイブとピアノのデュオってば70年代のチック・コリア&ゲイリー・バートン、ミルト・ジャクソン&オスカー・ピーターソンなんかが人気ありますが、これもまたいいです。本作はかつての新主流派の中心だった2人によるアダルト(?)な1枚。ボビー・ハチャーソンのヴァイブをじっくりと聴こうってときにはこのアルバムがいちばん。

Milt Jackson /SOUL FUSION(1977/pablo)
ミルト・ジャクソン(vib)モンティ・アレキサンダー(p)ジョン・クレイトン(b)ジェフ・ハミルトン(ds)
レゲエのアルバムも沢山出しているモンティ・アレキサンダーのトリオをバックにしたミルト・ジャクソンのパブロからのアルバム。音の感触がどことなくフュージョンっぽいのはタイトルとは無関係だとは思いますが、やはり気になるところです。ドラムのジェフ・ハミルトンがあまり主張しないのでそう聞こえるのか。このアルバム8ビートの曲もいくつかありまして、パブロらしからぬ(?)コンテンポラリーな面もあります。オスカー・ピーターソンばりのモンティのピアノの解放感はミルト・ジャクソンにも伝染しているのか、いつものブルージーでソウルフルなプレイに加えてゆるい開放感があります。パブロのミルト・ジャクソンといえばなんと言ってもカウント・ベイシー・オーケストラとの2枚のアルバムに尽きると思う僕ですが、こういうのもアリかも。

Gary Burton / Times Square(1978/ECM)

ゲイリー・バートン(vib)ロイ・ヘインズ(ds)スティーヴ・スワロウ(b)タイガー・オーコシ(tp)
ゲイリー・バートンのアルバムにしては珍しくホーンが入ってます。そして、他のバートンのアルバムよりも一層輝きがあるようにも感じます。バートンのアルバムは何をやってもジャズロックという文字が頭に浮かんできますが、それはベースがいつもエレキだからで、このアルバムにしてもやっぱりエレキ・ベースを使用しているんですが…、いつもと何かが違う。いつもより、いろんな意味で「ジャズ」なのです。その要因のひとつはドラムのロイ・ヘインズ。バートンの持つ泥臭さ、あるいはカントリー臭さを一掃するかのような怒濤のドラム。「セルフネス」での伝説そのままにスネアの連打…。リズムキープの役割よりもパーカッション的なノリで曲にうねりを出していくところなんかは、かつてのパーカーのコンボでたたいてたロイ・ヘインズの真骨頂でしょう。そしてタイガー・オーコシの必死でリリカルなトランペットも聞き物。ECM特有のクールさと渾沌の70年代的熱さが同居したアルバム。ちなみにこのレコードは裏ジャケを見ながら聞くと気分が出ます。いや、なんかこの写真好きなもんで…(笑)。

Milt Jackson /Soul Route (1983/pablo)

ミルト・ジャクソン(vib)ジーン・ハリス(p,el-p)レイ・ブラウン(b)ミッキー・ローカー(ds)
アルバム・タイトルにソウルの文字が付くものが多いです、この人。ミルト・ジャクソンの「ソウルフル」はどこか黒光りしていて、クインシー・ジョーンズが好みそうな感じです。さて、このアルバムはジーン・ハリスのトリオをバックに従えたカルテット。ゴスペルにルーツを持つジーン・ハリスとソウルフルなミルト・ジャクソンの相性が悪いわけがありません。ふたりともブルージーなプレイに特徴がありながらもどこか陽気な印象が残るプレイヤー。ジーン・ハリスがエレピをひくトラックはエレピとヴァイブの音がぶつかるような感じもしますが、それもまた良し。83年のアルバムながらも70年代パブロっぽいアルバムです。

JOE ROLAND / Joltin' Joe (1950-54/SAVOY)

ジョー・ローランド(vib)フレディ・レッド(p)オスカー・ペティフォード(b)ロン・ジェファーソン(ds)他

「完全限定版」「最後のジャズLP」なんて帯に書いてあります(笑)。91年にキングレコードから出た日本盤LPです。1950年と54年の録音。こういったレア盤の再発はたとえそれが日本盤であっても嬉しいことなんだけど、やっぱりライナーがひどい。僕はライナーをほとんど読まないのですが、たまに読んでみたらこんなひどいもんに当ってしまうんですねえ…。ということでこのアルバムなんですが、僕はかなり好きなのです。小粋で美しい。ひたすら気持ち良いサクサクした4ビートに乗ってジョー・ローランドのヴァイブも好調です。モダンジャズが最もモダンだった頃の雰囲気と匂い…。このレコードをかけると楽しい気分でいっぱいになります。

Milt Jackson /Night Mist (1980/pablo)


ミルト・ジャクソン(vib)エディ・ロックジョウ・デイヴィス(ts)ハリー・スウィーツ・エディスン(tp)エディ・クリーンヘッド・ヴィンソン(as)レイ・ブラウン(b)アート・ヒラリー(b)ローレンス・マラブル(ds)
大ブルース大会。フロントの管の3人を見ただけでもコテコテな内容が想像出来るかと思いますが、ただのコテコテではない。だってミルト・ジャクソンのリーダー作です。コテコテ3人組+ミルト・ジャクソンの「ソウル」=どブルース。といった感じになってます。特にB面なんて堪らん!疲れた精神にはこういったミディアムスローのブルースが沁みます。A面一曲目のあまりにシブいブルースもこれまた絶品。エリント楽団のスウィーツの味わい深いペット、クリーンヘッドのいつもの酔っぱらい気味(?)なアルト、いつでもデカい音のロックジョウ@ベイシー楽団…。これほどまでにアーシーな3管に囲まながらも、ミルト・ジャクソンのヴァイブは実に洗練されたソウル表現です。MJQ時代の格調高い緊張感みたいなものは消え、実に伸びやかなスタイル。パブロ特有の、「さりげないが味のある」アルバムです。

Bobby Hutcherson / Somewhere In The Night (Kind of Blue/2012)

Bobby Hutcherson(vib) Joey DeFrancesco(org) Peter Bernstein(g) Byron Landham(ds)

ギターがピーター・バーンスタインだから注目したという感じのアルバム。やっぱりこれは素晴らしい。ところでこれまでオルガンのジョーイ・デフランチェスコがどうにも苦手だったんだが(これまでのリーダー作がどれもこれも過剰で肌に合わなかった)、このアルバムでは凄くいい感じで聴ける。ボビー・ハッチャーソン御大の存在のおかげか。ボビハチは相変わらず硬質な音色のストイックな演奏 。

Milt Jackson / Bean Bags (Atlantic/1958)

Milt Jackson (vib) Coleman Hawkins (ts) Tommy Flanagan (p) Kenny Burrell (g) Eddie Jones (b) Connie Kay (ds)

カウント・ベイシー・オーケストラのエディ・ジョーンズのベースがとてもイイ。このベースのスウィング感だけでも聴く価値ある。ミルト・ジャクソンのヴァイブもMJQの1955年から58年にかけての「Concorde」「Django」「Fontessa」「No Sun in Venice」のときのような丹念なプレイ。デトロイト派のバレルとトミフラはそんなに目立たないけど、ホーキンス御大のスウィング寄りの朗々たる余裕の音のつぎにバレルのブルーな音が出てくるのが何やらかっこいい。メンバーの組み合わせの面白さで聴くアルバム。

Lem Winchester And Benny Golson / Winchester Special(new jazz/1959)

Lem Winchester(vib) Benny Golson(ts) Tommy Flanagan(p) Wendell Marshall(b) Arthur Taylor(ds)

早く亡くなった為に活動期間が非常に短いレム・ウィンチェスターだけど(1958年~1961年)、50年代ハードバップ期の黒人ヴァイブ奏者は昔から主にミルト・ジャクソンとこのレム・ウィンチェスターばかりしか話題にならないこともあって、やたらと存在感があるわけで、どのアルバムも貴重に思えます。ミルト・ジャクソンのようなソウル感はそれほど強くなく、むしろラウンジ感の方が強いというか、それでいて適度にブルージー。このアルバムはレム・ウィンチェスター2作目のリーダー作。ゴルソンとのツートップというわけだがゴルソンの例のうねうねしたフレーズはともかく、音色がベン・ウェブスター的に渋味が効いていてレム・ウィンチェスターのブルージーなヴァイブにマッチしている感じ。

Johnny Lytle / Nice And Easy (jazzland/1962)

Johnny Lytle(vib) Johnny Griffin(ts) Bobby Timmons(p) Sam Jones(b) Louis Hayes(ds)

味のある演奏というのがあるが、ジョニー・ライトルのヴァイブは味の無い演奏という感じ。ジャズでは一般的に味のある演奏が好まれるが、この手の味の無い演奏というのも必要で、例えばジョージ・シアリング・クインテットなどのヴァイヴは味が無いからこそあのクールな音が生まれる。また、イージーリスニング寄りのビックバンドなどのヴァイブも味が無いからこそ効果的だったりする。とはいえ味の無い演奏というのは歴史の中で淘汰されていくわけで、やはり味のある演奏の方が残っていくようだ。だもんでジョニー・ライトルのアルバムなんて今やなかなか取り上げられる機会も無い。このアルバムでのジョニー・ライトルの演奏は、味のある共演者に囲まれる形で味の無さが際立っており、不思議とヴァイブの爽やかさが浮き上がる。ボビー・ティモンズ・トリオのねばりのあるリズムセクションの上にひたすらクールに展開するヴァイブは浮遊感もあってなかなか心地よい。そんな中、ゴリゴリ吹きまくるジョニー・グリフィンはアンセントのような存在。オルガン奏者のいないジョニー・ライトルのアルバムは珍しいと思うけど、バックが十分黒いので似た様なものかもしれない。濃いバックに乗るさっぱりした涼しげなヴァイブというのがこの人の魅力。


(文:信田照幸)


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