純邦楽(その2)
(いちばん下が最新記事です)


長谷川景光/源博雅の龍笛

長谷川景光(龍笛) 田島和枝(笙)
雅楽の龍笛のソロ。何曲かでバックに笙(田島和枝)が入ることがありますが、基本的には龍笛ソロという形になってます。龍笛がこんなにもイイとは思ってなかっただけに、かなりの驚きがありました。雅楽特有の旋律を龍笛のソロだけでゆったりと聴いていると、時間の感覚が麻痺したような気分になってきて心地よいものです。ここ数年に僕が買った数あるCDの中でも特に気に入っていて、僕の中では超名盤として君臨しております。 

彈眞空/授記 音聲曼陀羅 虚空

尺八音楽の中でも虚無僧尺八は特別好きです。湿った叙情性みたいなものが無く、スパッと竹を割ったような音をそのまま出すところが良い。この人の吹き方は、中村明一のようなブロウとは対極にあるスタイル。非常に落ち着いた音空間を作り上げています。

齋藤一蓉/清虚洞一絃琴

一絃琴が聴ける非常に貴重なアルバムです。 ヴォーカルはともかく、一絃琴のなんとも言えぬ風流な音色に酔いしれます。

能楽囃子名曲集 (ビクター邦楽名曲集・2)

このアルバムで能楽囃子の素晴らしさに目覚めました。名人達による名演。 本当に素晴らしい音楽で、部屋でも流しっぱなしにしたりということが多い。

長谷川景光/仁明天皇の雅楽

長谷川景光(龍笛) 橋本薫明(笙)
「源博雅の龍笛」の次の作品。長谷川景光の2枚目のアルバム。前作と同じように龍笛のソロで、笙がバックにつく形。平安代の雅楽は明治以降の近代雅楽とはちょっと違うそうで、このアルバムや「源博雅の龍笛」などでその平安の雅楽を伺い知ることが出来ます。「源博雅の龍笛」同様、とにかく最高。

永平寺の朝~大梵鐘と般若心経

永平寺の未明から朝にかけての音を収録。振鈴から始まり、大梵鐘の鐘の音が実に気持ちいい音なのです。川のせせらぎの音や虫の声なども入っててこれまたいい感じ。最後には般若心経も入ってます。 すがすがしいCDです。

お鯉/想い出の唄

100歳の芸者お鯉さんが91歳のときに録音した音源。三味線の弾き語りによるお座敷唄。端唄、小唄、お座敷民謡など。さりげない唄い方がカッコイイ!十八番の「よしこの」が凄い。

雅楽「越天楽」三調/宮内庁式部職楽部

なんと「越天楽」が10パターンも聴ける貴重なCD。ずいぶんいろんなパターンがあるんですね。アルバムまるごと1曲みたいな感じで聴いています。

Shakuhachi Music: A Bell Ringing in the Empty Sky / 山口五郎(尺八)

nonesuchレーベルからリリースされたアルバム。オリジナルは1969年。人間国宝山口五郎による究極の尺八ソロ。 

長谷川景光 / 平安の香り

長谷川景光(龍笛、楽琵琶、大篳篥)常法寺美和(楽琵琶)米澤茉莉佳(楽箏)
龍笛の長谷川景光による現代雅楽の作品。あまりの素晴らしさに繰り返し繰り返し聴いてます。古典雅楽はもちろんイイけど、こういった現代雅楽もまたいいものです。現代雅楽といえば武満徹の「秋庭歌一具」が有名ですが、このアルバムの収録曲もそれに劣らず名品です。
 

長谷川景光/「源氏物語の雅楽」蘇る平安朝管絃

長谷川景光(龍笛)田渕勝彦(大篳篥)田島和枝(笙)常法寺美和(楽琵琶)米澤茉莉佳(楽箏)三井沙奈恵(鞨鼓)植田勝己(太鼓)石津美和(鉦鼓) 朗読:幸田弘子
近代雅楽とは異なる平安朝雅楽のアルバム。紫式部が聴いていた雅楽はこういうものだったとか。長谷川景光の研究による雅な平安朝雅楽演奏。曲と曲との間に入る源氏物語の朗読が無ければもっと良かった。

お鯉/阿波の心

お鯉さん80歳のときの音源。名盤です。100歳を超えた今でも十分艶やかな声だけど、この80歳のときの声も魅力的です。

虚無僧・竹韻/吹禅 普化宗谷派虚鐸 関東道場・武蔵野道場(狂竹庵・高橋虚白、松本虚山、他)

普化宗谷派のレアなレコード。この谷派というのは、宗祖が谷狂竹、二代目宗家が西村虚空。僕は西村虚空のアルバム「虚鐸」をいたく気に入っているので、この普化宗谷派のレコードはなんとも有り難い。はたして今、「普化宗谷派」なるものがあるのかどうなのかよく知らないのですが、…ひょっとしてもう途絶えてしまったのでしょうか?数ある普化宗尺八の中でも谷派のまっすぐな表現はちょっと異次元です。本作は狂竹庵の全員による虚鐸の合奏なども含まれていて、ちょっと凄すぎ。ちなみにこのレコードのライナーには「徳川時代のある虚無僧の所持した秘伝の巻物を行脚中に見せていただいたものの一部を書き写してご参考に致します。」として、いろいろと書いてあります。これがまた非常に興味深い。虚無僧尺八の研究資料として貴重かも。 

山本邦山/夢幻界~銀界 (paddle wheel/1996)

山本邦山(尺八)ゲイリー・ピーコック(b)
ジャズファンにとっていちばん馴染み深い尺八奏者がこの山本邦山。有名な1970年の「銀界」をはじめ様々なジャズミュージシャンとの共演があります。本作は「銀界 」ということになってますが、ガチガチに型にはまった「銀界」とは対照的に、かなり自由。 

藤由越山/鈴慕

まさに虚無僧尺八の究極。本当に「来る」音というのは決して派手ではありません。僕の好きな西村虚空(こちらもまた究極)とはまた違ったスタイルの虚無僧尺八ですが、たぶんこちらの方が一般的。

鹿の遠音/横山勝也

ノヴェンバー・ステップスでお馴染みの横山勝也、1976年録音作品。透き通った音色が美しい。尺八古典本曲の名盤。

海童道(海童道宗祖)/法竹

非常に派手なスタイル。とはいえ同じく派手なスタイルで人気の中村明一のような俗っぽさは無く、何やら凄みが伝わってくる。西村虚空の対極にある尺八とでもいえばいいんだろうか。(この人の尺八は法竹という) 

長谷川景光「桃李花/源博雅相聞の笛」

長谷川景光/龍笛、楽琵琶  田渕勝彦/大篳篥、楽琵琶
長谷川景光4作目のアルバム。1作目「源博雅の龍笛/蘇る最古の笛譜」に並ぶほど素晴らしい作品です。楽琵琶のシブい音色も美しい。雅楽CDの中でもずば抜けて気に入っております。(ただ、ジャケがひどすぎるのが気になるところ・・・)

長谷川景光/嵯峨天皇の雅楽

龍笛の長谷川景光の新譜(これが7作目)。管絃の編成による楽曲と、龍笛と楽琵琶などのデュオ曲とが交互に出てくる感じで、なかなか心地よいです。これまでの作品同様、非常に充実した内容になっており、聴きごたえ十分。すべて平安朝雅楽の復曲ですが、ラストの曲だけオリジナル。「源博雅の龍笛」「仁明天皇の雅楽」に並ぶ名作。

大和朝廷の秘歌

東京楽所(歌・演奏)、多忠麿(音楽監督)
神楽歌をはじめとした国風歌舞(歌曲)ばかり収めたアルバム。数ある雅楽のアルバムの中でもずば抜けて素晴らしい。雅楽特有の臭みが無いというか、アクが少ないというか、とにかくすんなりと聴けて、尚かつ深い。

沢井忠夫/「手事」宮城道雄作品集

沢井忠夫の箏演奏。どの曲もちょっとしたクセがあって、ちょっと不思議な感覚。ちなみにこれらは1909年~1946年にかけての曲。録音は1995年、パリにて。 

長谷川景光 / 平家物語の雅楽

今年出た雅楽のアルバム。長谷川景光の8枚目となる作品。長谷川景光は毎年いい作品を出しているが今回もまた素晴らしい。曲の間に朗読を挟む形になっている。 

雅楽/日本雅楽会

和琴と楽琵琶の音がいい感じ。1972年のUS盤LP。たしか73年頃のセシル・テイラーのインタビューで、最近は雅楽のLPを聴いている、ってのがあったんだけど、ひょっとしてこれだったのかなあ。鞨鼓のポコポコいってる音がまるで水がこぼれ落ちるようなリズムになってることに気付いた。深いな。

日本伝統音楽『雅楽・声明 1941年』Gagaku, Buddhist Chant - Kokusai Bunka Shinkokai 1941

1941~42年に録音された雅楽と声明。もともとは海外に日本音楽を紹介するための非売品SPレコードだったとか。演奏は宮内省式部寮雅楽課、中山玄雄、小野塚與澄、吉田恒三、など。雅楽は現在のものに比べて若干テンポが早い。雅楽もどれも素晴らしいが、声明が特にもの凄い。特に中山玄雄の声明は雅楽の歌曲(催馬楽とか朗詠とか神楽歌など)に近くて品がある。これによって声明に対する印象がすっかり変わってしまった。 

古今亭志ん朝「芝浜」「百川」落語名人会

ここ何年もずっと古今亭志ん朝の落語ばかり聞いている。いちばん好きな落語家かもしれない。とにかく志ん朝はどの時期のものも素晴らしい。このCDに入ってる噺はそれぞれ出囃子が違ってて、芝浜では「三下り中の舞」、百川では「老松」が流れる。 

春日とよ / SP盤復刻 春日とよ小唄名演集

端唄のかっこよさを藤本二三吉で知り、小唄のかっこよさを春日とよで知った。春日とよの小唄はあまり声を張り上げずに少し控え目なところがいい。これはSP盤からの復刻ということだがノイズも少なく、とにかく素晴らしい音源。
 

藤本二三吉 全曲集(1)端唄編

藤本二三吉全曲集は6まであって、1~5が端唄編で、曲目があいうえお順になっている。6は以前ここに紹介したように舞踊小唄編。この第1集は「あ行」から「か行」の頭まで。僕が端唄・小唄の凄さを知るきっかけとなった「梅にも春」が入っている。藤本二三吉はすべてカッコイイんだけど、こうやってまとめて聴いてもやっぱり「梅にも春」は別格かなと。

長唄・邦楽決定盤2000シリーズ / 松島庄三郎、六世杵屋勝五郎、他

オムニバス盤で4曲入り。名手による名演集なのでどれも凄いのだが、中でも3曲目の「藤娘」に圧倒される。21分の曲の中にいろいろな展開があって面白い。ところで純邦楽のこの手のアルバムというのはだいたい詳しい録音データが載っていないのだが、何故なのだろう。ジャズのように録音日時、録音場所、プロデューサーなどの情報を載せればもっと詳しく探求できるのにと思ってしまうのだが。

長唄 名曲集 ビクター邦楽名曲選(5)

長唄は純邦楽のいろいろな要素が混ざり合っていて本当に面白い。これは九世杵屋六左衛門、四世杵屋六三郎らの名演集。曲は越後獅子、吾妻八景、勧進帳の3曲。録音もよく、三味線の音がパリっとしてて気持ちいい。ただ、右から三味線、左から唄、という安直なステレオがやや残念(オーディオでモノラルモードに変換出来ればそれで聴きたいところ)。 

吾妻歌舞伎舞踊団音楽 長唄 囃子 古典楽 / 杵屋勝東治 藤舎呂船 杵屋勝丸 松島庄三郎 杵屋勝芳郎 和歌山富三郎 清元梅太郎 藤舎孤舟 藤舎秀誠 望月太津市郎

1950年代の音源。当時、ニューヨークのセンチュリー劇場から始まる世界巡業をしていた歌舞伎一座の演奏(ちなみに座長の杵屋勝東治は若山富三郎と勝新太郎の父親)。歌舞伎音楽である長唄や囃子を世界に紹介する為のアルバムのようで、コンパクトに聴きどころが詰まっている。とても生き生きとした力強い演奏で、音の躍動感(グルーブ感、スウィング感)が凄い。 

長唄 コロムビア邦楽名曲セレクション20 / 七世 芳村伊十郎 他

有名曲が4曲入ってます(元禄花見踊、勧進帳、秋色種、京鹿子娘道成寺)。どれも人間国宝、七世芳村伊十郎の唄。鳴物の音のバランスがよく、心地よい。ずっと聴いてて思ったのだが、能の要素の入ってる曲では篠笛の存在が面白い。曲の流れの中で篠笛の音が宙に舞っているかのよう。

長唄 / 杵屋アンサンブル (杵屋直吉、杵屋勝国、杵屋栄四郎、芳村伊十一郎、芳村金四郎、他)

各楽器間の録音のバランスが非常によく音もクリアで、演者の安定感とキメの細かさがよく聞き取れる。1997年録音。2000年にフランスで出たアルバムで、これの日本盤が出ているかどうかは不明。曲目は、鞍馬山、俄獅子、黎明、二人椀久、の4曲。 

江戸のグランドオペラ 歌舞伎 勧進帳 / 市川團十郎 片岡孝夫 中村扇雀 他

十二代目市川團十郎襲名披露公演のライブ録音CD。こうやって歌舞伎を音だけで聞くと、セリフまでが音楽になっていることが分かる。バックの長唄囃子連中の躍動感も凄い。

おしゃらく Osharaku

昭和40〜50年代(つまり1965年〜1984年くらい)に録音されたもの。洗練されていない民謡の数々が本当に面白い。商品としての民謡ではなく、楽しむための民謡という感じか。演者はみんな明治生まれの方々。どの演者もスウィング感が素晴らしい。「おしゃらく」というのは念仏踊りを起源とする唄ということだそうだが、大雑把にいえば民謡の一種。2枚組CDで、1枚目には「おしゃらく」が、2枚目には葛西と浦安の民謡がそれぞれ収められている。
 


(文:信田照幸)


純邦楽その1


 

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