ラウンジ・ミュージック
last update 2004

序章~ジェットストリーム
午前0時、飛行機のジェット音とともに始まるラジオ番組「JALジェットストリーム」。かつて城達也さんのシブいナレーションで妙なイージーリスニングやライトジャズなどが流れていたこの番組こそ、僕にとっての「ラウンジ」感の原点であり、アダルトな空間の象徴なのでした。

小学生の頃にそんな洗礼を受けてしまったせいか今でもその雰囲気が大好きで、たとえば何の用もないのにホテルのラウンジでひそかな音で流れるイージーな音楽を聴きながらマッタリとしてたり、西新宿ビル街をウォークマンでジョージ・シアリング・クインテットを聴きながら散歩して都会気分を満喫(笑)というのが好きなのです。

こんな趣味を持ち合わせているなんて恥ずかしくて人には言えないのですが、こういう人って結構多いのではないでしょうか…。つまり雰囲気のみを楽しむ。そしてその雰囲気を演出するためだけに存在する「音楽」。それこそが「ラウンジ・ミュージック」。分かりやすく言えばホテルのラウンジで流れているような軽音楽(笑)のことです。

ここ最近のカフェ・ブームだってそういうのに近いような気がします。カフェで雰囲気を楽しむ。その雰囲気作りに音楽を選ぶ。渋谷のカフェ・アプレではオーナーがカフェで聴くための音楽のコンピレーションCDまで出したりしてます。そこでは聴きやすいブラジル音楽を中心に選曲されてます。どうしてボッサ系のものがこんなにもカフェ・ミュージックとして流行っているのかはよく分かりませんが、なんとなくオシャレぽい雰囲気はあります。ソフトロックなんかもカフェミュージックとして紹介されることも多くなりました。というわけで、雰囲気を演出するためだけの音楽、ラウンジ・ミュージック。どんなものがあるのか、独断と偏見でこれから少しだけ紹介。

1 JALラウンジ

僕はかなりのJAL好きでして、古いJALのマークの入ったフライトバッグなんかを持ち歩いたりしてますが、別に航空マニアなわけでは無いのです。単なるラウンジ好きの僕がJALにこだわるわけはやはりあのFM東京ジェットストリーム!この番組を小学生の頃から聞いてたせいで、どうやらラウンジ=ジェットストリーム、ってことになってしまったようで…。

というわけで、JALといえば、「ジェットストリーム」。飛行機の機内ラジオでもジェットストリームの番組があります。ここではジェットストリームのCDを紹介したいのですが、これが実に多い…。廃盤になってるのも含めてかなりの枚数が出てまして、中には通販のボックスセットなんていうのもいくつかあります。僕が現在持ってるのは1981年のJALトラベルシリーズのLP(アメリカ編を持ってます。全5種類出ています)、1986年のジェットストリームCD2種類(「パン・パシフィックルート」と「インター・ヨーロッパ・ルート」)、1992年のジェットストリームCD1枚(「Sincerly」)。あとなにかあったっけかな…?一応全部市販されてたCDですが、現在すべて廃盤です。現在はまた別の種類のジェットストリームCDが出ています。ってことで、ここでは市販されていないレアなジェットストリームCDを紹介いたします。

<非売品のプレミアムCD>
僕は中古盤でせっせと集めました。演奏はJAL-4と6を除いてすべてジェットストリームオーケストラ。このオーケストラの詳細は実は全くわからないのですが、ストリングス系フュージョンともいえる素晴らしくイージーな演奏をしてくれています。ナレーションは小野田英一。ナレーション構成は服部進。市販のジェットストリームCDよりもはるかに素晴らしい内容なのですが、市販されていないために入手はかなり困難です。が、探すだけの価値はあり。

JAL-1『美しい海の時』

CD番号JAL-1はミクロネシアトラック諸島のジャケです。最初と最後に小野田英一のナレーションが、途中2ケ所に短い語り(ナレーション)が入ります。このパターンは JAL-4と6を除いて全部一緒です。途中2ケ所の語りはCDによって内容が全部違います。ラジオのパターンですね、これは。


JAL-2『静かな光の時』

ナレーションが終ってすぐの「The Way We Were(追憶)」…。す、すばらしい。鑑賞にも耐えるイージーリスニングです。JAL-2のジャケはロンドンのハイドパークです。だもんでビートルズ関係の曲が数曲入っています。


JAL-4『Christmas Songs』

なんとLONDONレーベルのロゴが付いています。LONODNと提携して作った珍しいCDです。JAL版クリスマス・アルバムっていうことで、全部クリスマス・ソング。しかし、すべてクラシカルで厳かな曲ばかりです。ポップなクリスマスが好きな僕としてはやや物足りない気もしないでもないのですが、たまにはこういうのもいいかも。カラヤン=ウィーンフィル他の本格的な演奏をバックにキリテ・カナワ、パバロッティ等のこれまた本格的なヴォーカルばかりのCDです。


JAL-5『優しい夢の時』

JAL-5のジャケットはNYマンハッタン。とういうことで、曲目もNYがらみのものが多いのです。ここでの最大の聞き物はチャック・マンジョーネの名曲「フィール・ソー・グッド」!ジェットストリームオーケストラがストリングスで奏でます。チャック・マンジョーネもNYのイメージなのかな?また、「タッチミー・イン・ザ・モーニング」はいかにもNYの朝ってな感じで気持ちいいのです。なにはともあれNYはラウンジの基本(?)。


JAL-6『THE MANTOVANI ORCHESTRA in jal jet stream』

JAL-6はなんとあのマントヴァーニ・オーケストラ。このCDのための新録音かどうかは定かではありませんが、アルバム1枚まるまるマントヴァーニって…すごいです。ここでの指揮はバリー・ナイト。名曲「シャルメーヌ」は原曲アレンジのインパクトがあまりにも大きい為やや違和感も感じたりしますが、それでもあのカスケーディング・ストリングスは黄金期そのまま。


JAL-7『ときめく愛の時』

JAL-7のジャケはパリのカフェです。カフェにジェットストリーム…。なかなか似合うかもしれない。さて、ここには僕の大好きな曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」が入っています。その昔、カーペンターズはよく聴いておりました。特にこの曲がお気に入りで、テープがのびるまで聴いてましたよ。このジェットストリームオーケストラ版はヴァイオリンがフロント。JALにしては珍しくカントリータッチです(この曲だけ)。




<特報!「ジェットストリーム」復活>
FM東京の「ジェットストリーム」。小学生~中学生の頃、熱心に聞いてました。当時、城達也のしぶいナレーションとともに流れるイージーリスニングやライト・ジャズを聞いては「これが大人なんだなあ…」などとアホなことを思ってたわけです。93年の年末の城達也さんの最終回も何故か聞いてました。今でも中学の頃にエアチェックした「ジェットストリーム」のテープを持ってます。当時買ってた「FMファン」という雑誌のうしろの方に載ってたラジオの番組表の曲目(そんなものまで載ってたのです)を切り抜いて、エアチェックしたカセットテープにのりで貼ってました。マイケル・フランクス、ティム・ワイズバーグ、ワルター・ワンダレイ、グレイト・ジャズ・トリオ,ジョージ・ベンソン…などがうちにテープで残ってますが、毎週違ったアーチストの特集(10分くらい)のコーナーがあって、それはそれは気持ちよかったのです。クリスマスの日にダビングしたクリスマス特集のなんてのもあります。

93年に城達也さんが番組を降りて(その1カ月後くらいに城達也さんは亡くなられました)、小野田英一にナレーションが変わり、番組自体もかつての「オトナ」からカジュアルな感じに変わってしまい、僕もジェットストリームはだんだん聞かなくなっていきました。小野田英一のひとり芝居っぽいナレーションにちょっとついていけなかったわけで…。それでもたまに流れるイージーリスニングでホっとしてたりしてました。そしてその後ナレーションが森田真奈美に変わり、しゃべり中心でたまに流れる音楽もJ-POPやヒット曲中心になって、完全に違う番組に変貌してしまっていたのでした。僕はすっかり聞かなくなってしまったのです。

が、昨年、突然かつての城達也のジェットストリームと全く同じはじまり方(「ジェットストリーム」っていうフェイドインから始まり、「遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に~」、というナレーションが入る)とほぼ同じ構成で「ジェットストリーム」が復活したのでした。ナレーションは伊武雅刀。伊武雅刀といえば、小学生の時に聞いてたラジオ「夜はともだち」の中のスネークマンショーというコーナー(これもエアチェックのテープでまだ持ってます。保存のためmp3化してCD-Rに焼きました)を思い浮かべてしまうのですが、それでもこの低い声がイイんです。特集する音楽は何故かポップなものばかりですが、でもいいんです。70年代のJALのフライトバッグを持ち歩いてるJALファンの僕にとってはなんとも嬉しい!かつての「ジェットストリーム」の復活!夜0時から1時前まで。この時間帯だけはCDを止めてラジオをつけます。ちなみに今まさにジェットストリームやってます。さっきパーシー・フェイスが流れてたよ!!!
 

<ジェットストリームの企画アルバム>
ジェットストリームの企画ものアルバムというのは意外にたくさんありまして、中には本屋さんとかのワゴンで1枚980円とかで売ってる何の有難味も無いものとかもあったりします。しかし僕の注目するのは70年代の企画ものLP。レコード自体が高価なものであった時代にわざわざジェット・ストリームのLPを買った人達の粋な(?)センスを分かち合いたい!…てことで、ここで順次紹介していきます。
『ジェット・ストリーム 10thアニヴァーサリー・スペシャル』


ジェット・ストリーム放送10周年記念特別として作られた2枚組LP。しかもボックス入り。帯には「愛蔵家ナンバー入り30000セット完全限定」と銘打ってあります(爆)。まだLPが高価なものだった時代を反映するかのような豪華な作りです。中には写真集が入っておりまして、このレイモンド・ルフェーヴルの音楽を聞きながら目で見る世界旅行を楽しめるという趣向。この写真集には例のジェット・ストリームの冒頭の「遠い地平線が消えて~」とラストの「太陽が沈んでから もうずいぶん時が流れました~」(かつて城達也さんの頃はこれがありました)というセリフが作者名とともに書かれてあります。そして城達也さんの文章や当時のFM東京のお偉いさんなどの文章まであったりして、なかなか楽しめます。ちなみにこのLPの1枚目のA面はレーモン・ルフェーヴル作の『ほっかいどうシンフォニー』なるレアな大作があり、なかなかチープで楽しい世界が繰り広げられています。

 

<JALの機内誌『ウインズ』>

JALの機内に置いてある雑誌「ウインズ」。毎回いろんな国のいろんな所の紹介で、なかなか楽しい旅行雑誌風になっていますが、最後の方には世界地図、日本地図、機内ラジオ番組などの紹介があり、他にもJALの飛行機情報からJAL系列ホテル情報まで、JALづくしなのでパラパラとめくってるだけで気分はラウンジです。市販もされてました。ちなみにこれは1998年12月号でNY特集です。ところで、この「ウインズ」は2003年3月で終了。JAL機内誌は2003年4月から『SKYWARD』と名前を変えて生まれ変わりました。



<JALの機内誌『skyward』>

現在のJALの機内誌「skyward」。内容は基本的に変わっていません。旅行気分に浸れます。



<ホテル日航東京>

JALの総本山(?)、ホテル日航東京に泊まってきました(@お台場)。JALのホテルはシティホテル系の「JALシティ」とリゾート型ホテルの「ホテル日航」が全国に散らばっています。で、ラウンジ好きの僕は当然「ホテル日航」を選ぶわけなのです。JALジェットストリームでラウンジ気分を演出するJALのこと、当然ホテルの方もラウンジ気分満点なんだろうなあと思ってたらやはりそうでした。さすがはジェットストリームのスポンサー。

ところでこの日の僕は70年代のJALのフライトバッグを持ってチェックイン。ホテル内では今度は70年代JALの小さめのバッグをぶらさげてうろうろしてました。ホテルの従業員達は笑ってたかも。

ラウンジにうす~く流れる音楽はジェットストリーム・オーケストラのイージーリスニングではなくてクラシック。でもこれはこれでかなり雰囲気ありました。ホテル日航には「Fountains」という機内誌ならぬホテル誌が置いてありまして、当然もらってきました。かつてのWINDS(機内誌)を彷佛させる旅行雑誌で、なんとも気持ちの良い写真がいっぱいです。

さて、ホテル日航にてやりたかったことはホテル内探検の他にもうひとつありまして・・・。ホテルでジェットストリームを聞くこと!午前0時、窓からは夜間飛行のジェット機が羽田へ向かって2~3分おきに飛んでて、そんな中のジェットストリーム…。うーむ、最高。この日はガーシュインのラプソディ・イン・ブルーなんかが流れました。ミルト・ジャクソンやマントヴァーニなどのラウンジ系の定番どころまで流れて、まさに夢心地。

<JALのレコード>
JAL製作のイージーリスニング・レコードなのにジェットストリームではないという不思議なレコードがいくつかありまして…。そのうちのひとつがこれ。当時のヒット曲のイージーリスニング版と、飛行場やタイムズスクエアのディスコ等といったよくわからない現地録音の音源が混ざりあったなんとも面白いレコードです。


2 ラウンジ・ジャズ
ジャズの中でもかなり軽く、雰囲気重視のラウンジ・ジャズ。昔の我が国のジャズファンの間ではかなり酷評されてたと聞きますが現在ではそれなりに評価も高いようです。ところでホテルや空港のラウンジでジャズが流れてるっていうことってあんまり無いような気がするのですが、どうなんでしょ?知り合いの話によれるとオクラホマ州のタルサ空港ではカーク・ウエイラムのフュージョンが流れてたそうですが…。やはりジャズではちょっと堅いのかな?

<ジョージ・シアリングクインテット>
ジョージ・シアリングは本格的なピアノトリオよりもピアノ、ヴァイブ、ギターがユニゾンでテーマを奏でるクインテット形式のものが最高です。

That Shearing Sound (TELARC/1994)
初期のヴァーヴ録音ももちろんいいんだけど、これは音のいいテラークの20ビットCD。1940年代の演奏と何も変わっていないシアリングのラウンジ感覚には驚異です。根っからのラウンジ系ミュージシャンなんですね。

Play The Music Of Cole Porter (1986/concord)
こちらはクインテットじゃないのですが、フレンチ・ホルンのバリー・タックウェルとの作品で、これがまた良いのですよ。ストリングスの感触がやわらかく、それがまた雰囲気作ってます。ジャズアルバムとしても名作。

White Satin .Black Satin(Capitol)
1960年代のストリングス入りのアルバム。ちなみにCDで2in1で出ててお買得です。これはもう本当にラウンジです。聴いてるだけで回りの風景が変わって見えてしまうほど。

Burnished Brass / Satin Brass (capitol/1958-60)
こちらはシアリング・クインテットにブラスが加わったもの。ややブラスのうるささが気になるところがあるものの、基本的なランウジ感覚は変わっていません。

Satin Affair / Concerto For My Love (BGOrecords/1961-62)
モンドミュージックみたいなコーラスまで加わったこちらの作品達も言うまでも無く極上。


<カクテル・ピアノ>

ホテルのラウンジの定番。カクテル・ピアノ。単に軽いピアノ・トリオもののことを言うのですが、これはそのままラウンジですね。本当にホテルのラウンジで生演奏してたりするのでわざわざBGMとして選ぶ必要もないかもしれませんが…。

レッド・ガーランド/アット・ザ・プレリュード
カクテル・ピアノってばこのガーランド。楽し気に転がるピアノの音がラウンジにピッタリです。このアルバムはライブ演奏で、なんとも軽い演奏が楽しめます。ところで、マイルス・デイビスの「マイルストーンズ」(1958)に入ってる『ビリー・ボーイ』が実はガーランドのトリオ演奏で、これこそがガーランドの最高の演奏だと思ってみたり…。

スリーサウンズ/イントロデューシング・ザ・スリーサウンズ(blue note/1958)
ジーン・ハリス率いるスリーサウンズ、ブルーノートからのデビュー作。当時ジュークボックス用に作られたもののようで、どの曲も適度に短い。そしてなんともイージーな雰囲気(笑)でラウンジにピッタリ。決して熱くならないところがラウンジ感のポイントです。スリーサウンズはどのアルバムもラウンジ感あふれるアルバムですよ。

ハンク・ジョーンズ/Live at the Maybeck Recital Hall (concord/1992)
ジャズとして聴くと退屈なこの人だってラウンジ感覚で聴くとなんとも素敵な味わい!このライブアルバムのなごみ具合はホテルのロビーとかにぴったりかも?コンコード・レーベルのメイベックホールのシリージはいろいろなピアニストのものが出ていて、どれも結構カクテルっぽいです。

ビリー・ストレイホーン/The Peaceful Side Of(capitol/1961)
いかにも60年代キャピトルの音って感じです。「A列車で行こう」の作者、ストレイホーンの優雅なピアノとときおり混ざるモンドなコーラス&ストリングスが気持ち良いのです。

<ウィズ・ストリングス>
ジャズの定番、ウィズ・ストリングス。バックにストリングスがつくだけで「イージー」に!ホーン系でジャズの巨人と言われる人はほとんど皆録音してるのではないかなあ…。でも、ラウンジ音楽として見た場合、ウィズ・ストリングスってアドリブがかっこよければイイってもんでは無いところが難しいですね。

チェット・ベイカー/With Strings(columbia/1953)
ウィズ・ストリングスものの中でもこれはずば抜けてラウンジ度(イージー度)が高いと思われます。

チャーリー・パーカー/ウィズ・ストリングス・コンプリート・マスター・テイクス(verve)
かつてNYに行ったときに、ホテルのエレベーターの中でパーカーが流れてきて、いかにもニューヨークだなあって感動したのをよーくおぼえてます。

ハービー・マン/LOVE AND THE WEATHER(Bethlehem)
ジャズ・フルートの第一人者ハービー・マン。ベツレヘムからのアルバム。これは60年前後録音のアルバム。まろやかーな感じのアルバムです。

<魅惑のヴァイブ>
ヴィブラフォーンの音色こそラウンジに一番似合うような気もします。

ミルト・ジャクソン/BIG BAGS(RIVERSIDE/1962)
ヴァイブの帝王ミルト・ジャクソン。このアルバムはバックにホーン・セクションのビッグ・バンドを従えての都会的な(笑)アルバム。どんなにヴァイブがソウルフルでもバックのおかげでラウンジに(笑)。

レム・ウィンチェスター/ANOTHER OPUS (Prestige/1960)
フロントがフルート(フランク・ウェス)とヴァイブ。こんなのが空港でかかってたりしたらオシャレだと思うんだけどなあ。

カル・ジェイダー
この人のアルバムはどれもたいてい一緒なのでベスト盤がいいようにも思いますが、ヴィンス・ガラルディ(p)入りのjazz at the blackhawkがなかなかにラウンジ度が高いです。

<その他>
ウェストコ-スト系ジャズは結構ラウンジっぽいのが多いですね。

ジェリー・マリガン/Dragonfly (TELARC/1995)
この人の音楽は本当にクールでどの時期のアルバムをとっても雰囲気が良いのです。バリトン・サックスっていう楽器の性質なのでしょうか?マリガンの遺作であるこのアルバム、実は凄いんです。すべて自作の曲で、バックには薄~くホーンが入ってます。僕はマリガンのアルバムの中でこれがいちばん好きです。

ポール・デズモンド/イージー・リヴィング
デズモンドのアルバムの中でも最も雰囲気あるこのアルバム。ピアノレスなので静かな感じです。

チャーリー・バード/au courant (concord/1998)
ギター、ヴァイブ、ベースのアンサンブル。というと、かつてのレッド・ノーヴォ・トリオの再現っぽいですが、ここではギターはチャーリー・バード御大のガット・ギター。ガットギターならではのまろやかさがあります。

GUNTER NORIS TRIO / VIVALDY:THE FOUR SEASONS (EMI)

ギュンター・ノリス(p, チェンバロ,オルガン)チャーリー・アントリーニ(ds)ジャン・ウォーラン(b)
ドイツのピアニスト、ギュンター・ノリスのラウンジ感覚溢れる素晴らしいアルバム。しかしA面だけ。このLPはちょっと変わってまして、A面にギュンター・ノリス・トリオの演奏、B面にはルイ・オーリアコンブ指揮トゥールーズ室内管弦楽団が入っております。A面B面ともにヴィヴァルディの「四季」。ジャズサイドとクラシックサイドっていうわけです。ドイツでは当初別々のLPとして発売されてたそうですが、何故か日本盤ではこのようにお徳盤ということになったそうで…。まあ、クラシックサイドはどうでもいいんですが、このギュンター・ノリス・トリオの演奏が凄くいいんです。始まり方がどことなくクリスマスっぽいのですが、この雰囲気がずーっとつづきます。ヴィヴァルディのお硬い感触は微塵もありません。こうなればもうp,b,ds個々の演奏がどうのっていうよりも、この雰囲気を楽しみたい。


3 ラウンジ・イージー
ラウンジといえばイージー・リスニング。切っても切れないあいだがらです。ホテルのラウンジで流れてるあのワケわからん音楽こそラウンジ音楽の原点。この種の音楽(エレベーター・ミュージックとも言うそうですが)はあまりに膨大にあるのでその全貌を把握しきれません…。

<パーシー・フェイス>
パーシー・フェイス・オーケストラはイージーリスニングの定番として君臨していますが、そのパーシ・フェイスは一時期パーシー・フェイス・ストリングスとしてアルバムを出してた時期があります。もちろんストリングスのみの編成。これがまあなんともラウンジ感100%で最高。CDでは「Bouquet/Bouquet Of Love」というのが2in1で出ています。1959年と1962年の録音です。Bouquet Of Loveのほうに入っている「Duet」という曲が最高です。僕の中では最も素晴らしいラウンジ曲。

<マントヴァーニ>
アメリカのパーシー・フェイスに対して、ヨーロッパではこのマントヴァーニが帝王として君臨しておりました。カスケイディング・ストリングスが美しい曲「シャルメーヌ」は永遠の名作。結構アルバム単位でCD化してるけど、たぶんほとんど廃盤です。アルバムではMANTOVANI WALTS ENCORES が素晴らしい

<フェランテ&タイシャー>
ダブル・ピアノのこのフェランテ&タイシャーもかなりの数アルバムを出しておりまして、その昔イージーリスニングの定番だったこともありました(最近ではあまりCDも見かけない…。ってかあまりCD化されてない模様)。カクテル・ピアノっぽいピアノの音がなんともラウンジなのです。ジャケが宇宙しちゃってるBLAST OFF ! のモンドミュージック感覚もいいけど、実は単純な映画音楽のカバーとかもよかったりします。

<ジョン・バリー>
John Barry / Americans (polydor/1975)
映画007シリーズ等の音楽でよく知られている作曲家ジョン・バリーなのですが、ここで紹介するのは単独LPとして出したアルバム「アメリカンズ」。これは映画音楽ではなくて、ジョン・バリーが音で描くアメリカというコンセプトのもとに作られたもの。ジャズ、フュージョン、ストリングス、イージーリスニング、といったものがごちゃまぜになって極上の雰囲気をつくり出しています。

<ドン・ジョージ>
DON GEORGE /AMERICA'S FAVORITE ORGAN HITS (邦題『憩いのパイプ・オルガン・ムード』)(reprise/1960年代)

パイプオルガンによるムード音楽集。それにしてもこの邦題のベタさ加減は素晴らしい。なんとも時代を感じてしまいます。ひょっとして僕が子供の頃にどこかのラウンジで聞いたのでは、というくらい妙な懐かしさがあったりします。このレコードはたぶん60年代のものだと思います(どこにもクレジットが無い)。ペラペラでツルツルなジャケット、今では誰も知らないオルガン奏者、古いクラシックのレコードジャケットみたいなオシャレ感覚…。どこをとっても60年代。このイージーな演奏こそ僕が子供の頃感じた「都会」なのかもしれない…。このドン・ジョージって人、本当にいまやもう音楽界からすっかり忘れ去られているらしく、CDになっていないばかりかアナログ盤もこれしか見つかりません。他のも聴いてみたいですね。

<ミッシェル・ルグラン>
I Love Paris
ルグランの観光地シリーズの中の一枚で、CD化もされてる名盤。このフランス気分は一体どこまで本気なのかが見えないってところが「イージーリスニング」。

<フランク・ミルズ>
FRANK MILLS / The Poet And I (1974/polydor)
実に見事なイージーリスニング。1曲目の'FROM A SIDEWALK CAFE'(邦題:街角のカフェ)を聴いてるだけでどこかのホテルのラウンジ(あるいはそこらへんのスーパー)を思い浮かべてしまいます。「街角のカフェ」は、パーシー・フェイスの「Duet」とともに僕の中では殿堂入りのラウンジミュージック。


4 ラウンジ・ブラジリア
ボサノヴァを代表としてブラジル音楽もラウンジの定番。特に今。カフェ・ブームとともにブラジル音楽もまたまたブームになってるようです(定期的にブームになりますが)。ブラジル音楽で今最もポピュラーなのは言うまでも無くボサノヴァ。サンバよりもはるかに人気があります。J-WAVEの「JAL・サウージ・サウダージ」っていう気持ちのいい番組があるのですが、そこでもボッサは定番のようです。

ジョアン・ジルベルト/The Legendary Joao Gilbert (1958~60)
ボサノヴァの創始者ジョアン・ジルベルトのボッサは今聴いても全く古く無いから不思議です。基本的にボサノヴァっていう音楽はここから全く変化していないってことを考えてみると、ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンっていうのはとんでもない才能だったのだなあ、と思うのです。このアルバムはボサノヴァの基本。

ワルター・ワンダレイ/レイン・フォレスト(verve)
このチープなオルガンの音が本当に最高で、もう大好きなのです。ラウンジ度100%!!ちなみにアストラッド・ジルベルトの「サマー・サンバ」でのワルター・ワンダレイのソロはこの人のソロの中でも最高のもの。

イーディー・ゴーメ/ギフト(CBS/1962)
ポピュラー系のシンガー、イーディー・ゴーメがジャズミュージシャンをバックに録音したボサノヴァ・アルバム。有名な「リカード・ボサノヴァ」はこの人のテイクがベスト!と言い切る!

アジムス/Live At The Copacabana Place
77年のアルバムのリミックス疑似ライブ・アルバム。これが凄くいい。リミックスによってラウンジ度がアップ。ホテルでライブという設定も凄くよい。


5 ラウンジ・モンド
モンド・ミュージックの「オシャレ感」って90年代以降の感覚なんでしょうね。全盛だった60年代頃は単なるB級音楽だったに違いありません。でも、結構凝ってます。


アーサー・ライマン/The Exortic Sounds Of Arthur Lyman
本当にハワイのホテルのラウンジで演奏していたアーサー・サイマン。これこそ本物のラウンジ音楽です。どっから聴いてもアヤシイところが素晴らしい!

デイヴ・ペル・シンガーズ/マナマナ
言わずもがなのマナマナです。オリジナルよりも小技が効いてて素晴らしい。

レス・バクスター/Roller Coaster
実はこれはアルバムではなくて曲なのですが、これの入ってるアルバムがどうしても見つからない。ちなみに『Ultra Lounge』というシリーズのオムニバスで聴くことが出来ます。それにしてもこのストリングス&コーラスのセンス!一体誰に聴かせようとして作ったのかよくワカランところがラウンジっぽくていいのです。雰囲気的には「奥様は魔女」か。

ベルトラン・ブルガラ/カドリーユ(L'appareil-PHOTO/1997)
'QUADRISYNTHESE'って曲はこのアルバムの中でもずば抜けてラウンジです。ラパレイユ・フォトは今やイージー・テンポと並んでオシャレ音楽の代名詞みたいなものでしょうか。

The Voice of WALTER SCHUMAN /Exploring the Unknown (RCA/1955)
まだムーグなんかが無い時代、オーケストラとコーラスによって宇宙を表現しました、って感じの面白アルバム。ちょっと恐い(?)コーラスとナレーションによって話(?)が進んでいくのですが、昔の外国の宇宙もののテレビ番組のサントラっぽさもあります。

マーティン・デニー/ヒプノティク
エキゾ音楽の帝王、マーティン・デニーです!かつてアーサー・ライマンもこの人のバンド・メンバーでした。南国のラウンジにこんなのかかってたらちょっとベタすぎてうれしい。気持ち良さ満点。

6 ラウンジ・エレクトロ
あえてテクノと言わないところに注目。エレクトロっていう語感がラウンジ。

レイモンド・スコット/MANHATTAN RESEARCH
数年前このレイモンド・スコットの未発表音源がCD2枚組で出たときにゃもうビックリでした。なんでこんなナイスな音楽がずっと眠っていたのか…。1930年代にはジャズをやってたレイモンド・スコットが突然何を考えたか財産全部使って部屋中コンピューターを買い込み、楽器まで作っちゃってこんな妙なエレクトロ音楽が出来上がったとか。空港のラウンジあたりでかかればピッタリなのでは?

HOT BUTTER / POPCORN (1972)
2000年にCD化されました。ムーグを使ってこんなにもポップでアホな音楽が出来るんですね。太陽の光が入ってくるようなラウンジで聴きたい。

ピエロ・ウミリアーニ/Musica Elettronica, Vol.1


7 ラウンジ・アンビエント
環境と一体化してしまったアンビエント音楽こそラウンジ音楽本来のものかもしれませんが、別に一体化してなくてもいいんです。気持ちよく雰囲気を盛り上げてくれるアンビエント音楽だってあるのです。

The Detroit Escalator Co. / Black Buildings (2001/Peacefrog Records)
真夜中のビル街を連想させるような非常に美しいアンビエント・テクノの名作。ラウンジにこれが流れてたらほんとにたまんないですね。

shiba / ambinet cafe(1998)
このアルバムは大好きで、ことあるごとにいろんな人に紹介してるのですが、インディーズ系のレーベルなもんで、今じゃ入手困難なようです。しかしこのshibaさん(日本人)のセンスはラウンジ的にも素晴らしいです。ほんとに。

ブライアン・イーノ/AMBIENT 1 music fof airport
言うまでも無くアンビエント・ミュージックで一番有名なこのアルバム。本当にピッツバーグ空港でこれを流したら、ウルサイと言って苦情が出たそうです。イーノのアンビエント・シリーズでは『AMBIENT 4~on land』もラウンジ感覚いっぱいです。その他のものでは『APOLLO』が凄く良い。


8 ラウンジ・エスニック
いわゆる民族音楽の一種にもラウンジ感覚あふれるものがありますよ。ガムラン音楽やカリンバ(親指ピアノ)なんかは結構ラウンジでもいけるのではないかと思うのですが…。

トゥマニ・ジャバティ/KAIRA
アフリカのコラというひょうたんで出来た弦楽器を弾くこの人。このアルバムはコラのソロで、気持ちいい音楽です。

トゥマニ・ジャバティ/Djelika
コラ、バラフォン、ンゴニによるアンサンブル。ほのぼとした味わいです。

バーニー・アイザックス&ジョージ・クオ/Hawaiian Touch
スティール・ギターとスラック・キー・ギターによるデュオ。スティール・ギターのゆったりとしたノリがなんとも気持ちいい。


9 ラウンジ・ジャマイカ
レゲエのリズムにのって気持ちよく南国のラウンジ気分を満喫してください。

グラッドストン・アンダースン/It May Sound Silly
モンドっぽいジャケも秀逸ながら、中身もモンドっぽいロックステディとなっております。

グラッドストン・アンダースン/Glady Unlimited
極楽アルバム。やりすぎか?ってほどにハッピーなアルバムです。

エディ・タンタン・ソーントン/Jumpin~Musical Nostalgia For Today
いきなり「夏の日の恋」なんかが入ってて、どっから聴いてもレゲエBGMって感じのこのアルバム。タンタンのしっかりした演奏だからこそ聴けるんでしょう。

マッド・プロフェッサー/A Caribbean Taste Of Technology
スティール・ドラムが入って南国気分なアルバムです。ダブが好きな人にとっては有名かも。

アップセッターズ/the UPSETTER Collection
この時代のリー・ペリーはどこをとってもモンドなのです。このせこいオルガンの音がまあなんとも最高。


10 ラウンジ・クロスオーバー/フュージョン
フュージョンだってラウンジのBGM。夜のしじまにピッタリのフュージョンを探しましょう。

ラムゼイ・ルイス/スカイ・アイランズ
やはりラウンジにはアコースティック・ピアノでしょう!このアルバムをホテルのラウンジで聴いたらハマりすぎるほどハマってました。一曲目はラウンジ系の名作。

ラムゼイ・ルイス/アイヴォリー・ピラミッド
これもまたアコースティック・ピアノの響きがラウンジっぽいのです。

カーク・ウェイラム/For You
実際にオクラホマ州のタルサ空港ではこれが流れていたそうで、そう思って聴くと味わい深い気もしますが、どちらかというと夜っぽい感じです。

ジョー・サンプル/Ahses To Ashes
ジョー・サンプルのアコースティック・ピアノの音も素晴らしいこのアルバム。部屋よりラウンジで聴きたい。

ジョージ・デューク/After Hours(1998)
1曲目を除いてすべてミディアム~スローな展開。ローズの音とアコースティックピアノの音のからみが極上の雰囲気を醸し出しています。

11 ラウンジ・ソウル
一時期の「フリーソウル」のコンピのブームでラウンジとしてのソウルも一般的に認識されてきたようです。

バリー・ホワイト&ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ/ラプソディ・イン・ホワイト
甘いストリングスとバリトンヴォイスの語りのこのパターンはアイザック・ヘイズがオリジナルだけど、このバリー・ホワイトのアルバムはやはり永遠のラウンジ音楽。

アイザック・ヘイズ/To Be Continued(1970)
「アイクス・ムード」のホーンとストリングスの絡みはまさにいにしえの夜の静寂(意味不明?)。

12 ラウンジ・クラシック
ラウンジにクラシックって実はかなりありがちなんですが、でもだからこそ非常に難しいような気もします。僕はラウンジにバッハっていうのが苦手です。

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲4番(Vladimir Ashkenazy/Bernard Haitnk/1984年)
この曲の気持ち良さはまさにラウンジの気持ち良さと同じなのです。

ストラヴィンスキー/幻想的スケルツォ(シャルル・デュトワ&モントリオール管弦楽団)
透明感のあるデュトワのストラヴィンスキーは大好きなのですが、この曲はラウンジにピッタリですよ。

プーランク/管弦楽曲集1(シャルル・デュトワ/パスカル・ロジェ/フランス国立管弦楽団/1995年)
「シンフォニエッタ」や「フランス組曲」等どことなくオシャレなプーランクの曲の数々。広いラウンジで食器のかち合うやガヤガヤいった声などにまぎれて小さな音で聴きたい…。

ガーシュイン/ラプソディ・イン・ブルー(Paul Whiteman and his concert orchestra/1927年)
ジョージ・ガーシュイン指揮による『ラプソディ・イン・ブルー』は1924年録音のものが初演なのですが、この1927年度録音の方が多少音は良いためあえてこちらを選びました。今普通に演奏されている『ラプソディ・イン・ブルー』よりはるかに早いテンポなのですが、なんとなく古い映画でも見ているような、そんな風情の演奏です。全部で9分にも満たない『ラプソディ・イン・ブルー』。オリジナル独特の味わいが…。

13 空港

空港。この空間ってやっぱ特別だと思うのです。「スタジオ・ボイス」の1998年6月号では世界の空港の特集をしてて、かなり面白いんだけど、この本全体的に漂うモンドな空気には要注目です。

世界の大空港(MIDI INC/1989)

これ、実は世界中の空港のロビーの音をただ録音しただけっていう空港マニア向けCDなのですが、最高です。自室にいながらにしてラウンジ気分を味わえます。世界中の空港のアナウンスの音がなんとなく旅行気分です。

ついでに…、こんなCDもあります。
「TYPHOON FLIGHT YS-11 台風飛行」

『これは、日本が世界に誇る航空工学の雄YS-11の生みの親、故木村秀政教授と共に、YS-11のサウンドによる記録を作った「日本の翼YS-11」というレコード5枚セットの中からの1枚「台風飛行」をコンパクトディスクにしたものです。この「日本の翼YS-11」のレコード全集は1982年に限定1000部を航空関係者、航空ファン向けに市販しましたが、またたくまに完売し現在は絶版』…などとライナーに書いてあります。専門的なデータや難しそうな地図なんかも付いてて、何やら好奇心がうずうずと…。

14 ラウンジ・クリスマス

文:信田照幸


(c)teruyuki nobuta 1999


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