PIANO(その1)(最新記事はその4



 

DUKE PEARSON / Sweet Honey Bee (1966) 


デューク・ピアソン(p)ジェームス・スポールディング(as,flute)フレディー・ハバード(tp)ジョー・ヘンダーソン(ts)ロン・カーター(b)ミッキー・ロッカー(ds)1966年録音

冒頭の一曲「スイート・ハニー・ビー」できまり。ジェームス・スポールディングのフルートが最高。ピアソンのアレンジも最高。ハバードやジョー・ヘンが参加してるのをすっかり忘れてしまうほどです。ちょうどこの頃からピアソンはブルーノート・レーベルのプロデューサーも兼任するようになって、沢山の迷盤珍盤を作りだしております。さて、このアルバムはピアソンのピアノを聴くというよりも、ピアソンのアレンジのカッコよさを堪能するアルバム。3管のフロントから作り出される絶妙な響きが最高
。リー・モーガンも自分のアルバムで「スイート・ハニー・ビー」をやってますが、管の響きの差でデューク・ピアソンの圧勝。

ALBERT AMMONS & MEADE LUX LEWIS / The First Day (1939)

ミード・ルクス・ルイス(p)アルバート・アモンズ(p)1939年録音
これはもうミード・ルクス・ルイスの演奏を聴くCDです。全編スローブルース。ピアノのソロで単にダラダラとブルースをやってるだけなのですが、これがよい。ミード・ルクス・ルイスはブギウギなんかやらずにずっとこういったブルースを演奏してればよかったのに。ちなみにアルバート・アモンズのほうはずっとブギーをやってます。ところで、この録音はブルーノート・レーベルの第一作目。ブルーノートとしていちばん最初の記念すべきアルバムです。アルフレッド・ライオンが好きだった音楽の原点がブルースだっていうのも、なにやら感慨深い。

WILLIE "THE LION" SMITH / 1938-1940 (1938-1940)
 
デューク・エリントンの師匠といわれるウィリー”ザ・ライオン”スミスのこのCDは「CLASSICS RECORDS」レーベルでの3枚目のもの。38年から40年にかけての演奏が収められています。なんといってもここでの白眉は39年のピアノソロ14曲。このソロだけピックアップしたCDもコロンビアから出ていますが、それほどこのソロは絶品。ライオン・スミスのストライド奏法はエリントン~モンクにつながる元祖ともいうべきスタイルで、今の耳で聴くとエリントンやモンクには無い優雅さが最大の特徴。裏ジャケにはサッチモとカウント・ベイシーとライオンのビッグな3人でふざけ合ってる凄い写真(左からライオン、サッチモ、ベイシー)が載ってます。

GEORGE SHEARING / White Satin & Black Satin(1956~59)

ピアノとヴァイブとギターのユニゾンによる涼し気なサウンドが売りのシアリング・クインテットの音楽はどれも同じなのですが、ファンにとってこれほどありがたいことはない。どれ聴いても同じなのでハズレがない。ジャズというよりはラウンジ音楽といったほうがいいかもしれません。どっかのホテルのラウンジか空港のラウンジなんかにピッタリのサウンドです。このホワイトサテンとブラックサテンはバックにストリングスが入るのでよけいにラウンジ度がアップ。オシャレな都会の夜(笑)ってところでしょうか。ブロックコードを多用するシアリングですが、むしろそんなアドリブよりもテーマ部のユニゾンが聞き物。

SONNY CLARK / DIAL S FOR SONNY (1957/blue note)
ソニー・クラーク(p)アート・ファーマー(ts)カーティス・フラー(tb)ハンク・モブレー(ts)ウィルバー・ウエア(b)ルイズ・ヘイズ(ds)
フラーとモブレーが物凄くいい。特に1曲目。モブレイ~フラーと続くソロのメロディラインがとてもいい。他の曲でもこの2人は絶好調。「クール・ストラッティン」と並ぶ名作。ソニー・クラークの中でも特によく聴くアルバムかも。

HARBIE HANCOCK / INVENSIONS & DIMENSIONS (1963/blue note)
ハービー・ハンコック(p)ポール・チェンバース(b)ウィリー・ボボ(ds&timbales)チワワ・マルチネス(conga&bongo)
この頃のハービーのアルバムはみんな面白いものばかり。このアルバムは普通のピアノトリオものとは全然違って、面白いグルーヴ感があります。ハービーのピアノも当時の新主流派の実験精神(?)に溢れてて、飽きがこない。このミニマル的なノリというのはニック・ベルチュなどにも繋がるものなのかも。

HARBIE HANCOCK / The Prisoner (1969/blue note)
カッコイイ。前作「スピーク・ライク・ア・チャイルド」のホーンセクションがテーマ部だけだったのに対し、こちらではピアノとホーンがからみ合ってさらにグレードアップ。都会的雰囲気に飲まれます。後期ブルーノートの中では圧倒的な名盤。

THELONIOUS MONK / SOLO ON VOGUE (1954/vogue)
1曲を除いて全部モンクの曲。どれも適度にまとまっていて、「ヒムセルフ」とかが好きな人にはちょっと物足りなく感じるかもしれないけど、これはこれでいいのです。昔から好きなアルバムとして君臨しつづけてます。

THELONIOUS MONK / THELONIOUS HIMSELF (1957/Riverside)
21分におよぶ「ラウンド・ミッドナイト」のボツ編が聞き物。モンクがどのようにテーマ部の解釈を変えていくのかが分かります。

MICHEL PETRUCCIANI /ESTATE (1982)
これはもう80年代ジャズの一大名盤として紹介したい。とはいえ好きなものほど何も言えなくなってしまうわけだが。ペトルチアーニのピアノ・トリオ・アルバムなんだけど、なんていうか、妙に明るい。よく晴れた日の青空って感じの音(ほんとに馬鹿っぽい感想だなしかし・・・)。とりあえず買って損は無い名作です。ペトルチアーノのメロディ・センスが素晴らしすぎる。

FATS WALLER / FATS WALLER (bluebird / 1929~1942)
CD2枚組。ファッツ・ウォーラーのすべてとは言えないが、だいたいベストな選び方なのでしょう。どこから聴いてもファッツの陽気なピアノが聴こえてきます。古きよき時代ってな感じ。テイタムのように技術をひけらかさない所が特徴。ピアノスタイルはウィリー・ザ・ライオン・スミスとも共通点アリ。ストライドピアノです。

PHINEAS NEWBORN / We Three (new jazz / 1958)
フィニアス・ニューボーンJr(p)ロイ・ヘインズ(ds)ポール・チェンバース(b)
ロイ・ヘインズ名義のアルバムだけど、かまわずこっちで紹介。どう聴いてもフィニアスが主役。まったりとした「アフターアワーズ」が聞き物。でも冒頭の「REFLECTION」が好きかなー。昔はすべてのジャズの中でこれが一番好きだった時期もありました。フィニアス・ニューボーンは自分のソロ作での弾き過ぎ感がやや無くなって、スウィング感が分かりやすくなったような感じもあります。

JOHN WRIGHT / South Side Soul (Prestige/1960)
ブルースです。いかにもこの時代のプレスティッジから出てきそうなネットリとした重心の低いジャズ。でもメロディアスなので聴きやすい。最初の3曲(A面)できまり。

BILL EVANS / Alone (verve/1969)
エヴァンスのピアノソロ。いかにもエヴァンスらしく密度が濃い!エヴァンスの中でも特に好きなアルバム。でもたまにこの丁寧さが聴いてて疲れることも…。

BILLY STRAYHORN / The Peaceful Side Of (capitol/1961)
「A列車で行こう」の作者、ビリー・ストレイホーンのピアノアルバム。いかにも61年のキャピトルからの作品らしく、ややモンドっぽさがあります。何曲かで薄いストリングスやヴォーカル・コーラスなんかも入っていたりして、結構楽しいアルバム。イージーリスニングとしても上級。

HORECE SILVER / Introducing the horace silver trio (blue note/1952)
ホレス・シルバー(p)アート・ブレイキー(ds)ジーン・ラミー(b)
僕の持ってるのはアナログなんで、このセッションが入ってるCDとはジャケ違い。曲数もこちらは8曲です。ブルーノート1500番台以前の5000番台のもの。何度聴いてもホレス・シルバーのピアノはカッコイイ。これはホレスの初リーダー作。もうこのころから例のコロコロと転がるようなスタイルは出来上がっています。この人の作曲した曲ってどれもメロディアスだしどこかエキゾな雰囲気もあって大好きなのです。

NAT KING COLE / Penthouse serenade (capitpl/1950-52)
ナット・キング・コールのピアノアルバム。曲によってはベースとドラムの他にギターとパーカッションが入ります。本当に素晴らしいカクテル・ピアノ。アール・ハインズ系のピアノスタイルです。ナット・コールのピアノアルバムっていえば「イン・ザ・ビギニング」「ピアノ・クラシックス」などが有名ですが、僕はこっちの方が好き。くつろぎのアルバムです。

HORECE SILVER / The Stylings Of Silver (blue note/1957)

ホレス・シルヴァー(p)アート・ファーマー(tp)ハンク・モブレー(ts)テディ・コティック(b)ルイス・ヘイズ(ds)
カッコイイジャケです。フランシス・ウルフの写真は本当にイイ。このアルバム。2管フロントの典型的なハードバップですが、やはりホレス・シルヴァーなだけに曲が素晴らしい。この曲であの個性的ピアノスタイルなもんだからやはり数あるブルーノート作品の中でも埋もれてしまうなんてことがありません。ところで、ここに参加してるアート・ファーマーなんですが、ここではバリバリと吹いてます。60年頃からファーマーは渋く吹くトランペッターになるけれど、それ以前のファーマーは本作でのようにきらびやかです。

RED GARLAND / Groovy (Prestige/1956-57)
レッド・ガーランド(p)ポール・チェンバース(b)アート・テイラー(ds)
レッド・ガーランドの作品の中でも最も人気のアルバムだと思うけど、理由はたぶん冒頭のCジャムブルースでしょう。チェンバースのベースがとにかく凄い。ガーランドのスウィング感も凄い。このガーランドとチェンバースのコンビは当事もマイルス・デイビスのグループのリズムセクションなんですが、例のing4部作をはじめ、「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」、「マイルストーンズ」といった名作郡はチェンバースとガーランドの力が意外に大きいと感じる今日このごろです。

THE THREE SOUNDS/INTRODUCING THE THREE SOUNDS(1958/bulenote)
ジーン・ハリス(p)アンドリュー・シンプキンス(b)ウィリアム・ドウディ(ds)
かつてSJ誌の企画でブラインド・フォールト・テスト(誰のレコードかを教えずにジャズレコードをかけて、誰の演奏かを当てるオヤジゲーム)をジーン・ハリスにやって、キース・ジャレットの「マイ・バック・ペイジ」をかけたところで「なんだこの演奏は!誰だか知らんがゴスペルの上っ面をまねてるだけでヒドイ演奏だ!ばかにすんな!!プンスカ!」と言ってひどく怒ってたっていうのがありました。これ読んでジーン・ハリスが大好きになってしまった。子供の頃から教会でゴスペルを聴いたりして育ったジーン・ハリスにはやっぱキースのニセモノ感覚が許せなかったんでしょうか…(日本人の私にはよくワカランことですが)。で、そんなジーン・ハリスだからこそ出来たのがこのスリーサウンズというジャズユニットで、当事のハーレムのジュークボックス向けに作られたという側面があるにせよ、やっぱ小粋でソウルフルでカッコイイ。ゴスペル経由のソウルフルなピアノでありながらも実に分かりやすく即興演奏してくれるところなんか、唯一無比。弾きすぎないとこがイイのです。

KEITH JARRETT / Changes(1983/ECM)
キース・ジャレット(p)ゲイリー・ピーコック(b)ジャック・ディジョネット(ds)
ゲイリー・ピーコックの「テイルズ・オブ・アナザー」(1977/ECM)から始まるキースのスタンダーズですが、僕はこのアルバムがいちばんのお気に入り。名盤の誉れ高い「スタンダーズVol1」よりはるかにスリルを感じます。あえてスタンダードをやってないってところがいいのかも。

BILL EVANS /New Jazz Conceptions (1956/Riverside)
エヴァンスらしいリリシズムがまだ足りないだのなんだのと言われるこのエヴァンスの初リーダー作ですが、ややパウエル的なところも含めて結構好きだったりします。

BILL EVANS /Everybody Digs Bill Evans (1958/Riverside)
エヴァンスの2枚目のアルバム。冒頭なんとなくパウエルです。フィリー・ジョーのドラムもなんとなくそれっぽいし。しかしB面には例の「Peace Peace」なんかも入っていて、普通のエヴァンス・ファンも満足って感じでしょうか?僕はパウエル・ライクなところが気に入ってるんですが。でもアルバム全体として見るとばらばらな印象も…。

BILL EVANS/Green Dolphin Street (1959/Riverside)
このへんにくると「ポートレイト~」が見えてきます。和音の使い方がやけにオシャレに聞こえてきますが、決してイージーじゃないところがエヴァンス。頭の「You And The Night And The Music」がいい。

BILL EVANS / Portrait In Jazz (1959/Riverside)
この端正なノリがときに鬱陶しく感じたりもするんですが、たまに聴くとやはりイイ。「格」が違う。スコット・ラファロもこれくらいがちょうどいいのでは? ラファロとの4部作のうちではこれがいちばんお気に入り。ただ、「枯葉」はワンテイクで充分。

BILLL EVANS / Explorations (1961/Riverside)
スコット・ラファロとの4部作のうちでは「ポートレイト~」の次にこれが好き。もう完全にエバンス独特のスタイルですが、この後の2作ほど耽美的ではないところが気に入ってます。

BILL EVANS/Sunday At The Village Vanguard (1961/Riverside)
「ワルツ・フォー・デビィ」と同一日のライブ録音。このときのライブは全曲好調。

BILL EVANS/Waltz For Debby (1961/Riverside)
あまり聴く気が起こらないアルバムなのですが、たまに聴くとこのライブ会場の雰囲気が凄くよくて、グラスの音がやっぱりイイ感じ。

BILL EVANS/How My Heart Sings! (1962/Riverside)
チャック・イスラエルのベースはいいです。このアルバムあたりのエバンスは結構好きだったりします。「ポートレイト~」に近いタッチもいいです。

BILL EVANS/Moonbeams (1962/Riverside)
ムードジャズ寸前って感じではありますが、聞き込むほどに味がある。

KEITH JARRETT /FACING YOU (1972/ECM)

キースの数あるピアノソロの中でもこれは最もパワフルで、かつ密度が濃い。一曲目の「IN FRONT」だけでも価値アリ。このころはまだあのキィキィ言う声も目立たなくていい感じです。内容的には「宝島」「生と死の幻想」あたりに通じるのもがあります。

KEITH JARRETT /Changeless(1987/ECM)
一定のリズムを刻みながらゆっくりと展開していくという地味なものではありながら、面白味が半端ではない。徐々に手探り的にメロディーラインが展開していきます。

KEITH JARRETT /Somewhere Before(Atlantic/1968)
キース、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンのトリオ作品。やっぱり「マイ・バック・ペイジ」がいい。

KEITH JARRETT /Treasure Island(1974/Atlantic)
裏ジャケがなんとなく気に入ってるこのアルバム。あの音楽って感じ。どことなくフォークっぽいはじまり方で、そのまんま同じような展開でアルバムが進んでいきます。ギターがポイント。ここで展開されるキース独特のメロディラインはいつ頃消えたのか…。

KEITH JARRETT / Belonging(1974/ECM)
ECMならではのメンバー構成。ヨーロッパ・カルテットの一作目。ヤン・ガルバレクの透明感溢れるサックスが清清しいです。どの曲も密度が濃くて、キースの気合いが感じられます。それまでのキースには無い感触。

KEITH JARRETT /Death and the Flower(1974/Atlantic)
最初に聴いたのが中学生のときで、このA面がサッパリ面白く無くてB面ばかり聴いてました。今思えばA面の出だしのリトルインストゥルメンツのせいだったんですが…。当時ジャズをイージーリスニングと認識しておりまして(笑)、「これの一体どこがジャズじゃあ?」って本気で思ってました。そんなわけで、このアルバムはキースのアメリカンカルテットのその後のパターンを作り上げた金字塔。意外にB面がよかったりします。

KEITH JARRETT/The Koln Concert(1975/ECM)
一曲目がなんとも印象的。「フェイイシング・ユー」のように力強いタッチはあまり無いけれど、こちらはメロディーラインの美しさが際立ってます。

KEITH JARRETT/Mysteries(1975/ECM)
アメリカンカルテットの典型的な演奏。デューイが相変わらず素晴らしい。

KEITH JARRETT/The Survivors' Suite(1976/ECM)
マルチプレイヤーとしてのキースが堪能出来る一枚。キースのサックスもなかなか味があって良い。でもやっぱデューイ・レッドマンの方がかっこいい(そりゃそうだ)。「生と死の幻想」のパターンの完結編って感じ。

KEITH JARRETT/Staircase(1976/ECM)
あまり飽きない。そのかわりに特別な奇抜さもない。でも結構お気に入り。

KEITH JARRETT/My Song(1977/ECM)
ヨーロピアン・カルテットの中でも最もメロディアスなアルバム。あまりにメロディが綺麗すぎて、フュージョンっぽく聞こえることも。しかし所々フリーっぽさも出てきて、かなり密度が濃い。

KEITH JARRETT/Standards, Volume 1(1983/ECM)
スタンダーズ関係では「チェンジズ」がいちばんお気に入りですが、たまにこのアルバムの二曲目とかも無性に聴きたくなるときがあります。三位一体となって突進していくようなパワー。

KEITH JARRETT/Standards, Volume 2(1983/ECM)
こちらも続編ってことで、内容的に差はありません。素晴らしい。

KEITH JARRETT/Standards Live(1987/ECM)
キースのキィキィいう声がなかったらもっともっと楽しめるだろうと思うのですが、仕方ない。キース絶好調の記録。

KEITH JARRETT/Personal Mountains(1989/ECM)
Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ss, ts), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds).
冒頭、エネルギッシュなヤン・ガルバレクが光ります。ヨーロッパカルテットにしては珍しい盛り上がり。ライブだからか。

BILL EVANS/Interplay (1962/riverside)
どうもこれ、エヴァンスのアルバムって気がしない。ハバードとジム・ホールがフロントだからか。でもフィリー・ジョーが盛り上げてくれて結構好きだったりします。でもA-2はちょっと…。

BILL EVANS/EMPATHY(1962/verve)
エバンスの静かな部分に焦点をあてて聴いてみると、シェリー・マンの静かなドラムとともに左手(コード部分)の絶妙なノリが気持ちよくなってきます。3曲目、もたもたとした演奏の途中突然4ビートになるところが気持ちいいのです。

BILL EVANS/TRIO 64 (1963/verve)

エバンスのクリスマス・アルバムとしても有名かも。「サンタが街にやってくる」が入ってます。モチアン&ピーコックのコンビが意外にハマってまして、エバンスものびのびと繊細さを発揮(?)しております。1曲目が実に素晴らしくて、その雰囲気を抱えたまま一気にアルバム全部を聴き通してしまいます。

BILL EVANS/A SIMPLE MATTER OF CONVICTION(1966/verve)

聴いてすぐにエバンスと分かるその個性の秘密はその和音感覚とリズムのノリ方とペダルワークにあるようですが、やっぱあの和音感覚でしょうか。アップテンポのものはパウエル的なパーカッシヴな左手のテンポのアクセント&独特の和音、ミディアムになるとややベタ~っとした左手のアクセントであの和音、スローになるとテンポの取り方がかなり独特でこれはもうエバンスだけのものとしか言い様が無いノリであの和音。…って、言葉で説明しようとすると和音って言葉ばかり出てきてしまいますが、結局あの和音感覚(エバンス研究に於いてはコード・ボイシングって言い方するそうです)があまりに独特なのでしょうか。単に根音を省いただけという有名な解説がありますが、そんなのあんまり関係ないような…。だってエバンス系っていわれるアーチストだってやってるはずなのにどうもエバンスみたいな妙な響きからは遠いみたいだし。あ、あと右手のタッチもエバンスならでは。いくつか手クセがあって、それがまたよかったりなんかします。きっとペダルの使い方などとも絡み合ってああいったエバンスだけの音っていうのが出来上がるんでしょう。…と、ここまで持ち上げておきながら実は僕はパウエルがいちばん好きだったりしちゃうんですが…。でもパウエルをずっと聴いててエバンス聴くとちょうどいい感じに僕の中で何かを補ってくれるのでエバンスのアルバムは重宝します。そんで蛇足なんですが、エバンスをず~っと聴いたあとにパウエル聴くといつも「おおっ!!」って血が騒いでしまうのです。やっぱベースはウォーキングじゃなきゃなあ…、なんて盛り上がったりなんかして…(アホですね)。だってエバンスのトリオっていつもベースがあれだし…?ベーシストが誰に変わってもあれだし。あれ、飽きるんです。ところでこのアルバムはドラムがシェリー・マン。エバンスに最も合うドラマーってひょっとしてこのシェリー・マンなんじゃないかなあってな具合にピッタリとハマっております。この繊細さとスイング感覚はエバンスのピアノを邪魔することなく引き立てています。

PETE JOLLY / Jolly Jumps In (RCA/1955)
ピート・ジョリー(p、accordion)カーティス・カウンス(b)シェリー・マン(ds)ショーティー・ロジャース(tp)ジミー・ジュフリー(ts,bs)ハワード・ロバーツ(g)
ピート・ジョリーの初リーダーアルバム。ジャケットがいいので一時期ずっとうちの部屋に飾っていました。ウェストコースト・ジャズのアルバムジャケというのは何故か素晴らしいデザインのものが多い。さて本作は半分以上がトリオ編成で、パウエルっぽい初期のピート・ジョリーの演奏が実に軽快。数曲でアコーディオンも弾いてまして、珍味的な面白さもあり。トリオものはいかにもウエストコーストらしく破綻の無いスインギーな演奏。全部トリオでもよかったかも。ホーンが入るものは皆どこかコミカルな味わいで、各ミュージシャンのテクニシャンぶりが伺えます。

RED GARLAND/ All Kinds Pf Weather(prestige/1958)
レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)
アート・テイラーが全編に渡ってブラシを使用してます。おかげでガーランドのピアノがリラックスしております。B-3で出てくるのはなんと「ウィンター・ワンダーランド」。クリスマス曲!ガーランドはラウンジ・ジャズの王者だよなあ…ってことを確認できます。レッド・ガーランドのピアノでクリスマス曲。なんとも素晴らしい。

BARRY HARRIS / At The Jazz workshop(1960/riverside)
バリー・ハリス(p)サム・ジョーンズ(b)ルイズ・ヘイズ(ds)
お気に入りのカフェに行ったらこれがかかってました。僕はこのアルバムの中の「ロリータ」という曲が大好きで、この曲があるからこのアルバムが好きなのかもしれません…。さて、テンポが早くなるとパウエルそっくりになるバリー・ハリスですが、ミディアムでのリラックス感はこの人ならでは。特にこのアルバムのリラックス感は相当なもの。ルイズ・ヘイズがいくらポコポコたたいてもバリー・ハリスは悠然かつのらりくらりと楽しげにピアノをひいています。また、これはウエストコーストでのライブのためなのか、客のノリが面白い。みんな気になってるとは思いますが、『ロリータ』での調子っぱずれな客の手拍子が…。

Oscar Peterson /Hello Herbie(1969/MPS)
かつてのドラムレス・トリオ時代の朋友ハーブ・エリスとの再開セッション。これがまあ物凄い。とんでもない速度でグイグイ進んでいきます。僕はA-3を聴くたびになんか飛行機に乗ったような気分に…。この低音から高音へグイ~ンと高速で駆け巡るような音は超快感。

GENE HARRIS /Listen Here ! (1989/concord)
ジーン・ハリス(p)ロン・エシュテ(g)レイ・ブラウン(b)ジェフ・ハミルトン(ds)

ラウンジっぽい雰囲気をも持ち合わせるアルバムです。ギターのロン・エシュテがいかにもカール・E・ジェファーソン好みって感じで、楽しげにスイングします。ジーン・ハリスのピアノはスリーサウンズ時代から何も変わっていなくて、ゴスペル経由の明るくノリのいいピアノ。そして文句ナシのレイ・ブラウンと名手ジェフ・ハミルトン…。よく見りゃこのメンバーはコンコードのオールスター。これで悪いはずがない。特にスローテンポのものはすべて極上。ヴァイブが入っていないにもかかわらず、どこかヴァイブの音が聞こえてくるかのような…そんな気品があります。

GENE HARRIS /Black And Blue (1992/concord)
ジーン・ハリス(p)ロン・エシュテ(g)ルーサー・ヒューズ(b)ハロルド・ジョーンズ(ds)
「リッスン・ヒア」から3年後のこのジーン・ハリス・カルテット、レイ・ブラウンとジェフ・ハミルトンの強力サポートが抜けてジーン・ハリス一人立ちという感じか…。1曲目からかなりノリがイイです。ジーン・ハリスも絶好調。調子が良すぎて曲によってはパラパラと弾き過ぎって感もしますが、これはこれであり。楽しいし。

McCOY TYNER / New York Reunion (1991/CHESKY)

マッコイ・タイナー(p)ジョー・ヘンダーソン(ts)ロン・カーター(b)アル・フォスター(ds)
ジョー・ヘンダーソン「In Pursuit Of Blackness」の1曲目の「No Me Esqueca」が題名を変えて(Recorda Me)このアルバムの1曲目に入ってます。「In Pursuit Of Blackness」のこの曲が大好きな僕にとってはなんともうれしいかぎり。「In Pursuit Of Blackness」のほうはスタン・クラークとレニー・ホワイトの突進型リズムセクションでズドドド~って行くのに対し、こちらのアルバムではややシブ目に展開してます。でもやっぱカッコイイ。主役のマッコイは相変わらずお馴染みのフレーズ連発ですが、このアルバムはそれがサラっと聴けちゃいます。全体的にはベースのロン・カーターのプレイがポイントで、例のウィンッウィンッって感じのアクの強いベースラインが土台を作っておりまして、ロン・カーターのリーダー作って言われても納得してしまいそうな曲も多々あります。

Ray Bryant/Alone At Montreux(1972/Atlantic)
レイ・ブライアント(p)
演奏が進むにつれて拍手が大きくなっていくところが面白い。1972年、オスカー・ピーターソンの代役でスイス・モントルー・ジャズフェスティバルに出演したときのピアノ・ソロです。モダンジャズとソウルジャズ(あるいはR&B)の中間という印象のレイ・ブライアントですが、ここではブルース主体。華麗で小気味よくスイングするピーターソンの代役だからあえて華麗な演奏を避けたのか、あるいは自分のルーツに忠実な演奏をあえて選んだのかは分かりませんが、とにかく素晴らしい演奏。場違い的に入ってるバフィ・セント=マリーの「Until It'S Time To Go」も凄くいい感じ。B面ラスト、リストの「愛の夢」をブギーでやってて凄くかっこいい。

GERI ALLEN /Twenty One (1994/Somethin'eles)
ジェリ・アレン(p)トニー・ウィリアムス(ds)ロン・カーター(b)

これはトニー・ウィリアムスを聴くためのアルバム。トニーっていつも爆発してるイメージがあるけど実はそういうのってあまり無くて結構小出しに爆発してたりする。ところがこのアルバム。大噴火です。これに比べりゃ「エマージェンシー」なんか…。

JOHN LEWIS / The John Lewis Piano (1956-57/atlantic)
ジョン・ルイス(p)コニー・ケイ(ds)パーシー・ヒース(b)バリー・ガルブレイス(g)ジム・ホール(g)

ジョン・ルイスの意外な黒さと重さを実感出来るアルバム。特にドラムとのデュオの一曲目が素晴らしい。この曲だけでも価値あり。この頃のジョン・ルイスは重々しくて良いです。クラシカルなフレーズを弾いてるときでもタッチは完全にジャズ。ビバップ時代から活動してるので当たり前なんですが…。音数をこれだけ少なくしてスイングするっていうのはカウント・ベイシーにも通じます。ジョン・ルイスはこの当時MJQで相当忙しかったらしく、このアルバムもアトランティックのプロデューサーに熱心に説得されて作ることになったそうです。

KETIL BJORNSTAD / The Sea (1995/ECM)
ケティル・ビヨルンスタ(p)テリエ・リピダル(g)デヴィッド・ダーリング(cello)ヨン・クリステンセン(ds)

ノルウェーのピアニスト、ケティル・ビヨルンスタのECM2枚目のアルバム。発売と同時に買って以来、何故か定期的に聞くアルバム。叙情性はちょっときついですが…。

GIL EVANS / GIL EVANS And Ten (1957/prestige)
ギル・エヴァンス(p.arr)ポール・チェンバース(b)スティーヴ・レイシー(ss)他
クロード・ソーンヒル楽団時代の感触そのままに、極上のエーテル・サウンドを聞かせてくれます。フレンチ・ホルン、バスーン、バス・トロンボーンといった低音管楽器の静かなハーモニーはほとんどラウンジ系サントラの世界ですが、それでいいんです。レイシーのソロがどうのっていうより、この楽器同士の織り成す美しさを聴きたい。ギルのピアノもなかなか味わい深い。


(文:信田照幸)



 (c)teruyuki nobuta 1999

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