PIANO(その2)(最新記事はその4

MARY LOU WILLIAMS/Solo Recital-Montreux Jazz Festival 1978 (1978/pablo)

メリー・ルー・ウィリアムス(p)
アール・ハインズ系の古いスタイルですが、その力強い真っ黒なスタイルはかなり強烈。メリー・ルーはジャズとしてではなくオーティス・スパンらのようにブルースとして売り出したらもっともっと沢山の人に聞かれたのではなかろうか。サニーランド・スリムやジミー・ヤンシーにも負けないほどディープだし…。

MARY LOU WILLIAMS/My mama pinned a rose on me (1977/pablo)

メリー・ルー・ウィリアムス(p)ブッチ・ウィリアムス(b)シンシア・タイソン(vo)
A面はいつものブルースから次第に濃いソロの世界へ。B面にくるとベースが加わってジャジーになってきます。ところどころ不協和音などを使ったりなんかして、意外にアバンギャルド。セシルとの共演が影響したか。こういうブルースピアノはなかなかありません。

WILLIE THE LION SMITH / Live at Blues Alley(1970/overseas records)

ウィリー・ザ・ライオン・スミス(p,vo)
「WILLIE "THE LION" SMITH / 1938-1940」とともにグレイト。このライブが録音されたのが1970年。ところが1930年代の録音と比べてもほとんど変わらないストライド奏法…。偉大です。きめの細かさでは30年代の方に分がありますが、こちらの方はおおらかな感じでスケールの大きさを感じます。同じストライドでもファッツ・ウォーラほどクドくなく、ジェームス・P・ジョンソンのように力強いバックビートがあるわけではない。華麗なスタイル。

BILLY CHILDS / His April Touch (1991/windomhill jazz)

ビリー・チャイルズ(p)Bob Sheppard(ts,ss)Walt Fowler (tp)Tony Dumas (b)Mike Baker(ds)Bruce Fowler(tb)
作曲家としも活躍するビリー・チャイルズのこのアルバムです。これがなかなかいい。一曲目のバシっと決まったホーンセクション、そしてそこにからむビリー・チャイルズの精悍なピアノ。録音のよさも手伝って実に気持がいい。キレが物凄い。この「キレ味」が最大のポイント。曲によってトリオ、カルテット、2管、3管と変わりますが、不思議なくらいに違和感なくアルバムとして統一感があります。僕の隠れ愛聴盤。

DON GRUSIN / Old Friends And Relatives (1996/videoarts music)

ドン・グルーシン(p)
なんと、ドン・グルーシンのピアノ・ソロ。一般的には駄盤珍盤のたぐいに入るのかもしれませんが、僕はこれかなり気に入ってます。内容的にはジャズなんですが、ラウンジジャズというか、イージーリスニングというか…なんともまあ微妙な感じで、とにかく心地よい。不思議と何度も聴きたくなるアルバムなのです。ドン・グルーシンはフュージョンのアルバムはほどほどにしてこういったアルバムを沢山出して欲しい。

KEITH JARRETT/ VIENNA CONCERT ( 1991/ECM)
キース・ジャレット(p)
「ケルン・コンサート」のように溢れるメロディがあるわけでもなく「フェイシング・ユー」のような躍動感があるわけでもない。「聴く音楽」というよりも「聞こえてくる音楽」。この当時クラシック・アルバムを連発してたということも影響してるのか、それともウィーン国立歌劇場という場所がそうさせたか、出てくる音楽は流麗にしてアンビエント。基本的なメロディラインは60年代からのフォークっぽさを残していますが、所々崇高とでもいうべきバロックの匂いを感じます。

BILL EVANS / At The Montreux Jazz Festival (1968/verve)
ビル・エバンス(p)エディ・ゴメス(b)ジャック・ディジョネット(ds)
それまでのエバンスを年代順に聴いてきて、その上でこれを聴くとなかなか新鮮。やはりディジョネットが効いてます。テンポよく進んでいくので「ムーンビームス」の頃のまったりエバンスに食傷気味の時なんかにいいかも。ディジョネットの小気味よいドラムはなんとも気持ちいいです。ゴメス時代のエバンストリオの頂点。

McCOY TYNER / Sahara (1972/milestone)
マッコイ・タイナー(p)ソニー・フォーチュン(ss,as)カルヴィン・ヒル(b)アル・ムザーン(ds)
どこかの駅の構内で、マッコイがトイ・ピアノみたいなのをおもむろに取り出してピロピロ~とひき出し、ソニー・フォーチュンがサックスの先を僕の頭にくっつけてブォォ~っとフリー・ブローイングし始める。僕はその音の洪水に酔って頭の中がぐるぐると回ってきて…ってところで目が覚めた。なんだこの夢は…などと思いながら、この音楽はなんだったっけなあ…?と考えてるうちに、あ、サハラ…、と思い出した。久しぶりに聴いてみるとドラムのアル・ムザーンの炸裂ぶりが凄かった。この渾沌とした音楽は良くも悪くも時代の産物。とにかく凄い。

The Three Sounds / Bottoms Up ! (1958-59/blue note)

シーン・ハリス(p, celeste)アンドリュー・シンプキンス(b)ビル・ドウディ(ds)
ブルース・フィーリングとラウンジ・テイストを兼ね備えるジーン・ハリスは大好きなピアニスト。これはスリーサウンズの2枚目のアルバム。ちょうどこの頃マイルス・デイビスとキャノンボール・アダレイという大ボス2人に激励されたそうで、そう思って聴くとジーン・ハリスの軽やかさがさらにアップしているかのよう。ハリスの自作曲JINNE LOUでのセレステなど、例えようもないくらい「ラウンジ」してますが、体に染み付いたゴスペルの黒々としたセンスがあちこちにちりばめられているためにどっしりと重たい演奏になってます。

MICHEL & TONY PETRUCCIANI / Conversation (DREYFUS)
ミッシェル・ペトルチアーニ(p)トミー・ペトルチアーニ(g)

ミッシェル・ペトルチアーニが父親のトミー・ペトルチアーニと共演した1992年のライブ盤。のびのびと演奏するペトルチアーニが印象的。とにかく開放的。父親とのライブということでなにか特別なものもあったんでしょうか。トミー・ペトルチアーニはバーニー・ケッセルのようなウエストコースト系の明るいプレイ。ミッシェルとの相性は最高。全体に流れる暖かな空気のせいかスリリングなんて言葉は全く浮かんできませんが、この2人のスケールの大きなやりとりはほんと絶品。せせこましいエヴァンス&ホールのInterplay(実は好きだったりするけど)とは対照的。

Dollar Brand / African Piano (1969/japo records)
ダラー・ブランド(p)
実におおらからで力強いピアノ。単純で素朴なメロディをつぎからつぎへと紡ぎ出します。気持ちよくピアノという楽器を鳴らしきっていて、たくましささえ感じます。

DOLLAR BRAND ;ABDULLAH IBRAHIM/African Sun (1971-77/kaz records)
ダラー・ブランド(アブドゥーラ・イブラヒム)(p)Kippie moeketsi (as) 他
ストライド奏法のような古いスタイルを独自に変型させたかのようなダラー・ブランドのスタイルはホーンが入った本作のようなアルバムでも常に変わらず、モダンとは一寸毛色の違った音楽を作り上げてます。この人はことあるごとに「アフリカ」を強調するためかなり損をしてるようにも思います。おおらかだけではないマジカルさというのもこの人の音楽の特徴。

HANK JONES / Here's Love (1963/cadet)

ハンク・ジョーンズ(p)ケニー・バレル(g)エルヴィン・ジョーンズ(ds)ミルト・ヒントン(b)
小粋な小品が詰まったようなラウンジ・テイスト溢れるアルバム。いつもブルージーなバレルもここではやや薄め。これが63年ってのはちょっと意外かも。63年ってばエルヴィンはコルトレーン・カルテットでズドドドとやってた頃だし…。兄貴のハンクの前だから行儀よくプレイしたのでしょうか?

Koji Ueno Trio /IONOSPHERIC CALL(2000/superb corporation)

上野耕路(p)TAKAYOSHI MATSUNAGA(b)TOMO'O TSURUYA(ds)

上野耕路のピアノトリオ・アルバム。グレシャン・モンカーやスティーヴ・レイシーが作る曲のメロディラインを思わせる一曲目からグイっと引き込まれます。ときおり出てくる不協和音はモンクというよりも60年代半ば頃のポール・ブレイ風。また、リズムをしっかりキープする奏法なので聞きやすさもあります。b,dsの不要なソロがないからか、ピアノを沢山聴いた~っていう印象。

GEORGE SHEARING & BARRY TUCKWELL /Play The Music Of Cole Porter (1986/concord)

ジョージ・シアリング(p)バリー・タックウェル(french horn) 他 プロデュース:カール・E・ジェファーソン
ジョージ・シアリングはトリオやその他の編成のものよりもクインテットが一番だと思っているのですが、このアルバムだけは別格。とにかく別格。一応ベースもドラムもいるんですが、そんなのはどうでもいいのです。シアリングのピアノとクラシック畑のバリー・タックウェルのフレンチ・ホルンに、シアリングのアレンジしたストリングスが絡めばそこには夢心地の世界が…。バリー・タックウェルのワンホーン・プラス・シアリング・トリオっていうカルテット編成の曲もありますが、それもこのストリングス・アルバムにすっかり溶け込むほどの心地よさ。シアリングとバリー・タックウェルとのデュオ曲もありますが、これまた夢心地。ジャズ系でこれほどまでに雰囲気を作り込んだものも珍しいでしょう。ほとんどイージー・リスニング…(というか、完全にイージーリスニング)。プロデューサーのカール・E・ジェファーソンのセンスの素晴らしさにも驚きです。ちなみに、このアルバムの日本盤の帯には『摩天楼の中でもひときわ高層のペントハウス…午前1時。ブロンドの美女、ヘネシーのブランデー。夢心地へと誘う音楽。』なんて爆笑文句が書いてあります…。分からんでもないですが、80年代の日本人のセンスは絶対に変だ…。

PHINEAS NEWBORN Jr./A World Of Piano ! (1961/contemporary)
フィニアス・ニューボーンJr(p)ポール・チェンバース(b)フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)…A面
フィニアス・ニューボーンJr(p)サム・ジョーンズ(b)ルイス・ヘイズ(ds)…B面
フィニアス・ニューボーンのピアノは何故かスカスカな印象があって、それは一体何故なのかと思ってたら左手のアクセントのつけ方だった。ユニゾンの割合が多いってのも原因のひとつかも。だいたい超絶技巧でパラパラと弾きまくるフィニアスの音がスカスカなわけ無いのは分かってたんですが、イメージとしてそんな感じが…。さて、アート・テイタムの流麗さとバド・パウエルのモダンさを合わせ持つ稀なフィニアス・ニューボーン独自のスタイルを堪能出来るのがこのアルバム。1956年の圧倒的な名作「ヒア・イズ・フィニアス」とともに人気作です。このアルバムはA面とB面とでリズム隊が違ってまして、それぞれのノリの違いを比べることが出来ます。中でもフィリー・ジョーの個性が光ります。

McCOY TYNER / Enlightenment(1973/milestone)

マッコイ・タイナー(p)エイゾー・ローレンス(ts)ジョニー・ブース(b)アルフォンス・ムザーン(ds)

近年スピリチュアル・ジャズ関連の珍盤関係が大量にCD化されて一部で盛り上がって(?)ますが、コルトレーンの闘魂を直接注入されたマッコイの70年前後のアルバムこそ本格的なスピリチュアル・ジャズでしょう。特にこれなどはコルトレーン・カルテットと同じカルテット編成。トレーン御大の下ではそれほど派手な自己主張をしなかったマッコイも、ここでは怒濤のごとく弾きまくります。さて、これはエイゾー・ローレンスをワンホーンで迎えた73年のモントルー・ジャズ・フェスでの怒濤のLP2枚組。エイゾー・ローレンスはマイルスの「ダーク・メイガス」でも吹いてました。レコード・コレクターズ99年2月号のマイルス特集ではエイゾー・ローレンスの紹介欄にてマッコイ・カルテット時代のことが全く触れられてなかったり「マイルスを聴け」ではトホホと書かれたりと散々ですが、エルヴィン・ジョーンズのグループやウディ・ショウのアルバム等でも活躍した名脇役。マッコイ・カルテットには73年から77年までいた模様。コルトレーン奏法をそのまま継承する猛者です。マッコイのシーツ・オブ・サウンド的な怒濤のピアノとエイゾー・ローレンスのサックスがアルフォンス・ムザーンの荒々しいドラムとともに突進するようなような容赦ない展開。やるほうも聞くほうも「体力!」って感じか…。

McCOY TYNER /Illuminations (2004/TELARC)

マッコイ・タイナー(p)クリスチャン・マクブライド(b)ルイス・ナッシュ(ds)ゲイリー・バーツ(sax)テレンス・ブランチャード(tp)
マッコイ2004年の新作。なんともさりげないアルバムだけど、ついくり返し何度も聴いてしまう深さがあります。このアルバム、何故か音のバランスが良くて、特にベースの音がすごくいい。70年代くらいからウッドベースの録音の仕方ってどうにも音が延び過ぎて好きじゃないものが多いのですが、このアルバムではボン、ボン、ボン…という昔ながらの音。やっぱベースはこれでなければならぬ。クリスチャン・マクブライドのノリの良さが引き立ちます。また、全体の音の感触もかつての古き良き時代の「モダンジャズ」の感触があって、これまた最高。65才になったマッコイはかつての押しの強さに加えて今度は引きの美学をも心得たかのような感じで、僕はすっかり気に入りました。自作の新曲も4曲あったり他のメンバーの曲もあったりして、よくあるスタンダートだけのアルバムとは全く違ったヤル気がみなぎってます。

McCOY TYNER /Fly With The Wind (1976/milestone)

マッコイ・タイナー(p)ビリー・コブハム(ds)ロン・カーター(b)ヒューバート・ロウズ(fl)他
ストリングスが付きますが、よくあるウィズ・ストリングスみたいなやつではありません。なんだかこれらのストリングス・オーケストラ(10人以上です)が黒光りしながら唸っております…。とにかく熱い。ドラムがコブハムだからさらに熱い。とはいえマッコイの大作シリーズの中でも比較的ポップな方。A2のラテン系なんてどことなくリターン・トゥ・フォーエバーを意識しているような…(なわけないか)。

KEITH JARRETT/ The Out-of-Towners(2001/ECM)

キース・ジャレット(p)ゲイリー・ピーコック(b)ジャック・ディジョネット(ds)

2004年に出たキースのトリオ作品。ここにはかつてのように深く深くどこまでも行ってしまうような鬼気迫るキースはいません。こんなにリラックスして「おしゃれ」なキースの姿を80年代半ば頃に一体誰が想像してたでしょうか…。憑き物が全部落ちてサッパリしたような印象のキースの本作。でもこれはこれで素晴らしい。まるでキースの自宅で気の合うアーチスト同士がセッションしているかのような雰囲気。

KEITH JARRETT/Dark Intervals(1987/ECM)

ピアノ・ソロの小曲集。何か映像を喚起させるような音です。キース・ジャレットという個人の表現というよりも、キースが無になり、そしてラジオのような受信機となって、異次元からの情報を音楽として変換してみせたような…そんな印象。この後のパリ、ウィーンとともにソロの極北。

NIKOLAI KAPUSTIN /8つの演奏会用エチュード 8 Concert Etudes

ニコライ・カプースチン(p)

ロシアのピアニスト、ニコライ・カプースチンはもともとロシアでジャズ・ピアニストとして活動し、その後作曲に専念。というわけでこのCD、普通はクラシックとして売ってるものなんですが、僕はあえてジャズのコーナーで紹介したい。このアルバムは1986年と1989年のLPを一枚のCDにまとめたもので、2004年にCD発売。一応全部作曲されたものを自分で演奏しているのでクラシックでいうところの自作自演盤をいうことになりますが、楽譜を見て弾いたってわりにはあまりにも躍動感があって生き生きとしています。自分で作曲した曲を自分で弾くんだからそりゃ生き生きと弾けるに決まってるわけですが、この生き生きさ加減はあまりにもジャズではないか…。ひょっとして、カプースチンはこれを即興で弾いた後で、「おっ、これなかなかイイ感じだから全部楽譜におこしておこう」と…、つまりはそういうことなのではないのか…?それ程の生々しい躍動感を感じてしまいます。…そんな勘ぐりはどうでもいいんですが、この音楽はほんととんでもないインパクトです。モード・ジャズのイディオムを使って作曲したクラシック曲、なんて説明は野暮というもの。これはもうカプースチンというひとつのジャンルです。モードジャズのイディオムが中心とはいえ、ときおり見せるストライド~スウィングっぽいノリはウィリー・ザ・ライオン・スミスの華麗さを彷佛させます。やたらと早弾きなので音のひとつひとつがハッキリクッキリしてるところなんかチック・コリアにも近い感じも…。なにはともあれ、超絶という言葉がピッタリなカプースチンのピアノはちょっと他に比べようもない位の物凄さで、強靱なタッチで超スピーディーにピアノを弾き捲る姿はパワー&スピードの時代だった20世紀アメリカにひとりで挑んでいるかのよう。こんな音楽がロシアから出てきたことの不思議。いや、西側と断絶していたソ連だからこそ出てきたのかも。現在はもうピアニストとしては引退し作曲だけだというカプースチン。このCDにあるような超絶曲ばかり書いてたからついに自分でも弾けなくなってしまったのかな…?

Cyrus Chestnut / Revelation (atlantic/1993)

サイラス・チェスナット(p)クリストファーJ.トーマス(b)クラレンス・ペン(ds)

フィニアス・ニューボーンJr.の器用さにジーン・ハリスの黒さとラウンジ感を足した様な印象のサイラス・チェスナット。この陽性のノリの良さとなめらかなドライブ感、そしてスケールの大きさ。なかなか良いです。というわけでこのアルバム、やっぱりノリがいい。サイラス・チェスナットだけではなく、3人全員のノリが凄い。クリストファーJ.トーマスとクラレンス・ペンのリズムセクションは本当にごきげんで、主役のピアノをひたすら盛り上げています。そしてどの曲もころころと転がる軽やかな気持ちよさに溢れています。11曲中9曲がサイラス・チェスナットのオリジナル曲。

ANDREW HILL /Point Of Departure (blue note /1964)

アンドリュー・ヒル(p)アンソニー・ウィリアムス(ds)エリック・ドルフィー(as,b-cl,fl)ジョー・ヘンダーソン(ts)ケニー・ドーハム(tp)リチャード・デイビス(b)

かつてアルフレッド・ライオンが強力にプッシュしたのにほとんどブレイクしなかった唯一のアーチストがアンドリュー・ヒルだそうな。その第4作目はまさに当時のブルーノート・オールスターズともいうべきメンバーを揃えての録音。やはりヒル以外のメンバーに耳がいってしまいます。約1ヶ月前に「アウト・トゥ・ランチ」を録音したアンソニー・ウィリアムスとリチャード・デイビス、そしてドルフィー。この3人の起用から、ライオンが考えたこのアルバムの方向性が見えてきます。とはいえ「アウト・トゥ・ランチ」ほどの「彼岸」が感じられないのは、ドーハムとジョー・ヘンがギリギリで娑婆へと繋ぎ止めているからに他なりません。そして、顕在意識と無意識との間を行き来するかのような変幻自在のピアノを駆使するアンドリュー・ヒルは、あやふやなイメージのまま宙に浮かんだ形です…。この浮かんだままのヒルをどこかに着地させるアーチストが居なかった、ということなのでしょうか。また、不思議なことにこのアルバム、ヒルのパートをそのままそっくり空白にしてもそれなりのクオリティで成り立つような気がします。

OSCAR PETERSON /Girl Talk (MPS/1965-67)

オスカー・ピーターソン(p)サム・ジョーンズ(b)レイ・ブラウン(b)ボビー・ダーハム(ds)ルイ・ヘイズ(ds)
僕は「オン・ア・クリア・デイ」という曲が好きなわけです。そんでこの曲のベストテイクはシャーリー・スコットのインパルス盤に収録されているものに決まりなわけです。とはいえ、たまにこの曲の素晴らしいテイクに出会うこともあったりして、そんなときには心底嬉しくなってしまうのです。というわけで、このオスカー・ピーターソンのアルバム。1曲目が「オン・ア・クリア・デイ」なわけであります。とにかく豪快。これほどまでにピアノを「弾ききる」という印象のものも珍しいってほどに、ピアノを鳴らしきっております。この曲をこんなに豪快に決めてくれるのはオスカー・ピーターソンくらいなものだろうなあ…。本当はこの曲、小粋に演奏したものが好きなんだけど、ここまで凄いと何も文句は言えません。これまたお気に入りなのでした。

EARL HINES /Paris Session (Odeon/1965)


アール・ハインズ(p)

あまりにも素晴らしすぎるピアノソロのアルバム。特に「アイ・サレンダー・ディア」のノリの良さはかなりの快感。ルイ・アームストロング・ホット・ファイブの時代から活躍してるピアニストなのに、スウィング系の古臭さが全く無いのが不思議。これは60年代半ばにカムバックしてからの録音。カムバック後の方が断然素晴らしく聴こえるのは何故だろうか。

Red Garland / Revisited ! (1957/prestige)

レッド・ガーランド(p)ポール・チェンバース(b)アート・テイラー(ds)
ケニー・バレル(g)(A-3、B-3)
マイルスの1958年の『マイルストーンズ』にてレッド・ガーランドのトリオ演奏で「ビリー・ボーイ」が収録されていて、僕はその演奏が大好きなのですが、このアルバムの冒頭にも「ビリー・ボーイ」が入ってます。『マイルストーンズ』の演奏に比べると相当リラックスしており、ラウンジ感覚溢れる小粋な演奏になってます。別にドラムがフィリー・ジョーではなくアート・テイラーだからこうなった、というわけでは無いでしょう。『マイルストーンズ』の方はたとえトリオだけの演奏と言えどもマイルスが睨みを効かせており、演奏の空気が張り詰めてます。だからこそああいった緊張感やスピード感、テンションなどがあったのであり、マイルス・マジックのような不思議な効果もあったものと思われます。対してこちらの「ビリー・ボーイ」。なんとも余裕があって楽し気です。まあ、これはこれでアリだと思うのですが…、やっぱテーマ部は間延びして…(笑)。それはさておき、このアルバムは57年ってことで、マイルスのグループにいた時代の作品。同じマイルス組のチェンバースがこれまた素晴らしい演奏聴かせてくれてます。ガーランドのアルバムでのチェンバースはアップテンポ系の曲のノリが素晴らしい。ガーランド作曲の「ヘイ・ナウ」なんかはガーランドよりチェンバースの方に耳が行ってしまうほど。また、2曲のみの参加のケニー・バレルがこれまたいい味出しております。この時期(最初期ですね)のバレルは何をやってもハズレなしといった感じで、僕はとても気に入っております。そして、主役のガーランドはいつものように良く転がる右手が美しい。特にスロー曲では例のカクテルピアノっぽさ(誉めてるんです)がいい感じ。基本的にガーランドってアルバムによっての好調不調の波が無いように思われます。

McCOY TYNER /Song Of The New World (1973/milestone)

マッコイ・タイナー(p)アルフォンソ・ムゾーン(ds)ジョニー・ブース(b)ジョン・ファディス(tp)ソニー・フォーチュン(as,ss,fl)ガーネット・ブラウン(tb)ディック・グリフィン(tp)キアニ・ザワディ(euphonium)ジュリアス・ワトキンス、ウィリー・ラフ、ウィリアム・ワーニック(french horns)ヒューバート・ロウズ(fl)ボブ・スチュアート(tuba)ハリー・スマイルズ(oboe)他
70年代のジャズ界における巨大なマグマであったマッコイの快作。たくさんのアーチストがフュージョンに流れていく中で、あくまでもアコースティック・ジャズにこだわったマッコイはまさに求道者。多作なわりに決定版が少ないイメージもありますが、70年代半ばあたりまでの「過剰」なアルバムの数々はどれも一聴に値します。というわけで本作ですが、A-1の「アフロ・ブルー」はサービスでしょう(笑)。どうしてもマッコイをコルトレーンと結び付けたがる人がいるもんです。それはそうとこのアレンジ、かなりカッコイイです。ユーフォニウムやらフレンチホルンやらが入ってるからなのでしょうが、この時期のマッコイの誇大妄想的音世界の中でも洗練度高し。だいたい70年代マッコイ音楽ってのは、くつろぎの時間ってのが少なくて、聴いてて疲れて来ることがあります。体力勝負!といった感じ。その異常までの熱をちょっとだけヒートダウンしてくれるのがここでのアレンジであったりするわけです。音圧が凄すぎて余計に暑い、という見方もあるかとは思いますが、A-2になるとこれが本当に暑苦しさに変わります…(笑)。おまけにマッコイの疾走するピアノは聴いてるだけで汗が吹き出るわけで…(笑)。ちなみにB-1,3ではホーン軍団が大量に抜けて、代わりにストリングス軍団が入りますが、基本的に扱いは一緒なのでたいした違いを感じさせず、アルバムとしての統一感を保っております。

HORACE SILVER / Blowin' the Blues Away (blue note)

ホレス・シルヴァー(p)ブルー・ミッチェル(tp)ジュニア・クック(ts)ユージン・テイラー(b)ルイス・ヘイズ(ds)

その昔さんざん聴いたアルバムなので、一度聴くともうお腹いっぱい(笑)。とはいえ、やはりいいアルバムです。ホレス・シルヴァーは左手のゴンゴンいう音が特徴的で、右手の転がるようなノリとこのゴンゴンいう音が混ざりあって、何とも言えぬ独自のスタイルなわけです。A-2のようなトリオ演奏ではそこんところが良く分かります。1曲目のインパクトが余りにも強烈な為、アルバムのイメージがこの1曲目のイメージになってしまってますが、実は他の曲もどれもイイ。

THELONIOUS MONK /Miles & Monk At Newport(columbia/1963)

セロニアス・モンク(p)チャーリー・ラウズ(ts)ピーウィー・ラッセル(cl)ブッチ・ウォーレン(b)フランキー・ダンロップ(ds)

A面がマイルスのセクステットで、B面がモンクのカルテット。クラリネット入りなのでなんとなく色合いがいつもと変わってます。2曲しかありませんが1曲が長くて意外に濃いのでジャズ聴いた~って気になるほどの充実感。チャーリー・ラウズやピーウィー・ラッセルのソロの所でモンクは所々バッキングをつけるのをやめるんだけど、ドラムがおかずの多いたたき方なので意外にスムーズに聞こえます。

JHON LEWIS & SACHA DISTEL / Afternoon in Paris (atlantic/1957)

ジョン・ルイス(p)サッシャ・ディステル(g)バルネ・ウィラン(ts)コニー・ケイ(ds)パーシー・ヒース(b)ピエール・ミシェロ(b)

ジャケのセンスが抜群のこのアルバム。フレンチ・ジャズというよりも、ジョン・ルイスの趣味で作った静かな室内楽風ジャズとでもいった趣き。とはいえクラシック趣味丸出しってわけでもなく、どこかウエストコースト・ジャズ的な軽さを感じます。
ミルト・ジャクソンの代わりにサッシャ・ディステルとバルネ・ウィランが入ったらこうなった、みたいな感じか。わざわざミルト・ジャクソンのバグス・グルーヴやってるところが笑えます。1957年といえばまさにMJQ全盛期。そんな時期の貴重な録音です。

HENRI RENAUD/nous rapporte des U.S.A.(swing/Vogue/1954)


アンリ・ルノー(p)ミルト・ジャクソン(vib,p,vo) J.J.ジョンソン(tb)パーシー・ヒース(b)アル・コー ン(ts)チャーリー・スミス(ds)

フランスのピアニスト、アンリ・ルノーが単身N.Y.に乗り込んで 作った10インチLPで、ジャケ・デザインにそのすべてが表わされています。'Nous rapporte des U.S.A.'というわけで、 USAをボストンバッグに詰め込んでFrench LinesでFRAGILE シールくっつけて(笑)戻って来た、というわけです。アンリ・ルノーのリーダー作(裏ジャケにはアンリ・ルノー・オールスターズなんて書いてある)とはいえ、アンリ・ルノーのピアノが聴けるのはたった2曲(全5曲中)。もうすでにプロデューサーとしても活動していたわけで、ここでもプロデューサーに徹していたのかもしれません。で、そのアンリ・ルノーの代わりに(?)ピアノを弾いてるのがミルト・ジャクソンで、ついでに歌まで歌っちゃったりして(1曲だけ)、ほとんど主役です。もちろんヴァイブも弾いてます。ヴァイブのソロのときなんか、そのままMJQの雰囲気です。やはりパーシー・ヒースの存在が大きいのでしょうか。それとも気のせいか?1954年の N.Y.ジャズシーンの日常的風景を垣間見たような、そんな気分にさせて くれるアルバム。特にB面が良い。

RONNIE BALL / All About Ronnie (savoy/1956)

ロニー・ボール(p)ウィリー・デニス(tb)テッド・ブラウン(ts)ウェンデル・マーシャル(b)ケニー・クラーク(ds)

トリスターノ系クールの名ピアニスト、ロニー・ボールの唯一のリーダー作。これほどのピアニストが何故これしかリーダー作を残さなかったのか謎ですが、まあとりあえずひとつでもアルバムを残してくれたことを喜ばなくては。でも正直もっと沢山リーダー作を聴きたかった…。コニッツやマーシュのサイドマンとしていくつかのアルバムにロニー・ボールの名前を見かけますが、どれも素晴らしいプレイのものばかりだし。そんなわけで、ロニー・ボールはレニー・トリスターノ門下生ピアニストなわけだけど、トリスターノほど奇抜なわけではなく、それなりに聴き易いわけです。バップのような熱狂はありませんが、抽象的なアドリブラインを駆使して組み立てられる端整で冷徹なメロディはバップとはまた違った静かな熱を感じさせます。tsとtbのフロントのハーモニーもロニー・ボールの端整なスタイルにマッチしてて、いい感じです。この2人もトリスターノ門下生ではありますが、バップフレーズが基本にあるようで50年代のコニッツのような摩訶不思議さはありません。しかし、だからこそこのアルバムが聴きやすく、且つノリやすいものになっているようです。ちなみにリズムセクションのウェンデル・マーシャルとケニー・クラークは当時のサヴォイ・レーベルのハウスミュージシャン。トリスターノ系は何故かリズムを全くいじらないので、この2人の堅実なプレイで十分。というか、ケニー・クラークはやぱり素晴らしい…。 �

CONVERSATIONS WITH BILL EVANS/ Jean-Yves Thibaudet

ジャン=イヴ・ティボーデ(p)

クラシック界のティボーデがエヴァンスゆかりの曲ばかり演奏した珍盤。どの曲もまるでドビュッシーかラヴェルのような雰囲気が漂うわけだが…、このエヴァンス→フランス印象派という変換は見事。ティボーデならではの個性が強烈に出ているしジャズとしても一級品だとは思うけど、あまりにも奇麗かつ華麗なので、何やらどこかのホテルのラウンジで心地よく流れるエレガントなピアノという印象もなきにしもあらず。とはいえテーマ部とアドリブ部が解け合うような構成は実に心地良い。エヴァンスをフランス風味で味付けした、なんていうレベルを軽く超えて独自のジャズを提案したティボーデの越境ジャズ作品。とにかくテクが圧倒的なので(そりゃそうだ)、そんじょそこらのイージーリスニング・ジャズよりは安心して音楽に浸れます。心底くつろげるアルバム。

BILL EVANS/ JIM HALL/ Undercurrent (United Artist/1962)

ビル・エヴァンス(p)ジム・ホール(g)

LP時代に未発表だった3曲も含め、すべてが素晴らしい。両者程よい距離を保ちつつ展開されるインタープレイは、くつろぎとスリリングさとが共存する、何とも絶妙なものになっています。冒頭のマイ・ファニー・ヴァレンタインの2つのテイク、原曲の哀愁感みたいなものは全く無くて好感が持てます。出来ればこんな曲はもっともっと崩して欲しかった。また、ジム・ホールのギターはこの頃はまだ結構太い音色で、これまた最高。現代最高のギタリストのひとりジェシ・ヴァン・ルーラーはこのアルバムをすり切れる程聴いたとか…。 

Wynton Kelly / Full View(milestone/1966)

ウィントン・ケリー(p)ロン・マクルーア(b)ジミー・コブ(ds)

このアルバムの前年にはウェスとの共演で何枚か盛り上がったアルバムを出してますが、この年になると急に寂しげになってくるウィントン・ケリー。すっかり取り残されたようになってきます。ジャズ界激動の60年代後半だというのに、あまりにもオーソドックスすぎるピアノトリオ…。しかし、そこがいいのです。やはりケリーはこのスタイルで通したからこそ今でも絶大な人気があるのでしょうね。パウエルの持つ開放感に、緻密さとキュートさを加えた、よく歌うピアノ。このアルバムでも何も変わらずいつものスタイルです。ケリーは本当に気持ち良さそうにピアノを弾いています。聴いてる方も気持ちよくなってきます。

WYNTON KELLY/ WYNTON KELLY ! (Vee Jay/1961)

ウィントン・ケリー(p)ジミー・コブ(ds)ポー・チェンバース(b)サム・ジョーンズ(b)

ちょうどマイルスのグループを抜けてすぐの頃の録音。マイルス・グループに居たときとは違い、どこかレイジーさというか気だるさみたいなものを感じさせるウィントン・ケリーのピアノです。B面ラストのゴーン・ウィズ・ザ・ウインドでのハッピーなピアノを聴いていると、やはりその後のマイルスのモードとは合わないよなあ、なんて思ってしまいます。 

GEORGE SHEARING and The MONTGOMERY BROTHERS (jazzland/1961)

ジョージ・シアリング(p)ウェス・モンゴメリー(g)バディ・モンゴメリー(vib)モンク・モンゴメリー(b)ウォルター・パーキンス(ds)

当時キャピトルのスターだったジョージ・シアリングが、ウェス、バディ、モンクからなるモンゴメリー・ブラザースをいたく気に入って、キャピトルのトップに掛け合って実現したのがこのアルバム。まさに異色の組み合わせ。天才ウェスといえどもショウビジネスの世界ではシアリングの足下にも及ばぬ存在だったわけで、なんとなくジャケからもそんな雰囲気が漂って来るような気もします。そんなわけで、すっかりシアリング色のアルバムなわけです。ウェスの華麗なギターワークを期待すると肩すかしを食らうことになります。メンバ-構成からして例のシアリング・クインテットそのままなので、サウンド的にもシアリング・クインテットっぽいのですが、やはりウェスが居るということで多少変化があります。ソロパートはどの曲も短いけれど、ウェスってのはどんなに短いパートでもキッチリと簡潔にキメてくれるわけで、長さなんて問題では無い。ウェス晩年のイージーなアルバム郡でもそれは一緒。このアルバムではエレガントなシアリング・サウンドの中でのウェス、というのを楽しみたい。考えてみれば、親指のみで弾くウェスのギターの柔らかい音色っていうのは、品のあるピアノスタイルのシアリングに合うのかもしれません。 


DUKE PEARSON /Wahoo ! (blue note /1964)

デューク・ピアソン(p)ジェームス・スポールディング(as.fl)ジョー・ヘンダ-ソン(ts)ドナルド・バード(tp)ボブ・クランショウ(b)ミッキー・ロッカー(ds)

ピアソンのBN3作目。ボスのドナルド・バードは影が薄いけど当時の新人ジェームス・スポールディングとジョー・ヘンダーソンはアクの強さで目立ちますね。アーシーな感触と新主流派の洗練を兼ね備えた「ESP」は名演。また、リズムがミッキー・ロッカー&ボブ・クランショウなのでフットワークが軽く、冒頭の「AMANDA」などではいかにも彼等らしいノリで聴かせます。ジャズが最も多様化した時期のアルバムなだけにこのアルバムも安易にカテゴライズ出来ないような妙な存在感みたいなものがあります。

EDDIE COSTA / The House Of Blue lights (Dot Records/1959)

エディ・コスタ(p)ウェンデル・マーシャル(b)ポール・モチアン(ds)

バップ期のピアニストの中でも、個性的という点でズバ抜けているのがエディ・コスタ。タル・ファーロウとの一連のトリオ作品がエディ・コスタの真骨頂だと思うが、こちらのピアノ・トリオも昔から語り継がれる名作。とにかくノリが独特なのだ。脱線しては元に戻り、脱線しては元に戻り、といったような感触。脱線といっても後年のパウエルのように本線を見失ってフと我に返り元に戻るというような断絶型ではなく、本線をはずれるぎりぎりまで冒険して元に戻るという感じ。タル・ファーロウのバックで弾いてるときには出来ないような冒険がとにかく面白い。A-3のDIANEがお気に入り。

DAVE McKENNA, SCOTT HAMILTON, JAKE HANNA/ No Bass Hit (concord/1979)

デイヴ・マッケンナ(p)スコット・ハミルトン(ts)ジェイク・ハナ(ds)

ジャケットがイイ。ハーブ・エリス&フレディ・グリーン「リズム・ウィリー」などとともにコンコードの中でも最も好きなジャケットです。コンコードのアルバムはジャケ・センスに疑問を感じることが多いんですが、たま~に優れたものがあります。そんなわけでこのアルバムです。デイヴ・マッケンナのスタイルだと左手が完璧にベースラインを弾いてるので、ベースいらずなわけです。だもんでこのアルバムはピアノ、サックス、ドラムの3人。コンコードなのでレイ・ブラウンが入ってもいいじゃないかって気もしますが、やはりこの3人ってのがこのアルバムのポイントになってます。なんだか軽やかです。スコット・ハミルトンもいつもより心持ち軽やかです。古いスタイルのデイヴ・マッケンナと、同じく古いスタイルのスコット・ハミルトンの演奏はなんだかなごみます。緊張感、というよりも、気持ちのよいスイング感。天気の良い日に草野球をボ~っと見ているような心地よさ。


(文:信田照幸)



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