<FUSION/その1>


CHUCK MANGIONE / Fun And Games (A&M/1980)

チャック・マンジョーネ(Flugelhorn,el-p,p)クリス・ヴァダラ(fl,piccolo,ss,ts)グラント・ガイスマン(g)チャールズ・ミークス(b)ジェイムス・ブラッドリーJr(ds,per)
誰にでも自分だけの思い出のアルバムというのがあると思いますが、僕の場合はこれ。チャック・マンジョーネです(爆)。ファン&ゲームスです。これは僕が初めて買ったフュージョンのレコードです。中学年の頃です。渋谷のタワレコ(昔はハンズの先にあった)で買いました。輸入盤です。なんでこのアルバムを買ったかというと、単なる勘違いだったわけなんです。当時、TVのCMの中でトランペットがかっこよく鳴り響く曲がありまして、その曲のレコードが欲しかった。んで、当時トランペット関係で一番有名だったのがチャック・マンジョーネであり(なんでマイルス・デイビスじゃなかったのか…)、このアルバムがチャック・マンジョーネの新譜だったわけなんです。というわけで、勇んで買ってはみたものの、お目当ての音源が入っていない。でも昔はLPってのは貴重品で、ひと月に1枚くらいしか買えなかったんです(中学生だし)。だから買ってしまったものはどんなLPであっても何度も何度も聴くはめになる。そしてくり返し聴いてるうちにすっかり気に入ってしまった。大学生の頃くらいまでず~っとお気に入りのレコードとして君臨しておりました。カー・オーディオにもこれのテープを入れて聴いてたくらいだし(特に夕方のドライブにはピッタリ。爆)、夜なんかはこのレコードを聴いてくつろいだりしてたし…。とにかく本当によく聴きました。今では年に1~2回聴きたくなる時があるという感じですが、それでも聴くたびにイイな~と思うわけです。特にA-1の「ギヴ・イット・オール」は、全米第2位という快挙を成し遂げた名曲「フィール・ソー・グッド」(77年)に匹敵するほど素晴らしい。僕は個人的にはこちらの「ギヴ・イット・オール」の方が気に入っております。もちろんこのアルバム、すべての曲が素晴らしく、フュージョンとしてはまさに出色のアルバムということが出来ると思うのですが…、一般的な知名度はそれほどでもないかもしれません。しかし、このアルバムは僕にとっては特別であり、どんなときでもこれを聴けば気分が良くなるのです。

CHUCK MANGIONE / Feels So Good(A&M/1977)

チャック・マンジョーネ(Flugelhorn,el-p,p)クリス・ヴァダラ(fl,piccolo,ss,ts)グラント・ガイスマン(g)チャールズ・ミークス(b)ジェイムス・ブラッドリーJr(ds,per)
タイトル曲が全米第2位、アルバムもプラチナ・アルバムになるなど、フュージョンとしてはベンソンの「ブリージン」と並ぶ程の問答無用の大ヒット・アルバムです。チャック・マンジョーネという人はおそらくこのタイトル曲「フィール・ソー・グッド」がなければ今頃は誰も知らぬような存在になっていたことでしょう…。それほどこの曲は強烈。まさに一世一代のウルトラ級の曲。そして、それまでのチャック・マンジョーネのキャリア(ジャズメッセンジャース~マンジョーネ・ブラザーズ)をすべて肯定してしまう位のインパクトがあります。このアルバムが発売してから数年後のチャック・マンジョーネは本当に人気があったのをよくおぼえております。一般誌レベルでも頻繁に取り上げられておりました。しかしジャズ界での評価はどうであったのかは、よく知りません(当時小~中学生だったし…)。さて、このアルバム、A1のタイトル曲だけが優れていたというわけではなく、アルバム自体なかなかまとまっていて、聴きやすい。なんといってもどの曲もメロディが美しい。そして雰囲気。マンジョーネ自身が弾くエレピもいい感じで全体をやわらかく包んでいるし、グラント・ガイスマンのギターも極度にエレキっぽくしていないところがメロウな雰囲気作りに貢献しています。そして何よりもチャールズ・ミークスのベース。このベースのおかげで口当たりのよいイージーリスニングを脱して鑑賞にも耐えるフュージョンになっているような気もしてきます。また、このレギュラー・メンバーは余程相性がいいのか、3年後の「ファン・アンド・ゲームス」でも同じようにタイトでメロウで爽やかな演奏を見せてくれています。

CHUCK MANGIONE / 70 Miles Young (A&M/1982)

チャック・マンジョーネ(Flugelhorn)ラリー・カールトン(g)ジョン・トロペイ(g)スティーヴ・ガッド(ds)ラルフ・マクドナルド(per)デヴィッド・スピノザ(g)パウリーニョ・ダ・コスタ(per)クリス・ヴァダラ(fl,piccolo,ss,ts)チャールズ・ミークス(b)ジェイムス・ブラッドリーJr(ds,per)他
チャック・マンジョーネ全盛期の最後を飾るアルバム。このアルバムを最後にA&Mを離れ、CBSへと移籍します。CBSに移籍したとたん何故か元気のないアルバム(本作と同じ1982年発表)を出し、その後なしくずしに失速…。それほどまでにこのアルバムにすべての力をそそいだのかも。このアルバムのA面全部を使っての「70 Miles Young」はなかなか力が入ってます。「リターン・トゥ・フォーエバー」のような穏やかな始まり方ですが、徐々に重心の低いソウルっぽさなども出てきます。また、B1ではあの「フィール・ソー・グッド」のヴォーカル・バージョンで、オリジナルよりも静かな雰囲気なのがとても良い感じ。B面はこれまでのチャック・マンジョーネの総決算的な内容になっているのが興味深いところです。ちなみにアルバム・タイトルにある「Miles」とはチャック・マンジョーネの父親のことで、チャック・マンジョーネはこの父親のおかげでジャズの道に進んだようなもの。父親のフランク・マイルズ・マンジョーネはかつてディジー・ガレスピーなどと交流があるほどのジャズファンだったそう。そしてチャックが聞きたいと思うアーチストは誰でもすぐに聞きに行かせてくれたそうで、その上いろんなミュージシャンを家に招待しては一緒にジャムセッションなどもやってたそうです。その中にはディジー・ガレスピーなんかもいたそうな…。ディジーが居たってことはきっと他にも超大物アーチストもいたことでしょう。そしてそんな関係でジャズメッセンジャーズへも加入することになったのでしょうか。マルサリス兄弟もビックリのサラブレッドです。ところで、この80年代初頭という時期はジャズ界では例のウィントン・マルサリスが一世を風靡(?)していた時代。そしてフュージョンという音楽はひたすらポップスへと傾いていった頃です。同じジャズメッセンジャーズ出身のトランペッターがこの時代のジャズ界とフュージョン界のメインストリームだったってのは面白い現象です。フュージョン界のスターであったチャック・マンジョーネの最後の総決算アルバムである本作、今となっては誰も見向きもしないかもしれませんが、僕に言わせれば「今」だからこそ面白いのです。

JAZZ CRUSADERS /Soul Axess(2004/true life jazz)

ウェイン・ヘンダーソン(tb)ウィルトン・フェルダー(ts)ロニー・ロウズ(ts,ss)エヴァレット・ハープ(ts)トニー・ムーア(ds)ネイザン・イースト(b)ロイ・エアーズ(vib)ボビー・ライル(key)他
大名盤。クルセイダーズは今やジョー・サンプルの「クルセイダーズ」とウェイン・ヘンダーソンの「ジャズ・クルセイダーズ」の2つに完全に分裂してしまってますが、こちらはウエイン・ヘンダーソンのジャズ・クルの方。ちなみにこのアルバムにはウィルトン・フェルダーも参加してます(3曲だけ)。二股かけるウィルトン・フェルダー恐るべし…。ということで、この2004年のジャズ・クルのアルバム。1曲目の「OVERJOYED」と2曲目の「CLIMA SUAVE」があまりにも素晴らしいのです。フロントのtbとtsの絶妙なブレンドで醸し出される伸びやかな音は昔のジャズ・クルセイダーズそのまま。ウェイン・ヘンダーソンはこういったセンスがあるから好きです。基本的にtbとtsの2管がフロント。リズム隊は人力が3分の1で、残りがシンセ・プログラミング。雰囲気だけのスムース・ジャズよりは何倍も聞きごたえがありますが、このジャケットは何とかならなかったんでしょうか…(笑)。1曲目の「OVERJOYED」、スティービー・ワンダーのカバーですがこれは本当に素晴らしい。この曲はひょっとして今年のナンバーワンかも…。とにかく普段から頭の中にこの曲がぐるぐると流れるほどにお気に入りなのです。この曲の存在によりこのアルバムは名盤の仲間入り決定。やや渋めに決めたクルセイダーズ(ジョー・サンプルの方)の路線とは全く毛色の違う都会的(?)路線。

SPYRO GYRA / Got the Magic (Windham Hill/1999)

これは最高。スパイロジャイラのアルバムの中でも存在感が薄い気がするのはこのレーベルのせい。中身は代表作とも言えるほどに充実した好作品。音の感触が心地よいのはプロデューサーのチャック・ローブのセンス。演奏そのものを聴いてよし、曲のメロディを聴いてよし、雰囲気を聴いてよし…と、まさに言う事無し。初期のトロピカル路線を捨てて本当に良かった。

Jay Beckenstein / Eye Contact (Windham Hill Jazz / 2000)

ジェイ・ベッケンスタイン(sax)

スパイロ・ジャイラのサックス奏者ジェイ・ベッケンスタインの初ソロ作。これがなかなか良いのです。打ち込みも使ったスムースジャズで、なかなか心地よい。聴き込む音楽ではなく空間を演出するための音楽という感じで、まさにスムースジャズの鏡のような(笑)作品に仕上がってます。こういうの、結構好きです。ちなみにこのWindham Hill Jazzからは1999年にスパイロ・ジャイラのアルバムも出しており、そちらも素晴らしいです。 

HERBIE HANCOCK / FAT ALBERT ROTUNDA (warner/1969)

ハービー・ハンコック(p, el-p)ジョー・ヘンダーソン(ts)ジョニー・コールズ(tp)ガーネット・ブラウン(tb)アルバート・ヒース(ds)バスター・ウィリアムス(b)

「Speak Like A Child」(1968)、「The Prisoner」(1969)と来て、このアルバムになります。サントラなので多少BN盤とは意味合いは違うものの、この流れは分かりやすい。A&MとVerveでスタジオミュージシャンとして売れまくっていた頃なだけに、何故このアルバムがこんなにもポップなのかが理解出来ます。この時代、こういう雰囲気のジャズロック/フュージョンは他にも沢山あるわけで、ある意味時代の音楽なのかもしれません。黒いけれども黒すぎず、ファンキーだけど何処かロックっぽいダサさ加減もあり、だけどホーンアレンジが洗練されている…。お仕事でやってしまいました的な軽さがイイではないですか。同じくハービーが担当したサントラ「Blow-Up」よりもまとまりがあるし、アルバムとしての存在感もある一枚です。 

AL VIZZUTTI/Skyrocket(1980)

アル・ビズッティ(tp, fl-horn)チック・コリア(p,el-p)グラント・ガイスマン(g)バニー・ブルネル(b)ジョー・ファレル(ts)トム・ブレックトライン(ds)他

アル・ビズッティのファースト・アルバム。A-2が1曲目だったらなあ、なんて思うのだ…。それほどイイ曲。チックの影響丸出しのA-1もそれなりに面白いとは思うけど、同時期のチャック・マンジョーネにも匹敵するようなA-2にもっともっと焦点を当てても良かったのでは。A-4はもろにマンジョーネを意識したような曲になってるのが今となっては貴重か…(笑)。B面ラストはそのまんまブレッカーなわけだが…(笑)、これもまた貴重か…。アル・ビズッティという人は結局日の目を見ずに消えたような気がするけれど、その後どうなったんでしょうかね?この人は元々クラシック出身。テクが圧倒的なので聴いてて安心感がありますね。メイナード・ファーガソンばりに凄いハイノートに圧倒されます。

JOE BECK /Back To Beck (dmp/1988)

ジョー・ベック(g)デイヴ・マシューズ(key)ルー・ソロフ(tp)ジョージ・ヤング(sax)マーク・イーガン(b)ジェイ・レンハート(b)テリー・クラーク(ds)マーク・シャーマン(per)
マイルス・デイビスがエレクトリック化するときに最初に声をかけたギタリストがこのジョー・ベック。1967年のその記念すべき録音は「サークル・イン・ザ・ラウンド」のB面で聴けますが、そこでのジョー・ベックの使われ方は単なるリズムセクションの一部のようなもの。とはいえ、ジョー・ベックという名前はそれによって随分大々的に知れ渡ったのではないでしょうか(それ以前はポール・ウィンター、チャールズ・ロイド、ゲイリー・マクファーランド、チコ・ハミルトン等のグループにいた)。マイルスと共演するとたいていの人は出世するもんですが、このジョー・ベックはどういうわけかずっと地味。このアルバムを出す頃に至ってはすっかりスタジオ・ミュージシャンとして活動していたようです。というわけでこのアルバム。アコギの音色がいい感じです。僕は基本的にアコースティック・ギターの音色が好きなんです。ナイロンでもいいしスチールでもいい。とにかくナチュラルなギターの音色が好き。だもんで、こういったアルバムは見逃せなかったりします。あまりにも地味なアルバム(ジャケまで地味…笑)だけど、アコースティック・ギターとバックのホーンとの交わりがなんとも心地よい。

JORGE DALTO/New York Nightline (EMI/1984)


ホルヘ・ダルト(key,moog,etc)ジョージ・ベンソン(g)ボブ・ミンツァー(ts,bc)ジェイ・ベッケンスタイン(as)スティーヴ・ガッド(ds)アンソニー・ジャクソン(el-b)ウィル・リー(el-b)ジェフ・ミロノフ(g)デイヴ・バレンティン(fl)バディ・ウィリアムス(ds)他
スムースジャズというのは要するに現代版イージーリスニングということ。つまり、都会のクリスタルな(爆)ナイトライフを演出する、あるいは心地よいイブニングタイムのカフェを演出するBGM、はたまたシーサイド・ドライブをさらに盛り上げる為のミュージック、そういった機能主義音楽なわけです。だから暑苦しい自己主張はいらないし、エキサイティングである必要もさらさら無い。現在(2006年)のスムースジャズ専門のネットラジオなんかを聞いているとその辺の事情がよく分かります。さて、ホルヘ・ダルトのこのアルバム。前作「ランデブー」同様、鈴木英人のイラストがイタい所ですが、内容の方は本当に心地よいスムースジャズ。前作よりも音に落ち着きがあって、文字どおり「スムース」です。ある意味時代の音楽ではあるけれど、これほどのクォリティがあれば今でも十分通用するでしょう。不毛の80年代にあってこの内容、というのはなかなかありません。1曲目なんかはDX-7とシンセとムーグの音を使っていながらもこの絶妙なセンス…。ダサくならないDX-7やシンセの音なんてあまり無いのでは(DX-7はたいていダサい)。メンバーの凄さゆえというよりも、やはりホルヘ・ダルトのバランス感覚が為せるワザか。特にA面が絶品。

TIM WEISBERG/Hurtwood Edge (A&M/1972)


ティム・ワイズバーグ(fl)アート・ジョンソン(g)リン・ブレッシング(vib)デイブ・パラト(b)デヴィッド・スピノザ(g)ラリー・カールトン(g)他
長髪にバンダナ、そしてストライプのパンツ。ジャケに写るティム・ワイズバーグはヒッピー時代のファッションに身を包み、かなり時代がかってます。本当にカッコイイ(笑)。ジャケに小さく描かれるイラストもヒッピー系。音楽の方もそのままピースフルです。時としてサイケデリック、時としてカントリー…。グレイトフルデットやCSNにも通じる「あの時代」的な雰囲気に溢れます。特にB面の牧歌的な流れは本当に心地よい。どこかアメリカのとんでもない田舎に連れていかれたような気にもなりますが、B面ラストでようやく都市に戻ってくる、といった感じ。おそらく永遠にCDになることは無さそうですが、レコ屋でも(たぶん)駄盤扱いだと思うので100円くらいで売ってます。あの時代の音が好きな人は是非。

TIM WEISBERG/TIM WEISBERG (A&M)


ティム・ワイズバーグ(fl)ポール・ハンフリー(ds)Larry Knechtal(b)アート・ジョンソン(g)リン・ブレッシング(vib)マイク・メルヴォイン(harpsichord)他
僕が中学生の頃にFMラジオ番組「ジェットストリーム」のワンコーナーでこのティム・ワイズバーグが特集されていて、このアルバムのA面1曲目「サテンの夜」も流れたのでした。そのラジオはエアチェックしてたので今でもテープで残っているわけですが、昔のジェットストリームはずいぶんシブい所ついてました。当時の僕はこの「サテンの夜」をエラく気にいってしまい、何度もテープを聴いてたわけです。その後オリジナル「サテンの夜」のムーディーブルースも手に入れて聴いたんですが、やっぱりこちらの方がイイ。この70年代的というかイージーリスニング的というか、微妙な心地よさが堪らない(笑)。ソフトロック的でもあります。なんというか、全体的にイージーな雰囲気が漂ってジェットストリームっぽいのがとても良い。ヴァイブの音色なんかも混ざってるところがオシャレです(笑)。ストリングスの音色もこれまたよし。カフェ・アプレのコンピ盤でこのアルバムから選曲されるときが来るかもしれません。というか、これ、カフェ・アプレにオススメです(爆)。パーシー・フェイスやジャッキー・グリースンなんかと同じように、昔ダサかったものが時代を経てオシャレになる、という一例。(とはいえB面はオシャレというにはちょっとキツイか…笑)

CRUSADERS /2nd Crusade (blue thumb/1973)

ウエイン・ヘンダーソン(tb)ジョー・サンプル(p,el-p)ウィルトン・フェルダー(ts,b)スティックス・フーパー(ds)ラリー…カールトン(g)デヴィッドTウォーカー(g)アーサー・アダムス(g)
2枚組LP。クルセイダーズと名前を変えてからの2作目。当時流行していたソウル系サントラなどと同じような匂いのするアルバム。中でも僕はC面が好きで、「シャフト」にも通じる都会感がたまりません。ウエイン・ヘンダーソンの音を中心に聴くのがコツです。ウエイン・ヘンダーソン、ジョーサンプル、ウェルトン・フェルダー、スティックス・フーパーのオリジナルメンバー4人が並ぶジャケが感慨深いです…。

SCOTT JARRETT / Without Rhyme Or Reason (1980/GRP)

キース・ジャレット(p)デイヴ・グルーシン(key)マーカス・ミラー(b)ラルフ・マクドナルド(per)トゥーツ・シールマンス(hca)エディ・ゴメス(b)クリス・パーカー(ds)バディ・ウィリアムス(ds)スコット・ジャレット(vo,g,p)
キース・ジャレットの弟スコット・ジャレットのファースト・アルバム。主役のスコット・ジャレット以外は全員超一流の有名人(笑)。このフュージョンのスター達の中に兄のキース・ジャレットが紛れこんでいるのがなんとも嬉しい。ちなみにキースの参加曲は2曲です。2曲ともキースの存在感が際立っております。このスコット・ジャレット、どこかジェームス・テイラーに似た感じのシンガーソングライターです。曲によってはバックのメンバーのマーカス・ミラー等に煽られてますが(笑)、基本的にはフォーク系AORといった感じ。ジェームス・テイラー好きの僕は結構このアルバム気に入っております。が、このアルバムの後、スコット・ジャレットがどこに行ってしまったのかは全く知りません…。ライナーノーツには「願わくは、ひとりでも多くの人が僕のレコードをライブラリーに加えてくれれば最高の幸せだ」というスコット・ジャレットの言葉が載っています。

DAVID MATTHEWS/BIG BAND RECORDED LIVE AT THE FIVE SPOT(1975/muse records)

デヴィッド・マシューズ(P)David Tofani(ss,ts,fl)Frank Vicari(ts,fl)Kenny Berger(bs,b-cl)Joe Shepley(tp)Burt Collins(tp)Fred Griffen(french horn) Michael Gibson(tb)Tony Price(tuba) Sam Brown(g)Harvie Swartz(b)Jimmy Madison(ds)
ジェームス・ブラウンのグループの音楽監督だったデヴィッド・マシューズが新たにビッグバンドを率いてファイブ・スポットに乗り込んだ75年のライブ盤。B-4で顕著なブレッカーズばりのキメの連発技はいかにもマシューズって感じですが、全体的には雰囲気重視的な重厚なジャズ寄りのビッグバンド。チューバ、バリトンサックス、フレンチホルン、トロンボーンといった低音系の響きが美しい。クルセイダーズっぽいA-3やブレッカーズっぽいB-4等のポップ系セッションと、A-1やA-2等のジャズ系のセッションの2種類のセッションから成り立つアルバムです。

RAMSEY LEWIS / Dance Of Soul (1998/GRP)

90年代にGRPに移籍してからのラムゼイ・ルイスは本当に素晴らしい。これはGRPでの4枚目。それまでの3枚に比べ「いかにも」なラウンジ感はなくなりましたが、そのかわりに躍動感みたいなものの比重が大きくなりました。ドラムの音の質感のせいもあるんでしょうが、ゴスペル・コーラスなども入れたトラックなんかもあったりして、なかなかの大作です。

The CRUSADERS / Rural Renewal (2003/verve)

ジョー・サンプル(p.,fender rhodes,wurlitzer,organ) ウィルトン・フェルダー(ts) スティックス・フーパー(ds)スティーヴ・バクスター(tb) フレディ・ワシントン(b)ディーン・パークス(g)レイ・パーカー・jr(g)アーサー・アダムス(g)レニー・カストロ(per)他
「クルセイダーズ再結成」という触れ込みで大々的に売り出した新生クルセイダーズのアルバム。もちろんウェイン・ヘンダーソンの「ジャズ・クルセイダーズ」は90年代の復活作にして名作『ハッピー・アゲイン』からずっと存在しているわけで、ここにきてウェイン・ヘンダーソンの「ジャズ・クルセイダーズ」とジョー・サンプルの「クルセイダーズ」の2つが同時に存在するという珍妙な現象が起きてしまったわけです。ウェイン・ヘンダーソンとジョー・サンプルの不仲の原因は詳しくは知りません(一説によると宗教上の問題だとか…)。ちなみにウェイン・ヘンダーソンのジャズ・クルセイダーズの方は2004年に「SOUL AXESS」という空前絶後の大名盤をものにしておりまして、大変盛り上がっております…。というわけで、こちらのジョー・サンプルのクルセイダーズの新作ですが、これが実に素晴らしい。正直全く期待していなかっただけに余計に素晴らしく聞こえてしまう。なんといっても全曲人力リズムセクションなのがいい。打ち込みプログラミングもモノによってはいいんだけど、帰ってきたスティックス・フーパーの地に足のついたドラムが嬉しい。音の処理も落ち着いた感じになってて文句なし。70年代の泥臭さというか露骨なソウル色はありませんが、これもまたヨシ。8曲目の「Greasy Spoon」はかつてクルセイダーズがバックをつとめたB.B.キングの名盤「Midnight Believer」(1978)に収録されてた「Never Make A Move Too Soon」と同じ曲。僕はこのB.B.キングのアルバムが大好きなので、この曲がインストヴァージョンで聴けるってのが嬉しいのです。9曲目は、テナーとトロンボーンのユニゾンで、かつてのクルセイダーズの必殺技。もしこれがウェイン・ヘンダーソンだったら…、と思ってしまうのは贅沢ってもんか。ちなみにこのCD、僕の持ってるのはUSA盤。日本盤には2曲ボーナストラックがついてるそうです(買ってから知ったのだった…)。

WAYNE HENDERSON and the NEXT CRUSADE/Sketches Of Life (1993/PAR records)

ウェイン・ヘンダーソン(tb)ウィルトン・フェルダー(ts)ロブ・マリンズ(key)ドゥワイト・シルズ(g)ブライアン・プライス(g)ナザニエル・フィリップス(b)ノエル・T・クロッセン(synthesizer programming)レイフォード・グリフィン(ds)トニー・セント・ジェイムス(ds)他
ウェイン・ヘンダーソンのネクスト・クルセイドの2枚目。2004年に出た「Tree Kings- Legacy Continues 1 」(true life jazz)なるオムニバス盤がありまして、これはウェイン・ヘンダーソン、ウィルトン・フェルダー、ロニー・ロウズの3人の過去のアルバムからいくつか曲をピックアップして出来てるアバウトなアルバムなのですが、このウェイン・ヘンダーソンの「Sketches Of Life 」からもピックアップされてまして、それらがなんとJAZZ CRUSADERS名義になってます…。つまりこのアルバムは実質上ジャズ・クルセイダーズのアルバムということなんでしょう。とにかくはじめの3曲が素晴らしい。かつてのベニーゴルソンにも通じるウェイン・ヘンダーソンのホーン・アレンジはなんとも都会的。メロウな雰囲気で統一された落ち着いたアルバムです(ラストの2曲を抜かす)。

WAYNE HENDERSON and the NEXT CRUSADE/Back To Groove(1992/PAR records)

ウェイン・ヘンダーソン(tb)ウィルトン・フェルダー(ts)Noel Closson,Ndugu Chancler(ds)Rob Mullins(key)Phillip Ingram(synthesizer programming)Dwight Sills(g)Larry Kinpel(b)他
90年代にウェイン・ヘンダーソンがやってたザ・ネクスト・クルセイドの1枚目。当時の本家クルセイダーズ(ジョー・サンプルが指揮していた)に全く負けてない、というかネクスト・クルセイドっていうグループ名からして対抗心丸出し(?)な意気込みが嬉しい。トロンボーンとテナー・サックスのユニゾンという最強の武器がある分こちらの方がクルセイダーズっぽい気もしますが…。ラストの「ALFIE」などのヴォーカル曲でのウェイン・ヘンダーソンのセンスは素晴らしすぎ。ヴォーカル曲のあまり好きでない僕なんかでもこれならぜんぜんOK。

GEORGE BENSON /Good King Bad (1975/CTI)

なんといってもB-1が素晴らしい。まるで70年代後半のアール・クルーの曲のように70年代のAMラジオから流れてきそうな雰囲気を持つ曲。こういった曲はかなりツボ。CTIならではのタイトな音の感触も素晴らしい。「ブリージン」前夜のベンソンです。

LARRY CARLTON / Alone/But Never Alone (1986/MCA)

ラリー・カールトン(g,b,key)テリー・トロッター(key)エイブラハム・ラボリエル(b)ロック・マロッタ(ds)マイケル・フィッシャー(per)
ラリー・カールトンが全編アコースティック・ギターを弾いているなんとも気持ちのよいアルバム。いつものブルース系ラリーとはちょっと違ったカラっとしたさわやかさがあります。80年代フュージョンにしては音的に古臭くはなってません。バックがシンプルだからなのでしょうか。

EDDIE HENDERSON / Inside Out (1973/capricorn records)

エディ・ヘンダーソン(tp,cornet,fluegelhorn)ハービーハンコック(fender rhodes,p,clavinet,org)ベニー・モウピン(stiritch,fl,ts)バスター・ウィリアムス(b)エリック・グラヴァット(ds)ビリー・ハート(ds)パトリック・グリーソン(syn)ビリー・サマーズ(congas)
メンバーを見れば分かるようにヘッドハンターズをバックにエディ・ヘンダーソンが吹いているといった感じ。いや、完全にヘッドハンターズに混ざりあって一体化しているといった方が近いか。「セクスタント」以前の渾沌としたハービーのノリがここで見ることが出来ます。またB-1ではそのまんまエレクトリック・マイルスなのが面白い。マイルスの影響力ってば相当のものだったんでしょうね。初期ウェザーリポートのドラマー、エリック・グラヴァットのドラムが聴けるのも嬉しい。この時代のブラック色の濃いクロスオーバーってなんでこんなに魅力的なのか。

JOE SAMPLE /Try Us (1969/sonet)

ジョー・サンプル(p)レッド・ミッチェル(b)J.C.モゼス(ds)
ジョー・サンプルのピアノ・トリオです。フュージョンではなくモダンジャズ。時期的にジャズ・クルセイダーズとしてスターダム街道を走りかけていた頃のソロ・アルバム。フュージョン・ピアニストとしてのジョー・サンプルの持つラウンジ感覚はもうすでにありますが、それ以上に意外にゴリゴリと攻めるピアノに注目。特にB面。同時期のキースに似たような何かを感じます。

RANDY BRECKER / Into The Sun (1996/concord)

最初の2曲がとにかくイイ。ブラジリアン・フレイバーに彩られた気持ちよさ。この部分だけエンドレスでずっと聴いていたい。他の曲も実に素晴らしく、やわらかい音の感触で統一されています。ランディ・ブレッカーのプレイがどうのこうのっていうより、サウンド全体としての美しさを聞きたいアルバム。

RANDY BRECKER / 34TH N LEX (2003/ESC Recoreds)

ランディ・ブレッカー(tp)デヴィッド・サンボーン(as)マイケル・ブレッカー(ts)ロニー・キューバー(bs)フレッド・ウェズリー(tb)マイケル・デイビス(tb)アダム・ロジャース(g)ジョージ・ホイッティ(key)クリス・ミン・ドーキー(b)クラレンス・ペン(ds)他
カッコイイ。冒頭のロニー・キューバー、きまってます。生ドラムと打ち込みを併用してますすが、打ち込みの音質のセンスがとにかくイイ。タイトで重くならない感じの小気味良い音質。かつての80年代打ち込みフュージョン~90年代スムースジャズなどの流れにある音の質感とは違うもの。クラブ系をも視野に入れたということなんでしょうか。ホーンの切れ味はブレッカーズそのままにバシっときまっていて文句なし。また、R&Bやヒップホップ等のコンテンポラリーな要素も少しだけ入ってて、「今」の空気を感じさせます。ちなみにマイケル・ブレッカーの「WIDE ANGLES」はこのアルバムのすぐ後に録音されました。兄貴に刺激されたからあんなアルバムが出来たんでしょうか?「34TH N LEX」と「Wide Angles」の兄弟対決は引き分け、いや、ランディにやや分があるか…?

RAY SANDOVAL / A La Naturaleza (2000/BG Records)

レイ・サンドバル(g)他

ガットギターでスパニッシュ・ライクなギターを弾くレイ・サンドバルの初ソロ。すべてオリジナル曲というのが嬉しい。哀愁漂うメロディで落ち着いた雰囲気の曲が多いです。ラテン系で非常にリズミカルなギターのノリが気持ちいいです。

WEATHER REPORT / Live And Unreleased (2002/SME)

75年から83年までの未発表ライブ音源をまとめた2枚組。僕にとってこの時期のWRはベースを中心に聴くグループ。アルフォンソ・ジョンソン、ジャコ・パストリアス、ヴィクター・ベイリー…、皆素晴らしい。ショーターの現状からすればたとえWR再結成があったとしてももうこのようなテンションのものは出てこないだろうということを考えると、なんとも貴重な音源に感じてしまいます。ただ、個人的にはもっと4ビート曲をやって欲しかったところです。それにしてもベースラインが激しく動くのは快感。

BELA FLECK and the Flecktones(1990/werner)

ベラ・フレック(bamjo)ヴィクター・ウッテン(b)ハワード・レヴィ(harmonica,key,guiro)ロイ・ウッテン(ds,synth-axe)
バンジョーの名手ベラ・フレックの爽快なカントリー系フュージョン・アルバム。バンジョーの乾いた音が実に気持ちいい。

Andy Narell/ Slow Motion(1985/Hip Pocket)

アンディ・ナレル(steel Drum)ケネス・ナッシュ(per) STEVE ERQUIGA(g) KEITH JONES (b) FRANK MARTIN(syn)ウィリアム・ケネディ(ds)
スティール・ドラム奏者アンディ・ナレルの全然知られてないアルバム。ドラムがイエロージャケッツのウィリアム・ケネディってところがひかれます。実はこれ、なかなか素晴らしいアルバムでして、音の処理の仕方が非常に落ち着いていていい感じです。ケネス・ナッシュのパーカッションがこのアルバムの極楽度を高めています。

GEORGE BENSON / The George Benson First Album(1966/CBS)

ジョージ・ベンソン(g,vo) ロニー・スミス(org)ロニー・キューバー(bs)ジミー・ラヴレー、レイ・ルーカス(ds)
ジョージ・ベンソンのファースト・アルバム。…といいたい所だが、実はこれ日本だけで作られたと思われる編集版LPで、ファーストの「IT'S UPTOWN」(1966)とセカンドの「COOK BOOK」(1966)からピックアップされたLPです。わざわざ「ザ・ジョージ・ベンソン・ファースト・アルバム」という題名なのが笑えます。ここでのベンソンですが、コテコテ系メンバーに囲まれながらも意外に洗練された演奏です。特に「ボサ・ロック」がバックのオルガンとともに素晴らしい出来。さすがのロニー・スミスもボッサになると例の暑苦しいプレイスタイルは消えていきます。2曲だけベンソンが歌ってる曲がありますが、なんとここではかなりリズム&ブルース・スタイルです。後年の甘いスウィ~トな歌い方の片鱗すら見えません。これなら普通にソウル・シンガーとしてでも成功したのではないかってくらいきまってます。しかしこのアルバム、全体を通すとやっぱコテコテか…。

WEATHER REPORT / I Sing The Body Electric(1971-72/CBS)

ジョー・ザビヌル、ウェイン・ショーター、ミロスラフ・ヴィトウス、エリック・グラヴァット、ドン・ウン・ロマン、他
A面には71年のスタジオ録音。B面には「Live In Tokyo」(当時日本だけの発売だった)からの抜粋音源が入ってます。ウェザーリポートの最高傑作は「Live In Tokyo」(1971)であると思ってる僕にとってはやはりこのB面は素晴らしい。アメリカではこれがセカンド・アルバム(日本ではサード)にあたりますが、初期ウェザーリポートの凄さを十分に伝えてるアルバムといえるでしょう。B面ラストにエレクトリック・マイルスの18番だった「ディレクションズ」が入ってますが、マイルス・グループよりはるかに面白く、かつスリリングな演奏になってます。あやしい雰囲気漂うAー1、ラルフ・タウナーのギターが面白いAー2、等等A面もかなり素晴らしい内容。全体を通してエリック・グラヴァットのドラムが素晴らしいです。

PETER ERSKINE / Transition (1987/DENON)

ピーター・アースキン(ds)ジョン・アバークロンビー(g)ボブ・ミンツァー(ts)ジョー・ロヴァーノ(ts,ss)他
ヒドいジャケットです…。日本人のデザインなんです。こんなジャケだと聴く気も失せるってもんです…。全くよくわからんセンスです。アースキンの髪型、口ヒゲ、サングラス、タンクトップなんかもよくわかりません…。このポーズもなんなんでしょう?スティックを折りたいのか?それとも鉄棒がしたいという意思表示の現れなのか?そんで、よくわからんのはこれだけではなく、1曲目の題名が「OSAKA CASTLE」ってのもよくワカランです。ところがこのアルバム、内容はなかなかイイんです。1曲目の大阪城はそのまんまWRみたいで、あれなんですが、それでもかなり面白い音楽。ケニー・ワーナーやアバークロンビーがシンセをいじってるのですが、これも結構いけます。アースキンもシンセドラムをたたいてたりして、「これ、どんな音が出るんだろう?」的な使い方が新鮮(?)。3曲目のミンツァーとロヴァーノのツイン・テナーなども聴き所。

GEORGE BENSON / Beyond The Blue Horizon(1971/CTI)

George Benson(g) Ron Carter(b) Jack DeJohnette (ds)Clarence Palmer (org)Michael Cameron, Albert Nicholson(per)

ベンソンのCTI第一弾。「So What ? 」のカバーがやたらとカッコイイ。かつてアシッドジャズ華やかしき頃にロニー・ジョーダンの「So What ? 」のカバーが流行りましたが、このベンソンの「So What ? 」も負けてません。途中4ビートになるところがゾクっと来ます。それにしてもベンソンのギターは本当によく歌います。B-1での奇妙な音はなんだ?って思ってよーく聞いてみると、ロン・カーターの弓だった。にしてもこの音はやっぱ妙だ…。

BOB MINTZER / One Music (1991/dmp)

ボブ・ミンツァー(ts,bcl,EWI)ラッセル・フェランテ(key)ジミー・ハスリップ(b)ウィリアム・ケネディ(ds)
ボブ・ミンツァー名義ながらも、このメンバーは全員イエロージャケッツ…。90年録音の『グリーンハウス』ではミンツァーがイエロージャケッツのゲストだったのに対し、こちらはイエロージャケッツがゲストって感じでしょうか。いずれにしてもこの時期のイエロージャケツは大好きなのでこのアルバムも気に入ってます。ほぼイエロージャケッツのアルバム。

BOB MINTZER / URBAN CONTOURS (1989/dmp)

ボブ・ミンツァー(sax)ピーター・アースキン(ds)他
ボブ・ミンツァーのビッグバンド・フュージョン。なんだか安っぽいなあ…って思って聴いてると、中盤あたりから徐々に面白くなってきます。ビッグバンドだっていうのに曲によってはリズムに打ち込み音も入ってきて、そこらへんが好き嫌いの分かれ目か。僕はぜんぜんオッケーでした。ラストはホーンだけのトラックで、これがかなり素晴らしい。全体を通してアースキンのドラムも素晴らしいです。

DONALD BYRD / Black Bird(1972/blue note)

当時隆盛を極めていたソウルミュージックの空気をそのまま持って来たドナルド・バードの名作。クロスオーバー・フュージョンを代表する1枚でもあります。このアルバムが「時代の音楽」で終らなかった要因はいうまでもなくミゼル・ブラザーズのプロデュース・センス。ジャズ臭さを排除した分だけソウル・ミュージックの感触が増大し、結果として当時のハイ・サウンドやモータウン系(そもそもミゼルBro.はモータウンから来たのですよね)にも通じる新たなブラックネスを獲得したといってもいいでしょう。僕もかなりのお気に入りです。

BOB JAMES / Grand Piano Canyon (1990/warner)

曲ごとにメンバーが入れ代わるものの、そのほとんどがネイザン・イースト&ハービー・メイソンのリズムセクション。前半などはほとんどフォープレイって感じです。ときおり入る打ち込み音もそれほど気にならず、なかなかセンスよくまとまっています。

CLAUS OGERMAN / CLAUS OGERMAN Featuring Michael Brecker (1991/GRP)

このCDは朝聴くと気持ちいい。ブレッカー兄弟のホーンもさることながらオガーマンの操るストリングスがいい味だしてます。このアルバムはジャケットで随分損してると思うんですが…。

BOB JAMES / The Swan (1984/Tappan Zee)

イージーリスニング風フュージョンの名盤。80年代中盤というフュージョン受難の時期にありながらこういったセンスのいいアルバムを出すボブ・ジェームスはやはりミスターN.Y.(笑)(とはいえ同じ84年には『12』というかなり安っぽい打ち込み音が主体のアルバムも出してはいるんですが)。

PAT METHENY GROUP / Speaking Of Now (2002/warner)

僕はメセニーのシンセの使い方がどうにも駄目なのですが、このアルバムではトランペット奏者が参加してるせいか、例のかん高いシンセ音はあまりありません。それだけでも僕にとってはかなり聞きやすいアルバム。んで、あらためてメセニーの音楽をじっくり聞いてみると、これがなかなか大仰。大仰なのに湿っぽくならないところがプログレと違うところで、メセニーの素晴らしさなのでしょう。このアルバムにはリチャード・ボナがヴォーカルとして参加していまして、これがかなり効いてます。

ジョー・サンプル/Rainbow Seeker (1978/MCA)

ジョー・サンプルのファースト・ソロ。落ち着いた感じの2曲目が好き。このアルバムはフュージョンの定番ではありますが、この時代のギターの使い方がどうにも馴染めなくて、いまだにギターさえジャジーにキメてくれてたらなあ…なんて思うこともしばしば。


ジョー・サンプル/CARMEL(1978/MCA)

このソロ2枚目は1曲(フェンダーローズを弾いている)を除いてすべてアコースティック・ピアノを弾いています。基本的にp、b、dsというトリオにg,perが絡むっていういたってシンプルな構成。このシンプルな構成のおかげでこのアルバムが名盤化したと言ってもいいのでは。ジョー・サンプルはず~っとこの路線で行ってほしかった…。この人のメロウなセンスの前では余計な音なんて一切いらないのです。あの「ASHES TO ASHES」と並ぶ文句ナシの名盤。

ボブ・ジェームス/Playin' Hooky(1997/warner)

きみどり色のジャケットが気持ちいい。90年代以降のボブ・ジェームスはフォープレイも含めてかなり好きで、特にこのアルバムなんかも音の感触が最高です。打ち込み使用の曲もありますが、この打ち込みの音のセンスも抜群。打ち込み嫌いな僕でもじっくりと聞き通せます。アコースティックピアノの音がちょっとラウンジっぽい。

リ・リトナー/リー・リトナー・イン・リオ(1979/JVC)

全編でガットギターを弾いておりまして、まるでアール・クルーみたいな感じです。アール・クルー大好きの僕がこれをハズすわけがなく、もちろんお気に入りアルバムなのです。「イン・リオ」ってことでブラジル一色かと思いきや、その実ふつ~のフュージョンだったりなんかして、意外になごみます。アール・クルーほどキャッチーな曲はありませんが、そこはバックメンバーの豪華さでカバー。デイブ・グルーシン、ドン・グルーシン、マーカス・ミラー、アレックス・アクーニャ、アーニー・ワッツ、…等等がさわやかにバックをつとめています。

ウェザーリポート/プロセッション(1983/sony)

ジョー・ザヴィヌル(key)ウェイン・ショーター(ss,ts)ビクター・ベイリー(b)オマー・ハキム(ds)ホセ・ロッシー(per)ゲスト:マンハッタントランスファー(vo)
このアルバムからジャコが抜け、ビクター・ベイリーに変わるんですが、これが凄くイイ!このノリとセンスはかなりツボ。1曲目、静かにフェイド・インしてくるところなんか、あの「ブラック・マーケット」と一緒なんですが、こちらはどことなくスペイシー。ザヴィヌルの本領発揮ってところです。こうなるともうショーターなんかいらないっ、てな勢いですが、このアルバムでのショーターはもうかつてのミステリアスなサックスからは程遠いところにいる感じ。このアルバムの主役はビクター・ベイリーとオマー・ハキム。2人とも本作でWR初参加なんですが、彼等のおかげでWRが再生したといっても過言ではない。本当に凄いです。

ジェリー・マリガン/ドラゴンフライ(TELARK/1995)

ジェリー・マリガン(bs)グローヴァー・ワシントンJr(ts/ss)デイブ・グルージン(p)ライアン・カイザー(tp)デイブ・サミュエルズ(vib)ジョン・スコフィールド(g)ウォーレン・ヴァシェ(cornet)他
バックに薄くホーンセクションが付いて落ち着いた雰囲気のアルバム。マリガンのラストアルバムです。マリガンのセンスは40年代後半のウェストコーストジャズ時代からずっと一貫しているのですが、初期の硬質なサウンド作りに比べれば70年代以降は多少まるくなっていったような気もします。やはりフュージョンに足をつっこんで行ったからなのでしょうか。でも、マリガンの音楽の性質を考えるとフュージョンへの以降はごく自然だったと思います。フュージョンといってもこの人の場合はかなりジャズ寄りであって、というかほとんどジャズなのですが…。ということでこのアルバムなのですが、実はオール・アコースティック。しかし音の感触はややフュージョンっぽい。メンバーのでいだろうか(みんなフュージョン系)。しかもグルージン、グローヴァー、ジョンスコ、サミュエルズといった人気者が勢ぞろい。マリガン御大が一声かければどんなメンバーだってやってくるのでしょう。曲のほうはすべてマリガンのオリジナルの新曲で占められています。このオリジナル曲ばかりってところもイイです。フュージョンを聴くときの楽しみのひとつはこういったオリジナル曲を聴けるところで、ジャズのようによく知ったスタンダード曲ばかりってことがないから、どんな曲が出てくるのかっていう楽しみがあります。このアルバムはそんな期待を裏切らず、聴き進んでいくごとに心地よい曲がつぎからつぎへとやってきます。

PAT METHENY / Bright Size Life(ECM/1976)

パット・メセニー(g)ジャコ・パストリアス(b)モブ・モーゼス(ds)
ジャコがとてもいいです。エレベがこのように動き回ること自体珍しくは無いのですが、独自のセンスがとても良い。

MILES DAVIS / FILLES DE KILIMANJARO (1968/columbia)

このアルバムからいよいよフリーっぽさが出てくるマイルスですが、その土台を作るトニーの物凄いドラムが聴き所。いくらフリーになってもリズムを崩さない所がのちのディジョネットと違うところ。そして、このリズムをキープしつづけるところがジャズ的雰囲気の源になっています。69年にロック志向になったマイルスがディジョネットをドラムに選んだ理由もそこらへんにありそうです。ディジョネットのドラムはジャズ的緊張感よりはロック的開放感の方が大きい。ところで本作中の曲はアドリブパートになるとどの曲も同じようなパターンで進行していきますが、これこそがのちの超名盤ライブアルバム「1969MILES」へと繋がっていきます。ただここではドラムがトニーなのでリズム的にジャジーですが。そういえばショーターのプレイもどことなくのちの「モト・グロッソ・フェイオ」とかに近いです。前作「マイルス・イン・ザ・スカイ」で見せ始めた変化はこのアルバムに至って深く深く究極までいってしまい、ある意味マイルス的ジャズの頂点まで登りつめてしまったかのよう。次作「イン・ア・サイレント・ウェイ」はマイルスとテオ・マセロの共同の切り貼り作品(長い演奏テープをいろいろ編集したアルバムなのです)とも考えられるため、純粋なジャズ的アルバムはこれがラスト。

Miles Davis / Miles In The Sky (1968/columbia)

特別に好きなアルバム。エレクトリック・マイルスではこれがいちばん。60年代後半のマイルスは本当に神憑かっていて、「ソーサラー」「ネフェルティティ」「マイルス・イン・ザ・スカイ」「フィーユ・デ・キリマンジャロ」と、とんでもないアルバムが一気に生まれているのです。ここまでのアルバムはどれも物凄いテンションのアルバムなのですが、つづく「イン・ア・サイレント・ウェイ」でザヴィヌル効果なのかやや緊張感も薄れ、「ビッチェズ・ブリュー」ではついにジャズ的緊張感は皆無になってしまいます。「ビッチェズ・ブリュー」以降はポピュラー音楽の主流に挑戦すべくロック音楽志向になるわけなのですが、結果はハービー・ハンコック&ヘッドハンターズの前座にまで落ちぶれるということになってしまいました(72年頃)。この「マイルス・イン・ザ・スカイ」を録音してた当事、まさかハービーの前座をやることになるなんて思ってもいなかったでしょう…。で、このアルバムでのハービーなのですが、もう本当に凄い。1曲目でフェンダーローズを弾いているのですが、ハービーのプレイがこの曲の雰囲気を決定づけています。例によってタイトなトニーのドラムの上を、絶妙なハーモニー感覚とリズム感でハービーが怪しく泳いでいる感じ。この頃のハービーも絶好調で、「スピーク・ライク・ア・チャイルド」「プリズナー」等の名盤を連発してました。後年ハービーは創○学会の広告塔となってしまってイメージ最悪となるのですが、この頃は新主流派の知的なピアニスト。んで、本作に話は戻りますがこの4曲目によってマイルスのエレキ化が始まるわけで、ある意味「新たなる第一歩」とも言える記念的作品なわけです。ここから、いまでも大人気のエレクトリック・マイルス時代が始まるわけです。しかしながら僕はエレキ化したマイルスは本作と「キリマンジャロ」が圧倒的に好きなわけで、その後の「イン・ア・サイレントウエイ」や「ビッチェズ・ブリュー」「フィルモア」等はただフツーに好きといった感じ。アガ・パンに至っては正直もうほとんどどうでもいい。ところで、一般的にエレクトリック・マイルスで人気があるのは「ビッチェズ~」以降。ブートもその時期のものがかなり沢山出回っています。何故かといえば、そりゃもう凄く分かりやすいからで、普通の音楽ファン(ロックファンとか)が聞いても面白味がわかるからなんでしょう。その点この「マイルス・イン・ザ・スカイ」なんぞは「ビッチェズ~」の足下にも及ばない売り上げぶりで、まことに遺憾なわけなんですが、でも僕はこっちのほうが100倍いいアルバムだと考えます。

FOURPLAY/Elixir(1995/warner)

フォープレイの3枚目のアルバム。ますます透明感も増してきて実に心地よいアルバムです。音の感触が落ち着いていてかなり好きなのです、フォープレイは。リトナーの控えめ(昔に比べて)なプレイがポイント。

RAMSEY LEWIS / Sun Goddes (1974)
E,W&Fがカバーしたことでも有名な表題曲はこれがオリジナル。作者モーリス・ホワイトはもうE,W&Fを結成してるけどこのアルバムにも参加してます。そもそもモーリス・ホワイトはレムゼイ・ルイス・トリオのドラマーでした。

RAMSEY LEWIS / Tequila Mockingbird (1977)

ラムゼイ・ルイス(p,key,rhodes)バイロン・グレゴリー(g)ロン・ハリス(b)キース・ハワード(ds)ダーフ・レクロウ・ラヒーム(per)、その他 / 1977年録音
フュージョンというよりもクロスオーバーって感じのこの頃のラムゼイ・ルイス。せこいストリングスとホーンセクションが最高です。「太陽の女神」(1974年)以降EW&Fがずっと参加してますが、このアルバムでも参加していてかなり重要な役どころです。ところで、この時代のフュージョンのアレンジっていかにも「この時代」っていうノリがあって、僕は大好きです、こういうの。70年代のスタンリー・タレンタインのアルバムなんかもだいたいこういったノリで、都会的といえば都会的、スーパーのBGMっていやあスーパーのBGM、なのです。ただ、ラムゼイのアルバムの場合、EW&Fが参加してるってところが「その他大勢」のフュージョン達とは決定的に違うところ。このアルバムはそのEW&Fとのコラボレーションのハイライトともいうべき内容で、70年代フュージョンの中でも傑出した1枚です。

RAMSEY LEWIS / Ivory Pyramid (1992)
「スカイ・アイランズ」とともにこの時代もラムゼイを代表する作品。ラウンジ感覚が素晴らしく気持ちいいです。テキーラモッキンバードの再演もあったりして、この時期絶好調のアルバム。

RAMSEY LEWIS / Sky Islands (1993)
ラムゼイ・ルイス(p)、マイク・ローガン(key)、ヘンリー・ジョンソン(g)、チャールズ・ウェッブ(b)、スティーヴ・コッヴ(ds,per)、アート・ポーター(sax)、イヴ・コーネリアス(vo)、他。

GRPに移籍してからの二作目。ラムゼイのアコースティックピアノとストリングスとの絡み合いが素晴らしい。なんともラウンジテイスト溢れるアルバムです。

RAMSEY LEWIS / Between The Keys (1996)
「サン・ガデス」の再演も入ってます。ブラコン調が顕著になってきたころのアルバムですが、やはりメロウ路線は変わらず。

GEORGE DUKE / After Hours (1998/WEA)

いつものジョージ・デュークじゃないのですよ、これは。いつものブラック臭さが消え、どことなくすっきりとした味わいのアルバムです。曲によってはフェンダーローズを使って雰囲気出してます。リリカルなピアノタッチも冴え渡り、聴きやすい…。ジョージ・デュークのアルバムにしてはかなり珍しいです。全編インストだし。
 


(文:信田照幸)


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