Cecil Taylor 00's セシル・テイラー 2000年代


(1950年代1960年代1970年代1980年代1990年代2000年代~)


2000.3.22.
CECIL TAYLOR / Complicite (Victo/2000)

Cecil Taylor (p)

3枚組CDながら、1枚はPaul Plimley (p) John Oswald (as)のデュオ、もう1枚はMarilyn Crispell (p)のソロ、そして残りの1枚がセシル・テイラーのソロという妙なアルバム。同年7月のアルバム「The Willisau Concert」と同様、低音部への雪崩がすごい…。70年代的スピード感のかわりに緩急のダイナミズムが増したセシルのピアノがなんとも素晴らしい。ちなみにこの年の公式盤は本アルバムの他に「The Willisau Concert」と「The Owner Of The River Bank」があります。 

2000.9.03.
CECIL TAYLOR / The Willisau Concert (Intakt/2000)

セシル・テイラー(p)

セシル・テイラーのピアノソロの中でも最も凶暴性が強いと思われる一枚。いつもどおりのピアノソロがつづくように思ってると突然ピアノの激しい強打が出てきて驚きます。ピアノのタッチの切れ味は実に鋭く、全く衰えておりません。このとき71歳…。おそるべし。内容はといえば、いつもの基本モチーフとその変奏曲というパターンになっています。だもんで、基本モチーフは曲の所々に出てきますが、これはクリシェというわけではなく、あくまでこの曲の基本になるモチーフ(テーマともいえる)です。ちなみに、この年にはマックス・ローチとのデュオ(3回)やデレク・ベイリーとのデュオなども行っており、その充実ぶりが伺えます(前年の99年にもローチとのデュオを2回行っている他、エルヴィン・ジョーンズとのデュオも行ってます)。そんな時期のピアノソロなので、絶好調なのも当然かもしれません。

2000.9.10.
CECIL TAYLOR & Italian Instabile Orchestra / The Owner Of The River Bank (enja/2000)

セシル・テイラー(p)イタリアン・インスタビレ・オーケストラCarlo Actis Dato( bass cl)Luca Calabrese(tp)Daniel Cavallanti (ts)Eugenio Colombo(fl,ss)Paolo Damiani(cello)Renato Geremia(violin)Giovanni Maier(b)Alberto Mandarini(tp)Martin Mayes(horn)Guido Mazzon(tp)Vincenzo Mazzone (ds,tympani)Umberto Petrin(p)Lauro Rossi(tb)Giancarlo Schiaffini(tb)Mario Schiano (ss,as)Tiziano Tononi(ds,per)Sebi Tramontana(tb)
Gianluigi Trovesi(as)

セシル・テイラーの音楽には、一部例外はあるにしても、必ず譜面があって、きちんとした構成で成り立っています。もちろん音符のひとつひとつを指示するようなものではなく、いくつかの基本的モチーフと全体の構成が決まっているようです。譜面には単にイメージを喚起させるような言葉みたいなものが書いてあるだけという意見もあるようですが、聴き込めばすぐ分かるように、どんな曲であってもそれなりに曲展開が考え抜かれています。譜面といっても一般的な楽譜とはぜんぜん違うのはジャケ内の写真にあるとおりです。さてこの作品(全1曲、60分)、作曲と即興との絶妙なブレンドが実に美しく、それまでのテイラーのビッグバンド形式のものからさらに変化していることが分かります。セシル・テイラーのピアノにすべての音が収束していくというお得意の集中型ではなく、それぞれの音が拡散しつつもひとつの流れをファジーに作り上げていくような実にスケールの大きな音楽です。録音のスタイルの問題なのか、セシル・テイラーの音が少し奥に引っ込んでいるようですが、この音楽にはこれくらいがちょうどいい。これだけ沢山の楽器が鳴っていながらも、ちっともうるさく感じられないのは、イタリアン・インスタビレ・オーケストラの各メンバーの腕前の凄さ。この録音の後もセシル・テイラーとイタリアン・インスタビレ・オーケストラは共演を重ねておりますが、それらの音源の行方も気になるところです。名作の多いセシル・テイラーですが、このアルバムもまた名作。ビッグバンド形式のテイラー作品の中では「Winged Serpent」と並んで最高傑作といってもいいのでは。

2000.9.10.
CECIL TAYLOR / Live In Ruvo di Puglia '00

Rec. live in Ruvo di Puglia (Bari), Italy, on September 10, 2000
Cecil Taylor(p)

Cecil Taylor and the Italian Instabile Orchestra「The owner of the river bank 」と同日の演奏。ちなみに「The Willisau Concert 」はこの一週間前。2000年代に入ってからのセシル・テイラーのソロはスタイルがそれまでとは微妙に変化しており、「The Willisau Concert 」やこの演奏ではそれがはっきりと分かります。強弱や緩急の落差が大きいので、ときおり雪崩のようにダイナミックな場面が訪れます。しかし幾何学模様のような乾いた音列は相変わらず。フットワークも軽く、ダンスを踊るように弾いています。

2002.3.19.
CECIL TAYLOR/ CECIL TAYLOR BILL DIXON TONY OXLEY (victo/2002)

セシル・テイラー(p)ビル・ディクソン(tp)トニー・オクスレー(ds)

どことなくアンビエントなアルバムです。セシル・テイラーの音楽に関する誤解の最大で最悪のものは、「エネルギー・ミュージック」とか「パワー・ミュージック」とかいうもの。ピアノから紡ぎ出される音のひとつひとつを丁寧に聴いていけば、エネルギーの発散とは関係無く実にロジカルで考え抜かれた音楽であることが分かるのだが。もちろん、70年代あたりからゲンコツや肘打ちで叩きまくるアクロバティックな弾き方なんかもたまに出て来るのとはいうものの、音楽の構造自体はいつも明晰。特に60年代のセシル・テイラーの音楽はどれも堅固且つロジカルに出来ている。そして元々現代音楽を学んでいたからなのか、他のフリージャズのアーチスト達とはいつも少しズレた位置にいる。そのズレとはセシル・テイラーの音楽の持つその強固な構成力に他ならない。70年代に入るとその堅固な構造体が段々とゆるくなってきて、いわば、「ジャズ」から「フリーインプロヴィゼイション」へとでもいうような感じで表現形態が微妙に変化。しかしどんなに変化してもきっちりと質の高い音楽にしてしまう。で、このアルバムですが、70年代のセシル・テイラー音楽のお祭騒ぎ的賑やかさからは考えられないほど、もの静かに音を置いていく。間の取り方が絶妙です。かつての切羽詰まったような前のめり的な音の置き方では無く、音の塊をひとつひとつぽつりぽつりと置いていくような感じ。ビル・ディクソンとトニー・オクスレーの音をよく聴きながら注意深く、そして自然体でピアノの音を出している様がよく分かる。そしてそれらの音のひとつひとつに反応するトニー・オクスレーの静かなパーカッションが実に心地よい。さらに、ビル・ディクソンのトランペットがこれまた見事で、ディレイ効果により、少ない音数で最大の効果を上げ、映像を喚起させるような幽玄の音。この不思議な音と、セシル・テイラーのピアノの「絡み」「すれ違い」がとてもいい。こういった静謐さは実はセシル・テイラーのピアノの中に昔からあったものだけど、あまりに弾き方がスピーディーであったが故に分かりにくかった部分でもある。ECM的な雰囲気も漂う実に素晴らしい作品。

2002.5.10.
Cecil Taylor / Being Astral And All Registers – Power Of Two (Discus) 

Cecil Taylor(p) Tony Oxley(ds)
セシル・テイラーは晩年にトニー・オクスレーとのデュオを頻繁に行っているが、トニー・オクスレーのパーカッションはセシル・テイラーのピアノの延長として機能している。セシルと正面からやり合ったマックス・ローチとは対照的だ。このオーストリアでのライブではそのトニー・オクスレーのスタイルがよく見て取れる。


2002.5.16.
CECIL TAYLOR / The Dance Thru Numbers (Nedless That Eternally Vanish) /Live in Rome 2002

Cecil Taylor(p) live at Teatro Olimpico, Rome, Italy, 2002.5.16.

2000年代に入ってからのセシル・テイラーはまたスタイルを微妙に変えてきており、この音源などでもそれを確認出来る。常に変化しつづける姿勢はまさにマンネリの対極にあり、実にクリエイティブ。フレーズをひとつひとつ手探りで展開させていく冒頭から一気に引き込まれる。前半33分、後半17分&5分&30秒、異常なまでの張りつめた空気とヒリヒリするほどのテンション。いつものように曲構造がフラクタルになっているようだ。 

2003.7.07.
Cecil Taylor Quintet / KANGOROOH HOPP(2003)

Cecil Taylor(p) Tony Oxley(ds) Tobias Netta(tp) Martin Mayes(french horn) Antonello Salis(accordeon) Tutta Oxley(vo) Martin Mayes(vo) September 7, 2003 , Italy

珍しくアコーディオン入り。いつものように前置きが長く、10分くらいヴォイス・パフォーマンスのようなものがあってから徐々に始まっていく感じ。アコーディオンとピアノが探り探り絡んでいきながらパーカッシヴなホーンとドラム(たまにヴォイス)がそこに絡んでいきます。セシル・テイラーのライブの中でも結構異色。お決まりのセシルのお馴染みのフレーズ連打やファナティックな盛り上がりは中盤以降。抽象的にバランス良く点を打っていくような、不思議な感触があります。それでいてスイング感もある。全体的に音を押さえ気味なのはアコーディオンの音量に合わせている為だろうか。あと、イタリアン・インスタビレ・オーケストラのMartin Mayesも結構いい。00年代のセシル・テイラーの音源の中でもクオリティーの高さは別格。こういう演奏はかなり好き。

2004.2.23.
Cecil Taylor and Tony Oxley Live In Prato '04

Cecil Taylor(p) Tony Oxley(per)

最初からトニー・オクスレイのパーカッションが面白い。とにかく色彩感豊かです。セシルは最初はポエトリー・リーディングですが、セシルのピアノが入ってきてからもトニー・オクスレイのパーカッションはつぎつぎにいろんなアイデアでリズムを叩き出します。セシルのピアノは2000年あたりとほとんど変わらず鋭さを保っています。ちなみにラストにもセシルのポエトリーリーディングがあります。

2004.11.15.
Cecil Taylor / Royal Festival Hall, London Jazz Festival (2004)

2004.11.15.
Cecil Taylor(p) Bill Dixon(tp) Tony Oxley(ds, per)

まずトニー・オクスレー、ビル・ディクソン、セシル・テイラーの順で長いソロがあり、その後にようやくトリオ演奏になります。ビル・ディクソンのハマらなさ加減が面白い。2002年のアルバム「CECIL TAYLOR BILL DIXON TONY OXLEY」の音響系をややエキサイティングにした感じか。

2007.7.08.
CECIL TAYLOR, ANTHONY BRAXTON, WILLIAM PARKER, TONY OXLEY / LIVE IN LONDON 8TH JULY 2007

CECIL TAYLOR(p) ANTHONY BRAXTON(sax) WILLIAM PARKER(b) TONY OXLEY(ds,per)

なんと、アンソニー・ブラクストン入りのセシル・テイラー・ユニットです。まずはセシル&トニー・オクスレイのデュオで始まります。そしてその約12分後にいよいよカルテット演奏。いきなりエレクトロニクスの不思議な音が聴こえてきますがエレクトロニクスはこの部分のみ。ブラクストンが絡んできて、突然ソプラノサックスによる循環奏法が3分くらいずっとつづきます。その間息継ぎ無し。圧巻です。ところで、こういう編成だとかつてはずっと賑やかに躁状態の演奏がつづいたものですが、2007年のCTユニットはちょっと違う。途中やけに静かな場面が出てきます。1966年の「Student Studies」の張りつめた静けさともまた違う。どこか長閑で、和んでしまうような雰囲気。そこではブラクストンも静かで伸びやかな演奏です。しかし、その長閑さをブラクストンの強烈なサックスが打ち破ります。ブラクストンのサックスが合図であるかのようにトニー・オクスレイも徐々に激しくなっていきます。ラストの盛り上がりは、やっぱりブラクストンの特異なサックスがとても印象的。セシルはバックでグワングワンと物凄い音を置いていきます。

2007.10.11.
Cecil Taylor and Tony Oxley / Live At The Angelica Festival In Mondena Italy,2007

Teatro Comunale, Modena 11th October 2007
Cecil Taylor(p) Tony Oxley (ds,per)

出だしに驚く。まるでチック・コリアのようなメランコリックなメロディを奏でます。珍しいパターンです。その後はいつもの構築感のある展開。トニー・オクスレイの多彩な、しかし控えめなパーカッションは、セシルのピアノの一部のようになってピッタリとついてまわります。ところでセシルとオクスレイのコンビですが、89年から90年にかけてのThe Feel Trioの頃に比べるとやや物腰が柔らかくなってます。フレーズのひとつひとつ(あらかじめ作曲されていたいくつかのモチーフ)をよく味わうように弾いているというか、じっくりとフレーズを構築していく様が見て取れます。

2007.10.12.
CECIL TAYLOR / "Teatro Comunale", Bologna Italy,October 12, 2007.

Recorded at the festival "Angelica - Concerti Contemporanei"
Cecil Taylor (p, voice) Anthony Braxton (as, ss) William Parker (b)

それぞれのソロの後、トリオの演奏になりますが、これが実に美しい。とても静かなバラード。セシルとパーカーはいつものように初めますがブラクストンはゆったりとしたトーンで吹きます。そして短いパッセージを繰り出していたセシルもいつしかゆったりとした演奏に。最後までずっとこの調子。セシルをバックにこのような演奏をしたサックス奏者はかなり珍しいです。そしてこのようなしっとりとしたバラードというのも結構珍しい。というか、2007年セシル・テイラー・ユニットの新境地です。このようなバラードのスタジオ録音アルバムを1枚作ってくれないものか…。

2007.10.13
CECIL TAYLOR / Reggio Emilia (Italy), 2007.10.13

Cecil Taylor(p,poetry) Anthony Braxton(as,ss,sopranino-s,cl,cb-cl,poetry) William Parker(b,shakuhachi) Tony Oxley(dr)

ブラクストン入りのカルテットとしては2007年7月のロンドン以来。10月のイタリア公演の3日目の模様です。セシル&オクスレイのデュオ、パーカーのソロ、ブラクストンのソロ、セシルのソロ、の後にカルテットによる演奏があります。ブラクストンは基本的にとても器用なアーチストで、ここでもいくつかのモチーフをいろんなパターンで展開しています。が、息の長いフレーズを吹くのであまりピアノと噛み合ってる感じがしません。だからなのか、逆に存在感が出てきます。フロントが二人いるというようなニュアンス。セシルの音と混ざり合うことで魅力を出したジミー・ライオンズやカルロス・ワードとはまた違った感覚です。ところで、トニー・オクスレイのドラムがますますドラムセットから遠のいて、独自の音になってます。最近のオクスレイのドラムセットの画像などを見ると小さなシンバル類 なんかが沢山くっついてたりしますが、これらによって実に細かいヴァリーションの音を出すことが可能なのでしょう。

2008.7.15.
Cecil Taylor & Tony Oxley / July 15, 2008, NYC(The Village Vanguard, NYC July 15, 2008)

Cecil Taylor(p) Tony Oxley(dr)

すっかり定番となったトニー・オクスレイとのデュオ演奏。特に目新しい展開というのはありませんが、一定のレベル(聴いてて面白い、と感じる程度のレベル)はクリアしている素晴らしい演奏です。セシルは執拗に特定のモチーフ(お馴染みの基本形)を繰り返します。それはそうと、注目はニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードでの演奏であるということかも。


2008.8.29.
CECIL TAYLOR / NYC 2008 (Highline Ballroom 431 West 16th Street New York 10011 August 29, 2008)

Highline Ballroom 431 West 16th Street New York 10011
01 50:28
02 03:37
03 05:37
Cecil Taylor(p)
一音一音に重みがあります。70年代の圧倒的なスピード感が無いぶん、音の連なりが手に取るように分かり、セシル独自の構築感もじっくりと味わうことが出来ます。また、途中ピアノを弾きながらのポエトリーリーディングもあります。会場となったニューヨークのHighline Ballroomは1000人ほどのキャパで、ポール・マッカートニーとか、レディーガガ、アデルなどの人気ポップ・スターたちも出演してた場所だそうですが、2019年初頭に閉店となったそうです。

2008.11.06 & 9.
Cecil Taylor & Tony Oxley / Ailanthus/Altissima, Bilateral Dimensions Of 2 Root Songs(Triple Point Records /2008)

Cecil Taylor(p) Tony Oxley(ds)

2008年11月6日と9日のNYヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ音源。しっかりとした箱に入った2枚組LPとして2010年に475セットだけ限定発売された。セシル・テイラーの公式アルバムとしてはこれが最終作。この当時頻繁にやっていたトニー・オクスレーとのデュオはブート音源としていくつか出回っているけど、これもまたそれらと同じようなパターンの演奏。かなり柔らかくなったセシルのピアノと、ハイハットとシンバルの金属音が激しい色彩を思い起こさせるオクスレーのパーカッション。セシル・テイラーはライブでバレエのような舞踏をすることがあるが、ピアノでバレエをやっているかのよう。ピアノの鍵盤の上を指でエレガントに舞っているのだ。

2009.7.24.
Cecil Taylor & Tony Oxley / Duo 2009-September-24, Amsterdam

Cecil Taylor(p,poetry) Tony Oxley(ds)

2009年7月のライヴ。現在のセシル・テイラーの特徴は、従来のような圧倒的スピード感ではなく、緩急の落差。この音源は比較的短い曲が全部で8曲(CD-R2枚分)。それぞれ静かなパートは限りなく静かに、激しいパートはより激しく、という印象。従来には無いような繊細なタッチも見られます。ところで、この音源の動画を見たことがありますが、セシル・テイラーはずっと楽譜を見て演奏しています。それぞれ新曲なのか、あるいは譜面から喚起されたメロディラインをその場で紡ぎ出しているのか、実際のところよく分かりませんが、常に新しい要素を生み出しつづけていることは確かなようです。

2009.10.02.
Cecil Taylor & Tony Oxley / Quatre fois vingt ans (2009)

Cecil Taylor(p, poetry) Tony Oxley(ds) / a film by Frank Cassenti 2009.10.02.

一時間半に及ぶ映像。セシルはいつものようにあらかじめ作曲されたモチーフを奏で、徐々に崩していく。はじまりからずっと静かなトーンなのでオクスレーも同じように静かなトーン。そうこうしているうちにあっという間に1曲目が終わり、2曲目に入ると急に鋭いタッチでトンガリまくりのセシル。しかしながらフレーズはやたらとバランスが取れてて、まろやかな感触すらあることも。00年代のセシル・テイラーはこのオクスレーとのコンビが定番になりますが、この時期になるともうオクスレーのドラム(パーカッション)はセシルのピアノの一部と化しているかのよう。

2010.7.16.
Cecil Taylor & Amiri Baraka / Diction & Contradiction

Cecil Taylor(p, poetry) Amiri Baraka(poetry) 2010.07.16.

前半はアミリ・バラカ(リロイ・ジョーンズ)のポエトリー・リーディングが約30分。後半はセシル・テイラーのポエトリー・リーディングが15分弱あった後、セシルのピアノソロが8分くらい。そしてその後ふたりの共演(セシルのピアノとアミリ・バラカのポエトリー・リーディング)が10分。セシルのピアノはおとなしく、バラード調です。


2010.7.16.
CECIL TAYLOR / Solo, Barcelona

Cecil Taylor(p) 2010.07.16.

セシル・テイラーのピアノソロ。セシルのピアノはずっとバラード調だからなのか、メロディの美しさが際立ちます。かつての暴力的なまでのパーカッシブな奏法はすっかり影を潜め、メロディをゆったりと流します。セシルは何かのインタビューでダンスを踊るようにピアノを弾くと言っていたのを思い出しました。

2011.10.18. or 11.18.
CECIL TAYLOR /BIRDLAND, NEUBURG, GERMANY, 2011"

Cecil Taylor(p) Tony Oxley(ds)

この音源、10月という説と11月という説があるようだが、はたしてどっちなのか?晩年のセシル・テイラーの定番となったトニー・オクスレーとのデュオ。よほど相性がいいのか、あるいはトニー・オクスレーだけが共演者として生き残ったということなのか。セシルのピアノはだいぶ柔らかくなった感じだが、それに合わせるかのようにトニー・オクスレーのパーカッションも小さくまとまってシンプルになっている。

2016.4.23.
Cecil Taylor / Words and Music (Whitney Museum of American Art)

Cecil Taylor(p) Harri Sjostrom(ss) Okkyung Lee(cello) Tony Oxley(electronics) Jackson Krall(ds)
ニューヨークのホイットニー美術館の5階で行われたセシル・テイラーのイベントでのライブ。このイベントは「Words and Music」というタイトルで2016年4月15日から24日まで開催され、ギャラリーではセシル・テイラーのビデオ、楽譜、写真、新作のパフォーマンス映画(2016年1月撮影)などセシル・テイラーの回顧展のようなものだったそうだ。これは4月23日のライブ。トニー・オクスレイがエレクトロニクス担当。90年代のFMPレーベルに録音された諸作を思わせる音で、混沌とした中から度々浮上するセシル・テイラーのピアノが何故か秩序立って聴こえて来るのが面白い。最晩年のドキュメントとして貴重な音源。



(文:信田照幸)


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