Rockpart1)


ALICE COOPER / Killer (1971年)

これは確実に僕の好きなロックアルバムのベスト3に入ります。最初に聴いたのは中学生のときで、その後10代を通じてずっとお気に入りアルバムでした。屈折したアメリカンロック(ショックロックとかグラムロックとかいう言い方はどうも馴染まない)。僕が聴いてた時期(80年代前半)はアリス・クーパーなんぞほとんど忘れ去られた存在で、LPも肝心なものはすべて廃盤。輸入盤を探して手に入れたりしてました。高校生のとき、NHKラジオの「渋谷陽一のサウンドストリート」で「廃盤特集」というリクエストがあり、僕はアリス・クーパーをリクエストしたら読まれたりしました。

さて、本作1曲目の「Under My Wheels(俺の回転花火)」はシンプルなロックンロール・ナンバーで、僕の中ではロック史上最強のロックンロール。これぞチャック・ベリーの必殺「ジョニーBグッド」に対抗出来る唯一の曲。これほど好きな曲もない。世間的には「スクールズ・アウト」の方が有名だろうけど僕は断然こちら。4曲目の「Desperado」も名曲中の名曲。この曲は不思議なことに今でもふとした拍子に頭の中に流れたります…。あと、ラストの「Killer」。この曲はフランク・ザッパ時代(アリス・クーパーは元々ザッパのグループにいた)の名残があるとかなんとか昔から言われてますが…、この手のシリアス路線はむしろその後のアリス・クーパーでもよく見られた曲調です。本作のひとつ前の「Love It To Death」もこの路線だったな…。で、この曲もやはり名曲。この曲の後半部分の退廃感はちょっと凄い。ちなみに他の曲もハズレ無し。

ところで、89年だか90年だかの初来日ライヴを見に行ったことがあって、そのときはちょうどアリス・クーパーがメタル(笑)として復活した頃だったのでアレンジがメタルっぽくていまいちだったけど、やはり生でビリオンダラー・ベイビーズやスクールズ・アウトを聞けて例のギロチンや首つりなどが見れたのは嬉しかった。ちなみにそのライヴではアリス・クーパーはゴミ箱から飛び出してきました(笑)。とはいえやはり復活後のアリス・クーパー(86年に復活)は声といいアレンジといいかつての面影も無く、別人です…。


Dr. Feelgood / Down by the Jetty (1974)

ウィルコ・ジョンソン凄すぎ。その昔(10代の後半だったろうか)とても仲の良かった友人がこのアルバムが大好きで、あんまり絶賛するもんで聴いてみたら僕もすっかりハマってしまったという一枚。なんといっても冒頭の「She Does It Right」に尽きる。このタイトなリズムは60年代のブリティッシュ・スキンヘッズ・レゲエの切れ味となんだかよく似ている。そういう意味ではその後に登場した白黒混合スカバンドのスペシャルズとも何か通じる気が…。このアルバムが出た当時のDr. Feelgoodのライヴ映像というのを見たことがあるけど、ウィルコ・ジョンソンがカクカクした動きで前後に行ったり来たりしながらギターを弾いてる姿があまりにも強烈。


CHUCK BERRY / Chuck Berry Is On Top(1959)

チャック・ベリーの初期のチェス時代を時代順に聴いて来ると、いかにずば抜けた才能だったかが分かります(特に1950年代。とはいえ60年代初頭あたりまで凄い)。Tボーン、チャールズ・ブラウン、マディ、エルモア、ロバジョン、等々のそれまでのブルースの主なスタイルを独自にまとめ上げ、さらに他ジャンルのいろいろな音楽もどん欲に取り入れ、それらをごちゃ混ぜにして、あまり洗練させないままの生々しい感じを独自のビートに乗っけて作り上げた音楽。それがチャック・ベリーの音楽。よく知られるのはたぶん70年代以降の安定したビートに乗ったチャック・ベリーの姿だろうが、これら初期チェス時代のチャック・ベリーに比べればそれらは抜け殻のようなもの。それほどまでに初期のチャック・ベリーの音楽は圧倒的で、且つ豊かな内容。40年代のビバップが持つ危なっかしさ(あるいは心地よい未完成さ)と同質の何かがここにはあります。このアルバムは「Rock, Rock, Rock」「After School Session」「One Dozen Berries」につぐもので、必殺曲「Johnny B. Goode」や「Roll Over Beethoven」が入ってます。


The Beatles / Rock'n Roll Music Vol.1.

中学1年生のときに買ったレコード。中1から中2にかけてよく聴いてました。古いスタイルのロックンロールばかり集めたもの。僕にとってビートルズとはこのアルバムであり、モッズファションで古いロックンロールを演奏するグループなのだ。14曲中オリジナルは4曲のみ。1963年から1965年にかけての録音。曲目:1. Twist and Shout 2. I Saw Her Standing There 3. You Can't Do That 4. I Wanna Be Your Man 5. I Call Your Name 6. Boys 7. Long Tall Sally 8. Rock and Roll Music 9. Slow Down 10. Medley: "Kansas City/Hey, Hey, Hey, Hey 11. Money 12. Bad Boy 13. Matchbox 14. Roll Over Beethoven


Rupert Holmes / Partners in Crime(1979)

僕が小学6年生のときにいちばん好きだった曲がここに入ってる「Him」。AMラジオでエアチェックしてカセットテープで死ぬほど聴きました(今でもそのカセットは残ってます・・・)。今聴いてもとてもいい曲。AOR全盛期の79年の作品で、通算5枚目。低音を強調したアレンジも素晴らしいが、ルパート・ホルムズのボーカルが渋くてかっこいい。僕にとってAORの基本はルパート・ホルムズの「Him」と、クリストファー・クロスの「Ride Like The Wind」(ファーストアルバムに入ってる)あたり。どちらも79年。リアルタイムで聴いてました。


FRIPP & ENO / Evening Star (1975)

初期のアンビエントがどうのこうのというより、昔はプログレに分類されてたわけで、このアルバムなんかはタンジェリンドリームとかと似た様な立ち位置だったのではないでしょうか。このレコードを買ったのはたぶん中学3年か高校1年のとき。なんだこりゃ?なんて思いながら何度も何度も聴くことになりました。高校の美術の時間でレコードジャケットを描くという宿題が出たことがあって、僕はそのときこのレコードのジャケをそのままそっくりに描いて出したのでした。評価はかなり高かったのを覚えてます。先生はこのレコードを知らなかったのか、授業でこの絵を出して「絵は描く人の心を表すというからねえ…」なんてことを言ってしみじみと見てました…。 にしてもこの絵、僕には何故か熱海の初島に見えたわけで…(笑)。




Whitesnake / Reading Rock 1980 (BBC Transcription Disc)

中学の1年のときだったか2年のときだったか、この音源(1980年レディングフェスティヴァルでのホワイトスネイク)全部をNHK-FMで流してて、それをエアチェックしたテープをそりゃもう死ぬ程聴きました(笑)。多少言い訳させてもらえば、当時はハードロックがやたらと流行ってたのです。メタルというジャンルがまだ無かった頃です。ベストヒットUSAでもよく流れてました。で、数年前たまたま中古盤屋でこのブート盤が出てるのを発見して驚いた。そりゃやっぱこのライヴは出るだろうなあ…、この凄さは半端では無いしなあ…、なんて思ったもんです(LP時代にもこれはあったのかもしれない)。今でいうメタルとも違って、要するに古典的ロックンロールの激しいやつとでも言えばいいんでしょうか…。当時のラジオではDJ(渋谷陽一)が「やる方も聴く方も体力!」なんて言ってましたが、まあ、そんな感じ。冒頭の「スウィート・トーカー」とラストの「フール・フォー・ユア・ラヴィング」が物凄いです。中学生のとき、イライラしたときにはこの「スウィート・トーカー」を大音量で聴けばスッキリしたもんです。そういう意味では機能主義的音楽だったんですね…。


FRANK ZAPPA / London Symphony Orchestra 

ケント・ナガノ(cond.)

現代音楽風ロック、とでもいうべきか。フランクザッパの場合何をやってもロックなのだ。JAZZという文字のつくものも多いけど、それらもやはりジャズではなくてロック。シリアスミュージック風なものもいくつかあるけど、それらもやはりロックだったりする。別に、だから駄目なのだと言ってるわけではない。むしろ、 だから面白いのだ、という感じ。

さて、このアルバム、大のお気に入りで、特に冒頭の「SAD JANE」が素晴らしすぎ。映像を喚起するような音楽です。これをウォークマンで聴きながらN.Y.を散歩したい。誰それからの影響だのなんだのというのはほとんど気にならない。ちなみに本作はCD第一弾として出たもので、1枚組。LPとは曲目が少し変更されました。

また、このLondon Symphony Orchestraはザッパ没後に1&2として2枚組にまとめられたCDも出ました(現在流通しているものは2枚組CDの方)。


FRANK ZAPPA / The Man From Utopia(ハエ・ハエ・カ・カ・カ・ザッパ・パ) (CBS/1983)

有名な「ハエ・ハエ・カ・カ・カ・ザッパ・パ」です。とてもいいアルバムです。名盤です。B-4の「The Jazz Discharge Party Hats(フェチシストのマンゾク快感)」からB-5の「We Are Not Alone(ワレワレハソンザイスル)」への流れがなんとも最高。というかこの2曲は名曲。ついでにA-5の「Moggio」(ウシ、ウシビックリ、モーギョ)も名曲。前作「Ship Arriving~(フランク・ザッパの○△□)」がスティーヴ・ヴァイのダサダサのメタルギターがうるさかったが、このアルバムはその点改善(?)されており、ヴァイもアコギでなかなかいい感じに…。

ちなみにこのCD、80年代のEMIのCD(「Ship Arriving~」との2in1)の曲順はLPと同じなんだけど、その後(93年度版)のCD(現在流通しているもの)は曲順が全く違っていてミックスも変わっていておまけに曲数も1曲増えているのですっかり別物です。今回紹介したのはあくまでもオリジナルのLP(またはEMIの2in1の80年代CD)の方。


Ian Dury & The Blockheads / 4000Weeks' Holiday

80年代にイアン・デューリーの来日公演を見に行ったことがあります。「Hit Me With Your Rhythm Stick」とか、すごい盛り上がった気がするんだけど、何故か覚えているのはライヴの最後にイアン.デューリーがすごく丁寧にみんなにお辞儀していた光景だったりする。このアルバムは「New Boots And Panties ! !」や「Do It Yourself」のようには評価は高く無いとは思うけど、1曲目の「Inspiration」があまりにかっこいいのであえて紹介。アルバム全体に80年代的な軽さのようなものがあるけど、どこかAORっぽくもあってなかなか素晴らしいアルバムです。


ROXY MUSIC / Siren (1975)

高校生のときの愛聴盤。高校のときに聴いた回数ではたぶんこれが一番。このレコードは2枚持っている。あまりに何度も聴きすぎて音が悪くなってしまい(音が悪くなったのは気のせいだったのかもしれない)、もう1枚新しく買ったのだ(高校生のとき)。A-1とか、乾いた感じのバックがかっこいい。当時好きだったのはA-1とB-1。このアルバムは今聴いても素晴らしい。圧倒的な名盤。


MIKE OLDFIELD/Discovery (1984)

高校生の一時期毎日聴いてたレコード。特にA面は本当によく聴いた。「トゥー・フランス」や「ポイズン・アロウ」は特に好きなナンバーだった。バリー・パーマーのボーカルが素晴らしい。このアルバムに関して言いたいことは沢山あるような気がするんだけど、言葉が浮かんでこない。マイク・オールドフィールドは「Island」以降全く聴かな くなってしまったけど、この「Discovery」までのアルバムはすべて気に入っている。


FRANK ZAPPA / The Grand Wazoo (1972)

フランク・ザッパの大名盤。ジョージ・デュークやアーニー・ワッツなんかも参加してて、ジャズロック的な作品(ジャズではなく、あくまでロック)。とにかく圧倒的。3曲目「CLETUS~」なんて本当にカッコよすぎ。昔ザッパにはまってた頃は「Uncle Meat」や「Burnt Weeny Sandwich」の方が好きだったけど、今聴くとこちらの方が断然イイ。


Cocteau Twins / Treasure (1984)

高校生のときに聴いてたアルバム。この1曲目がやたらと好きだった。先日ひさしぶりに聴いたら気分悪くなった(笑)ので、この機会に是非紹介したい。なんでコクトーツインズなんて聴いてたのかよく思い出せないのだが…、デペッシュモードとかジョイディヴィジョンなんかも聴いてたので、なんかそのへんの音も好きだったのかもしれない(←他人事のようだ…)。80年代ニューウェーブはいろいろあって楽しかったな。


CHEAP TRICK / Standing on the Edge (1985)

このへんまでのチープトリックのアルバムは全部好きなのだ(いや、このつぎの「The Doctor」までかな…)。とにかくすべてのアルバムに愛着があるというか、ほんとよく聴いた。あ、大昔の話ですが…。とはいえ今聴いても1曲目「Little Sister」なんて本当に最高で、チープトリック史上の名曲ベスト3に入るのではないかなんて思ってしまう。他の曲も結構イイです。チープトリックは1988年の「Lap of Luxury」でのガッカリ度のダメージがあまりにも大きく、その後一切聴かなくなってしまったのでした。とはいえ、このアルバムあたりはとにかく最高。ブリティッシュ寄りのアメリカンポップ。



The Rolling Stones / Tattoo You (1981)

当時リアルタイムで聴いたもの。とはいえLPを買ったわけではなくラジオからエアチェックしたカセットテープで聴いてた(当時のFMラジオはアルバムをほとんどまるごと放送してた)。ストーンズのLPで当時買ったものは本作の翌年に出た「Still Life」。今聴くと「Tattoo You」の方がちょっとカッコイイかなあ…。まあ、どちらも好きですが…。で、このアルバム「Tattoo You」。60~70年代の名作群と比べても全く遜色ないくらいに素晴らしい。シンプルな音というのは色褪せることが無いのか。ちなみに本作に何故かソニー・ロリンズが参加してます。 ストーンズでいちばん好きなアルバム。


James Taylor/ Mud Slide Slim(1971)

何度聴いてもいいアルバムです。これは今でも大好き。しかしながらこのアルバム、昔聴きこんだってわけではないのだ。いつでもそのへんに放ってあって、どうでもいいときにどうでもいい感じで流す、そんな感じ。だもんで幸運なことにこのアルバムには変な思い出などは何も無い。そしてそこが気持ちいい。長く聴けるアルバムというのは意外にそういうもんだったりするのだ。ちなみに僕にとってこの種のアルバムは他にニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」がある。



LINDA RONSTADT / Heart Like a Wheel (1974)

文句なしの無人島盤。カントリーという泥沼にはまるきっかけになったアルバムでもあり、イーグルスの良さに気付くきっかけになったアルバムでもあります(イーグルスは元々リンダ・ロンシュタットのバックバンドだった)。そもそもは蓼科の山の中にあるログハウスで早朝この作品を聴いたのが最初の出会いでありました。75年あたりまでのカントリーなリンダ・ロンシュタットはどれも好きです。ストーンポニーズ時代も最高。でもやっぱりこのアルバムにとどめを指します。




LOU REED / New York (1989)

大学時代にリアルタイムで買った珍しいアルバム(この頃はもうロックの新譜はほとんど聴いてなかった)。ラジオで「THERE IS NO TIME」(5曲目)を聴いて、即レコード屋に買いに行った。先日このCDが中古盤で安く売ってたのでなんとなく買ってみて、あらためて聴いてみたらこれがやっぱり良いではないか。シンプルで飾り気が無くて、しかも力んでなくて。とんでもない名作だ。


IGGY POP / The Idiot (1977)

高校生の頃イギー・ポップのアルバムを探しに探しまして、新宿レコードでこの「Idiot」を発見したときには本当に嬉しかったものです。かつてイギー・ポップのレコードってのはなかなか入手困難で、それはそれはあちこち探し回ったのでした。結局ブートにまで手を出す有り様。

このアルバム、言うまでもなく例の「China Girl」が入ってます。ここでの壮絶極まるというか、地の底からじわじわと湧き出てくるかのようなヴォーカルは今聞いても鳥肌もの。全体を覆うヨーロッパ的憂鬱感は当時のデヴィッド・ボウイの感性です。そもそもこのアルバム自体ボウイがイギー・ポップという素材を使って料理したという感じのものでしょう。60年代後半~70年代半ばまであれほど暴れ回って叫び回って狂ってたイギーが、まるで「あちら」の世界に行ってそこから声を出してるかのような…。

これは最も好きなロックのアルバムのベスト10に入ります。


ブルース・スプリングスティーン/ザ・リバー

中学1年のときの思い出の1枚(笑)。レコードを大音量で何回も何回も繰り返し聴くっていう習慣はこの頃からだったように思います。これ以前にも、たとえば小学生の頃によく聴いてたマーチのレコード(The First National City Band)なんかも本当に繰り返し聴いていたけど、ちょっとニュアンスが違う。詳しく聴き込むっていう感じ。とはいえ僕は別にスプリングスティーンのファンなわけでも何でも無い。たまたま当時偶然買っただけのこと。昔はレコードってのは1枚買ったら飽きるまで何度も聴いてたから、レコードとの偶然の出会いってのはかなり大きな意味を持つことになります。偶然買ったレコードがハマショーとかじゃなくて本当に良かった。というか、当時から日本のポップスなんてのはYAZAWA以外聴かなかったけど(人には言えない恥ずかしい過去である…)。さて、そんなわけで中学1年の僕はこのアルバムを聴きながらひとりで盛り上がってたのでした。ひたすら盛り上がるA面が特に好きだった。今ならスプリングスティーンがこのアルバムに込めた古き良きロックンロールへのオマージュ的スタンスが理解出来るけど、当時はこれが最先端だとばかり思ってたわけで…。何はともあれ、最高のアルバムです。僕の無人島レコードのうちの一枚です。


レインボー/アイ・サレンダー(Difficult To Cure)

思い出深いアルバム。中2の時、TOTOの「グッバイ・エリノア」の題名が分からず、それに似たものをラジオで探してて、なんとなく「アイ・サレンダー」が似てたのでこのアルバムを買ったのでした。で、これをきっかけにハードロックにハマることに。ホワイトスネイク、レッドツェッペリン、サクソン、モントローズ、ブラックサバス、ユーライアヒープ、ディープパープル、アイアンメイデン、ジューダスプリースト、UFO、フリー、バッドカンパニー、トミー・ボーリン、AC/DC、他いろいろ。そしてキャプテンビヨンドのファーストを求めて中古盤屋を放浪したりすることにもなるわけですが、すべてはここから始まってます。このアルバムがハードロック史上どんな位置付けになるのかよく知りませんが、個人的に大事なレコードです。



CHEAP TRICK / Next Position Please (1983)

このアルバムに関してはもう何十年も何かを言いたくて仕方が無かったわけです。ただ、そんな機会は無く、おまけに87年のアルバム以降チープトリックに興味を失ってしまっていって、ついでにトッド・ラングレンにも次第に興味を失っていき、僕の中でだけこのアルバムの存在が魚の小骨のようにひっかかっていたってわけで…。とはいえ何十年分の言葉をここに羅列するのも何なので(笑)、サラリとナニカを書いてみたい。

チープトリックというグループは今じゃひょっとしてメタルか何かだと思われているかもしれないし、実際昔はハードロックに分類されていたことがあったので、実態が分かりづらいかとは思うけれど、実はチープトリックは元々は良質なアメリカン・ポップをやるグループなのだ。ファーストアルバムの冒頭「ホット・ラブ」、セカンドアルバム収録の「甘い罠」、サードアルバムの冒頭の「サレンダー」なんかはまさに70年代アメリカの最高のポップソング。1982年の「ワン・オン・ワン」ではアメリカ版ビートルズともいえるほとにポップな曲が並んで、チープトリックの最高傑作なんて言われ方をしてましたよね、当時は。実際、リック・ニールセンの最も充実していた時代は「ワン・オン・ワン」とそのつぎのアルバム「ネクスト・ポジション・プリーズ」の頃だったのではないかなあ、なんて思うのですが、どうでしょう。一般的にはセカンドの「イン・カラー」から「ドリーム・ポリス」までの70年代後半が全盛期ってことになってるかもしれませんが、僕は82~83年の時期をとります。

というわけで、この「ネクスト・ポジション・プリーズ」ですが、プロデュースがあのトッド・ラングレンです。どういういきさつでトッド・ラングレンがプロデュースになったのかは知りませんが、これほどピッタリの人材もいない。トッドのポップでひねくれたセンスがリック・ニールセン(チープトリック)のポップなセンスと相性ピッタリです。必要以上に音をハードにしていないところなんかは、本当にトッドはチープトリックの長所が分かってるなあ、なんて感じてしまいます。まるでトッド・ラングレンの作品のように感じる瞬間さえあるのはトッドとリック・ニールセンのセンスに共通点があるからでしょうか。前作の「ワン・オン・ワン」での分厚い音よりも、このアルバムのようなタイトな音の方がシックリ来ます。ギターの音の多少ナマっぽさが残ったところなんかは、ニック・ロウなどのパブ・ロックにも通じるセンスです。というか、B-6なんかはほとんどパブ・ロック。ドクター・フィールグッドを気持ちよく感じる人はきっとこれも気持ちよく聴けるのではないかなあ。

このアルバム、全部の曲を好きなんだけど、特にB-5の「ヘヴンズ・フォーリング」。この曲に何度救われたことか。何度も何度も聴きました。大学に入ったばかりの頃、仲の良かった友人にこの曲について熱く語ったけどまるで理解されなかったなんてこともありました。このアルバムは僕が中学3年だか高校1年だかの頃に発売されたものなので、結構長い間「ヘヴンズ・フォーリング」に取り憑かれていたことになります。意識が四方八方にはじけるような、拡散!といった感じの開放的な曲です。ちなみにこの曲だけトッド・ラングレンの曲です。僕はこの曲をきっかけにトッド・ラングレンにハマることになりました…。

というわけで、なんだか長くなってしまったけれど、僕の中学~高校時代、いや、大学生の初めの頃までチープ・トリックは「心のベストテン」にいつも入っていました。1986年の「ザ・ドクター」までのアルバムは全部深い思い入れがあります。中でも特に「ネクスト・ポジション・プリーズ」は特別好きだったし、アメリカン・ポップあるいはアメリカン・ロックとして最高のものだと思ってます。 



JIM CROCE/ Photographs & Memories~His Greatest Hits(1972)

このアルバムを一番熱心に聴いてたのは18~19歳の頃。間違いなくあの頃の自分の通低音のうちのひとつ。今聴いても全部の曲が最高に素晴らしい。ジム・クロウチはアルバム単位ではなく結局このベスト盤だけを繰り返し聴いてました。カントリー・ロック的な軽やかさと明るさが当時の気分にジャストフィットだったのでした。


DAVID BOWIE /LOW (1977)

この1977年の『ロウ』。昔は『ダイアモンドの犬』(1974年)とともにデヴィッド・ボウイのアルバムの中でも最も好きなものだった。このアルバム、いわゆるボウイのベルリン時代の幕開けを告げる一大傑作。のちの『ヒーローズ』『ロジャー』には無い緻密さがあります。A面に短い曲をまとめ、B面は全編インスト。「サウンド・アンド・ヴィジョン」とか、大好きだったなあ…。今聴くとA面全部すごすぎ。



DAVID BOWIE /Young Americans (1975)

中学~高校時代、70年代までのデヴィッド・ボウイが大好きでそれはそれはよく聴いたもんでした。今でも70年代までのデヴィッド・ボウイのアルバムはどれも大好きです。んで、当時いまいち良さが分からなかった唯一のアルバムがこの『ヤング・アメリカンズ』。なんでこれが『ダイアモンド・ドッグス』(1974年)と『ステイション・トゥ・ステイション』(1976年)の間に挟まっていたのかもよく分からなかった。なんでこのアルバムだけこんなにダサくて、しかもよりによってダサいジョン・レノンなんかとデュエットしてる(「フェイム」)のだ?なんて思ってたものでした…。が、今聴くとこのアルバムはなかなか心地よい。かっこいい。おまけにぜんぜん古くなってない。やはり神憑かっていた時代のボウイは何をやっても凄かったのでした。さて、このアルバムはボウイがはじめてソウル・ミュージックの要素を取り入れたアルバムとして知られますが、自分的には何といっても注目はドラムにアンディ・ニューマークが参加してること。あのスライ&ザ・ファミリーストーンの空前絶後の『フレッシュ』(1973年)でドラムたたいてるアンディ・ニューマークです。シングルヒットした「フェイム」のリズムが『フレッシュ』を彷彿させますね。そして、このアルバムの全編でサックスをバリバリ吹いているデヴィッド・サンボーン。サンボーンだけに注目しながら聴いていると、まるでサンボーンのアルバムのように感じられてしまうのが凄いところ。前作などではデヴィッド・ボウイ自身がサックス吹いてましたが(どこかキース・ジャレットの吹くサックスに似ていますね)、なんでここでサンボーンを起用したのかは「ヤング・アメリカンズ」のイントロを聴けば分かります。サンボーンでしか出せない乾いた音色が、ヨーロッパからアメリカへと照準を変えたデヴィッド・ボウイの作品内容にピッタリです。


フリー/ハイウェイ(1970)

中学生の頃聞いてたラジオ番組「渋谷陽一のサウンドストリート」で最初にフリーを知り、それからハマったのでした。荒削りさと、独特のベースのノリと、このヴォーカル…。今聴くと随分黒人音楽に影響されていたんだなあと分かりますが、当時はそんなこと知らないもんで、単にカッコイ~と感じておりました。このアルバム以外も全部イイ感じなわけですが、特にこのアルバムに入ってる「スティーラー」。これが大好きなのです。そして「ライド・オン・ポニー」も大好きなのです。このスカスカな音とうねるベースのグルーヴ感。最高。そういえば、フリーのラスト作「ハートブレイカー」は僕の中学生当時は廃盤で、あちこちの輸入盤店を回っては探していたんですが、ある日渋谷のディスクユニオン(当時は公園通り沿いにあった)で発見。そのときはあまりのうれしさに「ウォー!あった!」と思わず声を上げてしまったのでした。家に帰って聴いてみてこれまた「ウォー!スゲェェー」とひとり声を上げ、友人に電話して電話口でわざわざ聴かせてました(笑)。「これ、すげーよなあ!」とか言っていちいち本気で感動していたあの時代はやっぱり「一生でいちばん恥ずかしい時代」(by Q.B.B.)だったんでしょうか…(笑)。とはいえ中学生時代というのはまさに新しい音楽に出会いまくった時代でもあり、原点のような気がします。ジェットストリームでイージーリスニングとジャズを聴き、サウンドストリートで古いロックをたくさ聴き、何故かうちにあったカセットテープでクラシックを聴き、ベストヒットUSAでアメリカのヒットソングの数々を聴き、そして勉強中にこっそり聞いてたラジオのFENであらゆるジャンルの音楽を聴き…。聴いたことのない音楽を聴くたびにスゲーと思ってたわけですね…(笑)。今じゃ新しい音楽を聴いて「ウォ~!」なんて思うことも少なくなりましたが、それでもたまにあるのです、「ウォ~!」の快感。


Neil Young / After The Gold Rush(1971)

ニール・ヤングは全部が全部好きというわけではないのだが、これは別格。何度聴いても飽きない。


CHUCK BERRY/ワン・ダズン・ベリーズ(1958)

チャック・ベリーのセカンド。「ロックンロール・ミュージック」が入っています。R&B色が非常に強い。すべてが最高。


ELVIS PRESLY/The Top Ten Hits

小学生の頃なぜか親がエルヴィスのベスト盤レコードを買ってきまして、そして何故かそれを僕が熱心に聴いてたりしてました。ALL SHOOK UPなんてほんと今聴いてもたまらないものがあります。エルヴィスのロカビリーは歯切れが良いのにソウルフルで最高なのです。あと、このアルバムには未収録ですが「ビバ・ラスベガス」って曲はかつて小学生の頃ラジカセでエアチェック(しかもAMから…笑)しまして、大好きだった曲です。この「ビバ・ラスベガス」、先日有線から流れてきまして、ああ、そういえば昔エルヴィスのレコードよく聴いてたんだよなあ、なんてことをふと思いだしたのです。あ、ちなみに僕と同年代でエルヴィス聴いてた人なんてひとりもいません(笑)。僕よりふたまわりくらい年上の人達のアイドルですね…。


(文:信田照幸)


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