Rockpart4)


FREE / Heartbreaker (1973)

これは80年代前半~半ば頃には結構なレア盤で、渋谷のディスクユニオン(昔は公園通りにあった)で発見したときには「うぉっ!あった!」と思わず口から出てしまったほど。たぶん今までで発見したときの喜びが一番大きかったのはこのフリーの「ハートブレイカー」じゃないだろうか(笑)。当時はそれほど聴きたかったし探しまくってた。昔は日本盤が廃盤になると輸入盤に頼るしかないわけで、しかもそう頻繁に輸入されるわけでもないので、渋谷のタワレコや秋葉原の石丸電気に行っても無いときにはもうどこにも無い(当時はまだHMVもヴァージンメガストアも無かった)。ならば輸入盤は諦めて中古盤を探せってことで、各地の中古盤屋へと行くのだが、名盤クラスのレア盤ともなるとやはりなかなか見つからないものだったのだ。あの頃は何故かフリーの「ハートブレイカー」はどこにも無かった(でもユニオンで見つかるくらいだからレア盤でもなかったのかな?笑)。

ところで昔は「幻の名盤」というのがいくつかあって、それを求めて中古盤屋をあちこちまわって歩くのが音楽ファンの普通の姿。そしてそれが見つかったとして、とんでもない値段がついて中古盤屋の壁に飾ってあったりして、それを恨めしく眺めてたりなんかして・・・。新宿レコードの壁を放心したように眺める音楽マニアたちをこれまで何人見てきたことか・・・。

幻の名盤ということで思い出すのがキャプテン・ビヨンドのファースト。「伊藤政則が選ぶハードロック名曲ベスト20」という記事が1980~1981年頃の何かの雑誌(FMレコパルか週刊FMかサウンドレコパルのどれかだと思うんだが)に載ってて、中学生だった僕なんぞはそれを参考にレコードを集めたりラジオのエアチェックなどをしてたわけなのだ。で、その中にどうしても手に入らないしラジオでも全く流れないものがあった。それがキャプテン・ビヨンドの「過去への乱舞」(1972年のファーストに収録)。この曲だけがどうしても聴くことが出来ない。おまけに伊藤政則の解説でも凄いことが書いてある。そうなると妄想がどんどん膨らんで、何やら物凄い曲なような気がしてくるもので、聴いたこともないのにハードロックで最も凄いのはキャプテン・ビヨンドのファーストってことでなんとなく決着がついていたものだ(笑)。後年、友達がこのレコードを見事ゲットし、僕は電話口でそのレコードを聴かせてもらったりしてた(笑)。まさかの変拍子にはちょっと驚いたな。

さて、フリーの「ハートブレイカー」なんだけど、そもそも当時なんでこれが聴きたかったかというと、まずフリーのレコードを何枚か持っててフリーが好きだったというのがひとつ。そしてもうひとつは「ウィッシング・ウェル」のカバーを当時ゲイリー・ムーアがやってて(1982年のアルバム「Corridors of Power」に収録)それが凄く良かったということ。そんなことからフリーの「ハートブレイカー」はひょっとして物凄いのではなかろうかと妄想したわけなのだ。なんと言ってもオリジナルの「ウィッシング・ウェル」が一体どんな感じなのだろうかというのが気になってしょうがない。ゲイリー・ムーアのバージョンを聴きながらあれやこれやと想像するけど、どう転んでも凄い演奏しか思いつかなかったのだ。

渋谷のディスクユニオンで「ハートブレイカー」発見後、速攻で家に帰り、レコードをターンテーブルにのせ、出てきた「ハートブレイカー」のイントロにぶっ飛んだ。物凄い。ギターの重い音は想像出来たけど、それとユニゾンで入るベースの重い音が凄かった。このときのことは今でもよく覚えてるほどで(笑)、たぶん僕は口をポカンと開けたまま「すげぇぇぇ」とか言いながら聴いてたに違いない。この1曲目がすべて。他はオマケみたいなもの(いや、全部凄いけど)。

そんなわけでこのアルバム、一応フリーの最終作ってことになってるけど、メンバー的にも音的にもフリーとは別物って感じがしてしょうがない(なんといってもアンディー・フレイザーがフリーの要だった)。フリーとバッドカンパニーのつなぎ的な存在か。ただ、アンディー・フレイザーの代わりのように入ってきたテツ・ヤマウチとラビット・バンドリックも相当凄くて、それまでのフリーには無いような地鳴りのようなベース音のインパクトはなかりのものだった。


XTC / Black Sea (1980)

これまた10代の頃に何度も聴いたアルバムなんだけど実を言えばいつごろ聴いてたのかさっぱり覚えていない。デヴィッド・ボウイにハマった後にニューウェイブを聴きまくってた時期があるので、たぶんその頃だったと思うんだが。シャカシャカいうリズムが気持ち良くてよく聴いてた。ところが僕のXTC体験はこれ1枚のみ。他のものはほとんど知らない。いくつかシングルになったものだけ知っている程度。なので超名作と言われるアルバム「Oranges & Lemons」(1989)だって1曲しか知らない。

そんなわけで25年以上ぶりくらいに聴いてみたんだけど意外にいろいろ覚えてて面白かった。このアルバムはなんだか妙に印象に残る曲がいくつかあって、特にアクの強い「Living Through Another Cuba」は昔からずーっと頭の中にこびりついているというか、ふとしたときに思い出す曲。ファンカラティーナっぽさもある。XTCのリズムはレゲエが少し入っててロンドン・パンクに多いスタイルのようにも見えるけど、むしろそれらを発展させて独自の実験をやってるような、どこか妙なオリジナリティみたいなものがあって、今聴くとそこんところが面白い。昔はそこらへんはよく分からなかった。イアン・デューリーなんかもそうだけど、レゲエを経た耳で聴くと発見が多い。


Michael Schenker Group / One Night at Budokan(飛翔伝説) (1981)

僕が中学生の頃、最もダサいと思ってたアーチストはマイケル・シェンカーとゲイリー・ムーアだった。マイケル・シェンカーは当時物凄い人気でミュージックライフ誌などでもグラビアが沢山載ってた程の人気者だったんだけど、たぶんそういうのも影響したんだろう。人気のあるものほどダサく感じたものだ。あとあの白黒のフライングVもなんだかなあという感じだったし、マイケル・シェンカー・グループのボーカルのパっとしない感じとかも、なんだかなあって感じだった。ゲイリー・ムーアの方は・・・、たぶん顔だろう。

で、マイケル・シェンカーとゲイリー・ムーアがダサいとか言っちゃう僕が当時カッコイイと思ってたアーチストはといえばウルリッヒ・ロートやロニー・ジェームス・ディオだったんだから、どっちもどっちというか・・・。まあ、中学生っていうのはたぶんそんなものだ。

「クライ・フォー・ザ・ネイションズ」のスタジオ録音のイントロもなんだかダサいと思ってた。ブラックサバスの「ターン・アップ・ザ・ナイト」とかレインボーの「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」とかがカッコイイと思ってた当時の僕には、「クライ・フォー・ザ・ネイションズ」のイントロのなんだかピョンピョンいってるマヌケな音がどうにも我慢ならなかったもんだ。

ところで中学生のころ僕が持ってたマイケル・シェンカー・グループの音源はNHK-FMからエアチェックした武道館ライブのカセットテープ。あと、ファーストやセカンドから数曲エアチェックしたテープを持ってるだけだった。で、そのNHK-FMのライブってのはこの「飛翔伝説」のときの武道館公演のものだった。LPまるごと流すってのも凄いけど実はLPになる前に放送してたのだ。この放送のだいぶ後にこの音源と同じものが「飛翔伝説」としてアルバム化した。でも実は「飛翔伝説」の方は1曲だけ大阪公演のテープに差し替えてる部分があるとか。だもんでNHK-FMで流れたライブの方が正真正銘の全編武道館公演ってことになる。とはいえ内容はほぼ一緒なんだが。

で、そのNHK-FMからエアチェックしたカセットテープは当時何気によく聴いていたのだ。特に冒頭の「アームド・アンド・レディ」なんて、テープが伸びそうな程よく聴いた。スタジオ録音(ファースト)の「アームド・アンド・レディ」より断然いい。このライブバージョンの「アームド・アンド・レディ」はマイケル・シェンカー・グループの中では一番好きかな。2曲目の「クライ・フォー・ザ・ネイションズ」もスタジオ録音のあのイントロを省いてるのがいい。「ドクター・ドクター」はフィル・モグとの差がありすぎてちょっとあれだけど。


David Lee Roth / Eat 'Em and Smile (1986)

なんといっても1曲目の「ヤンキー・ローズ」。この手のシンプルなアメリカン・ロックは何故か昔から好きで、たとえどんなショボいグループであっても、この手のシンプルなロックンロール曲があると何故か許せてしまえたものだ。トゥイステッド・シスターだって「ウィ・アー・ノット・ゴナ・テイク・イット」があるからOKなのだ。こういうのはハードロックとかメタルとか関係なく、ただのロックンロールとして聴けるので、今でもじゅうぶん鑑賞に堪える。

当時このアルバムはカセットテープで持ってたので、レンタルレコードで借りたのか誰かにダビングしてもらったのかだと思うけど、主にウォークマンに入れて電車の中で聴いてた記憶がある。電車に乗ってどこかに行くときにこれ聴いてると何か盛り上がるというか気合が入るというか(笑)。デイヴ・リー・ロスはヴァン・ヘイレンにいた頃は全くといっていいほど興味無かったんだけど、「ヤンキー・ローズ」で初めてこのボーカルのよさに気づいた感じ(でもその後すぐに興味を失うが)。

ちなみにこのアルバムではフランク・ザッパ・グループのスティーヴ・ヴァイが入ってるということで当時話題になったけど、「ヤンキー・ローズ」のイントロではスティーヴ・ヴァイがエイドリアン・ブリュー(これまたザッパ・グループ出身)みたいなことをやってて面白い。また、スティーヴ・ヴァイは映画「クロスロード」(1986年の映画。大学生のときに見た)に悪魔のギタリストみたいな役で出てて、主人公(ブルースマン)とギター対決なんてものをやっている。このギター対決さえ無かったらいい映画だったんだよな(笑)。


Television / Marquee Moon (1977)

テレヴィジョンに興味を持つきっかけはデヴィッド・ボウイの「SCARY MONSTERS」(1980年)に入ってた「キングダム・カム」という曲だった。これがトム・ヴァーレインの曲だったのだ。そもそもデヴィッド・ボウイの「SCARY MONSTERS」は「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」という曲が好きで買ったアルバムなんだが肝心の「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」は僕の知ってたバージョンと微妙に違ってて(僕の知ってたのはシングルバージョンの方。少し短い)どうも違和感があった。前奏や間奏が長くてちょっと間延びしてるというか。そもそも僕がシングルバージョンの「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」を何度も聴きすぎてたというのが問題だったのだが。で、それでもやっぱりいいアルバムなので何度も聴いてるうちにB面に入ってた「キングダム・カム」をやけに気に入ってしまったのだ。調べてみるとトム・ヴァーレインの曲ってことだが、当時はこの曲オリジナルバージョン(トム・ヴァーレイン・バージョン)があるのかどうかさえも分からないし、輸入盤屋に行ってもトム・ヴァーレインのソロなんか見当たらない。そんなわけで一番有名なこのテレヴィジョンのファーストを手に入れた、ということじゃなかったかな。実は何でこれ買ったのかよく覚えてないのだ。

テレヴィジョンといえばニューヨーク・パンクの代表みたいな感じだけど、僕はニューヨーク・パンクにはたいして興味無くて、せいぜいトーキングヘッズが好きだったとかニューヨーク・ドールズのレコードを持ってたとかブロンディが好きだったとか、そんな程度。ヴェルヴェッツだって特に興味無かったし、ジェームス・チャンスらの例の「No New York」だってまるで興味無かったのだ。で、テレヴィジョン聴いてもなんだか僕のイメージの中にあるパンクとは程遠く、なんだこのフニャフニャした音楽は?ってくらいのもんだった。

なのに不思議なもんで、時間が経てば経つほど良さが分かってくる。デヴィッド・ボウイの「SCARY MONSTERS」に入ってた「キングダム・カム」のように、ジワジワとそのメロディやら何やらが体に染み込んできて、いつの間にかすっかりこれもアリになった。なんかクセになるメロディばかりだ。当時はA面の最初の2曲が特に気に入っていた。

ところでデヴィッド・ボウイの「SCARY MONSTERS」に入ってた「キングダム・カム」のオリジナルのトム・ヴァーレインのバージョンを数年前にようやく初めて聴いたんだけど、さっぱり良くなかった。この曲に関してはデヴィッド・ボウイのバージョンが神懸かってて凄い。結局トム・ヴァーレイン関係で一番好きなのはデヴィッド・ボウイの「キングダム・カム」なのだ。


Guns N' Roses / Appetite For Destruction (1987)

J-WAVEで流れた「Welcome To The Jungle」ですっかり気に入ってしまい速攻で買ったアルバム。これが出た1987年頃はもうすでにハードロックは全く聴かなくなっていたのだが、僕はこれをハードロックとして聴いてたわけではなく、ウエストコースト・ロックとして聴いていたのだ(僕がいつまでもチープトリックが好きなのもこれと同じ理由に拠る)。だいたいこのアルバム、典型的なアメリカンロックのパターンも多く、70年代イーグルス周辺のウエストコースト・ロックの伝統をも感じたものだ。カントリーの要素もあるし、どこか70年代西海岸の雰囲気だってあるような気もしないでもない。当時僕はウエストコースト・ロックのマイブームの時期だっただけに、これにはすぐに飛びついた。

ガンズ・アンド・ローゼズはこのアルバムの翌年あたりにセカンドアルバム「GN'R Lies」を出してるけど、これも買った。こちらは半分がライブで半分がスタジオ音源。これがまた前作以上にウエストコースト的で軽いアメリカンロックだったのでよく聴いた。

今じゃガンズ・アンド・ローゼズは古いメタルの代表みたいな感じになってるようだけど、見た目はともかく(なんであんなにダサいんだろ)、音楽だけを聴いてるぶんには普通のアメリカンロックが多少ハードになった程度なもんなんじゃなかろうか。ああ、でも確かにボーカルはメタルっぽいかな・・・。というか、ハードロックと違ってメタルの定義がいまいちよく分からない。AC/DCはどっちだ?

ところで、「Welcome To The Jungle」が流行ってた頃はJ-WAVEのヒットチャート番組も最高に面白かった。というか、ヒットチャート番組を夢中で聴いてたのはこの頃が最後だった。ちなみに当時ヒットチャートといえば洋楽のこと。日本のポップスは全くと言っていいほど知らなかったし、そもそも興味もなかったものだ。で、その数年後、何故かJ-POPがヒットチャートにも入ってくるようになってきた。それと同時に僕はJ-WAVEも聞かなくなってしまった。ついでに洋楽ポップスも聴かなくなってしまった。だからニルヴァーナとかオアシスとか、僕は全く興味無い。困ったことにグランジ・ロックとかオルタナとかミクスチャーとかまるで興味無い。そして僕の興味もジャズやクラシックやソウルが中心になってしまっていた。ジャズに関しては中学生の頃からレコードは買ったりしてたんだが(中学生の頃はジャズというものをムード音楽やイージーリスニングだと勘違いしてたのだ。ムード音楽だと思ってロリンズやマイルスなどを買ってた。笑)、高校時代くらいまではロック中心に聴いてたし、ジャズはジェットストリーム(FM東京)を聴くのと同じ感じで聴いていたものだ。それが大学時代に逆転して結局ロックからは離れていってしまった。だからガンズ・アンド・ローゼズなどはリアルタイムでハマったロックの最後だったかもしれないなあ。今後リアルタイムでハマれるロックのアーチストは出てくるんだろうか。 




BAD COMPANY / Run with the Pack (1976)

昔の輸入盤のレコードというのは新品で買っても当たりハズレがあって、雑な造りのジャケットだとか、盤がいきなりゆがんでたりとか、もっとひどいのになるとデカいキズが付いてたりとか、とにかく家に帰って開封するまではどうも安心できないようなシロモノだった。輸入盤屋に大量に入荷してるような人気盤だったら交換してもらいに行けばいいのだが、僕の欲しいものってのはたいてい1枚しか置いてないわけで、それを逃すとまたレコード屋巡りをして探さなければならなくなるので、たとえジャケが水濡れでよぼよぼでも、盤にゆがみがあっても、盤にキズが付いていても、文句を言わず諦める。僕の買ったチープトリックの「All Shook Up 」(1980)はA面全部に大きな傷が付いていてA面はほぼ聴けなかったし(結局後年同じものを買った)、アリス・クーパーの「Alice Cooper's Greatest Hits」(1974)のジャケットはよれよれで端の方が折れてたし盤には当然のようにキズがついてたし、スプーキートゥースのレコードは少しゆがんでてレコード針が上下するのを見ながら何だかヒヤヒヤしてたし・・・。

で、このバッド・カンパニーの「Run with the Pack」もジャケットがヨレヨレだった。薄いボール紙で適当に作ったような感じ。ボール紙の上に貼り付ける紙のサイズがいいかげんなので何だか端っこがずれてるし、おまけに水濡れ気味にジャケの表面がガサガサになっちゃってるし、とにかくひどい。それでも開封してレコードを取り出したときのあの輸入盤独特の匂いをかぐとすべてを許してしまう。あの不思議な匂いはドラッグか何かだったのだろうか?あの匂いほどワクワクした気持ちになるものも無かった。

そんなわけでこのバッド・カンパニーのサードアルバムなんだけど、バッド・カンパニーのアルバムの中では「Desolation Angels」(1979)とともに一番気に入っている。とにかく1曲目「Live for the Music」のスカスカな感じが最高すぎ。この曲はフリーっぽいから好きだな。リズムもフリー時代のようにタメが効いててかっこいい。初期バッド・カンパニーは基本的にギターがうるさすぎるんだけど、この曲に関してはそれがあまり気にならない。A面ラストの「Run with the Pack」はフリーのラストアルバム「Heartbreaker」に入ってそうなちょっと湿った感じの曲で、これも何故か気に入ってた。内容が気に入るとヨレヨレのジャケットも何やら愛着が湧くもので、しまいにはこのアルバムのジャケはこうでなきゃならないとか思うようになった。造りのしっかりしたジャケットの「Run with the Pack」は何か違うんだよなあとか感じるまでになってしまいました。 


The Damned / Damned, Damned, Damned (1977)

ロンドン・パンクにはハマったことは無いし、聴きこんだアルバムも特に無い(ポリスはよく聴いたけどポリスはパンクって感じじゃないし)。でも好きな曲はいくつかあって、中でもダムドの「ニュー・ローズ」はかなり好きだな。これほどカッコイイ曲もそうは無い。特に音の感触がすごくいい。プロデュースしたニック・ロウのセンスなんだろうけど、適度にエコーのかかったようなラフな音が滅茶苦茶かっこいい。出だしのドラムの音もその後のギターの音もボーカルの適当な感じも、すべてがパーフェクト。そんなわけで、ダムドといえば「ニュー・ローズ」がすべてだ。

ところで、アルバム単位でいうと、ダムド関係はキャプテン・センシブルのベストアルバムってのをよく聴いた(ダムド自体のアルバムはぜんぜん聴いてない)。1曲目に入ってた「ハッピー・トーク」とか本当に最高だった。キャプテン・センシブルのアルバムは変な曲ばかりだった印象だけど、曲よりもキャプテン・センシブルの変な声が何だか印象深い。ジャケットもなんだか変だった。

90年代のはじめ頃だったか、ガンズ・アンド・ローゼズが「ニュー・ローズ」をカバーしたっていうので、当時そのアルバム(「スパゲッティ・インシデント」だったかな?)を買った。で、聴いてみたんだが、これがどうにもパっとしない。アレンジから何からほとんど一緒なのに、まるで違う。要するに、あの音の感触が無いのだ。ガンズ・アンド・ローゼズだとやっぱり普通の西海岸のハードロックの感触なのだ。そういうのが聴きたいわけでは無かったので、あれはちょっとがっかりした。ダムドの「ニュー・ローズ」の持つあの何とも言えない殺伐としたラフで圧倒的な音の感触はやっぱ凄い。ニック・ロウは凄かった。


DAVID BOWIE / Aladdin Sane (1973)

デヴィッド・ボウイのアルバムにはどれもアルバムを代表する1曲みたいなものがあるもんだ。たとえば「Space Oddity」の「スペース・オディティ」とか、「Ziggy Stardust」の「スターマン」とか、「Diamond Dogs」の「1984」とか、「Low」の「サウンド・アンド・ヴィジョン」とか。だけどこの「Aladdin Sane」だけはそこらへんがちょっと微妙な気がする。「ジーン・ジニー」だろうか。あるいは「パニック・イン・デトロイト」か、はたまた「ウォッチ・ザット・マン」か、有名なカバー「夜をぶっとばせ」か。いや、やっぱ「アラジン・セイン」だな。この「アラジン・セイン」という不思議な曲のおかげでこのアルバムの印象もなんだかちょっと不思議な感じがある。

中学生のころデヴィッド・ボウイの「Changes One Bowie」と「Changes Two Bowie」という2枚のベスト盤LPを持ってて、その2枚を本当によく聴き込んだんだけど、「Changes Two Bowie」の1曲目がいきなり「アラジン・セイン」だったのだ。出だしから「アラジン・セイン」が出て来るときのインパクトはちょっと凄かった。この「Changes Two Bowie」はほんとによく出来てて、他に「スターマン」「1984」「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」「サウンド・アンド・ヴィジョン」「ワイルド・イズ・ザ・ウインド」などなど、名曲ばかりが並ぶ。

で、このアルバムなんだけど、たぶん高校のときに買ったんじゃなかったかな。前作の「Ziggy Stardust」(1972年)とほぼ同じメンバー。だけど、よりロックンロール色が強い感じ。でもピアノのMike Garsonのせいか何なのか次作「Diamond Dogs」に近い感触もちらほら。特に「アラジン・セイン」はそのまんま「Diamond Dogs」に入ってても違和感無い。というかこの曲はやっぱ凄い。


IAN DURY & THE BLOCKHEADS / Sex & Drugs & Rock & Roll (1987)

イアン・デューリーをほんとに凄いなあと思ったのはこのベスト盤がきっかけ。最初に聴いたイアン・デューリー&ブロックヘッズは中学だか高校だかの頃にラジオで流れた「Sweet Gene Vincent」だったし、最初に買ったアルバムはファーストアルバムの「New Boots and Panties」(1977年)だったと思うけど、正直それほどハマったわけでもなかったわけで。ところがこのベスト盤聴いてぶっ飛んだ。とにかくベースとドラムのリズムセクションが圧倒的。ブラックミュージック寄りのねばり腰。なさけないことにファーストアルバムの凄さもこのベスト盤を経てからはじめて分かったという次第です。

このアルバムの中では「Hit Me With Your Rhythm Stick」と「Superman's Big Sister」が圧倒的に凄い。「Hit Me With Your Rhythm Stick」はリズムが凄くて、特にベースラインがかっこいい。だいたいブロックヘッズはいつもベースがずば抜けている。そして「Superman's Big Sister」の方はシンプルなロックンロール・ナンバーで僕の好きなパターン。これはもうカッティング・ギターが物凄い。最初は、これルドルフ・シェンカーよりも凄いんじゃないのか?なんて思ったもんだが(笑)、のちにこのギターがウィルコ・ジョンソンだと知って、なるほどと納得した。ウィルコのギターの切れ味と音そのものの存在感はちょっと別格だ。なんでウィルコの音はこんなに独特なんだろう。

イアン・デューリーってのは意外にアルバム数が少ない。70年代から80年代にかけてのスタジオ録音のオリジナルアルバムは6枚くらいしかないんじゃないか。もっと沢山出してる印象があったんだが、たぶん1枚1枚がそれほど強烈だったということなのかな。ウィルコ・ジョンソン時代のドクター・フィールグッドもアルバム数が少ないのにかなり強烈な印象があるっていうのと同じことか。


James Gang / Miami (1974)

トミー・ボーリンのいた時代のJames Gangのアルバムは「Bang」(1973)と「Miami」 (1974)の2枚。どちらものちのトミー・ボーリンの要素がもう全部出てるような内容。「Bang」の1曲目なんてもうほとんどパープルの「Commin' Home」のプロトタイプだし(言い過ぎか?)、「Miami」の1曲目もレイナードスキナードが「Commin' Home」やってるような感じで滅茶苦茶かっこいい。この2枚でのトミー・ボーリンはZephyr時代のブルース臭さもモタツキ感も無く、カラリとした演奏が気持ち良い。

強引かもしれないが、今から見るとなんだかパープルの「Commin' Home」はトミー・ボーリンの総決算のような曲のように見える。年代順に見るとJames Gangの「Bang」(1973年)「Miami 」(1974年)とソロアルバム「Teaser」(1974年)の後にパープルの「Come Taste the Band 」(1975年)が出たからそんなふうに勝手に関連づけちゃうんだろうけど、このパターンは元からトミー・ボーリンが持ってた体質のようなもんだったのだろう。

ちなみにこのJames Gang、ロック中心に聴いてた10代の頃は全く聴いたことが無かった。もし当時聴いてたらどうだったのかなと思うけど、当時はブリティッシュ・ロック中心に聴いてたので、ひょっとしてらこれ聴いても何も思わなかったかもしれない。なんでブリティッシュ・ロック中心だったのかってば、なんといっても渋谷陽一のラジオの影響がデカかったわけで。NHK-FMのサウンドストリートは毎回ダビングして何度も聴いてたものだ。あと当時買ってたロッキング・オンの影響もデカい。あれも毎回熟読(笑)してた。そんなわけで渋谷陽一のせいでアメリカよりもイギリスだったのだ。もちろん、いくつかアメリカン・ロックも好きなのがあったけど(ドゥービーとか)、ほとんどがブリティッシュ・ロックか、アメリカのアーチストでもブリティッシュ寄りのものばかり中心に聴いてた。とはいえ、当時好きだったアリス・クーパーもチープトリックもどちらもアメリカなんだが(笑)、これらは音楽的にはブリティッシュ寄りなわけで、つまりは渋谷陽一が好きなタイプの音楽だったわけだ。

1976年6月号の雑誌「宝島」に渋谷陽一が書いたレッド・ツェッペリン「プレゼンス」のディスクレビューが載ってるんだけど、ここにハッキリとアメリカンロックよりブリティッシュ・ロックの方が好きだってことが書いてある。このとき渋谷陽一はピーター・フランプトン「カムズ・アライブ」のレビューを頼まれていたそうだが、何か気に入らなかったのでツェッペリンに変えてもらったとか(笑)。こういう渋谷陽一の趣味は、いたいけな中学生にとっては王道のように見えたのか何なのか。とにかくベストヒットUSAで流れるアメリカン・ヒットチャート音楽よりは多少高級に思えたものだ(笑)。

僕が渋谷陽一のブリティッシュ・ロック趣味の呪縛から解かれたのは大学1年のときにハマったウェストコースト・ロックとファンカラティーナのおかげだったような気がする(その前にイギー・ポップにハマってたけど、あれはアメリカもイギリスも無いような・・・笑)。初期リンダ・ロンシュタットや初期イーグルスなどの王道ウェストコースト、そしてマット・ビアンコやブルー・ロンドなどのラテン系のファンカラティーナは、それまでのブリティッシュ・ロックの湿気をすべて吹き飛ばすように感じられてなんだか痛快だった。特にカントリーロック時代のイーグルスなんて今でもたまに聴くくらいに大好きだし、リンダ・ロンシュタットの「Heart Like A Wheel」(1974年)なんて今でも無人島盤のうちの1枚だ。

さて、James Gangなんだが、初期James Gangはのちにイーグルスに参加することになるジョー・ウォルシュがいることからも分かるように(1971年の3枚目のアルバム「Thirds」はイーグルスっぽい雰囲気もあって最高)、アメリカン・ロックなわけで、トミー・ボーリン時代のJames Gangもやっぱりアメリカンなのだ。特にこの「Miami 」。サザンロック風で、トミー・ボーリンのボトルネックのセンスが素晴らしい。ブリティッシュばかり聴いてた10代の頃よりも、その後にウェストコーストやサザンロック等のアメリカを経た耳で聴くからこそこの良さが分かるのではないか、なんてことを思う。

ところで、このアメリカンなトミー・ボーリンがガチガチのブリティッシュであるパープルに参加すればそりゃあんな感じになるだろうなってことが分かる。リッチーはあんなボトルネックは絶対にやらないし(笑)。ちなみにパープル解散後にデヴィッド・カバーデールが出したソロアルバムがどこか「Come Taste the Band 」路線なのもなんだか面白い。


Thin Lizzy / Black Rose: A Rock Legend (1979)

1曲目の出だしの音がすべて。このドラムとベースの始まり方はかなり凄い。ドラムとベースの低音でリズムを刻んだ後ギターが出てきてイントロが始まる。ここのギターも凄い。だいたいこのアルバムのクライマックスはこの最初のところで、ここで最高に盛り上がり、後は普通にシン・リジィって感じ(テキトーですいません)。

このアルバムはカセットテープで持ってたんだけど、これが誰かにダビングしてもらったものなのか、レンタルショップで借りたレコードからダビングしたものなのか、さっぱり覚えていない。でもこのアルバムに興味を持つきっかけは覚えてて、伊藤政則が何かの雑誌に書いてた「ハードロック名曲ベスト20」という記事だった。そこに「ブラック・ローズ」が入ってたのだ(たぶん)。

あと、雑誌などでギターの名演というと何故かいつもこのアルバムのB面ラストに入ってる「ブラック・ローズ」の名前が挙がってたのも覚えている。でも「ブラック・ローズ」のギターのどこが名演なのか全く分からなかったし、今でも分からない。普通じゃないか(ゲイリー・ムーアだったらG-Forceの方がよっぽど凄い)。曲そのものは面白いと思うけど。

ところで僕がシン・リジィで一番よく聴いてたアルバムはといえば、実はこの「Black Rose: A Rock Legend」ではなく、1981年の「Renegade(反逆者)」だった。というのも、これはリアルタイムで買ったもので、リアルタイムで買ったシン・リジィはこの「Renegade(反逆者)」だけだったのだ。だもんでこれはよく聴いたものだ。でも特にいいとも思わず、ただB面の最後に入ってた「It's Getting Dangerous」だけ気に入ってた。この曲はかなり好きだったな。

そういえば当時、「ロキュペーション」(文化放送)や「ロックトゥデイ」(ラジオ関東)などでは83年の「Thunder and Lightning」が流れてたような記憶があるのだが、81年の「Renegade」の不評ぶりとは裏腹に、83年の「Thunder and Lightning」は評判が良かった。この「Thunder and Lightning」の1曲目のThunder and Lightningってのはなんとも印象深い曲で、昔からサビの部分だけ何故か頭にぐるぐると回ることがある。あと、どのアルバムに入ってるのか忘れたが「ロザリー」って曲も同じようにサビの部分だけ頭の中にぐるぐると回ることがある。


The Rolling Stones / Still Life ~ American Concert 1981(1982)

これは中3の1学期に買ったんじゃなかったかな。ちなみに僕がリアルタイムで買ったストーンズのレコードはこれだけ。とにかく出だしの「A列車で行こう」のBGMが流れる中メンバーが登場してくるときの大声援から「アンダー・マイ・サム」のイントロが流れてくるあたりのくだりが最高すぎる。そこだけシングルカットしても売れてたんじゃないか(笑)。で、なんでこのレコードを買ったのかといえば、たぶん「スタート・ミー・アップ」のライブ・バージョンが聴きたかったから。「スタート・ミー・アップ」は当時ヒットしてて結構好きだったのだ。今でも好きだけど。ちなみにその「スタート・ミー・アップ」の入ってるアルバム「Tattoo You」(1981)は当時ラジオからダビングしたカセットテープで持っていた。

ストーンズってば、一般的には70年代か60年代に人気が集中すると思うけど、僕は「Emotional Rescue」(1980)、「Tattoo You」(1981)、「Still Life」(1982)、「Undercover」(1983)、「Dirty Work」(1986)、といったアルバムがつづく80年代が好き。とはいえ、中学・高校・大学時代を送ってきた80年代当時は特にストーンズのファンというわけでもなかった(もちろんそれなりに好きだったが)。むしろリアルタイムでロックを聴かなくなってからストーンズの良さを感じるようになっていったくらい。

で、この「Still Life」なんだけど、これは要するに「Tattoo You」ツアーの模様なわけで、単に「Tattoo You」で復活した80'sストーンズをリアルタイムで聴くためのアルバムだったんじゃないかな。このアルバムを買ったときには聴きまくったけど、あっという間に全く聴かなくなってしまったような記憶が・・・。名作ライブといわれる「Love You Live」や「Get Yer Ya-Ya's Out」のような普遍性は無いってことなのか。でも、ライブなんだからリアルタイム感さえありゃいいじゃないかって気もする。リアルタイムってば、今ちょうどストーンズが来日してるそうな。ミック・ジャガーもキース・リチャーズも70歳だとか。すごいな(笑)。 


CHEAP TRICK / Cheap Trick at Budokan(1978)

何が好きって、「サレンダー」ほど好きな曲も無い。これは自分にとっては「サレンダー」を聴くためのアルバム。「サレンダー」で、しかもライブ・バージョンなんだからテンション上がる。ひさしぶりにこのアルバムを通して聴いてみたけど、結局「サレンダー」は3回もリピートで聴いてしまった。なのにまだ「サレンダー」だけ聴きたい。ライブ・バージョンの「サレンダー」はスタジオ録音に勝るとも劣らないというか、ちょと勝ってるんじゃないかというくらいに凄い。にしても、つくづく「好き嫌い」ってのは理屈を超えてるものなんだなあと実感する。好きなものには理由なんて無いのだ。自分でも何で「サレンダー」が好きなのか全く分からないんだから(特別に名曲だとも思わないんだが)。不思議なもんだ。

そんなわけでこの「ライブ・アット・武道館」。初期のベスト盤的な内容です。実はこれ、僕のチープトリック・マイブーム(たぶん17~19歳くらいの頃)のときには何故か入手困難で、しばらく聴けなかったのだが、友達が持ってたのでカセットテープにダビングしてもらってようやく聴けたのだ。その頃はもう毎日毎日チープトリックばかり聴く日々で、ほとんどの曲を暗記しちゃう位に聴き込んでいたので、この「ライブ・アット・武道館」が聴きたくてしょうがなかった。その枯渇感からなのか、このライブ盤を最初に聴いたときには本当に盛り上がった。大音量で聴きながら「すげぇぇぇ」とか言ってたのをよく覚えている(笑)。よく知ってる曲のライブバージョンというのはやたらと盛り上がるものだ。

ところで、この「ライブ・アット・武道館」のアウトテイク集の「Budokan 2」というCDが90年代になって出ている。さすがにこちらは有名曲は入ってないけど僕の好きな「Southern Girls」や「California Man」「Downed」「On Top of the World」などが入ってるのでかなり嬉しいアルバム。がしかし、何故か音の感触がハードすぎて(特にギター)、ちょっと残念。「ライブ・アット・武道館」のような音作り(プロデュース)にしてほしかった。ちなみにその後、この「ライブ・アット・武道館」のコンプリート盤2枚組CDが出て、さらにDVD付きのコンプリート盤なんてのも出たようだ。


Depeche Mode / A Broken Frame (1982)

デペッシュ・モードのセカンドアルバム。なんでこんなレコード持ってたのかよく覚えてないのだが(たぶんミュージックライフ誌のレビューで5つ星でも取ったからじゃないかなあ)、何故かこれが好きでよく聴いてた。当時はこれがどのくらい流行ってたのかも全く知らなかったし、これがどんな文脈から出てきたグループなのかも全く知らなかったというか、その手のことにはほとんど興味無かった。ただ単にこの冷たい音が気に入ってただけなのだ。

そもそも僕はシンセを中心に使うニューウェイブ(シンセポップ)にはほとんど興味が無くて、僕が当時持ってたこれ系のグループのレコードってば、デペッシュ・モードの他にジョイ・ディヴィジョン、チャイナ・クライシス、コクトー・ツインズ、シンプル・マインズ、・・・あと他に何か持ってたかな?まあせいぜいそんな程度。これらは音楽がどうのっていう以前に、音の感触が好きだったんだと思う。デペッシュ・モードのこのアルバムの音の感触はその中でも特に最高で、高校の終わり頃まで結構頻繁に聴いてた気がする。このアルバムの他には「Black Celebration」というレコードもよく聴いてた。

高校生の頃に読んだロッキングオンだったと思うが、「今のニューウェイブなんてデヴィッド・ボウイの前ではすべて吹っ飛んでしまう」なんてことが書いてあって、なるほどそうだよなあなんてことを思ったものだ。そりゃ天下のデヴィッド・ボウイと比べられちゃたまったもんじゃないだろうが、それほど当時のニューウェイブは骨が無いというか薄い印象があった。でも、今の視点で見ると、そんなふうに見えたのは自分が古いロック(特に70年代ロック)に慣れ過ぎてたからなんじゃないかなあとも思う。何の先入観もなく当時のニューウェイブを聴けていたら意外にいろんなものを楽しめていたのかもしれない。だいたい僕は同時代の洋楽ポップスよりは70年代のロックの方にいつも親近感を抱いていたのだ。

というわけでこのデペッシュ・モードのアルバム。寂しくて冷たい感じの音空間がなんともいい感じだ。この冷たい音の感触が当時の気分に合ってたんじゃないか。今からすりゃ相当レトロなんだろうが、そもそも僕は現在のシンセ系の音に疎いのでレトロだとも思えず、ひさしぶりにこれ聴いて新鮮な感じすらあったわけで(笑)。で、このアルバムやデペッシュ・モードというのはロック史の中では一体どんな位置づけなんだろうか?全く知らないけど、もう忘れ去られた存在なんだろうな。


The Beach Boys / All Summer Long (1964)

ブライアン・ウィルソンのマニアみたいな人はいっぱいいると思うけど、僕はブライアン・ウィルソンに特に興味なかったし例の「スマイル」だって全く興味ない。ただ、ビーチボーイズの曲が醸し出すあの雰囲気が好きだった。

80年代の終わり頃、J-WAVEが開局した。当時のJ-WAVEは洋楽とフュージョンしか流さずDJのトークは最小限、そして日本語の曲は全く流さない、というなんとも最高の局だったのだが、そのころ土曜の午前中に「AJIマジックシティー・スーパーQステーション」という番組があった。ウェストコースト・サウンドばかり流し、番組中にロサンゼルスやハワイのラジオ局からも現地のDJが音楽を紹介したりしてて、とても気持ちいい番組だったのだ。桑原美保(シュガーケイン・ミホ)がメインパーソナリティーで、この人のDJもまた最高に良かった。僕はとにかくこの番組が好きすぎて、J-WAVE専用ラジオというのまで買って(昔そういうのがあったのだ)大学に行く電車の中で聴いたりしてたものだ(ノイズが凄かったけど)。で、この番組でよく流れたのがイーグルスとビーチボーイズだった。

当時ビーチボーイズに関してはベスト盤の入ったカセットテープを聴いてたくらいだったんだけど、このラジオ番組のおかげで「I Get Around」の入ったアルバムがどうしても欲しくなり、このLPレコードを買った(元々この「I Get Around」という曲が好きだった)。だもんで僕にとっては1曲目の「I Get Around」がすべてで、あとはオマケ。このアルバムの感想は「I Get Around」は最高だったなあ、くらいのもの(笑)。

このアルバムの頃のビーチボーイズは、ウェストコースト・ロックというよりもサーフィンに特化したホットロッドなわけで、どこかムードミュージックっぽいよなあとか思ってたのだ。カリフォルニアの青い空がイーグルスのファーストだとするとカリフォルニアの青い海がビーチボーイズ、みたいな感じか(笑)。ちなみに80年代はジャン&ディーンなどもCMで使われたりして、オールディーズのホットロッドはそれなりに時代に溶け込んでたように思う。

89年頃だったか、ビーチボーイズの新曲「Kokomo」がヒットしたことがあった。超ひさしぶりのビーチボーイズの新曲だということで盛り上がってたものだ。J-WAVEの「AJIマジックシティー」でビーチボーイズが頻繁に流れてたのも、「Kokomo」でビーチボーイズが復活したからだったのかな(関係無いか)。

J-WAVEが洋楽とフュージョンばかり流していたのは90年代初頭くらいまでのこと。その後は何故か日本のポップス(J-WAVEはこれをJ-POPと名づける。J-POPという名称はこれが元)まで流すようになってしまい、僕はJ-WAVEを聞かなくなっていった。それと同時にウェストコースト・ロックも聴かなくなっていってしまった。


Blue Rondo A La Turk / Chewing The Fat (1982)
 

大学1年のときにハマりにハマったブルー・ロンド・ア・ラ・ターク。とにかく好きすぎてピクチャー盤のシングルや12インチシングルなど手に入るものはすべて集めた。ジャケット・デザインなんかもキュビズム風でどれも秀逸だったのだ。当時よく聴いてたファンカラティーナは、このブルー・ロンド・ア・ラ・タークの他にマット・ビアンコ、モダン・ロマンス、ヘアカット100、キッド・クレオール、ピッグバッグ、といったあたり。

ファンカラティーナに入り込むきっかけはマット・ビアンコのセカンド・アルバム「Matt Bianco」で、これがあまりにも気に入ったのでマット・ビアンコの前身バンドのブルー・ロンド・ア・ラ・タークにも手を出した次第。当時は何故かウェストコーストロックばかり聴いてたんだが、たぶんその流れでファンカラティーナにも反応したんだと思う。ウェストコーストロックとファンカラティーナは全く関係無いんだけど、たぶん能天気つながりってことだったのではないかな・・・。ファンカラティーナの能天気さというか馬鹿っぽさは当時なんとも心地よかったのだ。

ブルー・ロンド・ア・ラ・タークの場合は、他のファンカラティーナのバンドよりもホーンの割合が大きいからか、やたらと馬鹿っぽい。しかもパーカッションも他のバンドよりも派手だった。ラテンのホーンとラテン・パーカッション、もうこれだけでテンション上がるんだから僕は根本的に頭悪かったのだろう。音楽的には一応ラテンなんだけど、しょせん味付け程度のラテンであって、基本的にはロック(ギターはファンク調)。だから本格的なラテンからは程遠いんだけど、たぶんそこがよかったのだ。ニセモノ的な安っぽさが逆に面白かったのかもしれない。そういえば当時本格的なサルサのレコードを買って撃沈したことがあったな・・・。

ところでこのアルバムの前に出た12インチシングルの「Me and Mr. Sanchez」というのがあって、これがまた凄かった。僕がブルー・ロンド・ア・ラ・タークの中で最も好きだったのが実はこの「Me and Mr. Sanchez」。アルバム「Chewing The Fat」に入ってるのはボーカルバージョンなんだが、こちらの12インチシングルの方は前編インストで尺も長く、サンバ調のファンカラティーナでやたらと盛り上がる。当時の僕の頭の中はだいたいいつもこの曲のような感じだった。

というわけで、ハマりにハマったブルー・ロンド・ア・ラ・タークだったんだけど、このファンカラティーナ・マイブームは2年くらいで終わり、その後は何故か全く聴く気すら起きなくなってしまった。あれからブルー・ロンド・ア・ラ・タークを聴きたいなんて思ったことは一度も無い(笑)。でも、それだけに強烈な印象が残ってることは確かで、ジャケットのデザインを見るだけで何やら気分がソワソワして来るのだ。 


Christopher Cross / Christopher Cross (1979)

クリストファー・クロスのファースト。AORで最も好きなアルバムのうちのひとつ。なんといっても名曲「Ride Like The Wind」がかっこよすぎる。この曲は小6か中1くらいのときに最初に聴いたんだが、いっぺんで気に入ってしまった。だいたいイントロのパーカッションからしてかっこいい。当時はパーカッションがポコポコ鳴ってればなんでも気に入ってしまう性質があったんだけど(この話は以前トーキングヘッズ「Remain in Light」のところで詳しく書いた)、この曲はそれだけでなくサビ部分の雰囲気が何故か気持ちよくて本当に格好よく聴こえた。この曲と、小6のときにラジオでたまたま聴いたルパート・ホルムズの「Him」によって、僕の中のAORの基本的イメージは決まってしまったようなものだ。これは不思議なことに今でも変わらない。ボズ・スキャッグスでもなければスティーリー・ダンでもないのだ(笑)。

1980年前後といえば、テレビや雑誌などで大々的なニューヨーク・キャンペーンみたいなものがあって(「I Love N.Y.」とかもその一環)、何故か僕はそれが好きだった。マンハッタンのビルが立ち並ぶ広告写真だけで妙に気分が盛り上がったし、なんだかニューヨークを歩いてる人がみんなスタイリッシュでかっこよく見えたもんだ。そして僕の中ではAORとフュージョンがそのキャンペーンのバックグランドミュージックみたいな感じになってしまっているのだ(それがジャズだったらよかったのにと思うんだけど、そうはいかないのが現実)。これはもう完全にテレビCMのせい。ボブ・ジェームスの「スパークリング・ニューヨーク」とかはその典型。だからあの時代、79年あたりから80年代初頭くらいまでのAORはたぶん全部好き。81年のクリストファー・クロスの「ニューヨークシティ・セレナーデ」や82年のシカゴの「素直になれなくて」だって好きだ。当時のニューヨーク・キャンペーンってば「ニューヨークに行きたいかー!」のアメリカ横断ウルトラクイズもちょうどその頃に始まった。

そんなわけでこのアルバムなんですが。大ヒットした「Arthur's Theme ・Best That You Can Do(ニューヨークシティ・セレナーデ)」(1981年)はここには入っていない(これはシングルでだけ発売したもの)。ここからヒットしたのは「Ride Like The Wind」と「Sailing」と「Say You'll Be Mine」。今からすればどれもそれほど有名じゃないかもしれないけど、どれも名曲すぎる。バックの洗練された演奏とかも最高だ。だいたいこのアルバム、イーグルスやドゥービーのメンバーの他にJDサウザーやラリー・カールトンなども参加してるという超豪華な布陣。凄すぎる。ところでこうやってメンバーだけ見ると完全にウェストコースト・サウンドなんだけど(笑)、僕の中ではニューヨークなのだ。これはもう思い込みなのでしょうがない。

ところでクリストファー・クロスはこのつぎのセカンドアルバムでいきなりコケてしまい、その後消えていったと記憶している。セカンドは音の質感が安っぽくなってしまって(80年代特有の音)ちょっと残念なアルバムだけど、僕はギリギリ聴ける。


Alice Cooper / Love It to Death (1971)

アリス・クーパーの「Alice Cooper's Greatest Hits」という1971年から1973年までの曲が入ったベスト盤を中学から高校にかけて本当によく聴いていたのだ。で、そのベスト盤はこの「Love It to Death」から選ばれた「I'm Eighteen」と「Is It My Body」から始まる。このベスト盤こそ僕がアリス・クーパーの泥沼にハマっていくきっかけだったんだが、80年代前半当時のアリス・クーパーってばもうすでにピークをとっくに過ぎてて、しかも活動してるんだかしてないんだかも分からないくらいに全く話題に上らない存在だったのだ。だもんでそのベスト盤ばかり聴いてた当時はアリス・クーパーを完全に「過去の人」として聴いていた。ベスト盤の1曲目に入ってる「I'm Eighteen」なんてまさに伝説のミュージシャンであるアリス・クーパーの代表曲として聴いてたもんだ。実際のところアリス・クーパーの代表曲は「School's Out 」か「I'm Eighteen」になるんじゃないかな。

で、そのベスト盤があんまり凄いので、アリス・クーパーのオリジナル・アルバムも揃えるようになっていった。たぶん最初に「School's Out」(1972)を買って、そのあとに「Killer」(1971)や「The Alice Cooper Show」(1977)あたりを揃え、そのあと「Billion Dollar Babies」(1973)だったんじゃないかな。この「Love It to Death」(1971)はその後になる。「Welcome To My Nightmare」(1975)、「Goes to Hell」(1976)なんかと同じ時期に買ったような気がする。最初から「Love It to Death」を買えばよかったんだけど、たぶんレア盤だったんだろう。

というわけで、いろんなアルバムを聴いてから「Love It to Death」を聴いたからなのか、それほどの驚きみたいなのは無かった。たとえば「Billion Dollar Babies」(1973)を最初に聴いたときには「なんだこりゃ~!」的な驚きばかりで、1週間くらいずっと頭に血が上ってるかのような興奮度だったんだが(笑)、「Love It to Death」はある程度予想どおりだったのを覚えている。要するに「I'm Eighteen」を超えるような曲が無かったというだけのことだったんだが。とはいえ、他のアーチストのアルバムに比べて異常なほどの名盤であることだけは分かった。ベスト盤にも入ってた名曲「Is It My Body」や1曲目の「Caught in a Dream」なんかも最高だし、典型的なアリス節の「Ballad of Dwight Fry」も物凄い。

そんな、過去の伝説であったはずのアリス・クーパーが、突然1986年に復活したときにはかなり嬉しかったもんだ。復活第一弾のシングル「He's Back」は今でも好きだ(笑)。そのシングルの入ったアルバム「Constrictor」はもちろん速攻で買った。アルバムを通して聴いたときには正直アリス・クーパーの声の衰えにビックリしただけでなく、すっかりメタル化したアリス・クーパーに少しガッカリもした。とはいえ、とにかく復活したというだけで超盛り上がったわけで。その次の年にはさらにメタル化した「Raise Your Fist and Yell」(1987)が出て、その翌年には完全にメタル化した「Trash」(1988)が出た。その頃になると一般のメタルファンにも人気が出たらしく、何故かメタルゴッドみたいに言われてて僕なんぞは違和感を感じたものだ。このへんの復活後のアリス・クーパーのアルバムもそのうち聴きなおしてみようかと思ってるんだが、はたしてメタル化したアリス・クーパーを今聴くとどうなんだろうか・・・。「Poison」とか「I'm Your Gun」とかハッキリ覚えてるので、なにげに結構聴いてたんだろうな。


QUEEN / GREATEST HITS (1981)(LP)

このアルバムのレコードとCDでは曲目が違うってことを最近知ったわけだが・・・。1981年にLPで出たときには「アンダー・プレッシャー」が入ってたのに、CDでは入っていないようだ。このアルバムの存在意義は「アンダー・プレッシャー」にあったのに。

というわけでこれ、中2のときだったか。発売してすぐに買ったレコード。デヴィッド・ボウイ&クィーンによる新曲「アンダー・プレッシャー」が入ってるというので迷わず買ったのだ。当時のデヴィッド・ボウイは「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」のPVのせいで僕の中での評価は最高だったわけで、どんな動きにも注目してたのだ(まだレッツ・ダンスの前だった)。だもんで「アンダー・プレッシャー」が出るってだけでも結構な事件で、しかもクィーンとの合作ってのも盛り上がった。

このアルバムを買う前に、すでにクィーンのアルバム「ザ・ゲーム」(1980年)を持っていたので(ちなみにこの「ザ・ゲーム」は好きなロック・アルバムのベスト10には入ります)、このベストアルバムの中に4曲も「ザ・ゲーム」から入ってるのがなんだったが、それでも「アンダー・プレッシャー」でチャラになった。それほど「アンダー・プレッシャー」は凄いインパクトがあったもんだ。

今じゃクィーンはとんでもないスーパーグループ扱いだけど、このアルバムが出た当時の感覚ではそうでもなかった気がする。スーパーグループなんて他にも沢山いたし、つぎつぎに出てくるいろんなアーチストのいろんなアルバムがそれぞれ大きな話題になってたわけで(・・・ってことを今から考えると、ほんといい時代だったのかもしれない)。クィーンはそれらのワン・オブ・ゼムだった。とはいえ、それらのいろんなアーチストの中で、時代の淘汰で生き残ったんだから、やっぱ凄いんだな。

このアルバムには「ボヘミアン・ラプソディ」や「キラー・クィーン」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「ウィ・アー・ザ・チャンピオンズ」といった有名曲が入ってるけど、それらはこのアルバムで初めて知った。「ボヘミアン・ラプソディ」を最初に聴いたときにはさすがにのけぞったけど、今聴いても結構凄い。「アンダー・プレッシャー」も今聴いてもかっこいいな。


Pink Floyd / Atom Heart Mother 原子心母 (1970)

ピンクフロイドはこれを一番よく聴いた。正確にはこのA面だけをよく聴いた。昔はブラスの印象が強かったけどひさびさに聴いたら意外にもギターとオルガンが結構目だってて、「7月の朝」っぽい箇所(笑)もあるのに気づいた。だいたいこの曲、アタマのテーマを薄めてどんどん変奏させるだけのなんともぼんやりしたものなんだけど、それがやたらと魅力的だったりするから困るわけで。僕なんかは一時期この曲の中毒になりリピートで何度も聴きまくったことがある。音質がいいと言われていた24KゴールドCDなんかも買ってしまったことがあった(もうとっくに売ってしまったが)。そしてライブバージョンの原子心母なども持ってた(ブートレッグで)。このライブ版原子心母はブラスやコーラスも入っててなかなか豪華だった気がするんだけど、もう手元に無いので(売ってしまったので)詳細は分からない。

ところでこのレコード、僕は最初カセットで聴きこんだ。46分テープに入れるとA面の最後の部分がちょん切れてしまうのだ。だもんで随分長い間A面のエンディングを知らないままだった・・・。23分で終わってくれりゃいいものを、24分位の長さだったんじゃないかな。でも、だからといって60分テープに入れても曲が終わった後に早送りするのが面倒だし、まあ少しくらい切れてもいいかな、くらいに思ってたわけで。

そんなわけでこれ、たぶん10代の後半あたりに友&愛あたりでレンタルしたような気がするんだが(ひょっとしたら友達に借りてダビングしたのかな)。昔のレコードのレンタルっていうのは結構気を使うもので、盤面にひとつ傷を付けたら100円払わなくてはならない。だから傷の箇所を書き込んだシールが盤面に貼られていた。それでもLP1枚300円程度で聴けるんだからやっぱ借りるわけで、借りたものはもちろんカセットテープにダビング。パチパチという小さなスクラッチノイズが入るのも今となっては何やら味わい深い・・・。この手のカセットは今だに実家に沢山残っている。このレコード・レンタルっていうのは80年代だけのもので、90年代に入る頃にはもうCDレンタルに変わってたんじゃないかな。

ピンクフロイドってば、実は「シー・エミリー・プレイ」もずっとお気に入りだった。これはラジオからエアチェックしたテープで何度も聴いた(たぶんNHK-FMのロック特集みたいな番組で、中学3年くらいのとき)。のちに高校生のときデヴィッド・ボウイの「ピンナップス」にこれのカバーが入ってることを知って買ってみたものの、なんか期待してたのと違ったのでガッカリしたのを覚えてる(笑)。やはりこの曲はシド・バレットじゃなきゃ駄目だ。

そういえば90年代に入ってから、ピンクフロイド・幻燈のなんとか…とかいう不思議な本が出たことがあった。これが誇大妄想で出来上がってるようなトンデモ本・・いや、面白本だったのだが(これは当時図書館で借りただけなので持ってはいない)、原子心母やエコーズ(71年「おせっかい」収録)という曲などはたしかに目を瞑って聴いてると何やらトリップしそうになる音空間があって、妄想を掻き立てるようなところがある。僕は西新宿のビル街を散歩しながらウォークマンで原子心母を聴くのが結構好きだった。原子心母のブラスと高層ビル街はなんだかマッチしてた。


ADAM ANT / HITS (1986)

初期のアダム&ジ・アンツからソロ時代まで(86年まで)のベスト盤。これはよく聴いた。というか「グッディー・トゥ・シューズ」が大好きでこの曲ばかりリピートして聴いてた。

アダム&ジ・アンツを最初に知ったのは中1か中2の頃で、当時イギリス・チャートで「スタンド&デリバー」が何週間もずっとナンバーワンだというニュースを何かのラジオ番組(たぶんFM)でやってて、そのときに聴いたのが最初。あの頃は洋楽ヒットチャートといえばアメリカのものばかりだったので、イギリスはあまり話題になることもなかったのだ。なのでイギリスのチャートでずっと連続ナンバーワンっていう響きが何やら凄いものに聞こえたし、この「スタンド&デリバー」って曲もなんだか凄く聴こえたもんだ。というか実際凄くかっこよかった。この曲はその後アメリカのチャートでもヒットした気がするけど、気のせいかな。

で、エアチェックした「スタンド&デリバー」一曲だけをカセットで聴いたりしてたんだが結局アルバムは買うこともなく、他のシングル曲もエアチェックするのみだった。そしてアダム&ジ・アンツもフェイドアウト、と思ってたところへ、ソロになったアダム・アントの「グッディー・トゥ・シューズ」。これはちょっと凄かったなあ。この曲に関してはアダム&ジ・アンツ時代のどの曲よりもかっこいいと思った。今でもこの曲は好きだ。こういうシンプルなロックンロールというのは飽きないし、古くならないのが不思議。

今ならたぶんCDで違うベスト盤が出てると思うけど、「グッディー・トゥ・シューズ」と「スタンド&デリバー」が入ってれば他はどの曲が入ってても同じ、とか思ってしまう。それほどこの2曲はインパクトがあった。


Mike Oldfield / Ommadawn (1975)

高校のときはとにかくマイク・オールドフィールドが大好きだったわけなんだが、不思議と「チューブラーベルズ」はほとんど聴かなかった。マイク・オールドフィールドの代名詞のようにいわれる「チューブラーベルズ」だけど、どうもマイク・オールドフィールドっぽさを感じないというか(笑)、よそよそしい感じがしたもんだ。だいたい「エクソシスト」に使われていたってのもなんだかイメージ悪かった・・・。で、長時間インスト時代のマイク・オールドフィールドだったらこの「オマドーン」が圧倒的に好きだった。B面の最後に入るヴォーカル曲もなんだかいい感じだったし。当時サリアンジー(姉のサリー・オールドフィールドとマイクが作ってたグループ)はレア盤すぎて聴いたことなかったけどたぶんこんな感じなんだろうなと思ってた。

ギターを中心に牧歌的な風景がつぎつぎに現れるような展開で(とかいいながら「牧歌」というのが具体的になんなのかよく知らないんだが)、ラストにはまさに牧歌みたいなほのぼのとした歌が入る。見渡す限り芝生や森の緑に囲まれた丘に羊でもいるかのような、なんとも平和としかいいようのない世界。今だったらちょっと勘弁してほしいこんな世界も高校時代にはとてもいいものに見えたのであった。きっとまだ心が綺麗だったんだろう(願望)。

ちなみに「オマドーン」以外だと僕は80年代前半のマイク・オールドフィールドが好きで(「Five Miles Out」「Crises」「Discovery」)、特に「Discovery」でのマギー・ライリーやバリー・パーマーのボーカルは本当に最高だった。バリー・パーマーの歌う「ポイズン・アロウ」や「ディスカバリー」はユーライアヒープの最上のものに匹敵するかそれ以上だったと今でも思っている(笑)。


Talking Heads / Remain in Light (1980)

トーキングヘッズに関してはこの「リメイン・イン・ライト」の他に「サイコキラー'77」(1977年)と「ネイキッド」(1988年)をよく聴いた。トム・ヴァーラインのテレヴィジョンの脱力感にも通じるアルバム「サイコキラー'77」はなんといっても名曲「サイコキラー」が入ってるし、「ネイキッド」はパーカッションの嵐とホーンがヤケクソ気味で面白かった。あと、イーノ色の濃いサードアルバム「フィア・オブ・ミュージック」は1曲目の「I Zimbra」が「リメイン・イン・ライト」に直接繋がるような物凄い内容で、とにかくリズムが格好よくて最高すぎるほどに最高。トーキングヘッズの中でいちばん好きな曲はこれかもしれない。今思えば、中学生のときにヒットしてたトムトムクラブのレコードも買っておけばよかったな。

にしてもこのアルバム、ファンクやフェラ・クティのアフロビートやミニマルミュージックやマイルスのオンザ・コーナーなどが混ざり合ったような、なんとも言えないポリリズムの感触が凄い。パーカッションとベースとギターとキーボードが全部リズムを刻んでいるようなA面はとにかく最高。そしてこまかいパーカッションがポコポコ鳴ってるのがなんともよかった。これだけリズムを強調していながらどこにも重さが無いのはプロデュースしたイーノのセンスだろうか。

パーカッションといえば、どうも僕は子供の頃からパーカッションがポコポコ鳴ってる音が好きだったようだ。僕の行ってた小学校では給食の時間にいつも音楽が流れてたのだが、週に一度くらいリクエストコーナーというのがあった。学校のあちこちにリクエスト箱というのが設置されてて(主に階段の踊り場にあった)、そこに好きな曲を紙に書いて自由に投票するのだ。で、僕が小学3~4年生くらいのころ、よく「オリーブの首飾り」(ポール・モーリア)をリクエストしてた(笑)。今でこそ手品のBGMなわけだが当時はまだ新曲だったのだ。で、何故「オリーブの首飾り」だったのかってば、この曲のバックに薄く流れるパーカッションのポコポコする音が好きだったから。他にもなんかあるだろうって思われるかもしれないが、10歳かそこらの小学生の狭い世界ではあまり無かったのだ。ジャングル黒べえのエンディング・テーマ曲(「ウラウラ・タムタム・ベッカンコ」)とか、「南の島のハメハメハ大王」くらいだ。だもんで給食時の音楽の時間の「オリーブの首飾り」がいつも楽しみだった。ちなみにこの音楽放送、いつもベストテン形式で第5位あたりから順に発表される。「オリーブの首飾り」は結構人気があった。あとパーカッションで強烈に思い出すのは、小学6年生のときにラジオの音楽番組をエアチェックしてたときに偶然流れてきたエルヴィス・プレスリーの「ビバ・ラスベガス」、これまたパーカッションが凄くてなんだか好きで何度も聴いた。また、中学1年のときテレビでたまたま見たホセ・フェリシアーノのライブ(「ハートに火をつけて」をやった)も、バックに物凄いパーカッションがついててかなりビビったものだ。そんなこんなで、いちいちパーカッションがポコポコしてる音楽にはいつも反応してたわけで、のちに大学1年生の頃にハマりまくったファンカラティーナの音楽(特にブルーロンド・ア・ラ・タークが好きだった)なんぞはその頂点みたいなものだった。そのころには、パーカッション繋がりで、出たばかりのトーキングヘッズのアルバム「ネイキッド」(パーカッションが凄い)とともに、「リメイン・イン・ライト」も聴き直したりしてた。

さて、そんなことはどうでもいいのだが、この「リメイン・イン・ライト」、前年の「Fear Of Music」同様ブライアン・イーノが絡んでいるために全体的にイーノ色(音空間のどこかにうっすらと流れるドローン効果のような歪んだノイズ)が漂う。初期ロキシーミュージック、デヴィッド・ボウイの「ロウ」「ヒーローズ」「ロジャー」、ジェームス・チャンスやDNAらの「No New York」、といったラインの上にこのトーキングヘッズの「リメイン・イン・ライト」の音がある。ファーストの「サイコキラー'77」のスカスカな音に比べると随分音数が多くなったが、基本的な骨格は変わってない気もする。デヴィッド・バーンのアクの強さは音数が増えようが弾き語りだろうがびくともしないのだ。

ところでこれ買ったのはいつだったのか覚えてないんだけど、高校のときだったか。きっかけも覚えてないんだけど、たぶん何かの名盤紹介本か雑誌の名盤紹介でも読んで欲しくなったのかもしれない。ラジオでエアチェックしたような記憶もないし・・・。中学生のときに「ROCK & ROCK 歴史にみる名盤カタログ800」という本を買ってそれを参考にレコードを集めたりしてたのだが、それを見て気になって買ったのかもしれない。ちなみに僕はこの「ROCK & ROCK 歴史にみる名盤カタログ800」のせいなのかなんなのか、一時期は名盤紹介本が好きでそんなのばかり読んでたことがある。基本的にカタログ本が好きなのだ(小学校の低学年の頃の愛読書は切手カタログだった!切手集めてたし。笑)。今から考えれば名盤紹介本はどれもこれもテキトーなものだったような気もするけど、当時はどんな名盤紹介本や名盤紹介記事も全部信用してたし、信用してたからこそ面白かったんだと思う。今となっては自分のフィルターで濁ってしまってまともに読めないのが少し残念だが。


P.I.L. / Flowers Of Romance (1981)

セックスピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」を聴いても「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」を聴いても特に何も思わなかったのに、ラジオから流れてきたP.I.L.の「フラワーズ・オブ・ロマンス」(4曲目)を聴いたら何故かツボにハマったんだから不思議なもんだ。中学のときか高校のときか忘れたけど、この奇妙な曲をテープで繰り返し聴いてたことはよく覚えている。聴くたびに何だこりゃ?とか思いつつそれでもまた聴きたくなるなんてことの繰り返しだった。それで結局アルバムを買ってしまった。当時よく聴いてたハードロックとは全く違う方向からヤラレたというか、妙な感覚だったものだ。叙情性みたいなものが全く無くてスッキリしてるのもよかった。

がしかし、当時何度も聴いたはずなのにアルバムの内容をあまり覚えていない。何故か感触としてしか覚えていないのだ。4曲目の「フラワーズ・オブ・ロマンス」だけハッキリと覚えているだけで、他はあやふや。ドラムがどんどこ鳴ってて、ボーカルが適当にアアア~とかわめいてて、どこかアラブっぽい、という程度にしか記憶にない。なのでもう一度聴きなおしてみた。で、思ったんだが、ドラムがどんどこ鳴ってて、ボーカルが適当にアアア~とかわめいてて、どこかアラブっぽかった。昔はずいぶんアバンギャルドに聴こえてたのに、今聴くと意外にポップだ。しかも聴き易い。それまでのP.I.L.に比べるとベースもギターも随分控え目になってリズムが多彩になった感じだけど、このリズムもなんだか分かりやすい。結局、このリズムが心地良かったのかもしれない。

ちなみに、P.I.L. でいちばんよく聴いたアルバムはこの「フラワーズ・オブ・ロマンス」だったけど、いちばんよく聴いた曲となるとひょっとして1984年の「ディス・イズ・ノット・ア・ラブソング」になるかもしれない。これもまたえらく気に入ってたんだけど(エアチェックしたテープで聴いてた)、こちらはアルバム(「This Is What You Want」)を買うには至らなかった。なんでだかよく覚えてないんだけどポップすぎてすぐに飽きちゃったんじゃないかなあ。それほどよく聴いてたのだ。ホーン有りバージョンとホーン無しバージョンの2バージョンあったんだが、僕はホーン有りの方が気に入ってた。


UFO / Phenomenon(現象)(1974)

僕が中学生の頃はマイケル・シェンカーが物凄い人気で、雑誌「ミュージックライフ」や「プレイヤー」などではよくマイケル・シェンカーのグラビアなんかが載ってたもんだ。ちょうど1980年にマイケル・シェンカー・グループのファーストが出て、翌年の81年にはコージー・パウエルが加入してセカンドアルバム「神話」とライブ盤「飛翔伝説」が出たりした頃の話。当時NHK-FMの番組でマイケル・シェンカー・グループのライブが流れ(1時間)、僕はそれを120分テープのA面にダビングしたりなんかしてよく聴いてた。というか、僕にとってのマイケル・シェンカー・グループはこの1時間のライブがすべてみたいなものだった。スタジオアルバムに関してはなんだかいまいちぴんと来なかったというか、趣味に合わなかったとしか言いようが無い。そのライブ、1曲目の「アームド・アンド・レディ」からして物凄くて、僕が聴いたマイケル・シェンカー・グループの中で一番凄かったのがこの「アームド・アンド・レディ」だと断言できるほど(このイントロからボーカルが入るまでの盛り上がり感とかっこ良さは、ホワイトスネイクのライブの「スイート・トーカー」に匹敵する。笑)。他の曲も凄かったけど、曲目とかほとんど覚えてない。「クライ・フォー・ザ・ネイションズ」とか「イントゥー・ジ・アリーナ」とかは覚えてるなあ。

さて、前置きが長くなってしまったけど、マイケル・シェンカー・グループとかどうでもいいのだ(笑)。問題はマイケル・シェンカーのいたUFOの「現象」。このLPをいつどのタイミングで聴いたのかはまるで覚えていないんだけど、たしか友達にもらったのか借りたのか・・・。自分で買った記憶は無い。だいたい、当時は「ロック・ボトム」が神格化されてたので、それの入ってるアルバム「現象」はそれなりに有名だったと思う。「ロック・ボトム」でのマイケル・シェンカーってばギターの名演としてよく雑誌などに書かれていたのだが、僕にはこれがサッパリ分からなかった。「ロック・ボトム」の何が凄いのかどこが面白いのか、いまいち分からない。イントロも有名なギターソロもなんだかよくあるパターンじゃねえか、くらいにしか思ってなかった。それよりもむしろ「ドクター・ドクター」の方が凄いじゃないかとか思ってたのだ。

そんなわけでこのアルバムを聴くときにはいつも「ドクター・ドクター」が楽しみだったんだけど、B面の「リップスティック・トレーシス」も結構好きだった。これはボーカル無しのインスト。今聴くと何やらテレビドラマのBGMかあやしいムード音楽みたいな感じだが、何故かこれが耳に残るというか、今でも忘れずにいるわけで、忘れないどころかふとした拍子にこのメロディが頭をよぎることすらあるほど。

UFOのアルバムは「現象」のほかに「新たなる殺意」(1977年)をよく聴いた。「ライツ・アウト」は本当にかっこいい曲。ここでのフィル・モグのボーカルもすごくいい。UFOのアルバムは他にはライブ盤を知ってるくらいで、あとはほとんど知らないんじゃないかな。スコーピオンズは手当たり次第聴きまくったのにUFOはそうでもないってのもなんだか不自然な気もするけど、要はウルリッヒ・ロートとマイケル・シェンカーの違いってことなのかな。いや、単に偶然というか、縁が無かったというだけのことか。


Simon & Ggarfunkel / GOLD DISC

何年か前のあるとき突然ポール・サイモンの1973年の曲「Kodachrome(僕のコダクローム)」に滅茶苦茶ハマってしまって、そればかり聴いてたことがあった。不思議に何度聴いても飽きないどころかリピートで何度も何度も聴きまくり、それでも聴くたびに「すげー」とか思ってるんだからしょうがない。どうも僕は定期的にこういうことがあって、突然ある曲にハマって毎日何度もそればかりリピートして聴くってことがあるんだけど、ある種のビョーキではなかろうかと最近になって気付き始めた次第。で、ポール・サイモンってば、そもそも僕はサイモン&ガーファンクルが好きだったのだ。音楽にのめり込み始めた中学1年のころに聴きまくったので、結構自分の深いところで今に至るまで影響を及ぼしてるような気がしてならない。

というわけで、このベスト盤を聴くきっかけは、たまたま親が買ってきた「ミセス・ロビンソン」のシングルレコード。当時、パイオニアのプロジェクトというデカいステレオ・コンポを買ってもらい、そのときについでに親が「ミセス・ロビンソン」のシングルを買ってきて、それを聴いてるうちにすっかりこの曲が気に入ってしまい、ベスト盤LPを買ってみたらハマりまくった。がしかし、中学生の頃はどんどんハードな音楽を求めるようになっていったからか、サイモン&ガーファンクルのようなフォークギター弾いてるような長閑なものはあっという間に聴かなくなっていってしまった。それでも1年くらいはずっと聴いてたんじゃないかな。フォーク繋がりでCSN&Yとかそっち方向に行けばまた全く違った中学時代を過ごしてたかもしれないけど、結局僕の中学時代はハードロック系が中心だった(単に流行ってただけだったのかな)。

そういえば、このサイモン&ガーファンクルのベスト盤の前に僕はテレビかラジオかでポール・サイモンのソロ曲「Late in the Evening」を聴いている。これがなんだかとんでもなく凄かった印象があって、ずっと気になってたんだけど、結局この曲の入ってるアルバム「One Trick Pony」(1980年)は買うことが無かった。相当気に入ってた曲だったんだが。で、この曲の何に反応したかといえば、たぶんリズムだったんじゃないかと思う。中1の自分にとってはこのリズムが物珍しく、なにやら凄いものに聴こえたのだ。ちなみに当時同じようにリズムの面白さで好きだった曲にスティービー・ワンダーの「マスター・ブラスター(ジャミン)」とブロンディの「夢見るナンバーワン」があった(どちらも1980年当時ヒットしてた曲。今でもそれらを録音したカセットテープが残っている)。このふたつはレゲエのリズムだけど、これまた中1の自分には何だか物珍しくて面白かった。スティービー・ワンダーの方はLPを買ってしまった。ポール・サイモンの「Late in the Evening」のサンバ系のリズムは今聴いてもちょっと不思議な感じだし、今でも面白い。のちに小沢健二のアルバム「LIFE」で、この「Late in the Evening」の間奏部分がまるごと使われてる曲が出てきたときには滅茶苦茶テンション上がったもんだ(また、このオザケンの「LIFE」にはポール・サイモンの「You Can Call Me Al」のイントロをまるごと使った曲も入っている。日本のポップスの中ではダントツで好きなアルバムだ)。

で、このサイモン&ガーファンクルのレコードなんだけど、ベスト盤なので言うまでもなく全部名曲。ポール・サイモンのソロアルバムやアート・ガーファンクルのソロアルバムも名作揃いだけどサイモン&ガーファンクル時代のほうがさらに凄い。ベスト盤は数え切れないほどいろんな種類が出てるだろうけど、これは日本編集盤っぽい。違ったかな。ちなみに僕がこれを聴いてたのは1980年。この年にはジョン・レノンが暗殺され(このニュースは床屋のラジオで聞いた。番組「気ままなジャンボ」の途中にニュース速報で入ったのだ)、つぎの年の1981年にはサイモン&ガーファンクルの再結成ライブがNYのセントラルパークであった。このライブ、当時テレビでもやってて見たんだが、最初の「ミセス・ロビンソン」はなんだか客の盛り上がりが凄かった記憶がある。ライブの途中に不審者が乱入してポール・サイモンに殴りかかろうとして警備員に取り押さえられてたけど、これはちょうどジョン・レノンのことを歌ってる最中だったとか。この場面はニュースで何度も流れてた。


Cheap Trick / In Color (1977)

基本的にファーストと変わってないのにこちらのほうがポップに感じるのはプロデュースのせい。ファーストだって「オー・キャンディ」や「ホット・ラブ」といった必殺曲があるのに、ギターを強調する音作りのせいなのか全体的にはポップな印象はない。こちらのセカンド「In Color」はそれほどギターの音も大きくないのでハードロックっぽさが全くなく、普通のポップスのような音の印象だ。あとこの「In Color」は、なんといっても「甘い罠」がデカいかと。この曲の”カラー”でアルバム全体が塗られているような感じ。

たまに「甘い罠」のカバーなどがあったりするけど(CMで流れてきたときにはちょっと驚いた)、実は「甘い罠」と並んで「サレンダー」も結構カバーバージョンがあるようだ。ちなみに僕が最初に買ったチープトリックは中学生のときに買った「サレンダー」と「甘い罠」の2曲入りのシングルレコードだった。今思えばこれはチープトリックの2大名曲をカップリングしたなかなかセンスのいいレコードだったなあ。僕のチープトリック観はこのシングルレコードで決まったようなものだ。

ところで僕がチープトリックを一番熱心に聴いてたのは高校のとき。何故か急にチープトリック熱がこの時期に盛り上がり、とにかく本当によく聴いてた。当時は「チープ・トリックat武道館 」が何故か手に入らなくて(廃盤だった)、友達にカセットテープでもらってそれを聴いてたりした。渋谷陽一のラジオ番組にチープトリックの「ホット・ラブ」をリクエストしてハガキを読まれたのもその頃。当時はチープトリックを聴いてる人なんて少なかったからチープトリックのリクエストが珍しくて読まれたのかもしれない。1988年に「Lap Of Luxury」(永遠の愛の炎)が出るまで、いやその直前の「トップガン」のサントラからのシングル盤「マイティ・ウィングス」が出るまで、チープトリックはすっかり忘れ去られた存在だったのだ。ちなみに僕は「Lap Of Luxury」(永遠の愛の炎)からチープトリックを全く聴かなくなった。でも、最初に買った「サレンダー/甘い罠」のシングル盤で催眠にかかったままなので、どんなつまらないアルバムが出たってチープトリックのイメージは変わらないのだ。


King Crimson / Larks' Tongues in Aspic (1973)

これまたよく聴いた。特に1曲目の「太陽と戦慄パート1」。中学だったか高校だったか忘れたけど、この曲を最初聴いたとき、ラストの部分のベースがあまりにも強烈でビビったものだ。この「太陽と戦慄パート1」は音の塊が目に見えるような感覚があって、当時僕が持ってたロックのアルバムの中でも異彩を放っていたというか、なんとなく別ジャンルみたいな気がしてた。今聴くとロバート・フリップのギターが凄いことになってるけど、昔は何故かこのギターには何も思わなくて、そんなことよりも、このベースの妙な音は何なんだ、とか思ってた。

さて「太陽と戦慄」といえば、普通はジェイミー・ミューアってことになるんだろうけど、正直言ってジェイミー・ミューアのよさが当時はまるで分からなかったのだ。当時持ってたキース・ジャレット「生と死の幻想」の冒頭部分のパーカッションが僕には意味不明だったのと全く同じ意味で、「太陽と戦慄パート1」のパーカッションがなんだかよく分からなかった。ここでのジェイミー・ミューアの凄さが分かるようになったのはたいぶ経ってから。The Music Improvisation Companyや、デレク・ベイリーとのデュオのincus盤などを聴くようになってからだ。

僕が小6か中1の頃のラジオCM(ラジカセか何かのCMだった気が)でレッドの1曲目のイントロ部分が使われてて、なんか怖いイメージがあったんだけど(笑)、基本的にクリムゾンはずっとそのイメージのまま。この「太陽と戦慄パート1」の音の塊のようなベースだって、なんだか怖い。中学生のときに「ディシプリン」というアルバムが出て結構話題になったこともあったが、あのときだってギターのエイドリアン・ブリューがなんか気持ち悪かった。たしかエイドリアン・ブリューはテレビCMにも出てて(なんのCMだか忘れた)ギターで象の鳴き声とかやってた。あれもなんか不気味だったな(笑)。だいたい、ファーストの「クリムゾン・キングの宮殿」のジャケットのオッサンの顔からして怖いんだから、結構一貫してるんだなと気付いた。

そういえば高校に入ったばかりの頃、クラスメイトのひとりが「太陽と戦慄」のことを「たいようとせんぴょう」と読んでて、なんかそれがツボで(笑)、いまだによく覚えている。このアルバムを思い出すたびにそのクラスメイトを思い出す。

ところでロバート・フリップといえばデヴィッド・ボウイの77年の必殺アルバム「ヒーローズ」。ここでのリードギターがロバート・フリップなわけだけど、叙情性が全く無い乾ききった音で滅茶苦茶かっこいい。デヴィッド・ボウイの持つ湿気をロバート・フリップが一気に乾燥させてしまってるからこそ何度でも聴ける名盤なのではないか。なんてことを思ったりもする。この叙情性のかけらもないフリップのギターはロマンチシズムの対極。そういう意味では、まるでストラヴィンスキーのようだ(なわけないか)。だいたい「太陽と戦慄パート2」はそのまんま「春の祭典」だろう。あと、フリップ&イーノのアルバム「イブニング・スター」(これは以前ここで紹介してる)。これも何故かよく聴いた。こちらは何だかよく分かんないから何度も聴いてたわけなんだけど(笑)。


LED ZEPPELIN / Presence (1976)

ブルーザー・ブロディが入場のテーマ曲にしてたのがツェッペリンの「移民の歌」。この「移民の歌」のおかげでブロディのイメージは相当上がったのではないか。「移民の歌」が流れる中、吠えながらチェーンを振り回して登場する姿はやたらとかっこよかった。入場曲というのは大事なのだ。猪木も長州もハンセンもブッチャーも、入場曲は最高だった。中には間違った入場曲みたいなのもあって、ミルマスカラスなんて完全に間違ってるような気がするんだが。あと馬場。運動会じゃないんだから。いや、そんなことはどうでもいいんだが、とりあえずツェッペリンってばブロディに触れないわけにはいかないのだ個人的に。がしかし、「移民の歌」の入ってるアルバム「3」はほとんど聴いてない。特に理由は無いんだけど、縁がなかったとしか言い様が無い。

そんなわけで、ツェッペリンで一番よく聴いたのがこの「プレゼンス」。ツェッペリンのアルバムは、「プレゼンス」、「4」、「コーダ」、「ファースト」、の順でよく聴いたんじゃないかな。だいたい「プレゼンス」は1曲目のアキレスからしてただごとではない気配に満ちている。これは今聴いても結構凄いぞ。アキレスは何と言ってもリズムが凄い。パープルのような単純明快なリズムではなく、引っかかりながらもぐいぐいと切り込んでいくような感触。これが気持ち良い。他の曲もシンプルでとてもいい感じだ。アルバム「4」は正直ほとんど聴く気がしない。「コーダ」は今聴いても相当かっこいいアルバム。というか今聴いて一番カッコイイと思えるツェッペリンは「コーダ」かな。「コーダ」はたしかボツテイク集だった。

中学2年のとき、授業中に机の上に鉛筆でツェッペリンのトレードマーク(天使みたいなのが両手を上げて飛んでるやつ)を丁寧に落書きしていたことがあった。そしたら同じクラスの某君がそれをみつけ、「ツェッペリン知ってんの?」と声をかけてきた。某君はジミー・ペイジが好きで、当時出たばかりのジミー・ペイジのソロ「ロサンゼルス(Death Wish 2)」なども聴いてるという。どうやら兄貴の影響で聴くようになったということだそうだが、当時はクラスでツェッペリンの話題なんぞが出るのが珍しかったので、なんか今でも覚えているのだ。あのころはもうジミー・ペイジもロバート・プラントも相当過去の人達って感じで、新譜が出てもそれほど期待感も無かったし、昔の名前で出ています的な扱いだった。これは当時の音楽雑誌などの扱いから受けた印象。ツェッペリンという本番が終わって、あとは気ままな余生、みたいな感じか。リッチー・ブラックモアが現役感あったのとは対照的だったなあ。

ところで、僕は渋谷陽一のサウンドストリートを毎回聞いてたしロッキングオンを毎月買ってたのでツェッペリンは何故か別格扱いみたいな存在だった(のちにその洗脳は解かれることになるが)。渋谷陽一は何か事あるごとにツェッペリン!ツェッペリン!と騒いでたので、いたいけな中学生にしてみれば、なるほどそんなに凄いグループなのか!と思い込んでしまうわけだ。だいたい「コーダ」が出たときも大騒ぎだった。たしかあのときのサウンドストリートは、まるごと「コーダ」特集だったんじゃないかな。渋谷陽一の大げさなコメントだって今でもよく覚えているほど。当時はもうボンゾがいなくてツェッペリンも解散してたので、未発表音源の寄せ集めみたいな形で「コーダ」が出たんだが、これがまた凄い内容で、ついでにボンゾの凄いドラムソロなんかもあったりして、かなり盛り上がった。ウィアー・ゴナ・グルーヴとかオゾン・ベイビーとか本当に最高だった。あと、サウンドストリート最終回なんて、全部ツェッペリン特集だった。あのときのお通夜のようなサウンドストリートはかなりの爆笑ものだったが、深刻そうにツェッペリンについて語る渋谷陽一に、なんか違和感というか何というか、こちら側との温度差がすいぶんあったものだ。このときの反省からか、そのつぎの渋谷陽一のラジオ番組「日立ミュージック&ミュージック」(FM東京)の最終回はやけに明るく終わってた(笑)。


(文:信田照幸)


ロック(その1その2その3その4その5その6

HOME


inserted by FC2 system