Rockpart2)


IGGY POP / Lust For Life (1977)


イギーの名盤「欲情」。前作同様デヴィッド・ボウイとの共作なわけだが、どっから聴いてもボウイ色が強い。前作「The Idiot(愚者)」のようなアヤシイ雰囲気は消え、なにやら少し健康的な感じもする。

昔はこのアルバムはかなりレアで、どこにも売ってなかったもんだ。新宿レコードの壁に飾ってあったくらい。で、なかなか手に入らない中、僕は最初「Choice Cuts」というアルバムで「Lust For Life」を聴いた。これ、A面が「Lust For Life」からのチョイスでB面が「The Idiot」からのチョイスというベスト盤だった。たしか友人がどこかで見つけて買ってきてくれたように記憶している。その後この「Lust For Life」のLPも手に入れたんだけど、どこで買ったのか全く覚えてない。これももらったのかな。

僕がイギー・ポップが大好きだった頃、イギー・ポップは完全に忘れ去られた存在で、僕なんぞは石丸電気だのタワーレコードだのディスクユニオンだのマスヤだの、あちこち駆けずり回ってアルバムをそろえてたのだ。で、そうこうしてるうちに突然ニューアルバム「Blah Blah Blah」が出たときには本当にうれしかった。でも当時迷走中だったらしく、つぎのアルバム「Instinct」が何故かメタルみたいになってたのにはちょっとがっかりだったけど(笑)。1曲目のタイトルが"Cold Metal"だったしなあ・・・。で、たしかその頃にイギーが来日して、それを見に行った。88年頃だったろうか。内容はストゥージズ系の「I Feel Allright !」と叫びまくりの曲しかやらなかったんだけど、1時間ずっと暴れっぱなし叫びっぱなしのステージは相当凄かった(1時間くらいしかやらなかったのだ。笑)。それはそうと、その後ずいぶん経ってから何故かイギーの再評価とちょっとしたブームが来ることになるんだけど、96年の映画「トレイン・スポッティング」でこの「Lust For Life」の1曲目「Lust For Life」が使われたことが原因だったそうな。ちなみにこの映画は僕も見た。いきなり「Lust For Life」が流れてきてテンション上がったのをおぼえてる。

イギーのソロは、The Idiot(1977年)、Lust For Life(1977年)、New Values (1979年)、Soldier(1980年)、Party(1981年)、と、ここまでが好きだ。PartyのつぎのZombie Birdhouse(1982年)はニューウェイブをやってみて失敗、みたいな感じで、コアなイギー・ファンでもキツイのではないか。ちなみにそのつぎのBlah Blah Blah(1986年)は1曲目だけ結構好きかも。あ、そういえば数年前に出たイギーの新作、何故かフランス語で「枯葉」とか歌ってた(笑)。買ってないけどYoutubeで聴いて笑った。イギーは何やっても最高すぎる。


Bernie Marsden / And About Time Too (1979)


ロックを現役で聴いてた時期に聴き逃したアルバムなどをたまに拾って聴いたりするのだが、3回以上つづけて聴きたくなるようなものに当たることは滅多に無い。でもたまーに大当たりがあったりする。で、このアルバム。バーニー・マースデン(笑)。これはイイ。このほとんどピーター・フランプトン的にアメリカン・ナイズされたポップさが凄くいい。ハードロックを期待する人にはかなり期待はずれだと思うけど。

ところで何故突然バーニー・マースデンなんか掘りおこしたくなったのかといえば、もうほとんど直観。特に意味は無かったんだが、なんかバーニー・マースデンっていう変な名前が突然気になっただけ。ちなみにミッキー・ムーディーは気にならない。

このアルバム、なんでよく感じるのかってば、単にいかにも70年代後半的ポップスだからなのだ。要するに僕はこのいかにも70年代後半的ってのに弱い。というか1980年前後がツボなのだ。このへんの洋楽ポップスはどんなもんでも好きかもしれない。

そんなわけでこの3曲目「Love Made A Fool Of Me」。もういかにもこの時代のポップスで、ラジオの電リク(もはや死語か)なんかでそのまま流れてもいいような曲。最高すぎる。そして2曲目。インストなんだけど、まるで「ゆうひが丘の総理大臣」のBGMのような程よい感じのダサさ加減というか、この時代の安っぽいインストというか(僕はこういうの大好きなのだ)、これまた素晴らしすぎ。6曲目のイントロがビューティフル・サンデーっぽいのもなんかうける。ここのギターソロなんかちょっとピーター・フランプトンっぽいような。ホワイトスネイクの面々やコージー・パウエルらが参加してるとはとても思えないくらいの軽やかさ。ちなみに8曲目だけは典型的なホワイトスネイク(笑)。これもまた良し。

で、ふと気付いたんだけど、バーニー・マースデンのボーカルはちょっとトミー・ボーリンに似ている。


Rockpile / Seconds of Pleasure (1980)

正直言うとニック・ロウ周辺を好んで聴いてたのはかなり短い期間で、しかも当時の感覚はチープトリックがイギリスのバンドだったらこんな感じになるんじゃないか位なもんだった。ニック・ロウのソロアルバム「Labour of Lust」(1979年)なんかは今でも好きだが、ボーカルがロビン・ザンダーだったらなあ、なんてことを思ったりもする(笑)。結局、ニック・ロウの音楽はどこか音空間が堅苦しいところが性に合わないみたいで、アメリカ的な開放感(いいかげんさ)がどこかに無いと自分には結構キツイ。で、このzRockpileも基本的には同じなんだけど、所々妙な開放感があるのがイイ。適度なアメリカン・オールディーズ風味が、ニック・ロウの作る音の持つ独特の堅苦しさに風穴を開けてくれて、風通しがよくなってるような感じ。モータウンそのままの「Heart」とかオールディーズ風味の「Now and Always」とかかなり最高。CDにボーナストラックとしてついてる「When Will I Be Loved」(エヴァリーブラザーズの曲)は、リンダ・ロンシュタットが名盤「HEART LIKE A WHEEL」(1974年)でもカバーしてる曲で、もうこんなのがあるだけでRockpile最高ではないか、なんて思ってしまったりもする。


CHEAP TRICK /One On One (1982)

ベースにジョン・ブラントが入ってた時代、つまりこのOne On One (1982)から、Next Position Please (1983)、Standing On The Edge (1985)、The Doctor (1986)までのチープトリックはとにかく最高なんだけど、この時期だけ昔からいまいち地味な印象がある。トム・ピーターソンだろうがジョン・ブラントだろうがたいして変わらんと思うのだが、やはりトム・ピーターソンのイメージってのは大きかったのかな。ジョン・ブラントの棒立ちでリズムを刻むようなベースだってかっこいいではないか。

というわけで新生チープトリックの第一弾ともいえるこのアルバム。テンションの上がり具合がとにかく凄い。曲と曲の合間も短く、つぎつぎと曲がつづいていく。中でも9曲目の「Love's Got A Hold On Me」がとにかく最高。チープトリックの曲の中でも好きな曲ベスト5には入る。昔、自分でチープトリックのベストを自分まとめたカセットテープをよく聴いてたんだけど、そこにもこれは入れてた。これは今聴いても最高だ。

ところで、ロック系のボーカリストの中で僕が特に好きなのがロビン・ザンダー(他にイギー・ポップとかアリス・クーパーとか)。声の質が肌に合うのかなんなのか、とにかくこの声が好きなのだ。だから1987年の「永遠の愛の炎」だってギリ許せるし、1986年のトップガン挿入歌「マイティー・ウィングス」だってぜんぜんアリだ(これはシングル盤も買ったぞ!)。ロビン・ザンダーが歌ってりゃなんだってアリになるのかもしれない・・・と思ってたのだ。が、ロビン・ザンダーのソロアルバムってのがあって(最近知ったんだが)、聴いてみたらこれがぜんぜんあれで・・・。やっぱりリック・ニールセンがいてはじめて成り立つものだったんだなあと確認した次第。


Tommy Bolin / Private Eyes (1976)

有名な富墓林。トミー・ボーリンが生きてたらこれは過渡期の作品として位置づけられたんじゃないだろうか。これだけいろんな方向への可能性を秘めた曲があったんだから、生きてたらどんな方向に行ってたのか見当つかない。意外にAOR方面へと行ってた気もするが。

僕が最初に聴いたトミー・ボーリンの曲はこの1曲目の「Bustin' Out for Rosey」だった。ラジオからのエアチェック(何の番組だったか忘れてしまった。サウンドストリートかな)。なんとも不思議な曲で、この独特なリズム感がクセになる。リトル・フィートの「Dixie Chicken」のつっかかるようなリズムなどのように、中毒性のあるリズム。トミー・ボーリンは基本的に黒っぽい。

ところでこのアルバム、トミー・ボーリンのギターよりもむしろヴォーカルの方に魅力を感じる。このなんとも言えない気だるい感じのヴォーカルは味があってすごくいい。だれかに似てる気がするんだけど、それが誰なのか思い出せない。


Montrose / Montrose (1973)

ハードロックを熱心に聴いてた頃に、最初に聴いたときのインパクトが最も大きかった曲はなんだろうかと思い出してみる。まず最初にフリーのアルバム『ハートブレイカー』の1曲目「ウィッシング・ウェル」が浮かんでくるのだ。これを最初に聴いたときの「うぉぉぉ~」という盛り上がり感は今でも覚えているほど(笑)。渋谷ディスクユニオン(公園通りにあった頃)でフリーの『ハートブレイカー』を見つけたときもひとりで「うぉぉぉ~!あった!」とか言ってた(当時はレア盤だったのだ)。あとは、ブラックサバスの「ターン・アップ・ザ・ナイト」とか、レインボーの「スポットライト・キッド」とか、エアロスミスの「バック・イン・ザ・サドル」とか、スコーピオンズの「ブラックアウト」とか、ホワイトスネイクの「ホット・スタッフ」とか、最初に聴いたときのインパクトの大きかった曲はいろいろあったけど、中でもやっぱモントローズのこのアルバムの1曲目「ロック・ザ・ネイション」の最初のインパクトはなんだか凄かった。実は最初友人に電話越しで聴かせてもらったのだが、電話越しでもそのイントロの凄さが伝わってきてビビった。僕の聴いてた頃にはもうモントローズなんか居なかったし全く話題にもならなかったのでちょっとしたレア感もあり、そのレア感がまたさらに凄みを増してたというか(笑)。


ALICE COOPER / Billion Dollar Babies (1973)

このあたりまでがアリス・クーパーの頂点だったのではないかな。25年ぶりくらいにこれ聴いたんだけど(笑)やっぱ凄いですねこれは。僕の場合なつかしさが先に立ってしまって冷静に聴けないんだけど、これ以前の「Love It To Death」「Killer」「Schools Out」のすべての要素が入ってるような、ある意味総括的な内容。レコードの変形ジャケットも凝りまくってて相当力入ってる。なんかCDの方では2枚組になってて未発表ライブとかも入ってる様だけどそちらは聴いてない。

80年代後半にアリス・クーパーが来日したときに見に行ったことがある。場内が暗くなり、このアルバムの「HELLO HOORAY」が流れると同時に幕が上がって、客が「うぉぉぉ~」と皆立ち上がると、音が「TRUSH」のイントロへと変わる。そしてステージ上にあるゴミ箱の中からアリス・クーパーが飛び出してきた(笑)。あれがあのまま「HELLO HOORAY」だったらどんなに盛り上がったかなあ・・・、なんてことを今でも思う。でもあのライブは結構面白かったけど。80年代半ばに復活してからのアリス・クーパーは何故かメタルになってしまい、僕の中では全く別物。でも復活のきっかけとなったシングル「He's Back」だけは別。これはかなりいいな。というか『CONSTRICTOR』とか25年くらい聴いてないな、そういえば・・・。


DEEP PURPLE / Come Taste The Band (1975)

パープルの中ではこれが一番好き。内容的にはほぼトミー・ボーリンのアルバムみたいな雰囲気。いっそのことボーカルも全部トミー・ボーリンにしてほしかったくらいだ(デビカバはタンバリンとかでいいじゃないか)。トミー・ボーリンの奔放さはかつてのリッチー&ジョン・ロードのクラシック・ベースの音作りを根本的に粉砕してしまったわけで、このアルバムがパープル史上最も異質なのも当然だし、ジョン・ロードが「このアルバムはディープ・パープル名義で発表すべきではなかった」と言うのもよく分かる。自由すぎるトミー・ボーリンにデビカバ、ジョン・ロード、イアン・ペイスらが合わせたように聞こえるんだけど実際のところどうだったんだろう。

にしても1曲目「Comin' Home」。これは今聴いても凄いな(笑)。最初に聴いたのは中学くらいのときで、ラジオからエアチェックしたカセットテープを何度も聴いてた(この曲だけ)。結局当時はアルバムは買わなかった。よく覚えてないけどアルバム全部聴いたのは二十歳くらいの頃じゃなかったかな。ハードロックに興味無くなった後でもこの「Comin' Home」だけは好きだった。トミー・ボーリンらしい曲。


STRAY CATS / STRAY CATS (1981)

ストレイキャッツのファースト。「Rock This Town」かっこよすぎ。これほどカッコイイ曲もそうあるもんではない。リアルタイムでこの曲を聴いてた頃よりも(TDKのカセットテープにこの曲をエアチェックしたのが残ってる)、今の方がかっこよく聴こえる。グレッチのギターの音なんかもシブすぎ。ドラムなんてスネアとシンバルとバスドラしか無いのではないか。

で、改めてアルバム全部をちゃんと聴いてみて驚いた。なんか、ずいぶんパブロックではないか(笑)。実際、NYでグループ結成したあとロンドンに渡りロンドンのパブで演奏してるうちに人気が出たとかいう話もある。おまけにこれ、プロデューサーがデイブ・エドモンズ。なのでパブロックといえばパブロックなんじゃないの。ロカビリー風味だけど。

ところで、これ聴いてて頭に浮かんだのがハンク・ウィリアムス。僕はハンク・ウィリアムスとチャーリー・パーカーさえあれば無人島でも生きていけると自負してるのだが、ハンク・ウィリアムスに通じるものならだいたいOKなのだ。で、ハンク・ウィリアムスといえばロカビリーの源流のうちのひとり。そのハンクが頭に浮かぶんだからストレイキャッツは本物だった。やっぱロカビリーだ。

ちなみに、僕がストレイキャッツに再注目するようになったのは、ブライアン・セッツァー・オーケストラの「イン・ザ・ムード」(グレン・ミラーのカバー)を聴いてから。この「イン・ザ・ムード」があまりカッコイイので他のも聴いてみたら他のも凄かったというわけで。中学生のときにカセットテープで「Rock This Town(ロックタウンは恋の街)」を聴いていた頃は詳しいこともなんだかよく分かんなかったのでそのファッションからキワモノ的印象もあったけど、今聴くとかなりしっかりとした音楽性に裏づけされてたんだなあと分かる。このファーストとセカンド(同じく81年発表)だけでもロカビリー、スカ、スウィング、ホットロッド、カントリー(ヒルビリー)、シカゴブルース、ジャイブ、などなどいろんな要素が見え隠れする。3枚目や4枚目もそれなりにいいけど、やっぱりこのファーストが圧倒的に凄すぎ。デイブ・エドモンズの音作りも凄いな。


DAVID BOWIE / Diamond Dogs (1974)

音が古くなってないってのがまず凄い。不思議だなこれは。「1984」の音のバランスとかストリングス処理とか、パーフェクトすぎる。ボウイ自身が吹くサックスの音のヘナチョコさ加減もなんだかキース・ジャレットの吹くサックスみたいで、かなり最高。

「1984」を最初に聴いたのはアルバム「CHANGES ONE BOWIE」だったか「CHANGES TWO BOWIE」の方だったか。とにかくこの2枚のベスト盤レコードは中学生のころ死ぬ程よく聴いた。この2枚の中で特に好きだった曲が「1984」と「Ashes To Ashes」だった。

デヴィッド・ボウイのアルバムは「スケアリー・モンスターズ」までは全部好きだったんだけど、一番よく聴いたのはたぶんこの「ダイアモンドの犬」じゃないかな。有名作「ジギー・スターダスト」や裏名作「世界を売った男」よりよく聴いたし、最高傑作の呼び名の高い「ロウ」や「ヒーローズ」よりもよく聴いた。だけどこれが一番好きなのかといえば、別にそんなこともなくて、全部同じように好きだったわけで。でもたぶんこれを一番よく聴いた。

「スケアリー・モンスターズ」のあとの4枚(「レッツ・ダンス」「トゥナイト」「ネバー・レット・ミー・ダウン」「ティン・マシーン」)も買ったけどあまり聴かなかったし、かなりイマイチな印象しか無かった。


AC/DC / For Those About To Rock We Salute You (1981)

中学生のときミュージックライフを毎月買っていて、その新譜紹介コーナーではすべてのアルバムに点数がつけられてたのだ(5点満点)。で、レコードを買うときにはそれを結構参考にしてたりした(笑)。中学2年のときだと思うんだが、このアルバム(邦題は「悪魔の招待状」)はミュージックライフのレビューで5つ星を獲得。当時発売前から結構話題になってたこのアルバム、ラジオでも紹介されてて(サウンドストリートだった気が)それ聴いてすっかり気に入り、発売日に買ったんじゃないかと思う。これ、今聴いてもそれなりにいい感じではないか。シンプルだからなのかな。シンプルなロックというのは何故だか普遍性がある。いや、単に懐かしいからかもしれない。でもアンガス・ヤングのギターはサクサクしてて気持ちいいです。1曲目はかなりかっこいい。とはいえ、このアルバム以外のAC/DCにはそれほど興味無いんだけど。


ROXY MUSIC / ROXY MUSIC (1972)

ロキシーのファースト。1曲目のRe-Make/Re-Modelは今聴いても超かっこいい。ロキシーは最初の5枚(Roxy Music, For Your Pleasure, Stranded, Country Life, Siren)は全部好きだったんだが、それ以降のアルバム(Manifesto以降)はほとんど全く関心が無かった。今聴けばまた違うのかな。にしてもRe-Make/Re-Modelは凄いな。ロキシーの最高傑作なんじゃないか。例の叙情性のかけらも無いのがイイ。その後のロキシーでこれほど勢いのある曲は無い。アンディ・マッケイのサックスもブライアン・イーノのシンセも全方向に音が飛び散るような感じで物凄い。2曲目のLadytronや4曲目の2H.B.は典型的なロキシーのパターンだけど、このアルバムではどこかプログレ臭があるのが面白い。ピート・シンフィールド(プロデュース)のせいだろうか。


Hair / Original Broadway Cast (1968)

これは大学生のときによく聴いた。いや、よく聴いたとかいうレベルじゃなく、ほとんど全部の曲の歌詞まで暗記しちゃうくらいによく聴いた。60年代後半のブロードウェイ・ミュージカル「ヘアー」のサントラ。「ヘアー」は映画にもなったし(70年代)、そちらのサントラもかなり聴いたが、やっぱこのオリジナルのインパクトがデカすぎ。冒頭の「アクエリアス」からラストの名曲「レット・ザ・サンシャイン・イン」まで、捨て曲ナシ。全部凄い。最強。

僕はこの「ヘアー」が好きすぎて、いろんな国のバージョンの「ヘアー」を集めてたりしたんだけど、結局何種類集めたのかすっかり忘れてしまった。かなり集めてから全部一気にディスクユニオンに売ってしまった。あまりにハマりすぎて、なんか取り憑かれたような気がして、急に売ってしまう気になったのだ。それほどまでにというか恐くなるくらいにヘアーに(厳密にいうと「レット・ザ・サンシャイン・イン」という曲に)のめり込んでしまった。いろんな国でこのミュージカルをやってたので(しかもキャストはその国によって違う)たくさんのバージョンがあった。日本語バージョンなんてのもあった。

冒頭の曲とラストの曲を合体させて、フィフス・ディメンションが「輝く星座・アクエリアス~レット・ザ・サンシャイン・イン」としてカバーして大ヒットしたけど、このフィフス・ディメンションのバージョンはたぶん最もよく知られたバージョンだろう。昔このフィフス・ディメンションの曲をずーっとリピートして聴いてトリップしてたこともある。

このオリジナルのサントラ、やっぱラストの「レット・ザ・サンシャイン・イン」が圧倒的に凄まじいが、「ビー・イン(ハレ・クリシュナ)」も凄い。「ビー・イン(ハレ・クリシュナ)」って曲は例外的にどの国のバージョンも凄いんだが(特にドイツ版は凄かった)、このオリジナルの異様な空気感はちょっと凄すぎる。昔流行ったビデオドラッグなんかよりよっぽどトリップできる。

「ヘアー」はミューカルなので、時代背景とか内容とか意味とか、結構いろいろあるんだが、あえて省略(笑)。知りすぎたものは何故だか説明したくなくなるのだ。ただ、僕はこれの思想的・政治的な部分には全く興味が無い。政治色も強いんだけど、僕は政治的なことには一切興味が無い。純粋に音楽だけに反応したのだ。でも、映画版はかなり面白い。

今でもたまにYoutubeで「Let the sunshine in」で検索して、どこかでやってるミュージカル版ヘアーの「Let the sunshine in」を見たりする。少し前には1970年頃のオリジナルキャストと思われるメンバーのが見れたんだが、さっき見たら無くなってた。でも3年位前のNYブロードウェイのがいくつか上がってて、全部凄かった。「レット・ザ・サンシャイン・イン」という曲はほんとにいろんなバージョンが存在するけど、僕はどれも皆好きだ。

僕はこのアルバムに極度にハマったのを最後に、ロックにあまりハマらなくなった。


BLACK SABBATH / The Mob Rules (1981)

トニー・アイオミ凄かったなあ。というわけで、邦題は「悪魔の掟」・・・。中学生の頃、この1曲目「ターン・アップ・ザ・ナイト」にハマった。これは当時唯一音楽の情報交換をしてた友達に教えてもらったのだ(この友達とは「たけしのオールナイトニッッポン」のダビング・カセットも交換していた)。ちなみにこれはロニーがサバスに入ってからの2枚目。たしかこの後、2枚組のライブアルバムを出した(これも買った)。そこでのロニーの「パラノイド」がなんだか全然パっとしなかったのも覚えてる。そしてたしかロニーはその後ソロ・アルバムを出した(これも買った)。Dioってグループ名だったけど、アルバムのタイトル名は覚えてない(ホーリーダイバーだったかな?)。で、僕のロニー体験はそこまで。その後は全く知らない。で、すっかり忘れた頃に、ロニー死去のニュースが。2年くらい前だったかな。そのニュースを見て、「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」(レインボー)をひさびさに聴いた。やっぱロニーはかっこよかったな。 




Eagles / Eagles (1972)

イーグルスは最初の4枚(Eagles、Desperado、On The Border、One Of These Nights)が断然好きだ。カントリーロック時代。僕の「カリフォルニア幻想」はここにある。バーズでもCCRでもなく、初期イーグルス。あ。あとリンダ・ロンシュタット。

そもそもなんでイーグルスなんか好きになったのかといえば、きっかけはリンダ・ロンシュタットの「Heart Like A Wheel」(1974年)だったわけなんだが、このアルバムが好きすぎてリンダ・ロンシュタットのアルバムを過去まで辿っていくうちに、イーグルスが元々はリンダ・ロンシュタットのバックバンドだったことを知る。で、イーグルスにもハマった、ってわけなのだ。

このアルバム、誰もが知ってる名曲TAKE IT EASYから始まる。この曲はジャクソン・ブラウンのバージョンもあるけど(ジャクソン・ブラウンとグレン・フライの共作)、イーグルスのバージョンの方が好き。というか、そんなことよりも、このアルバムにはPEACEFUL EASY FEELINGが入ってる。こういう曲は本当に大好きで、セカンド(Desperado)に入ってるTEQUILA SUNRISE、4枚目(One Of These Nights)のLYIN' EYES、などとともに、イーグルスの最もいい部分だ(ちなみにこれらすべてグレン・フライのボーカル)。

4枚目の後、「Their Greatest Hits 1971-1975」(1975年)というベスト盤が出る。これ、全米歴代1位の売上げだそうな。僕にとっても好きな曲ばかり入ってる最高の内容。というかイーグルス史上最高のアルバムがこのベスト盤なのではないか。がしかし、その翌年、例のHotel California(1976年)で大コケし(New Kid In Townは良かったけど)、The Long Run(1979年)で自滅。ウェストコースト・サウンドからAORへの移行がうまくいかなかったとしか思えない(その点ドゥービーは完璧とも言える程うまく行った)。それでも2007年の復活作「Long Road Out Of Eden」がそこそこ良かったのが救いか。

1987年あたりだったか、開局したばかりのJ-WAVEで「AJI Magic City - SUPER Q STATION」というラジオ番組があって、いかにもカリフォルニアな雰囲気と内容で大好きだったんだが、このイーグルスのファーストはその番組の感触そのまま。僕にとってはムードミュージックみたいなもんなのかもしれない(笑)。


CHEAP TRICK / Heaven Tonight (1978)

やはりサレンダーは別格だなあ。サレンダー聴けばどんなときでも気分がよくなる。特別な名曲だとも思えないんだけど、何故だかこれは性に合うのだ。自分にとっての名曲中の名曲。

中学生のとき(80年代の頭)にまずシングルレコードでサレンダーを聴いた。なんでシングル盤なんか買ったのかといえば、中学生にはLPなんて高くて何枚も買えないので、気になるものはまずシングルを買ってみるってことをやってたわけなのだ。で、このサレンダーのシングル、B面は甘い罠のライブバージョンだった(もちろん「Cheap Trick at Budokan」のやつ)。

チープトリックの曲ってのはだいたい性急にたたみかけてくるようなものが多いんだけど、サレンダーは曲調もアレンジも珍しくゆったりとしててアメリカ的。このアルバム自体も他のアルバムに比べるとゆったりしている曲が多いかもしれないが気のせいかな。この余裕もなんだか凄くいい。

このアルバムは「Cheap Trick at Budokan」とともにチープトリックの代表作と昔から言われてるけど、セールス的には他のアルバムの方が上だったりする。ヒットチャート(アメリカ)の順位を上から順に見ていくと(Wikiより)、

Cheap Trick at Budokan(1978) 4位
Dream Police (1979) 6位
Lap Of Luxury (1988) 16位
All Shook Up (1980) 24位
Standing On The Edge (1985) 35位
One On One (1982) 39位
Busted (1990) 48位
Heaven Tonight (1978) 48位

って感じになっている。ちなみに名盤のセカンド「In Color」なんて73位だ・・・。なんでこんなに順位が悪いのかってば要するにそれまで無名だったからということに他ならないわけで、内容の良し悪しとは関係が無い。

ついでにチープトリックのディスコグラフィーを見てみるとこんな感じに。

Cheap Trick (1977)
In Color (1977)
Heaven Tonight (1978)
Cheap Trick at Budokan (1978)
Dream Police (1979)
All Shook Up (1980)
One On One (1982)
Next Position Please (1983)
Standing On The Edge (1985)
The Doctor (1986)
Lap Of Luxury (1988)
Busted (1990)
Budokan II(1993)
Woke Up With A Monster (1994)
Cheap Trick (1997)
Music for Hangovers (1999)
Silver (2001)
Special One (2003)
Rockford (2006)
Sgt. Peppers Live (2009)
The latest (2009)

僕の好きなチープトリックは1986年の「The Doctor 」までで、それ以降は持ってはいてもほとんど聴き込んでいない。で、この「Heaven Tonight」は3枚目のアルバム。チープトリックの基本カラーはセカンドの「In Color」と本作でほぼ決まった感じ。

チープトリックとなると書きたいことが山ほどあって、逆に何も書けなくなってしまうのだ(とかいいながら随分書いてるが)。本当はもっと書きたいことあるし、リック・ニールセンについてとかロビン・ザンダーの声の質についてだとかバン・E・カルロスの安定したドラムのことだとかトム・ピーターソンとジョン・ブラントの違いだとか、いろいろネタはあるんだけど、いつか時間があったら特別にコーナーでも作ってみようかな。読む人なんか居ないだろうけど。


Paris / Big Towne 2061 (1976)

ボブ・ウェルチのレコードをまとめて聴き返してみた。Paris/Paris (1976)、Paris/Big Towne 2061 (1976)、French Kiss (1977)、 Three Hearts(1979)、The Other One (1979)、Bob Welch (1981)、以上6枚。どれもよかったが、特にパリスのBig Towne 2061は本当に凄いと思った。

このアルバムはパリスのセカンドアルバム。ファーストのように有名な曲が入ってるわけでもないので地味だとは思うが、センスは抜群にイイ。ジャケのセンスも素晴らしい。音空間の異様さはジャケ(&裏ジャケ)のまんまだ。

パリスってグループは音の感触が本当に独特で、特にギターの音のこだわりが半端では無い。ファーストアルバムの1曲目のブラックブックなんかは典型だが、この音のゆらぎの感触はかなり独特。非マッチョとでもいえばいいんだろうか。力が抜けてるのに攻撃力があるというか。また、リズムの洗練され具合はもっと凄い。特に2曲目のBig Towne 2061とか。このソウルやファンクのリズムを白人的にたどたどしく展開するってのはこの70年代には他にもいろいろあるけど、パリスもまたそれら同様独創的だ。

ところで僕がパリスを知ったのはやっぱり渋谷陽一のラジオで、最初聴いた曲はやっぱりブラックブックだった。その後FM雑誌などで調べて他の曲などもいろいろとエアチェックしたりしてたんだけど、なんといっても名盤 French Kiss の存在のせいで印象が薄くならざるを得ず、それほどパリスを熱心に聴いてたわけでもない。しかしながら今、この Big Towne 2061 がやたらとシックリくる。なつかしの音楽と思って聴き始めたら、ぜんぜん今の音楽だったという感じか。

先日ボブ・ウェルチがピストル自殺をした。好きだったアーチストが自殺というのはちょっとショックだ。ボブ・ウェルチはそれなりにアルバムを残してくれたが、その数は意外に少ない。僕がいままで一番熱心に聴いたボブ・ウェルチはといえば、天下の名盤 French Kiss ということになる。でもあまりに繰り返し聴きすぎたせいか、僕には French Kiss は賞味期限が切れてしまったようだ。で、ここにきて突然 Big Towne 2061 に覚醒(笑)。ここんとこずっと Big Towne 2061 ばかり繰り返し聴いている。なんだか分からないけど、やたらとかっこよく聴こえる。裏ジャケに写る奇妙な風体のボブ・ウェルチが現代によみがえって来た感じ。これは70年代の音楽ではなくて21世紀の音楽なのではないか。2061年まで僕は生きていないだろうが、2061年の大都市(ビッグタウン)ではさらにもっとシックリくるのかもしれない。奇妙な風体のボブ・ウェルチはその時代にもやっぱり奇妙に映るんだろうか。


PETER FRAMPTON / Frampton Comes Alive ! (1976)

これ、僕が中学生のときにはすでに伝説のアルバムとして君臨してて、当時愛読してた「ROCK & ROCK 歴史にみる名盤カタログ800 」という本にもたしかスゴイこと書かれてたし、雑誌の名盤特集なんかでも必ずといっていいほどライブ盤の名作として紹介されてたわけで。でも何故か僕は当時「ショウ・ミー・ザ・ウェイ」しか聴いたことが無く(もちろんカセットテープで何度も聴いた)、そのままアルバム単位では聴く機会が無くて(だいたい2枚組LPってのは買うのに勇気がいるのだ)ずーっときてしまったんだが、数年前にようやくこれを入手。というわけで数年前に初めて全部通して聴いてみた。

なんといっても出だしの3曲は格好良すぎ。ウェストコースト・ロックのいいところばかり詰め込んである。2曲目が終わった後の大歓声の中から「ショウ・ミー・ザ・ウェイ」のイントロが流れてくるくだりなんかは何度聴いても気持ちいい。中学・高校の頃に聴いておけばよかったなあこれは。きっと今とは全然違った入り込み方をしてただろうな。

ちなみに最近ではピーター・フランプトンはロック・インスト(ややフュージョン的)のアルバムなんかを出したりして、ぜんぜん現役のようです。


URIAH HEEP / LOOK AT YOURSELF (1971)

昔よく聞いてたラジオ番組「ロキュペーション」でユーライアヒープの「哀れみの涙(シンパシー)」が流れて、そのカセットテープを何度も何度も聴いていた、なんてことは誰にも言えない黒歴史なんだが、とりあえずユーライアヒープといえば「対自核」!中学生のときに入手したレコードだけど、A面だけ500回くらい聴いた気が(笑)。「7月の朝」なんて後半のキーボードソロの部分までほとんど暗記してるわけだが、そういう人結構多いのではないか。この曲、出だしが普通のバラードっぽくていまいちセコイんだけど聴いてるうちになんだかこれはちょっとスゴイんではなかろうか的な盛り上がりに。まるでディック・マードックのブレーンバスターが、ちょっとカッコ悪いんだけどよく考えると頭から落ちるのはかなり痛いんじゃないか的な。それはそうと、ユーライアヒープの泣きのメロディー全開の曲ってのはかなり沢山あった気がするんだけど、ほとんど忘れてしまって調べなければ思い出せないわけで、これこそ「忘れたいのに思い出せない」ってことなのかと。

そういえば昔ユーライアヒープのアルバム「The Magician's Birthday 」(1972) のB面ラストのやたらと叙情的で泣きのメロディーの曲を自分の部屋で大音量で聴いてたら、となりの部屋にいた妹が「なんか怖いんだけど」とクレームつけてきたことがあった。言われてみりゃたしかに怖い(笑)。泣きのメロディーも度が過ぎると怖いのだ。で、「The Magician's Birthday 」というアルバムは「サンライズ」「盲目」「魔の饗宴」と、かなりの泣き曲が入ってて、なんだか凄いことになっていた。「対自核」とともにある意味ホラー。夜中とかにラジオから流れてきたらちょっと嫌だな。


SCORPIONS / VIRGIN KILLER

ネットのニュースで見たんだけど、なんとこのアルバムが24KゴールドCDで再発されたそうな(笑)。こういうのは多少悪い音質で聴くのがちょうどいいと思うんだが、如何か。僕がこれ聴いてたのは中学生のときで、輸入版LPで聴いてた。で、これが大好きすぎて何度も何度も聴いてたからか音が少し割れた感じになり、それがまた結構良かったと記憶している。当時、このアルバムの音が悪くなったのでもう一枚新たに「VIRGIN KILLER」(今度は日本盤)を駅前のレコード屋で買いなおしたのだが、そちらの方はなんだか音が綺麗すぎて、結局また古い方のLPでばかり聴いてたのだ。

さて、中学時代の僕がいちばん好きだったギタリストがウルリッヒ・ロートだった。ソロ作でのウルリッヒもそれなりに好きだったが、やっぱりスコーピオンズでのウルリッヒが最高だった。そのボーカルはともかく(笑)、うねりまくるギターがなんとも良かったのだ。このアルバムでのウルリッヒ・ロートもとにかく最高に好きだった。ちなみにこのアルバムで一番好きだった曲は「Pictured Life」。今聴くとなつかしすぎて死にそうになる。昔何度も聴いてた曲ってのは、聴いてたときの感情がよみがえってきて、なんだか複雑な気分になるものだ。


James Taylor / Dad Loves His Work (1981)

この時代、1980年前後ってのはAORの名作も結構たくさん出てるんだけど、僕にとってAORはまずルパート・ホルムズの「ヒム」、マイケル・フランクスの「アントニオの歌」あたりになる。理由は単純で、洋楽を聴き始めた小6から中学生の頃にかけて聴いてたから。最初の体験てのは強烈にアタマに刷り込まれちゃうのだ。ルパート・ホルムズは小6のときにエアチェックしてたラジオの電リク番組で流れてて(そのカセットテープは今も残ってる)、マイケル・フランクスに関しては中学1年くらいのとき聴いてたFM東京のジェットストリームでたまたまマイケル・フランクス特集をやってた(このカセットもこれまた残ってる)。というわけで、それらのカセットテープをさんざん聴いてるうちに僕の中でのAOR像が出来上がることになる。

ジェームス・テイラーの「憶い出の町(Her Town Too)」という曲はだいたいそのすぐ後の時期(中学2年くらいだったか)にラジオで流れてた。これが僕の中では何故かルパート・ホルムズやマイケル・フランクスと同じ項目に分類されたんだけど、これって何だろうと考えてみると、単に「大人っぽい」という分類だったんじゃないかと(笑)。ずいぶんテキトーな分類法だけど、僕の頭がテキトーに出来てるんだから仕方無い。そう、「大人っぽい」のだAORは。AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックなんだから、大人っぽいというのも、あながちハズレてもいない。ちなみに当時はAORなんて言葉は知らなかったんじゃないかなあ。

「憶い出の町(Her Town Too)」はその大人っぽい感じにプラスして、なんか涼しい感触があった。今からみれば、ウエストコースト・ロックの流れの上にあるカントリー的涼しさの名残、ってことが分かるんだけど、当時はそんなところまで知らなかったから、なんだこの涼しさ気持ちイイ~、くらいなもんだった。そんな要素も僕の中のAORだったわけで。で、このアルバムは僕にとっては「憶い出の町(Her Town Too)」を聴くためのもの。他にもいい曲が入ってるんだけど、この曲のインパクトは圧倒的。あ、JDサウザーについて何も書いてなかったな。まあいいか。


Donald Fagen / The Nightfly (1982)

当時のラジオではニュー・フロンティアが頻繁に流れてて、てっきりこれがこのアルバムのファーストシングルだと思い込んでいたんだけど、実はニュー・フロンティアは2枚目のシングルだったようで・・・。1枚目はI.G.Y.だったようです。とはいえ、ニュー・フロンティアをラジオで聴いてた僕には、ドナルド・フェイゲンってばニュー・フロンティアなのだ。I.G.Y.なんかラジオで流れてたかなあ?

1980年代前半てのは僕にとってかなり特殊な時期で(1980年に中学1年生だった)、とにかくラジオから流れる洋楽は全部それなりにスゴイもののように聞こえた。で、僕はFM東京のジェットストリームなんかも聞いてたから洋楽ってばロックだけじゃなくてジャズやフュージョンやイージーリスニングなんかも耳に入ってきてたわけで、それらすべてが同一地平線上にあって、それらを片っ端から吸収。おまけに中学1年のときにパイオニアのでかいステレオコンポを買ってもらったもんだから、とにかく音楽聴くのが楽しくてしょうがない。そんな時期に聴いてた音楽ってのは、何故だか今でも最初に聴いたときの印象を思い出せるし、その印象がついてまわる。

で、ドナルド・フェイゲン。ソロだとやっぱりこのアルバム。そしてニュー・フロンティア。今聴いても印象は当時のまま。当時から音が風景(絵)として感じられてたけど、今聴いても同じ風景。とはいえ押し付けがましい感じは全く無し。80年代的な音が入ってきてるからなのか、それまでのスティーリー・ダンの人力オンリーなリズムとは根本的なところで違ってて、とにかく軽い。そしてその心地よい軽さ故か、たまに流れてくるとうれしい。この距離感が、なんだかとてもよかった。最初に聴いたときの印象がそのまま残ってるのか、あるいはそもそもこの音楽が僕にはそうとしか感じられないように出来てるのか、なんだかよく分かんないけど、いつも同じ音景色。参加メンバーの豪華さや録音の素晴らしさは言うまでもない。 


IGGY & The Stooges / Raw Power (1973)

とにかくこれは熱心に聴いた。10代の頃。暴力的衝動を発散させてくれる類の対症療法的な音楽は沢山あったけど(ハードロックとか)、感覚というか精神的なひずみを解消してくれた音楽はこれくらいしかなかった。なんだか分かんないけどほとんどショートして焦げまくっていた自分のアタマを最も落ち着かせてくれたのがこのアルバムだったのだ。今聴いてもすごくいい。暴れ回って破壊しまくるイギーのライブ(80年代に一度だけライブを見に行ったことがある)のごとく、このアルバムの音は全方位へと暴れ回る。パンク特有のタイトな形式なんかまるで無い。ラフで滅茶苦茶でテキトーでヒリヒリするような最高の音。

僕の持ってたこのレコード(輸入盤)は当然のことながらオリジナルのデヴィッド・ボウイ・ミックスなのだが、1997年に大幅にミックスを変えてCD発売された。オリジナルのミックスは音がかなりペラペラで、しかも統一感がなく、かなりとっ散らかったというか、メチャクチャな印象だったのが、新しいミックスによってより聴きやすく、形が整った感じになった。どちらがどうというわけでもないが、オリジナル・ミックスのメチャクチャでいびつな形の中に存在するある種ディモーニッシュとも言える空気はちょっと特別だ。もちろん、パンクとして形を整えた新ミックスもいいんだけど。

で、僕が10代の頃にさんざん聴き込んだのがオリジナルミックスのバージョンだったわけだが、このRaw PowerのレガシーエディションCDってのが出て、それはそのオリジナルミックスのバージョンのリマスター。おまけとしてCD1枚くっついている(1973年のイギーのライブ!!ライブなのに形としてはRaw Powerよりも整っているような…笑)。ちなみに同時にデラックスエディションなんてのも出てて、そちらにはこのCD2枚にプラスしてメイキングDVDやらブックレットやらがついているらしい。

ところでこのRaw Power、今年はなんとLP盤でも再発されるようだ(2012年5月)。今現在イギー・ポップがパンク界(あるいはロック界)でどんな位置にいるのか実はよく知らないんだけど(一説によるとパンクのゴッドファーザー扱いだとか。なんだそりゃ)、このアルバムがいまだに生き続けていることにちょっと驚く。ポップスならまだしも、こんなのただのメチャクチャ音楽だ(もちろんいい意味で)。でも、このメチャクチャさ加減こそがイギーの真髄。毒をもって毒を制すではないが、アタマの中の歪みにはこのような歪みすぎた音楽がちょうど心地よい。アタマが爆発しそうだった10代にこのアルバムに出会ったのは運がよかった。


JUDAS PRIEST / Screaming for Vengeance (1982)

中学生の頃に買ったレコードってのはどんなものでもなんか許せてしまうもの。このレコードは中3くらいだったかな。中2かな。どっちでもいいんだけど。まずAMラジオ(ロキュペーションだったかロックトゥデイだったか)でこのレコードから3~4曲くらい紹介されたのだ。で、発売後すぐに買った。当時DJは「これは凄まじい!ハードロックの最高傑作だ!」とかなんとか絶賛してたが、今思えば単なる宣伝だったのかもしれない(笑)。いや宣伝だったんだろうな。このレコード、今一体どんな評価なのか全く知らないわけだが(100円盤コーナーとかに眠ってるのかな)、そんなのどうでもいいのだ。ただただ懐かしい(爆)。「エレクトリック・アイ」のイントロで、ギターの後に出てくるドラムの最初の音が特にイイ。


TOMMY BOLIN / Teaser (1975)

ビリー・コブハムのSpectrum(1973)やアルフォンソ・ムザーンのMind Transplant(1974)でギター弾いてたトミー・ボーリンの初ソロ。「サバンナ・ウーマン」は今でもぜんぜん聴ける。中学だか高校だかの頃に聴いてたのでなつかしさってのもあるにはあるけど、ギターの「はみだし具合」がなんかすごくよくて面白い。このボッサはアル・クーパーやマイケル・フランクスもビックリのレベル。次作Private Eyes(例の富墓林です)をふまえると、もしトミー・ボーリンが生きてたらAOR方面に行ったんじゃないか。また、アル・クーパーがプロデュースした作品とか出してたら意外に面白かったのではないかとも思う。ちなみにこのアルバムはデビッド・フォスターのプロデュース。デヴィッド・サンボーンやマイケル・ウォルデンなども参加している。ところでこのアルバム、ここで紹介してる他の作品に比べると特に思い入れとかは無いんだけど、ひさびさに聴いてみてなんだかいい感じに思えたのだ。理由はたぶんトミー・ボーリンのギターの中途半端さ加減で、これが意外に魅力あるなあと。サザンロック的でもあり、フュージョン的でもあり、なんだか妙な感じ。元パープルという最悪のイメージはこの際忘れてあげたい。


The BEE GEES / Spirits Having Flown (1979)

小学生の頃、近所にワンダーランドという本屋があって、僕はそこに入り浸っていた(目的はもちろんマンガの立ち読み)。そしてそのワンダーランドの店内でよく流れてたのがビージーズ。ちょうどサタデー・ナイト・フィーバーが流行った頃。だもんで僕はビージーズを聴くといつもそのワンダーランドを思い出すんだが、それと同時に当時のニューヨークの情景も頭に浮かぶ。

70年代後半から80年代頭にかけてというのは、テレビや雑誌などでニューヨークがやたらと紹介されてた時代だったのだ。それまでのカリフォルニア幻想が崩れてきたせいなのか、はたまた単にI LOVE NYキャンペーンの一環だったのか、よく分からないけど、とにかくマンハッタンの光景はあちこちで出てきた。なわけで、まことに勝手ながら僕の中ではビージーズの音楽はそんなNYイメージとも結びついている。ビリー・ジョエルよりもビージーズの方がNYだ。

このアルバムはサタデー・ナイト・フィーバーの次の年に出たもので、この中のいくつかは当時ワンダーランドでもよく流れていたし、テレビCMでも使われてたりしてた。70年代後半の「気分」がここに詰まっている。聴くだけで気分がよくなる貴重なアルバム。サタデー・ナイト・フィーバーのサントラとともにマスト。冒頭の3曲が特に好き。というかそれがすべて。ちなみに1曲目の「哀愁のトラジディ」の冒頭をそのまま持ってきたのがウルトラ級の名曲「カリフォルニア・コネクション」(水谷豊/熱中時代刑事編の主題歌・1979年)。曲の雰囲気もよく似ていて、僕はそちらも好きです。


QUEEN / The Game (1980)

これまた中学生のときにさんざん聴いたアルバム。当時ラジオのヒットチャート番組から流れてきた「プレイ・ザ・ゲーム」を気に入って買ってみたLP。今聴いても結構いい。いや結構いいどころか、名盤中の名盤ではないかこれ。ひさびさに聴いて驚いた。なんだこのクオリティーの高さは。

ところでこのアルバム、最近リミテッド・エディションなる2枚組CDが出た。1枚はオリジナルのまま。2枚目はライブとか別テイクとかいろいろ5曲なんだがどれもたいしたことは無い。やはりオリジナルの「プレイ・ザ・ゲーム」から「セイブ・ミー」までの10曲がすべて。 


THE POLICE / Ghost in the Machine (1981)

中学生のときにこのアルバムが出て、FMラジオからカセットテープにまるごとダビングしました。だもんでリアルタイムで聴いてはいたもののLPは当時買ってない(その後大学時代にLP入手。100円くらい)。別にポリスは好きでもなんでもないけどこのアルバムは何故か好き。それもこれも中学生当時このテープをよく聴いてたからなんだが、冬によく聴いてたせいか、今でもこれ聴くと冬の気分になったりする。最初の3曲がイイ。特に1曲目。

ところで、中学生の頃に出会った洋楽ってのは何故か今でもほとんど許せるのが不思議なのだが、それって単に多感な時期に出会ったというだけの只の偶然なわけで、内容とは全く関係無いのだ。たぶん。そう考えると洋楽全盛の時代に小中高校時代を過ごしてかなりラッキーだったかもしれない。一歩間違えたら四畳半フォークだとか、あるいはヴィジュアル系だとか、そんな大惨事になってたこともありうるわけだし(笑)。いや、ひょっとしたら僕の時代も普通に邦楽とか流行ってたのかな?実は邦楽は全く聴いてこなかったので知らないのだ(まるで興味が無かった)。


Matt Bianco / Matt Bianco(1986)

大学時代にもっともよく聴いたもののうちの一枚。今ではスムースジャズに分類されることもあるようだけど当時は普通にロックに分類されていた。ジョージィ・フェイムのモッズ曲「Yeh Yeh」から始まり、超浮かれた「Dancing In The Street」で最高潮に。ファンカラティーナというよりは、適度にジャジーで適度にラテンなAOR風ポップス。これを聴くたびにあの80年代後半の妙な空気を思い出し、なんとも言えない気分になるのだ。あの時代はたしかにこんな感じだった。なんだかわかんないけど浮かれてて、なんだかわかんないけど適度にトロピカルだった。

そんなわけでこれはMatt Biancoのセカンドアルバム。ファーストアルバムにはBasiaが在籍していた。ちなみに僕はBasia初来日公演(1988年)を渋谷クラブ・クアトロに見に行った。このときがクラブ・クアトロのオープン第一弾公演だったわけだが、渋谷クラブ・クアトロもあの時代の典型みたいな感じか。

このアルバム、前身バンドのBlue Rondo A La Turk(ブルー・ロンド・ア・ラ・ターク)のノリの良さをそのまま受け継ぎ、さらにあの時代の浮かれた気分をふりかけたような、まさに時代の音楽。まあ、あくまで僕にとってということだけど。


Josh Dion Band / Anthem for the Long Distance (2008)

レイナードスキナード直系というかなんというか、とにかくスカッとする骨太アメリカンロック。1曲目の「Makin My Livin 」はレイナードスキナードの「スイートホーム・アラバマ」に匹敵するほどの気持ちよさ。リアルタイムのロックでこんなにハマったのはひさしぶり。ちなみにJosh Dionはスムースジャズのチャック・ローブのグループのツアーでドラムを叩いてたりもしてます。 


(文:信田照幸)


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