Rockpart5)


Utopia / Adventures In Utopia (1980)

ユートピアのアルバムの中でもトッド・ラングレンのソロ作と同じくらいにポップなのがこの「Adventures In Utopia」。その昔トッド・ラングレンのレコードをせっせと集めていた頃にユートピアも平行して聴いてたけど、ユートピアの中で何度も繰り返し聴いたのはこれだけ。内容的にはほぼトッド・ラングレンのソロみたいな感じ。で、僕の好きだったトッド・ラングレンはこの1980年まで。それ以降の作品は何故かいまいちハマらなかった。今聴けばまた違うんだろうけど。

このアルバムの中では「セット・ミー・フリー」が結構知られてるかもしれないけど、他にもいい曲が沢山ある。A面なんて全部いい。中にはほぼAORな曲もあったりして時代を感じるけど、トッドの声とAORはどうも合わないような気も。もう少しアダルトなシンガーが歌ってたらヒットしてたのではと思う曲もあったりする。というかトッド・ラングレンの曲は他のアーチストが歌ってたらもっといいのになあといったものも多い。

チープトリックの「Next Position Please」(1983年)に入ってる「ヘヴンズ・フォーリング」という曲はトッド・ラングレンの曲で(トッド自身はどのアルバムでも歌っていない)、僕は昔この曲が本当に大好きで、これがきっかけとなってトッド・ラングレンに興味を持つことになった。これなどはロビン・ザンダーが歌うから格別なものになったのであって、トッドが歌ってたらよくあるトッドの曲のうちのひとつとして埋没してただろうなあって思うのだが。そういえば有名な「アイ・ソー・ザ・ライト」(1972年)は沢山の人がカバーしてるけど、いちばん最初にトッドではなく他のミュージシャンが歌ってたら物凄くヒットしてたのではなかろうか。とはいえ僕はトッド・ラングレンの声は嫌いではない。ソロの最初の2枚のアルバム(「Runt」「Runt, The Ballad of Todd Rundgren」)なんてトッド・ラングレンの声でしかあり得ないし、「Todd」に入ってる「ドリーム・ゴーズ・オン・フォーエバー」なんかもそう。

ところで今年(2018年)、ユートピアが再結成されたとかでちょっと話題になったことがあった。トッド・ラングレンの顔がすっかり変わり果てていて驚いたんだが、考えてみたらもう結構な年齢なんだからしょうがない。僕がこの「Adventures In Utopia」というアルバムを聴いてたのももう30年以上も前のことなんだし。




Joy Division / Closer (1980)

ラジオを聞いてると古い洋楽がよく流れてきたりするけど、意外に多いのが80年代の洋楽。当時ヒットチャートを賑わせていた楽曲はもちろん、後年になってから再評価された楽曲まで、何だかんだいって80'sは今でも結構人気があるようだ。でもジョイ・ディヴィジョンがラジオから流れてくることは無いのではなかろうか(笑)。

というわけで、このジョイ・デヴィジョンのアルバム。高校生の頃の一時期よく聴いていた(80年代半ば頃)。中でもラスト曲の「Decades」は本当に何度も繰り返し聴いた。歌の内容なんてどうでもよかったのだ。ズブズブと闇に沈んでいくような暗さが心地よかった。不安定で元気のないボーカルも、当時の自分には心地よかった。

今回すごいひさしぶりに聴いたんだけど、思ってたより元気な印象で、ボーカルだって案外力強いのが意外だった。当時はボーカルのイアン・カーティスがこのアルバム録音直後に自殺したというエピソードに引っ張られながら聴いてたから、なんだかアルバム全体が暗いような印象を持ったのかもしれない。馬鹿馬鹿しい話だが80年代というのは何かにつけ 「明るい・暗い」ということが結構大きな価値判断基準としてあったのだ。今はそういうのはすっかり消えたような気がする。

ところで僕がこれを聴いてた当時、すでにニューオーダー(イアン・カーティスが死んだ後にジョイ・デヴィジョンの残りのメンバーで作ったグループ)がヒットを飛ばしてたりしたのだが、そちらの方は全く興味が無かった。ダンサンブルなテクノバンドというくらいの印象しか無い。だけど一般的にはジョイ・デヴィジョンよりニューオーダーのがメジャーだろうし、ジョイ・デヴィジョンってのはニューオーダーの前身バンドくらいな存在感にしか思われていないだろう(というか当時はそんな感じだった)。

それにしても「Decades」の”もうすぐ死にます”感は凄い(笑)。


Brian Eno / Taking Tiger Mountain (1974)

ブライアン・イーノのセカンド・ソロ作。たぶんイーノのロックっぽい作品(アンビエントじゃない作品)の中ではこれを最もよく聴いた。ファーストの「ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ」の1曲目のような初期ロキシー的な熱い曲は無いけど、何度も聴きたくなるような、ちょっとくせになるアルバム。

ブライアン・イーノの音はどれもヒリヒリするような微妙な感触があって、主に高音部でそれが顕著。超高音部は音が軽い感じで耳に突き刺さるような、ちょっと耳障りともとれるような感じもある。もちろん、本当に微妙なものだけど、無視出来ないくらいに感覚に訴えてくる。

で、この特徴はイーノのリーダー作だけでなく、イーノが参加したりプロデュースしたアルバムにもよく出ている。たとえばすぐ思い出せるところではデヴィッド・ボウイの「ロウ」「ヒーローズ」とかロキシーミュージックの「ロキシーミュージック」「フォー・ユア・プレジャー」とかトーキングヘッズの「フィア・オブ・ミュージック」「リメイン・イン・ライト」とかNYパンクのコンピ盤「ノー・ニューヨーク」とか。ある意味ノイズとも取れるこの感触は、三味線や琵琶の「さわり」のようなものであり、音楽を何度も聴けるものにするような、深みを与える役割があるように思える。僕にとっては、このヒリヒリした感触こそイーノの音楽の要。

このアルバムを聴いてた10代の頃は、その特徴が最も濃かったのがこの「Taking Tiger Mountain」だと思ってたのだが、今ではイーノがプロデュースした他のアルバム群もやけにこのヒリヒリ感が頭を刺激してくる。歳を取ると聞こえなくなるというモスキート音というのがあるけど、こちらの方は逆に年を取るごとによく聞こえてくるような気がするのだが。というか、こんなこと感じてるのは自分だけだったりして。


ROXY MUSIC / Country Life (1974)

「ストランデッド」(1973)と「サイレン」(1975)に挟まれたアルバムで、文字通りロキシー全盛期の作品。通算4枚目。ファーストから続くイーノ的ともいえるノイジーな感触の音があるのはここまでで、次の「サイレン」からはシンプルになっていく。

僕はこのアルバムを高校時代にさんざん聴き倒した。レコードに刻まれた音はすべて聞き漏らさないくらいの勢いで、かなり真剣に聴いてたものだ。大学生になると全く聴かなくなってしまうのだが、このアルバムの何曲かは何かの拍子に曲のワンフレーズがふと頭に流れるなんてことがこれまでずっと続いてきた。中でもA面の1曲目から4曲目までは頻繁に頭の中に流れるもので、完全に自分の血肉化しているような曲。もはや好き嫌いを超越している。

ロキシーミュージックというのはアートスクール出身者ばかりだったようで、だからなのか、むさ苦しいマッチョなロックスターみたいなイメージからは無縁で、センスだけで攻めるような曲も多い(そういえばデヴィッド・ボウイもアートスクール出身でしたね)。たとえば「リ・メイク・リ・モデル」や「ドゥ・ザ・ストランド」なんかはその典型だし、このアルバムでいえば冒頭の「ザ・スリル・オブ・イット・オール」なんかがそれに当たる。セカンド・アルバム以降ロキシーを離れたブライアン・イーノは70年代を通してずっとそんな印象だけど、ブライアン・フェリーは徐々に路線を変えていった気が。

にしてもこのアルバムは本当に密度が濃い。いや、このアルバムに限らずロキシーの最初の5枚はすべて密度が濃くて、ぼんやり聴き流すことが出来ない。一度この音を聴くと、しばらくその音に体が支配されてしまうような感じ。高校時代こういう音楽ばかり聴いてたから勉強なんか全く手に付かなかったのだ(ということにしておく)。


Stray Cats / Built for Speed (1982)

好きなロックの曲でベスト10を選ぶとすればストレイキャッツの「Rock This Town」(邦題:ロックタウンは恋の街)は何とかねじ込みたいと常々思っているわけだが、このアルバムはその「Rock This Town」が1曲目に入った、ストレイキャッツのアメリカでのデビュー盤。すでにイギリスで出ていた2枚のアルバム(1981年の「Stray Cats」「Gonna Ball」。何故かイギリスで先にデビューする)から曲をピックアップして作られたアルバム。とにかく冒頭に「Rock This Town」があるだけで素晴らしい。

シングル曲「Rock This Town」は僕が中学生のときに流行ってて、僕はTDKのカセットテープにラジオからエアチェックして持っていたのだが、アルバムを買うことは無かった。買っておけばよかったなあとちょっと後悔している。当時はその風貌(リーゼントとか)がどうもあれで(僕の世代はリーゼントといえばどうしても横浜銀蝿がちらつくのだ・・・)、買うにはダサすぎるという判断を下したのだが、今思えば何故ストレイキャッツの50'sファッションと横浜銀蝿の田舎風ツッパリファッションとを混同してたのかがよく分からない。むしろキャロルと混同してたほうがよっぽど筋がよさそうな気がするのだが、現実はキビシイのだ。(どうでもいいけど中学生のときに同じクラスのクリハラ君に横浜銀蝿の「ビニ本ロック」という曲のテープをもらったことがある。突然思い出したので記念としてここに記す。ちなみにクリハラ君は中学の卒業写真にリーゼントで映っていた)

で、このアルバムなんだけどイギリスでの最初の2枚からのピックアップということで、これらの音の違いがハッキリしているのがちょっと興味深い。1枚目の「Stray Cats」はガチガチのロカビリーな音で(プロデュースはデイブ・エドモンズ)、2枚目の「Gonna Ball」はややロックな音。要するに1枚目はベースがはっきりとウッドベースと分かる音で録音されており、2枚目はベースがロック調(エレベに近いべったりとした音)の音作りなのだ。個人的には1枚目の音がたまらなく好きなので、すべてこの音で通したファーストの「Stray Cats」こそ最高の名盤と信じて疑わないのだが、曲順に不満がある。何故か「Stray Cats」の1曲目は「Runaway Boys」なのだ。そして「Rock This Town」はA面のラスト。なんで「Rock This Town」をアタマに持って来なかったのかなあ。このへんのイギリス的センスが僕には理解出来ない。

というわけで、アタマに「Rock This Town」を持ってきた本作「Built for Speed」。もうそれだけで最高だったりする。アメリカ・デビュー盤としても、分かりやすさの点からいってこれは正解だったのでは(全米チャート15週間連続2位だったし。ちなみにマイケル・ジャクソンの「スリラー」がずっと首位に居座ってたから1位を取れなかったとか)。そもそもロカビリーというのはスイング感が命みたいなところがあるんだから(ベースがウッドベースであることが関係している)、最もスイングする曲を最初に持ってくればだいたい成功するのだ。

このスイング感はのちのブライアン・セッツァー・オーケストラのスウィングロックやジャイブにまで繋がっていくわけだけど、やっぱりこの初期ストレイキャッツの持つ一発録り的な独特の疾走感は唯一無比だし、全く古くならない(最初から古いという話もある)。


David Bowie / ChangesTwoBowie(1981)

この「ChangesTwoBowie」のリマスター版CDが今年(2018年)の4月に出たとのこと。随分昔に一度CD化されたこともあるらしいが全く知らなかった。僕はこのレコードを中学生のときにリアルタイムで買った。姉妹版の「ChangesOneBowie」のLPとともに、とにかく死ぬほど聴きまくったので、このアルバムに入ってる曲に関しては、このコンピレーション盤の曲順の方がオリジナル・アルバムよりもしっくり来るほど。ちなみにコンピ盤とはいえこのアルバムでしか聴けないシングル・エディットなどもあるので、アルバムすべて持ってるという人も買う価値はじゅうぶんにある。

とにかくこのコンピ盤、曲選びのセンスがいい。「ChangesOneBowie」のほうは少しとっ散らかった感じが無きにしもあらずだったが、こちらは完璧。

A面が1.Aladdin Sane 2.Oh! You Pretty Things 3.Starman 4.1984 5.Ashes to Ashes(シングルバージョン)、B面 1.Sound and Vision 2.Fashion 3.Wild Is the Wind 4.John, I’m Only Dancing 5.DJ(シングルバージョン)。不思議なことにどこか統一感がある。

「Ashes to Ashes」のシングル・エディットはここでしか聴けないので貴重。この曲はスケアリー・モンスターズに入ってるけど、アルバムバージョンよりシングルバージョンの方が圧倒的にイイ。A面のStarman→1984→Ashes to Ashesという怒涛の流れは昔大好きだったのだが、ひさびさに聴いてもやっぱり凄すぎた。Sound and Visionから始まるB面も、アタマの3曲の流れは昔聴いたときのままに圧倒された。やっぱりデヴィッド・ボウイは別格で凄いなあ・・・。


Jeff Beck / There & Back (1980)

今聴くとどこかプログレっぽい。これはちょっと意外だった。昔はそんなこと全く思わなかったのだが(もっともこれ聴いてた中学生の当時はプログレに詳しくなかったけど)。プログレ好きな人にとってはこのアルバムは一体どんな位置付けなんだろう。よくジェフ・ベックのインスト3部作をフュージョンやクロスオーバーにジャンル分けする人がいるけど、あれってなんか違うよなあと思うのだ。特にこのアルバムなんかはプログレだろう。

で、ジェフ・ベックのこのアルバム。インスト3部作の3作目なんだけど、前の2作(75年の「Blow by Blow」、76年の「Wired」 )があまりにも有名なので存在感が薄い。がしかし、これだって全然負けてないどころか、むしろこちらの方が出来がいいのではないか。そもそもこちらは前2作と5年も離れててちょっと時代が違うので比べても意味無いが。このアルバムは完全のあの時代の音だ。この1年後くらいにジミー・ペイジがソロ・アルバムを出したことがあったけど、それもこれに似たような音だったと記憶している。流行りの音作りだったのかもしれない。

にしても「Star Cycle」って曲はカッコイイ。どこかトミー・ボーリンっぽさもある(そういえばトミー・ボーリンはジェフ・ベックの前座とかやってましたね)。僕はジェフ・ベックのギターのよさがいまいちよく分からない人間なのだが、これは凄い。この曲、なんか特別よく覚えてたんだけど、ひょっとして当時の渋谷陽一のサウンドストリートでも流れたかな?(サウンドストリートはいつもエアチェックして何度も繰り返し聞く習慣があったので)。

そんなわけでこれ、30年以上ぶりに聴いて懐かしくなった。とにかく隅から隅まで結構記憶してて驚いた。この次にどういうソロが来るとか、この次にあのメロディが来るとか、本当によく覚えている。そこまで何度も聴いてたような気はしないんだけど、中学生のときに聴いたものはずっと覚えてるようだ。


Peter Wolf / Come As You Are (1987)

ピーター・ウルフをすっかり忘れてた。実家に行ってレコード棚を眺めててこのアルバムがふと目に入り、突然思い出した次第。ピーター・ウルフのソロはこのレコードしか買ったことが無いし、この時期(1987年)しか聴いてない。なのでこの前の時期も後の時期も全く知らない。

きっかけはシングル曲「カム・アズ・ユー・アー」のMV。ベストヒットUSAか何かで見てすぐにLPを買うことに決めたのを覚えている。とにかく何だかテンション高くてバカみたいなミュージック・ビデオで最高だった。それまでJガイルズバンドの「堕ちた天使」でしかピーター・ウルフは知らなかったけど、この「カム・アズ・ユー・アー」のMVだけですっかり気に入ってしまったのだ。

で、このアルバム、シンプルなロックばかりで清々しい。これ買った当時はもう本当にこればかり聴いていた。1曲目の「キャント・ゲットスターテッド」なんてもうほぼストーンズ。ボーカルまで似て聴こえる。A面は畳み掛けるようにノリのいい曲ばかりが続き、B面1曲目にようやく「カム・アズ・ユー・アー」。これまたストーンズっぽいけど、なんともいえない明るさと高めのテンションが素晴らしい。そしてなんといってもドラムとギターの音がスカッとしてなんとも気持ちいい。こういうのに接するとロックに叙情性なんぞいらないと思ってしまう。


China Crisis / Flaunt The Imperfection (1985)

チャイナ・クライシスの中でのこのアルバムの位置付けはといえば、ニューウェイブからAORへと一歩だけ踏み出した、みたいな感じなのだろうか。でも僕がこれを買った高校生の頃にはこれがAORっぽいなんて思いもつかなかったというか、そもそもプロデュースがウォルター・ベッカーであることに気づいていなかったのだ(笑)。先日実家に行ったときにこのレコードが出てきて、アルバムの裏ジャケのクレジットを見たらProduced by ウォルター・ベッカーになってて驚き、おまけに普通に演奏にも加わっててさらに驚き、聴き直してみた。

昔の印象どおり、やっぱりニューウェイブの感触なんだけど、よく聴けば3割方はAORという感じか。このアルバムのA面3曲目「You Did Cut Me」という曲は高校生のときに本当に何回も何回も聴いたほど大好きな曲だったんだけど、これはもう完全にAORなのであった。A面1曲目の「The Highest High」だってどこかドナルド・フェイゲンのナイトフライっぽい(言い過ぎか)。このアダルトコンテンポラリーな感触はウォルター・ベッカーの手腕によるところが大きいんだろうが、当時は何故だか全く気づかなかった。もちろん全般的にはキラキラした浮遊感のあるシンセの音だとか、ニューロマンティック系丸出しのボーカルとか、そんなところはほぼニューウェイブなんだけど、A面の最初の3曲はかなりAORだ。

というわけで、個人的に30数年の間にすっかり印象の変わったこのアルバム。改めて聴けばなかなかの名作。特に「You Did Cut Me」は素晴らしすぎる。ちなみにチャイナ・クライシスがその後どうなったのかは全く知らない。




Buddy Holly / From The Original Master Tapes (1957-59)

僕のバディ・ホリーへの興味はリンダ・ロンシュタット経由だったりする(普通はビートルズやストーンズ経由だろうけど)。前にも何度か書いたけど、大学1年のときにリンダ・ロンシュタットのアルバム「Heart Like A Wheel」(1974年)を聴いてえらく衝撃を受け(笑)、そのアルバムのルーツなどを辿って行くうちに掘り当てたのがバディ・ホリーだった(ちなみにイーグルスなどもそのリンダ・ロンシュタットのアルバム経由で興味を持った次第)。

バディ・ホリーのベスト盤はいろいろあるようだけど、中には「It Doesn't Matter Anymore」が入ってないものがあるので気をつけたほうがいい(笑)。この曲、リンダ・ロンシュタットもカバーしているが(「Heart Like A Wheel」2曲目)、というか僕はそのリンダ・ロンシュタット版がすっかり気に入ってしまったのでバディ・ホリーのオリジナル・バージョンも聴きたくなったのだ(ちなみにポール・アンカの作詞作曲)。で、このベスト盤にはちゃんとその「It Doesn't Matter Anymore」も入っている。他にもリンダ・ロンシュタットがカバーした曲がいくつかあって興味深い。また「Peggy Sue」などの有名曲もあらためて聴くとかなり強烈。


Bachman-Turner Overdrive / Bachman-Turner Overdrive (1973)

バックマン・ターナー・オーヴァードライブのファースト。こういう単純なアメリカン・ロックはかなり好き。昔レコードで持ってたのは3作目の「Not Fragile」(1974年)だけだったんだけど、その後いろいろ聴いてるときにこのファーストの1曲目Gimme Your Money Pleaseで完全にやられた。「Not Fragile」に収録されている有名曲Roll On Down the Highwayもいいけど、このGimme Your Money Pleaseの単純な突進感は凄すぎ。

バックマン・ターナー・オーヴァードライブはのちにどんどんポップなアルバムを出していくけど、僕はランディ・バックマン時代初期のゴツゴツしたアメリカンロックが好きかな。このファースト・アルバムはドゥービーにも通じるようなウェストコースト的爽快感もあるし(カナダの木こり集団だけど)、シンプルなロックの格好よさもあるし、結構バランスがいい。人気盤「Not Fragile」も凄いけど爽快感の差でこのファーストに軍配を上げた。

また1977年の「B.T.O.Live Japan Tour」もかなりイイ。こちらは一大ロックンロール大会みたいな感じ。客の盛り上がりも含めてとても面白い。Gimme Your Money Pleaseが入ってたらもっとよかった。出だしのRoll On Down the Highwayの前の「フロム・バンクーバー!バックマン!ターナー!オーヴァー!ドラーーイブ!」という煽りがなんかかっこいい。


Glenn Frey / No Fun Aloud (1982)

そういえばグレン・フライが死んで1年経った。最近何故かこのアルバム(グレン・フライの初ソロ作)をよく聴いていたのでグレン・フライが去年死んだことも思い出した次第。AORを基調としながらカントリー風、ゴスペル風、ソウル風、テックスメックス風、ニューオーリンズ風、等等といったいかにもなアメリカ音楽要素を取り入れ、それでいて根幹はカントリー・ロック、という感じのアルバム。イーグルス的な感触が残っているのも嬉しい。このアルバムに関して昔から何故かソウルミュージック的という評があるようだが、僕の耳には西海岸AOR風味のカントリーロックに聴こえる。

シングルになった1曲目の「I Found Somebody」を最初に聴いたのは中学のときだったように記憶しているんだけど高校1年の頃だったかもしれない。ラジオでよく流れてたしテレビでも見たことがある。当時結構気に入ってた曲で、今でもかなり好きな曲。調べてみると、その「I Found Somebody」よりもむしろ2曲目の「The One You Love」(これまたイーグルス風で素晴らしい)のほうがシングルとしてヒットしたようだ(どちらもシングルカットされた)。しかしどういうわけだか「The One You Love」は当時聴いたという記憶が無い。日本では「I Found Somebody」の方がヒットしてたんじゃないかなあ?

グレン・フライが死んだときにメディアで紹介されたのがことごとく「ホテル・カリフォルニア」で、なんだかなあと思ってたのだ。あれはドン・ヘンリーが歌ってたものだし曲調だってシリアスで哀愁漂うドン・ヘンリー調のものなのに。

グレン・フライの死の翌日、ジャクソン・ブラウンはライブで「テイク・イット・イージー」をイーグルスのスタイルで歌った(youtubeにある)。グレン・フライといえばやはり「テイク・イット・イージー」なのだ。グレン・フライといえば「テイク・イット・イージー」であり、「ピースフル・イージー・フィーリング」であり「テキーラ・サンライズ」であり「ライイン・アイズ」だ。要するにイーグルスの最もカントリーな部分を担ってたのがグレン・フライだった。そして僕はその軽さが好きなのだ。

このアルバムもやっぱり湿り気がなく、とても軽くて、いかにもイーグルスのグレン・フライらしい雰囲気に溢れている。僕はこういうのを聴くとなんだか妙に安心して元気になるのだ。というか元気の無いときについ手をのばすアルバムでもある。


Alice Cooper / School's Out (1972)

アリス・クーパーの代表曲「School's Out」を初めて聴いたのはたぶん1981年にNHKでやってた「ヤング・ミュージック・ショウ ・ Rock '71-'81」という番組で、これは「ヤング・ミュージック・ショウ」(来日したアーチストのライブを流す番組)の総集編として編集されたもの。いろんなアーチストのライブが細切れに流れたのだ(このビデオは今でもベータマックスで持っている)。中でも特にインパクトがあったのが「School's Out」を歌いながら首吊りしてたアリス・クーパーだった。曲の中のほんの一部だけだったが深く印象に残った。他にもデヴィッド・ボウイ(エイドリアン・ブリュー入りの「サフラジェット・シティ」)、ブームタウンラッツ(詰襟の制服を着て「ダイアモンド・スマイルズ」)、ベイシティ・ローラーズ(黄色い歓声だらけの「イエスタデイズ・ヒーロー」!)、セックス・ピストルズ(「アナーキー・イン・ザ・UK」。いかにもロンドンなファッション)、キッス(「ファイアー・ハウス」で火を吹く。ちなみにこれ、僕は小4のときにリアルタイムでテレビで見てた)、など、いくつかインパクトのあるものもあったが、やはり首吊りのアリス・クーパーの異様さは圧倒的だった。ギロチンもしてたかな(このへん記憶があやふや)。

というわけでこのアルバム。「School's Out」が1曲目に入った有名作で、このひとつ前が「キラー」(1971)、ひとつ後が「ビリオンダラー・ベイビーズ」(1973)というまさに全盛期ド真ん中の作品。これを熱心に聴いてた当時はA面の後半の複雑な演奏がなんかイマイチに感じたものだが、今では面白く聴ける。突然出てくるバーンスタインのメロディがカッコイイ。あそこはアリス・クーパーの演劇的ステージをそのまま音で表しているかのようだ。

ところで僕の聴いてた80年代前半頃はアリス・クーパーはほぼ過去の人扱いで(活動停止してたのだろう)、レコードなどは国内盤はすべて廃盤という状況。そんな中、NHK-FM「渋谷陽一のサウンド・ストリート」の「廃盤リクエスト」では冒頭にいきなり「School's Out」が流れた。いかにも渋谷陽一が選びそうな感じだが、廃盤特集の最初にわざわざアリス・クーパーを選ぶところがエライ!あの時代にわざわざ「School's Out」をリクエストする暇人もどうかしてると思うが。

今、アリス・クーパーはハリウッド・ヴァンパイアーズという新バンドを組んでライブ活動をしているようだ。Youtubeにいくつかライブが上がっている。70近いおじいさんの割には声も結構出てるし、ちゃんと動いてるのが凄い。ライブのラスト曲はやっぱり「School's Out」だった。


Eagles / Their Greatest Hits 1971-1975

レコード時代には世界で最も売れたアルバムと言われたこのレコード。「ホテル・カリフォルニア」より前のカントリー・ロック時代のベスト盤で、すべてが名曲。これにはとにかくお世話になった。特に「Take It Easy」「Lyin' Eyes」「Tequila Sunrise」「Peaceful Easy Feeling」「Best of My Love」などのモロにカントリーな曲は本当に好きだった。

大学時代のある時期、何故かウエストコースト音楽のマイブームがやってきて、特にカントリー・ロック系のものを選んでよく聴いていたことがある。中でも最もよく聴いたのがこのイーグルスのベスト・アルバムとリンダ・ロンシュタットの「Heart Like A Wheel」(1974)だった。どちらも王道のド真ん中。やはり凄いものは凄いのだ。ウエストコーストのカントリー・ロックというのはもうそれだけでひとつのジャンルになってるほどいろんなアーチストがいるけど、当時は有名なものばかり聴いてた気がする。

この手の音楽をそれほどマニアックに追求することが無かったのは、一方で本物のカントリー音楽があったからで、カントリー・ロックでカントリー感を体験するよりも本物のカントリーの方が凄いという当たり前のことなのだ。FENの「アメリカン・カントリー・カウントダウン」を聴いたりしてカントリーを追求しはじめ、結局ハンク・ウィリアムスに到達することになるわけだが、それはまた別の話なのでここでは置いておく。

僕にとってイーグルスとは初期のカントリー・ロックの時代がすべてで、「ホテル・カリフォルニア」以降は全く興味ない。そのカントリー時代の中でも名曲を揃えたのがこのベスト盤。僕がこれらを聴いてた80年代末頃、あのガース・ブルックスがカントリー界で衝撃のデビューを果たすが(FENなどでは大騒ぎだった)、これらのイーグルスの曲の方がカントリーとして出来がいいのではないか。

そういえば突然思い出したが、当時同じ大学で特に仲の良かったトム・ウェイツのファンの友達に、CSN&Yを教えてもらったこともあった。CSN&Yもまたウエストコーストの王道だけど、当時はイーグルスほどハマらなかったのが不思議だ。ニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」を聴くのはその少し後だった(もっと早く聴いてたらなあと思う)。

にしても、このアルバムの冒頭の「Take It Easy」は本当に気持ちいい曲だなあ。ジャクソン・ブラウンとグレン・フライの共作だけど、アレンジといいコーラスといい、すべてがイーグルスの本質そのもの。そしてウエストコースト音楽の代表みたいなもの。どんな状況下でもこの曲が流れてくるだけで気分がよくなってしまう。


Thierry Condor / So Close(2016)

2016年の新譜なのに内容的にはほぼ80年代AOR。音の感触から何から何まであの時代の音楽なわけで(笑)、かなり最高です。最近聴いたロックの中ではダントツでお気に入り。ちなみにティエリー・コンドルはこのひとつ前のアルバム「Stuff Like That」(2013)でも80~90年代AORのアルバムを出している(こちらはカバーばかり)。

僕の好きなAORってば、ルパート・ホルムズ「Partners in Crime」(1980)(この中の「Him」は小6のときに大好きだった曲で、洋楽ばかり聴くきっかけになった)、クリストファー・クロスのファースト「Christopher Cross」(1979)、ジェームス・テイラー「Dad Loves His Work」(1980)。この3つが僕の基本。すべてベタなAOR。年代が偏っているのは、たぶん自分が洋楽を聴き始めた時期だからだろう。あの時期に接したものはどんなものでも凄く思えた。

で、ティエリー・コンドルのこのアルバムは音の感触的には80年代半ばから後半にかけてくらいの西海岸の音。当時の軽いドラムの音の響きまで忠実に再現していて、とにかくこだわりが凄い。この時代の音もまたイイ(僕の中ではちょうどJ-WAVE開局当時の音として記憶されている)。曲によってはトム・スコットやジェフ・ローバーらのフュージョン・アーチストも参加してたりして、これまた嬉しい。80年代後半あたりになるとマット・ビアンコやバーシアやシャーデーといったややジャジーな音も出てくるけど、あえてそちらには行かず、このベタなAORにこだわるところが素晴らしい。だいたいこのアルバムを何の情報も無く聴けば誰でも80年代後半くらいのアルバムだと勘違いするだろう。とても現代の音とは言い難いけど、そんなことどうでもいいのだ。「ロックミュージック進化論」という本があるが、ロックが進化するなんて幻想だ。ただ変化があるのみ。そして過去のいろんなスタイルの中からひとつに照準をしぼって音を作れるのが現代の強み。ザ・ストライプスのレトロっぷりを見よ(笑)。

AORはアダルト・コンテンポラリーとかシティー・ポップという名でも通っているけど、やはり雰囲気がアダルトでシティーなわけで(笑)、西海岸かニューヨークなわけです。で、ティエリー・コンドルのこのアルバムはジャケからも分かるように、これは西海岸。サマー・セーターを肩にかけてるところなんか少しパロディ感がなきにしもあらずだけど、これくらいが分かりやすくていいのだ。もちろん、音の方もこれくらい分かりやすい。


SCORPIONS / Tokyo Tapes (1978)

最近このアルバムのデラックス版なるものが、未発表テイクなどが加えられてCD2枚組というボリュームになって発売された。先日それを友達に見せてもらったのだがライナーはやっぱり伊藤政則が書いていた(笑)。

で、このアルバムは70年代のウルリッヒ・ロート時代のスコーピオンズのベスト盤的な内容。日本でのライブということでクラウス・マイネがときおり片言の日本語で挨拶したり「荒城の月」を歌ってたりするけど、それもまた良し。最初に「Fly to the Rainbow」を聴いたときにはギターのイントロのかっこよさに本当にのけぞった。このレコード、中2のときに友達が引越すときにもらったのだが、そこから僕はスコーピオンズにハマってアルバムを集めたりしてたものだ。そんなこともあって何気に個人的に重要なアルバムのうちのひとつだったりする。

今聴くとバラード曲なんかは少しあざとさが鼻に付くんだけど、それもまた否定できないというかなんというか。10代のときに好きだった音楽というものは、いつまで経っても否定できないもので、懐かしさフィルターのせいなのか、それがたとえどんなものであってもやっぱり聴けてしまうのが不思議。

さて、当時このアルバムで好きだったのは「Pictured Life」「We'll Burn the Sky」「Fly to the Rainbow」「Polar Nights」など。で、今回ひさしぶりに聴いたら「Steamrock Fever」がやたらと良かった。「Steamrock Fever」はスタジオ録音のバージョン(「Taken by Force」の1曲目)が好きなのだが、このライブバージョンもなかなかいい。

ところでこのアルバムの邦題は「蠍団爆発!!」だが、これ以前のアルバムにはすべて蠍団がつく。ファーストの「恐怖の蠍団」から始まり、「電撃の蠍団」「復讐の蠍団」「狂熱の蠍団」「暴虐の蠍団」とつづく。次の「ラヴドライヴ」からは蠍団は一時休止。だがしかし、2004年から「反撃の蠍団 」ということで反撃が始まり、その後「蠍団の警鐘」「蠍団とどめの一撃」「暗黒の蠍団」「祝杯の蠍団 」という具合につづく。最後の「祝杯の蠍団」ってのはなんかネタ切れ感がなきにしもあらずという感じだが、これは去年(2015年)のアルバムらしい。



Alice Cooper / Constrictor (1986)

シングル曲「ヒーズ・バック」でアリス・クーパーが復活したときは本当に盛り上がった。なにせ僕が中学~高校当時のアリス・クーパーってば完全に過去の人扱いで、実業家になったとかアル中になったとかそんなデマみたいな情報がちょろちょろと雑誌の隅などに出るくらいのもの。日本盤のアルバムはすべて廃盤。せいぜいラジオ番組「渋谷陽一のサウンドストリート」の「廃盤リクエスト大会」の一発目で「スクールズ・アウト」が流れた程度。全くさびしいものだった(ちなみにその「スクールズ・アウト」をリクエストして名前を読まれて翌日学校で恥をかいたのは僕だったんだが)。

せっせと輸入盤で買い集めたLove It to Death (1971)、Killer (1971)、School's Out (1972)、Billion Dollar Babies (1973)、Muscle of Love (1973)、Welcome to My Nightmare (1975)、Alice Cooper Goes to Hell (1976)、The Alice Cooper Show(1977)といった名作の数々を聴いては震え上がり、当時のライブビデオを見ては盛り上がり、地味だけど意外にいいアルバムばかりだった80年代のアルバムなどもたまにを聴いては、今か今かと復活の日を待っていたのだ。そんなところに突然シングルの「ヒーズ・バック」が!そしてアルバム「Constrictor」!このしょーもないレコード・ジャケットを見てアリス・クーパーの完全復活を確信したものだ。

そんなわけでこのアルバムなんだけど、アルバムに先行する形で出た「ヒーズ・バック」のインパクトが凄かった。最初はベストヒットUSAかなんかで流れたMVだった気がする。80年代ポップスの典型のようなシンセ使いまくりの音作りではあるものの何故かこれがアリス・クーパーっぽくてかっこよかった。タイトルもアリス・クーパーの復活にピッタリだったし。で、その後この「ヒーズ・バック」の入ったこのアルバム「Constrictor」が発売になった。

内容はといえば70年代の名作群に比べると全く話にならないものだったんだが、アルバムが出たというだけで満足だったのだ。アリス・クーパーのボーカルの衰えにも目をつぶった(この衰えはちょっと寂しかったな)。「ヒーズ・バック」以外の曲が全部メタルになってしまっていても、とにかくアリス・クーパーが歌ってるだけでよかった。とはいえ、今冷静に聴くと1曲目の「ティーンエイジ・フランケンシュタイン」はなかなかいい曲ではなかろうか。ちなみに最近でもアリス・クーパーはアルバムを出してて、数年前に出た「悪夢へようこそ・2」はなかなかの名作だった。80年代のアリスより全然元気なのが面白い。

「Killer」や、「Billion Dollar Babies」のような名作と違って、この「Constrictor」は作品としてオーラも無いしロックの歴史の中でも語られることはまず無いだろうけど、ファンにとっては復活記念のアルバムとして何気に存在感あるんじゃないのかな。僕は今でもこのアホなジャケットを見ると心が痛む。じゃなくて、心が躍る。 


DAVID BOWIE / Scary Monsters (1980)

デヴィッド・ボウイは死なないもんだと思ってた。昨日「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」や「火星の生活」「怒りをこめてふり返れ」などのミュージック・ビデオを見てて、妙な気分になった。そもそも異次元の住人であるデヴィッド・ボウイに、この地球上の自然法則なんてのが当てはまるものだろうか。今頃「スペース・オディティ」でも歌いながら火星の上空あたりを漂ってそうだ。

中学生のときに持っていたデヴィッド・ボウイのベスト盤LP「Changes Two Bowie」に「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」が入っていて、とにかく当時はこの曲がお気に入りだった。例の物凄いミュージック・ビデオの印象も重なって、とにかくよく聴きまくった。そしてこの曲の入ってるLP「Scary Monsters」も買ってみたのだ。リアルタイムから1~2年遅れくらいだったと思う。ジャケも含め、このアルバムのアートな雰囲気がなんだか好きだった。

このアルバムの中に入ってる「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」はロングバージョンで、イントロと間奏部分が長い。僕はベスト盤「Changes Two Bowie」でのシングル・バージョンで聴きこんでたせいか、長いことこのロング・バージョンに慣れなかったものだ。違和感なく聴けるようになったのは随分経ってから。

B面の「キンダム・カム」という曲も本当に好きだった。これはトム・ヴァーレインのカバーなのだが、とにかくかっこいい。典型的ともいえるトム・ヴァーレインのメロディラインなのに、デヴィッド・ボウイが歌うとすっかりボウイの曲に変ってしまうのだから凄い。一時期はこの曲ばかり何度も何度も繰り返し聴いてたことがあった。このアルバムの中でいちばん好きな曲。ちなみにこのアルバムはA面ばかり派手な曲が並ぶが、B面もかなり良い。

「ゴールデン・イヤーズ」にちょっと似た感じの曲「ファッション」も凄くいい。これは「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」や「スケアリー・モンスターズ」とともにシングル・カットもされたし、ミュージック・ビデオもある。音的にはいかにもトニー・ヴィスコンティといった感じで重い。

この「Scary Monsters」というアルバムはベルリン3部作のすぐ後ということもあってか、全般的に例の重々しい雰囲気がまだ残っているけど(トニー・ヴィスコンティとロバート・フリップがまだいるし)、ニューウェイブ的な軽さや当時のニューヨーク・パンクの持つヒリヒリしたような音の感触などもあって、音的にはベルリン3部作からさらに変化している。70年代的なデヴィッド・ボウイの音を基盤にして、新しい時代(80年代)のニューウエイブの音が暗示されているような感じ。

デヴィッド・ボウイ死去のニュースを知って、真っ先に聴いたのは何故かこのアルバム「Scary Monsters」だった。偶然なんだが、このニュースの前日、自由が丘の某雑貨屋にいたときにBGMで「スケアリー・モンスターズ」が流れてたのだ。その関係でこのアルバムのことがずっと頭の片隅に引っかかってて、なんとなくこれが聴きたかった。


Bob Welch / French Kiss (1977)

言わずもがなのボブ・ウェルチの最高傑作。そしてロック史上に燦然と輝く名盤。これは本当によく聴いた。最も頻繁に聴いたのは高校の頃だったか。とにかく捨て曲無しで、すべての曲がシングルカットされてもおかしくないようなポップさ。

ボブ・ウェルチといえば昔からこれだけが有名だったものだけど、たしかに僕の持ってたボブ・ウェルチのアルバムの中でもこれだけはズバ抜けてた(他のアルバムが地味すぎたということもある)。しばらく聴いてなかったんだけど、数年前にボブ・ウェルチが自殺したときにひさびさに聴きなおし、さらに最近また聴き直してみたら、ちょっと昔と印象が違ってた。自分の記憶の中では砂糖でコーティングされたような印象があったんだけど、今聴くと意外に骨太な曲も多い。バックのストリングス(アレンジはジーン・ペイジ)のせいで甘ったるい印象があったんだなと分かった。

そもそもこのアルバムはPARISのサードアルバムとして作られたものだったそうだけど、PARISよりもメロディアスでポップ。で、そのポップさに中毒性があり、ハマるとなかなか抜けられない。不思議なことに、このアルバムの前にも後にもボブ・ウェルチにはこれほどのポップさは見られない。そういう意味でもこれは代表作でありながらかなり特異なアルバムともいえる気がするのだが。

ボブ・ウェルチは、ギターがかっこいいPARISファーストが一番好きって人も多いだろうけど、僕が個人的に好きなボブ・ウェルチは前作のPARIS「Big Towne 2061」とこの「French Kiss 」。


Suzanne Vega / Suzanne Vega (1985)

昔持ってたアルバムを聴き直してみると、昔の印象のままのものもあれば、中には昔の印象と全く違ってるものなどもある。また、何度も聴いたアルバムはだいたい懐かしい感じがするものだけど、中には全く懐かしさを感じないものもある。で、このスンザンヌ・ヴェガのファーストは何故かあまり懐かしさを感じない。だけど印象は昔のまんま。不思議なもんだ。

というわけでこれ買ったのは高校生のときだったか、そのあとだったか、はっきり覚えてないけど、今考えれば当時聴いてた音楽の中でスザンヌ・ヴェガはちょっと異色。何がきっかけでこれ買おうと思ったのか全く覚えていない。でも、スンザンヌ・ヴェガの細い声が気に入ってたので、なんかのラジオで聴いたんだろうな。このアルバムは短期間だけ集中的に何度も聴いた。そしてセカンド・アルバム「Solitude Standing」(1987年)が出たときに全く聴かなくなった。セカンドアルバムからシングルカットされた「Luka」や「Tom's diner」が癇に障るほど嫌いだったので、ファーストアルバムまで一気に嫌になってしまったのだと思うが、詳しくはよく覚えていない。

ところでスザンヌ・ヴェガは今でもやってるそうで、しかもブルーノート所属だそうな。これにはちょっと驚いた。とはいえブルーノートはもうとっくにそういう普通のレーベルになってしまってるから別に珍しくもないんだけど、アルフレッド・ライオン時代のブルーノートの音が死ぬほど好きな者としてはちょっと寂しいところだ。

このスザンヌ・ヴェガのファーストはほぼフォークなんだけど、1曲目などはバックのシンセ(キーボード)がどこかコクトーツインズっぽくて、今となっては時代を感じる。このアルバムで時代を感じるのは唯一この部分だけ。なんか不思議なアルバムだ。




Whitesnake / Come an' Get It (1981)

黒地に白の文字で「Whitesnake」と書かれたカンの筆箱を中学生のときに使っていたという黒歴史を持つ僕にとってホワイトスネイクは何やら別格の存在感があったのだが、先日ホワイトスネイクが全曲ディープパープルのカバーばかりのアルバムを出したというニュースを見て、何か格落ちしたというか、少し寂しい気分になったというか。とはいえホワイトスネイクは「Slide It In」(1984年)までしか知らないわけで、その後のフランク・ザッパ・バンドのギタリストやらヴァンデンバーグやらが入ってからのアルバムなんてのは全く知らない。もちろん今のホワイトスネイクなんてさらに全く知らない。なのでひょっとしてそのディープパープルのカバーばかりのアルバムとやらは凄いのではなかろうかと思いyoutubeで1曲だけ(トミー・ボーリン時代の「カミン・ホーム」)を聴いてみたのだが、なんだこりゃ?としか思えなかったのが残念。そりゃまあトミー・ボーリンのセンスと比べられたら誰も適わないだろうが、それを差し引いてもなんだこりゃとしか言いようのないものだった(僕のセンスが古いのだろう)。なんでカバー集なんか出したんだろうなあ。

というわけでこのアルバム「Come an' Get It」。2曲目の「ホット・スタッフ」が凄すぎるのだ。昔はこのアルバムをカセットで聴いてたのだが(友達にダビングしてもらった)、「ホット・スタッフ」ばかり繰り返し聴いてた気がする。一般的には3曲目の「ドント・ブレイク・マイ・ハート・アゲイン」が有名だろうが、僕は断然「ホット・スタッフ」だ!(なにもそんなに力むことたあない)。

当時(1980年代初頭)はハードロックがポップス(大衆音楽)だったこともあってか、どのグループもフォリナーやスティックスばりにポップな曲を出してたし、それが当たり前になってたけど、ホワイトスネイクはそこんところ不器用だったというか頑固だったというか、少し曲が地味だった気がする。ちなみにこのアルバムが出た81年ってば、グラハム・ボネットの「孤独のナイトゲームス」やレインボーの「アイ・サレンダー」などのポップなハードロックがヒットした年。ブラック・サバスは「悪魔の掟」を、オジー・オズボーンは「ダイアリー・オブ・ア・マッドマン」を、アイアン・メイデンは「ラスチャイルド」の入った「キラーズ」を、AC/DCは「悪魔の招待状 」を出す。ちなみにつぎの82年にはスコーピオンズの「ブラック・アウト」やジューダス・プリーストの「復讐の叫び」、アイアン・メイデンの「魔力の刻印」なんかが出る。これら派手なアルバム群に比べるとホワイトスネイクの「Come an' Get It」は何だかやっぱり地味な気がするんだが、とりあえず存在感だけは圧倒的だった。あの何だか分からない大物感は一体どこから来るものだったのだろう。やっぱジョン・ロードの存在か?そういえば新譜のディープパープルのカバーばかりのアルバムにはもうジョン・ロードはいないんだよなあ。 


Talking Heads / Naked (1988)

ちょうどこのアルバムが出たときに個人的にファンカラティーナのマイブームだったこともあって、発売後すぐに飛びついたわけなんだけど、ラテン全開のA面ばかり聴きまくってた。おかげでB面はほとんど印象に無い。ちなみにこれはトーキングヘッズのラストアルバム。僕は当時ファンカラティーナを聴くようにこのアルバムを聴いていた。とはいえ、トーキングヘッズはファンカラティーナとは何の関係も無くて、フランスのワールドミュージックの流れを受けてこのラテン調のアルバムが出てきたというだけのこと(この前作「True Stories」の2曲目とかはテックスメックス風だった)。

「リメイン・イン・ライト」(1980年)のところでも書いたけど、僕は昔パーカッションがポコポコ鳴ってるだけで楽しくなってくるという妙な性質があった。大学に入ったばかりの頃なんかは解放されたような気分だったからなのか、パーカッションがポコポコ鳴ってる音楽を探してはよく聴いていたものだ。でも、不思議と本格的なラテン・ミュージックにはハマらなかった。サルサのウィリー・コロンとか、全然無理だったし。ちなみに何故か今でも本格的なラテンはいまいち苦手で、せいぜいジャズ経由のニューヨーク・ラテン系音楽が聴けるくらい。口ヒゲを生やしてマラカス持ってシャカシャカやってる姿が思い浮かんでしまってどうも・・・(こんなイメージは偏見だろうか?笑)。

ところがこのアルバム、いきなりマンボというか典型的なラテンで始まるのだ。バックはパリのミュージシャン達ということだそうだが、なにやら口ヒゲを生やしてマラカス持った陽気な人がトロピカルな舞台で踊ってそうな音が満載。バックにはレコーディングした現地のフランスのラテン・ミュージシャンなどが揃っている。ボンゴやらコンガやらもポコポコを鳴りまくっていて、聴いてると頭がボーっとしてきて何だかどうでもよくなってくる。がしかし、曲調はやっぱりあのトーキングヘッズ調なのだ。もしブラスとパーカッション類が無かったらファーストやセカンドでのあのアクの強い音楽がそのまま出てくるだろう。骨格は全く変わっていない。

ところでトーキングヘッズといえば思い出すのが渋谷陽一vs今野雄二。当時トーキングヘッズを絶賛する今野雄二に渋谷陽一が噛みついてたわけだが、渋谷陽一は今でもトーキングヘッズが嫌いなのだろうか。少し前にイーグルスが来日した際に渋谷陽一は見に行ったそうだが、たしか渋谷はカントリーロックとか大嫌いじゃなかったっけかなあ(笑)。復活したイーグルスはやっぱりあのカントリーロックに戻ってた気がするんだが・・・。そんな感じでトーキングヘッズもアリとかになってるんだろうか。どうでもいい話だけど、中学・高校時代にロッキング・オンを毎月読んでサウンドストリートを毎週聞いてレコードを買うときの指標としていた者としてはちょっと気になるところです。 


DAIVD BOWIE / The Man Who Sold the World(世界を売った男) (1970)

これ、高校生の頃の一時期は最も好きなアルバムだったことすらあるんだけど、当時売ってた日本盤レコードのジャケットがオリジナルと違ってたので、なんだかいつも中途半端な存在感だったことも確か。ちなみにオリジナル・ジャケットは今CDで普通に使われているもので、CD化されたときにはオリジナル・ジャケになってて本当に驚いた。ちなみにオリジナル盤は当時レコード屋ではいつも高値が付いてて、新宿西口の新宿レコードなどでは壁に飾ってあったりしたものだ。友達がそのオリジナル盤を1万円くらいで買ったときにはビックリした。

いつだったか、「世界を売った男」をカバーしたバンドがいて、それがラジオから流れてきたときにはちょっとなんだかなあって思ったものだ。大好きな曲だっただけに僕の感想も相当辛口で、なんでこんなにダサいんだ!とかなり頭に来たのはよく覚えている。アレンジはだいたい同じだし歌い方も似たような感じだったものの、デヴィッド・ボウイのバージョンにある怪しげな空気感みたいなものが全く無くて、なんだか魂を抜かれた曲のように感じたものだ。あの空気感こそが「世界を売った男」という曲のすべてではないのか(トニー・ヴィスコンティの手腕も凄かったんだろうな)。

さてこのアルバム、「世界を売った男」以外にも凄い曲がいくつもあって、中でも「セイヴィア・マシン」と「オール・ザ・マッドマン」が特に好きだった。どちらもミック・ロンソンのギターがかっこいい。というかこのアルバムは全般的にミック・ロンソンの存在感が物凄い。ひさしぶりに聴いてみたらB面ラストの「スーパーメン」も凄く良かった。70年代のデヴィッド・ボウイにはつまらない作品がひとつも無い。


The Police /Reggatta de Blanc (1979)

このアルバム「白いレガッタ」はもう出だしがかっこよすぎ。今聴いても滅茶苦茶かっこいいと思う。唐突なイントロからして気持ちいいし、小気味良いドラムもベースもとてもいい。でも僕が最初に好きになったポリスの曲は「ドゥ・ドゥ・ドゥ・デ・ダ・ダ・ダ」(1980年「ゼニヤッタ・モンダッタ」収録)だった。

「ドゥ・ドゥ・ドゥ・デ・ダ・ダ・ダ」の日本語バージョンというのが昔あったのだ。たぶん僕が中1のときだったと思う。「夜のヒットスタジオ」にポリスが出演して、日本語バージョンの「ドゥ・ドゥ・ドゥ・デ・ダ・ダ・ダ」を歌った。来日記念に日本語バージョンも作ってしまったってことだったんじゃないのかな(シングルでも日本語バージョンが売ってた気がする)。このときのテレビのインパクトは相当なもので(今でも鮮明に覚えてるほど)、なんでこんなおかしな日本語でわざわざ歌っているのか?と不思議でしょうがなかった。片言の日本語で歌うポリス(スティング)はなんか気持ち悪かったけど、妙にこの曲は好きだった。ちなみにどうでもいい話だが同時期に所ジョージの「Do!Do!Do!」と言う変な曲があった(テレビ東京「ドバドバ大爆弾」のオープニングテーマ&ドンパッチのCM曲)。また同じ時期にSONYからサウンド・センサー・Do!というオーディオ・コンポーネントが発売された。

で、そのすぐ後にアルバム「ゴースト・イン・ザ・マシーン」(1981年)が出た。そのときにNHK-FM(たぶん)でポリス特集があって、このときにポリスの曲が沢山流れたのだ(これをカセットテープにダビングしたのを今でも持っている)。「孤独のメッセージ」を最初に聴いたのはたぶんこのときだったんじゃないかな。いや、その前にベストヒットUSAとかのテレビで見てたかもしれないけど、ちゃんと聴いたのはこのラジオだったと思う。

そんなわけでこのアルバム「白いレガッタ」はカセットテープで半分くらいの曲を持ってただけ(ラジオでは全曲流してくれなかった)。中でも最初の2曲、「孤独のメッセージ」と「白いレガッタ」がやたらと気に入ってて繰り返し聴いた。アルバムを通して聴いたのはかなり後になってから。アルバムとしては「ゴースト・イン・ザ・マシーン」のつぎに好きだな。


PIGBAG / Dr.Heckle and Mr. Jive (1982)

このアルバムはファンカラティーナに凝ってた大学1年生の頃にウォークマンでよく聴いていた。テレビCMか何かでPIGBAGの「パパズ・ガット・ア・ブラン・ニュー・バッグ」が流れてそれが気に入ってこのファーストアルバムをカセットにダビングしたんだと思うけど(たぶんレンタルレコードの「友&愛」で借りてきた)、このアルバムには「パパズ・ガット・ア・ブラン・ニュー・バッグ」は入っていない。

PIGBAGにしてもRIP RIG & PANICにしても、よくジャズとパンクの融合なんて言われるけど、当時の僕はそんな意識などまるで無くて、単にラテン的でノリがいいから聴いてただけなのだ。MATT BIANCOとかBLUE RONDO A LA TURKなんかと同じように聴いてた。とはいえPIGBAGはあまりファンカラティーナっぽくなくて、ブラスとダブとロックみたいな感じ。単に1曲目のノリのよさがなんとなくラテン気味だったから気に入ってたのかもしれない。

PIGBAGを聴く人はPOP GROUPやRIP RIG & PANICも聴くと思うんだけど、僕はそちらはほぼ聴いていない。ラジオで聴いて「ふーん」と思った程度だった。当時はラテンなノリを求めてたのでダビーなヘヴィさは重すぎたのだ。

ところでPIGBAGやRIP RIG & PANICというと、「たけしのスーパージョッキー」を思い出す。この番組にPIGBAGの曲が使われてたりしたのだ。CMにいくまでのジングルとかで使われてたように思うけど、正確には思い出せない。ちなみにこの番組ではアドミラル・ベイリーの「Big Belly Man」なんかも流れてて、選曲センスがよかった記憶がある。

テレビやラジオで聴いたことがきっかけで聴くようになった音楽ってのは結構多くて、たとえば中学生のときにミュージックライフのラジオCMで使われてたGフォースの「You」なんかは強烈に覚えている。あのCMのせいでGフォースのアルバムを探しまくったハードロック・ファンは多いと思う(聴いてガッカリした人もまた多いのではないか)。僕も当時探しまわったけどぜんぜん見つからなくて、結局友達に見つけてきてもらった。見つかったときはもう高校生とかになってたんじゃなかったかなあ。また、小学6年生のときに何かのテレビCMに使われたアバの「チキチータ」がすっかり気に入ってしまいアバのベスト盤レコードを買ったこともあった。大学生のときには越前屋俵太のオールナイトニッポンでたまたま流れたボブ・マーレーの「ジャミン」が気に入り、その後すぐにボブ・マーレーのLP「エキソダス」を買って、レゲエにハマりまくるきっかけになった。他にも小学生のときにやってたテレビ(丸井あの街この街)で流れてたボブ・ジェームスの「テイク・ミー・トゥ・ザ・マルディグラ」とか、中学か高校くらいの頃にテレビの天気番組か何かで使われてたアール・クルーの「ドク」とか、数えたらキリがない。ちなみにCM曲で気に入ったものの誰の何という曲なのか分からずじまいだったというものもある。中学生のときにやってたCM曲で、ブラスのインストもの。今だにあれが何だったのか分からないし、今でもずっと気になっていて探している。 


TOTO / Turn Back (1981)

僕の洋楽体験は、中1の終わりごろTOTOの「グッバイ・エリノア」を聴いてから大きく変わる。当時はレコードでサイモン&ガーファンクルとかビートルズとかスティービー・ワンダーとか、その手のものばかり好んで聴いてたんだけど、ラジオで流れる洋楽のヒット曲なんかもそれなりにチェックしていたのだ。カセットテープでエアチェックしながらラジオを聞くわけで、気に入った曲なんかはテープで何度も聴いたりしてた。だいたい、洋楽にさっぱり詳しくない時期なので、どれもこれもそれなりに面白く聴ける。で、そうこうしてるうちに何かの番組で「グッバイ・エリノア」が流れたわけだが、何故かそのとき他の曲とは違った感触というか、妙にかっこいい感じがあったので、この曲を何度もテープで聴いてたのだ。でもこれが誰の何という曲なのかが分からなかった。曲紹介の部分をカセットで取り逃したのかFMレコパル等に曲目が載ってなかったのかよく覚えてないけど、何故か演奏者が分からなかった。で、あまりにこの曲が気になるのでこのアーチストが誰なのかを突き止めようと、ランダムにラジオの音楽番組をいろいろチェックするようになったのだ。そんなとき、たまたまやってたハードロック特集の番組でレインボーの曲「アイ・サレンダー」が流れ、これはなんか似てる!と思ってレインボーのアルバム「アイ・サレンダー」を買うことになる。で、何故かこのアルバム「アイ・サレンダー」をめちゃくちゃ気に入ってしまい、進む道を誤ることになる。

そんなことはどうでもいいんだが、あのときラジオから「グッバイ・エリノア」が流れて来なかったら、ひょっとしてハードロックに足を突っ込むことは無かったかもしれないなあ、なんてことも思ったりする。何を間違えたのか、TOTOを聴いてレインボーを買ったのが運の尽き。レインボーを気に入ってしまってホワイトスネイクだのスコーピオンズだのブラックサバスだのへと向かっちゃうんだから恐ろしい。最終的にはキャプテンビヨンドの幻のファーストアルバムを求めてあちこちの中古盤屋を放浪するという、廃人への道が待っていた。

それはそうと、何故「グッバイ・エリノア」にそんなに反応したのかが今となってはよく分からない。ただ、覚えているのは、当時聴いてた洋楽とはちょっと違った音の響きがあったこと。今から思えばこれは単にAOR的な感触ってことなんだろう。僕は6年生のときにルパート・ホルムズの「ヒム」がお気に入りだったし(これはAMラジオの電リクをたまたまエアチェックしてて知ったもの)、中1の前半あたりではクリストファー・クロスの「Ride Like the Wind(風立ちぬ)」がお気に入りだったので、なんとなくそこらへんのAORつながりでピンと来たんだろう。とはいえ「グッバイ・エリノア」はそんなにAORでもないかもしれないが。とりあえずAOR的な響きを嗅ぎ取ったようだ。また、この響きと同時にかっこよさも感じてたわけで、これはギターのインパクトやドラムの激しさといったところに反応したんじゃないかな。こういうのはやっぱりどこかハードロック的なわけで、後のハードロック趣味へと繋がるものだったようだ。

というわけでこのTOTOのサードアルバム。実はこのアルバムは買っていない。結局「グッバイ・エリノア」がTOTOだと分かった頃にはすでにハードロック病に感染しており、まことに遺憾ながら遅かった。しかも、なんか当時はTOTOはダサく感じたもので、どうもアルバムを買う気にならなかったのだ(売れてるものはダサく感じたのだ。ビリー・ジョエルとかジャーニーとかも)。今思えばTOTOからAOR方面へと進んで行けば、全く違う音楽体験の10代を過ごしていたかもしれないとか思う。TOTOのデヴィッド・ペイチの父親は西海岸ジャズのピアニスト兼アレンジャーのマーティー・ペイチなので、マーティー・ペイチ経由でウェストコースト・ジャズへと行ってたかもしれない。あるいはスティーブ・ルカサーのギター経由でラリー・カールトンやリー・リトナーといったギター・フュージョンへと行ってたかも。あるいはTOTO結成のきっかけとなったボズ・スキャッグスなどを経由してAORを極めていたかもしれない。

で、このレコードは買わなかったけど、だいたいの曲はカセットでエアチェックして持っていたようだ(だいたい知ってたので)。自分にとっていろんな意味で分岐点となった「グッバイ・エリノア」なんて「アイ・サレンダー」とともにほんとに懐かしくてしょうがない。ちなみにTOTOのアルバムとしては、よりAOR色の強い最初の2枚の方が出来がいいように思う。

で、やっぱり思うのだが、TOTOの音楽とレインボーの曲「アイ・サレンダー」はどこか似ている。リッチーは当時TOTOみたいなのがやりたかったんじゃないのか。ボーカルをジョー・リン・ターナーにしたのもなんかアヤシイ。特にこのアルバム「Turn Back」の2曲目「イングリッシュ・アイズ」と「アイ・サレンダー」はよく似ているんだよなあ。


Jackson Browne / For Everyman (1973)

1曲目があの「テイク・イット・イージー」。イーグルスでおなじみのあの「テイク・イット・イージー」。イーグルスのは1972年のイーグルス・ファーストに収録されている。そもそもこの曲はジャクソン・ブラウンとグレン・フライの共作。とはいえ実際はジャクソン・ブラウンがグレン・フライに上げた曲だとされる(だいたい曲調が完全にジャクソン・ブラウン的だ)。このジャクソン・ブラウンのアルバムに入ってるほうの「テイク・イット・イージー」はイーグルスのカバーというよりも、イーグルスに上げた曲を1年後に自分でもやってみた的なものなんだろう。なのでイーグルスのバージョンとともにジャクソン・ブラウンのバージョンもまたオリジナルみたいなものだ。

ドゥービー・ブラザーズの後期の代表曲「ホワット・ア・フール・ビリーブス」がマイケル・マクドナルドとケニー・ロギンスの共作で、ドゥービーのバージョン(1978年「Minute by Minute」収録)とケニー・ロギンスのバージョン(1978年「Nightwatch」収録)のふたつがあるわけだが、ウエストコースト・ロックを代表するイーグルスとドゥービーが、どちらも有名曲が他アーチストとの共作でどちらもふたつのオリジナルバージョンがあるっていうのがなんか面白い。そして「テイク・イット・イージー」は一般的にはイーグルスのバージョンしか知られていないし、「ホワット・ア・フール・ビリーブス」はドゥービーのバージョンしか知られていない。

というわけで、このアルバム「For Everyman」に入ってる「テイク・イット・イージー」はそんなに有名では無いわけだけど、僕は大学時代にこれをよく聴いてたことがある。イーグルスのバージョンより力が抜けてて、ちょっと内省的。ジャクソン・ブラウンの曲はだいたい内に向かっている(この曲をあれだけ明るく演奏したイーグルスはやはりスゴイ)。全体に漂うスチールギターの浮遊感が曲の雰囲気を決定していてここがイーグルスの元気いっぱいの演奏との決定的な違い。

ところで2008年に出たジャクソン・ブラウンのアルバム「Solo Acoustic Vol.1」のラストに「テイク・イット・イージー」が入ってて、ギター一本による弾き語りなのだが、面白いことにこれがイーグルス・バージョンの方のアレンジだった。僕なんぞは最初聴いたときに「おおっっ!!」とやたらと盛り上がった。客の方もよく分かってて、観衆がそろってラストの部分にハミングを入れる(このパートはイーグルス・バージョンにしかない。ここだけグレン・フライが付け足したってことなんじゃなかろうかと推測するんだが…)。この客の反応の呼応するかのようにジャクソン・ブラウンもハミングを入れる。やっぱり僕はイーグルス・バージョンの方が好きなようだ。

ちなみに、ジャクソン・ブラウンは最初の3枚が圧倒的に好き(72年「Saturate Before Using」、73年「For Everyman」、74年「Late For The Sky」)。どれもウエストコースト・ロックがまだAOR化する前の時代のものだ。


Blue Oyster Cult / Blue Oyster Cult (1972)

ブルー・オイスター・カルトというのは基本的にスペッテンウルフみたいに骨太でワイルドなアメリカン・ロックなんだけど、昔はそこんとこがよく分からなかったもんで、ずいぶん謎なイメージだった。中学3年くらいの頃に2枚組レコード「On Your Feet Or On Your Knees」(1975年)を買い、結構何度も聴いたんだけど、どうにも曖昧なイメージばかりで頭の中のハードロック地図の一体どこらへんに位置づけしたらいいものかいまいち分からず、またどういった系列に属するものなのかとか、どういった文脈で出てきたグループなのかとかもいまいち要領を得なかったのだ。で、そうこうしてるうちにハードロックもあまり聴かなくなっていったりそのレコードも上げちゃったりして、結局ブルー・オイスター・カルト自体曖昧なまま記憶の彼方へと消えかかっていたのだ。

が、5年くらい前だったか、何故か突然ブルー・オイスター・カルトを思い出し、急に聴きたくなった。これが今でも理由がよく分からないんだが、頭の中でブルー・オイスター・カルトの7 Screaming Diz-BustersとかCities on Flame with Rock and Rollという曲の断片がぐるぐると流れてくるもんだから気になってしょうがない。で、70年代から80年代半ばにかけてのアルバムを発作的に全部聴き倒した。そこでようやくブルー・オイスター・カルトの位置づけがおぼろげに見えてきたという次第。

なんでずっとブルー・オイスター・カルトが謎だったかといえば、そもそもは伊藤政則の「ハードロック名曲ベスト20」という記事のせいなのだ。当時ハードロックといえばだいたいイギリスかドイツあたりのグループのことで、たとえば僕の場合はレインボーだのホワイトスネイクだのスコーピオンズだのサバスだのツェッペリンだのユーライアヒープだの、そういったものが王道のイメージだった。で、その記事もその周辺のグループが載ってたわけだし、僕なんかはそこに載ってたグループを順に聴きながらハードロックを知っていったのだが、ここにブルー・オイスター・カルトも載ってたのでそれを頼りに「On Your Feet Or On Your Knees」(1975年)を買ったのだ。ところがこれが他のグループとは明らかに何かが違う。王道ハードロックの様式美みたいなものが薄く、自己陶酔的で抒情的なギターソロみたいなものもあまりない。なんかメロディも不思議な感じだし、ボーカルも他のグループみたいに甲高くてよく通る感じではなく、むさ苦しくてワイルドな感じだし。僕の勝手な先入観でブルー・オイスター・カルトもまたパープルやサバスやスコーピオンズなどと同じ様なものだと思てったわけで、ここらへんがどうにも頭の中で座りが悪かったいうか、曖昧で謎だった理由であったようだ。

そんなわけで、初めて聴いてから30年以上経ってようやくおぼろげに見えてきたブルー・オイスター・カルト。やはり最初の3枚が圧倒的に面白かった。音が丸くなる70年代後半以降もそれなりに面白いけど、ワイルドな初期がやたらとカッコイイ。72年から75年までの3枚のアルバムのベスト的な選曲の「On Your Feet Or On Your Knees」(1975年)もいいけど、圧倒的に凄いのはファーストの本作「Blue Oyster Cult」 (1972年)。中でもCities on Flame with Rock and Rollが最高すぎる。これは相当好き。「On Your Feet Or On Your Knees」(1975年)に入ってるライブバージョンよりもこちらのスタジオ版のほうがかっこいいな。

ちなみにブルー・オイスター・カルトはまだやってるらしく、昨年だったか、イギリスのロックフェスのサイトでユーライアヒープよりも名前がでかく載ってて驚いた。日本ではそんなに人気無かったようだけど、あちらではユーライアヒープよりビッグらしい。


IGGY POP / Soldier (1980)

イギーのボーカルが絶好調のこの作品。イギーの歴史の中ではマイナーな期間に属するものだろうけど、この「Soldier」の前後(「New Values」(1979)「Party」(1981))はかなり凄い。このへんのアルバムは全部好きだ。この「Soldier」、デヴィッド・ボウイがまたまた参加してるのがイイ。ついでに何故かシンプル・マインズも参加している。

僕のイギー・マイブームは18歳から19歳あたり。このアルバムもよく聴いたものだ。特に「I'm A Conservative」って曲が滅茶苦茶好きで、自分で作ってたイギーのベスト・テープでは最初の方に入れてた(昔はカセットテープでいろんなベスト盤を作ったもんだ。電車の中で聴くのにちょうどよかった)。とにかくこのへんのボーカルはぶっ飛びすぎてて今でも好きだな。

90年代以降は全くイギーを聴いていなかったしロック自体も徐々に聴かなくなっていって、90年代後半にはもう全くリアルタイムのロックに興味を失ってしまったのでイギーの動向は全く知らなかったのだが、10年近く前だったか、イギーがまだやってるということを知り(たしかイギーがジム・ジャームッシュの映画に出たのを知ったとき)、しかも何故かパンクのゴッドファーザーなどと痛い事を言われてしまってることを知り、かなり驚いたことがあった。映画「トレインスポッティング」で「ラスト・フォー・ライフ」が使われたれたことでイギー人気が復活したとかいう話も何かで読んだ気がするけど、昔から「ラスト・フォー・ライフ」を知ってる者にとってはむしろそんな程度で人気復活するってのにも驚いた。ちなみに僕も昔「トレインスポッティング」を見たけどあまり印象に無い。最初の部分に「ラスト・フォー・ライフ」が流れてきてなんだか盛り上がったことだけ記憶しているが。

で、このアルバムSoldierは「ラスト・フォー・ライフ」みたいなキャッチーな曲は無いけど、ちょっと変な曲が集まってて面白い。名盤「愚者 (idiot)」もなんだか変な曲ばかりだけど、イギーの面白さはこの変さ加減にあるのかもしれない。ストゥージズ時代のまともさはソロになると消えていくけど、そこがいいのだ。


Rush / Signals (1982)

ラッシュでよく聴いたのは有名な「2112」と「ムーヴィング・ピクチャーズ」とこの「シグナルズ」だった。ハードロック臭のあまり無いこの「シグナルズ」はなんだか妙にニューウェイブっぽくて新鮮な気がしたもんだ。たぶん最初は「2112」みたいなハードロックを期待して手に入れたのだと思うけど。1982年のアルバムだからこれは当時リアルタイムで買ったんじゃないかな。

ひさびさに聴くとやはり1曲目がよかった。いかにも80年代的なシンセと浮遊感あるボーカルが妙に懐かしい。昔はこの曲ばかり聴いてたようで、他の曲には何も懐かしさなど感じなかった。というか全く覚えて無い曲もあった。

ラッシュの立ち位置ってのが当時からいまいちよく分からなかったんだけど、結局なんだったんだろうな。当時はブルー・オイスター・カルトもラッシュなどと同じように立ち位置が不明で、なんかイメージしにくい所があった。ラッシュはどこかプログレっぽさがあったからかもしれない。ライナーとかに詳しいことが出てたのかもしれないけど何も覚えてない。そんな中でこのアルバム「シグナルズ」はもろにニューウェイブの流れの上にある音だったのですんなりと入り込めたんじゃないかな。


Manowar / Battle Hymns (1982)

友達に教えてもらった1枚。もらったカセットテープでよく聴いた。とにかく最初の曲と最後の曲が凄かった。この2曲しか覚えていないほど印象深い。当時。レインボーとかホワイトスネイクとかブラックサバス(ロニー時代)とかスコーピオンズとかジューダスとかそういう大御所がハードロックのスタンダードだった中で、何故かこのマノウォーは少し新鮮に聴こえたものだ。ハードロックからメタルへの移行途上の音楽みたいなものだったんだろうか。実を言えばメタルには全く興味無いのでそこらへんよく分からないんだが。

このアルバムはたしかマノウォーのファーストだったと思うけど、マノウォーはこの後どうなったのだろうかと少し調べてみたら、まだやってるらしい(笑)。てっきりこのアルバムだけの一発屋として消えたものだと思ってた。この後マノウォーは増々メタルになって、「世界で最もうるさいバンド」の称号を得ているとか(この称号は名誉なんだろうか?)。ちなみに僕が中学2年生の頃は世界で最もうるさいバンドはAC/DCと言われていた。

で、ひさびさに聴いたらやっぱりラストの曲は凄かった。ここまで大袈裟な曲もなかなか無いだろう(笑)。他のメタルが当時どうだったのかほとんど知らないけど、こんなに大袈裟な曲も珍しかったんじゃないかなあ。少なくとも当時の僕にとっては珍しかった。あと2曲目のメタルデイズって曲も凄い。ほとんどヤケクソ気味に「ヘ~ヴィ~メ~タ~デェェ~ズ!」と歌ってるのを聴くと、何か嫌なことでもあったんかなあとか思ってしまう。何はともあれ名作。


Simple Minds / Sparkle In The Rain (1984)

80年代のニューウェイブっていうのは今でこそいろいろとジャンル分けされてるようだけど、当時は十把一絡げに全部ニューウェイブだったわけで、どうにも実体がつかみづらかったものだ。おまけに僕なんぞはちょこっとつまみ食いした程度なので、ニューウェイブってものを体系立って整理出来ていなかった。ウルトラボックスもコクトーツインズもジョイディヴィジョンもデペッシュモードもシンプルマインズもチャイナクライシスもエコー&ザ・バニーメンも、すべてニューウェイブ。要するに古典的な王道ロックじゃなけりゃイギリス系はみんなニューウェイブっぽく見えてたってことかもしれない。いいかげんなものだ。

シンプルマインズのこのアルバムは高校のときによく聴いてたんだけど、毎度のことながらどんなきっかけでこれ買ったのかを覚えていない。やっぱりロッキングオンやミュージックライフのレビューを見たのか、それともラジオで聴いて気に入ったのか。だいたいこの手のニューウェイブはレコード買うまで一体どんな内容なのか見当つかなかった。買ってから全く面白く無いってレコードもずいぶんあったし。

そんなわけでこのアルバム、有名な「ドント・ユー」が入ってる次作「Once Upon A Time」(1985年)ほど知られてないと思うけど、1曲目からしてやたらとカッコイイし、とにかくドラムがドカドカと激しくて気に入ってた。ピアノの音の透明感は、いかにもニューウェイブって感触があって、そこもまた気に入ってた。なのにシンプルマインズで買ったレコードはこれ1枚のみ。これより前のアルバムを買おうとも思わなかったし、この後のアルバムを買うこともなかった。なんか当時、たまにはこんなのも聴きたいなあという程度の気分だったんじゃないかな(笑)。聴きたいものは気分によって左右されるのだ。


Joni Mitchell / Court and Spark (1974)

一時期本当によく聴いてたんだけど(10代の終わりごろだったろうか)、いつも聴くたびに音質が気になってた。どうも全体的に音がこもってるような気がしてしょうがなかったんだけど、当時はレコードが古すぎて磨り減っているからこんな音なんだろうなと思ってた(ちなみにこのレコードは友達が中古盤で買ったものをもらった気がする)。音楽の質からしてどう考えても透き通った音じゃなくちゃおかしいように感じてたものだ。で、結局その後CDとかで聴く機会も無いので、本当の音がどんなものだったのか分からずじまい。そんなわけで僕の中では「コート・アンド・スパーク」はどことなく全体的にこもった感じの音のアルバムなのだ。

渋谷陽一が「ロック微分法」か何かの本でジョニ・ミッチェルの音楽は雪の日の朝のイメージだみたいなことを書いていたけど、そのせいで「コート・アンド・スパーク」を聴くたびに雪の日の朝が頭に浮かんでたものだ。もうはじめの1曲目からして温度が低い。高校生くらいのときというのは読んだ本の影響をまともに受けてしまうから読む本は選ぶべきだったよなあ。間違って渋谷陽一の本なんぞを選んでしまうとこのように妙なイメージにつきまとわれる。こんな本にいちいち影響される頭の悪さの方が問題かもしれないが。

さて、このアルバムはジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダー、ラリー・カールトン、トム・スコットといったフュージョン系のアーチストも参加してて、アルバムそのものもどこかジャジーな雰囲気があったりするんだけど、後年のいかにもって感じではなく、このアルバムではまだあくまでフォーク・ロック的なスタンス。ジョニ・ミッチェルはこれくらいの感触が一番いいように感じるんだが。


(文:信田照幸)


ロック(その1その2その3その4その5その6

HOME


inserted by FC2 system