<SAX/その2>



WAYNE SHORTER / MOTO GROSSO FEIO (blue note/1970) 

ウェイン・ショーター(ss,ts)チック・コリア(marimba,ds,per)ロン・カーター(cello,b)ジョン・マクラフリン(g)デイヴ・ホランド(b)ミロスラフ・ヴィトウス(b)Michellin Prell(ds,per)1970年録音
このひとつ前が「スーパー・ノヴァ」(1969)。ひとつあとが「オデッセイ・オブ・イスカ」(1970)。このアルバムは「スーパーノヴァ」ほど形式があるわけでは無いし、「オデッセイ・オブ・イスカ」ほどフリーでも無い。つまり過渡期にある作品。「スーパーノヴァ」のラストの曲「More

Than�Human」の延長線上にあるかのような作風。ドラムはMichelin
Prellという謎の19歳のベルギー人女性とチック・コリアが担当。フリーの度合いが高くなってます。メロディーによってリズムが左右されるところなどはのちのウェザーリポートに近いかも。ところで、「モト・グロッソ・フェイオ」とはブラジルのアマゾンのこと。そのアマゾンをサウンドで表現しようというのが本作のコンセプト。デューク・エリントンはかつて楽器で動物達の鳴き声などを表現して「ジャングル・スタイル」と称しましたが、このショーターのアルバムはエリントンのジャングルスタイルの遠い子孫とも言うことが出来るでしょう。

WAYNE SHORTER / ODESSEY OF ISKA (blue note/1970)

ウェイン・ショーター(ss,ts)デイヴ・フリードマン(vib,marimba)ジーン・バートンチーニ(g)ロン・カーター(b)セシル・マクビー(b)ビリー・ハート(ds)アル・ムゾーン(ds)フランク・クオモ(per&ds) /1970年録音
間違いなくショーターの最高傑作。と同時に僕にとってはショーターはここまで。この時期、マイルスグループの面々が良作を連発してますが、この作品は別格。

DEXTER GORDON / Doin' Allright (1961)

デクスター・ゴードン(ts)フレディ・ハバード(tp)ホレス・パーラン(p)ジョージ・タッカー(b)アル・ヘアウッド(ds)1961年録音
ジャケ最高。中身も最高。デクスター・ゴードンのアルバムの中ではこれがいちばん好き。1曲目のかっこよさがすべて。ホレス・パーランが効いているのか。

DEXTER GORDON / GETTIN' AROUND (1965/blue note)

デクスター・ゴードン(ts)ボビー・ハッチャーソン(vib)バリー・ハリス(p)ボブ・クランショウ(b)ビリー・ヒギンズ(ds)1965年録音
ハチャーソンが、この時期にしては珍しくバップっぽくプレイ。このバックメンバーの人選はアルフレッド・ライオンだろうか、あるいはデックス本人だろうか。大御所プラス若手、という布陣。

BOB MINTZER / Quality Time (1988/TVT jazz)

ボブ・ミンツァー(ts,ss)ピーター・アースキン(ds)フィル・マルコヴィッツ(p)ジェイ・アンダーソン(b)
これは物凄い名作だと思うんだけど、昔からどこにも話題に上らないような作品だったりする。ボブ・ミンツァーのさりげないアコースティック・アルバム。なんとも気持のいいアルバムです。イエロージャケッツのときとあまり変わらないけど、こっちのほうがのびのびと吹いてるような気もします。結構な愛聴盤で、無人島盤ジャズ編のベスト20くらいには入りそうな感じ。

GATO BERBIERI / Chapter One : Latin America (1973/impulse)

ガトー・バルビエリ(ts)ラウル・メルケード(quena)アマデオ・モンジュス(indian harp)リカルド・ルー(g)クエロ・パラチオス(g)アダルベルト・セバスコ(b)ドミンゴ・キューラ(per)1973年録音
あまり好きなサックス奏者ではありませんが、ここまでやってくれると無視もできないというか(笑)。一体どんな肺活量してんだ、って言いたくなるくらいに凄いブロウ!おまけにメロディアス!そして哀愁!しかしどこかコミカルというかお笑い芸人というか、どうもギャグっぽいというか・・・(笑)。何はともあれ凄い作品です。


JOE HENDERSON / In Pursuit Of Blackness (1971/Milestone)

ジョー・ヘンダーソン(ts)カーティス・フラー(tb)ピート・イエレン(as,fl,b-cl)ジョージ・ケイブルズ(el-p)スタン・クラーク(b)レニー・ホワイト(ds)1971年NY録音
モダンジャズ混沌期に生まれた熱すぎるアルバム。とはいえブルーノート時代ほどの評価を得ていないのはちょっと寂しい。この時代、何故かみんな熱かった・・・。落ちる寸前の花火というか・・・。

JACKIE McLEAN / One Step Beyond (1963/Blue Note)
ジャッキー・マクリーン(as)トニー・ウィリアムス(ds)グレシャン・モンカー3世(trombone)ボビー・ハッチャーソン(vib)エディ・カーン(b)
17歳のトニーに煽られるようにマクリーンのサックスに勢いが・・・。マクリーンにとっては一番アグレッシブな時期の作品で、代表作のひとつ。


WAYNE SHORTER / JuJu (1964/Blue Note)
ウェイン・ショーター(ts)エルビン・ジョーンズ(ds)マッコイ・タイナー(p)レジー・ワークマン(b)
曲のキャッチーさのおかげ(?)でショーターのアルバムの中でも最も人気のあるもの(たぶん)。ミステリアスといわれるショーターの独自のスタイルが味わえる名作。僕もこれは大好きです。


JOHN COLTRANE / CRECENT (1964/Impulse)
ジョン・コルトレーン(ts)マッコイ・タイナー(p)エルヴィン・ジョーンズ(ds)ジミー・ギャリソン(b)
「至上の愛」よりこっちの方が気に入ってます。コルトレーンの「音」そのものの存在感は抜群。

JOHN COLTRANE / Coltrane (1962/Impulse)
ジョン・コルトレーン、マッコイ・タイナー、ジミーギャリソン、エルヴィン・ジョーンズ
このアルバムからベースにジミー・ギャリソンが加入。トレーン・カルテットの輝かしい歴史の始まり。1曲目からして密度が凄い。

TINA BROOKS / True Blue (1960/blue note)
ティナ・ブルックス(ts)フレディ・ハバード(tp)デューク・ジョーダン(p)サム・ジョーンズ(b)アート・テイラー(ds)
ブルース感覚と哀愁とが混ざり合った魅力。ブルーノート哀愁路線とでもいうのだろうか(笑)。一歩間違えばガトー・バルビエリ、という「ギリギリ感」がいい。ケニー・バレルの世界に近い。

PAUL DESMOND / Easy Living (1963-65/BMG)
ポール・デズモンド(as)ジム・ホール(g)コニー・ケイ(ds)ユージン・ライト(b)
なで肩サックス。ちょっとイージーに聞こえるのはブルーベックが居ないからか(笑)。とはいえデズモンドのメロディセンスは抜群です。ソロの中でも最上のもの。

DEXTER GORDON / Our Man In Paris (1963/blue note)
デクスター・ゴードン(ts)バド・パウエル(p)ケニー・クラーク(ds)ピエール・ミシェロ(b)
パウエルがイイ!とにかくイイ。言わずと知れた名盤。やっぱり何度も聴きたくなるアルバム。

JONNY GRIFFIN / A Blowing Session (1957/blue note)
ジョニー・グリフィン(ts)ジョン・コルトレーン(ts)ハンク・モブレー(ts)リー・モーガン(tp)ウィントン・ケリー(p)ポール・チェンバース(b)アート・テイラー(ds)
"リトル・ジャイアント"ジョニー・グリフィンのゴリ押しハードバップ・アルバム。バリバリと吹くサックスが聴きたいときにはこのアルバム。ケリーの妙な(わざとか?)ピアノが気になるけど、フロント4人のバトルにかき消されます。

JOHN COLTRANE / Blue Trane (blue note/1957)
ジョン・コルトレーン(ts)リー・モーガン(tp)カーティス・フラー(tb)ケニー・ドリュー(p)フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)ポール・チェンバース(b)
ハードバップという音楽のいいところすべてが詰まっている傑作。バップ期のトレーンの代表作でもあり、BNの代表作でもあり。フラーの浮ついたようなソロにも注目。


BENNY GOLSON / Groovin' With Golson (NEW JAZZ/)
ベニー・ゴルソン(ts)カーティス・フラー(tb)レイ・ブライアント(p)ポール・チェンバース(b)アート・ブレイキー(ds)
ほぼジャズメッセンジャーズ作品。ブレイキーがとてもいい。ブルースエット的ゴルソンハーモニーも綺麗です。

CANNONBALL ADDERLEY /Mercy,Mercy,Mercy (Capitol/1966)
キャノンボール・アダレイ(as)ナット・アダレイ(tp)ジョー・ザヴヌル(p)ビクター・ガスキン(b)ロイ・マカーディ(ds)
曲が進むにつれて客のノリが凄くなっていって、B面冒頭で客も演奏も大爆発。モダンジャズというよりもソウルの味わい。ウィーンのザヴィヌルは何故こんなにも黒いのだ?

CANNONBALL ADDERLEY /In Chicago (Mercury/1959)
キャノンボール・アダレイ(as)ジョン・コルトレーン(ts)ポール・チェンバース(b)ウィントン・ケリー(p)ジミー・コブ(ds)
マイルス・グループからマイルスを抜いたメンバーで出来たアルバム。このアルバムと同日録音のポール・チェンバースの「GO」の姉妹版のような感じ。60年代のファンキー大将としてのキャノンボールより、バッパーとしてのキャノンボールの方が好き。特にこのアルバムは別格。

CANNONBALL ADDERLEY /In San Francisco (1959/riverside)
キャノンボール・アダレイ(as)ナット・アダレイ(cor)ボビー・ティモンズ(p)サム・ジョーンズ(b)ルイズ・ヘイズ(ds)
A-2のロッキン系が足を引っ張っているのか、どうもコテコテ系イメージ。とはいえキャノンボールはリズムがどうあれいつものようにバリバリ吹いてて最高なのです。

ART PEPPER / Getting Together(1960)
アート・ペッパー(as)コンテ・カンドリ(tp)ウィントン・ケリー(p)ポール・チェンバース(b)ジミー・コブ(ds)
ペッパーは「ミーツ・ザ・リズムセクション」同様、NYのミュージシャンと共演したものが好き。「ミーツ・ザ・リズムセクション」ではフィリー・ジョー、チェンバース、ガーランドといった当事のマイルス・グループのリズムセクションがバックだったけど、こちらも60年当事のマイルス・グループのリズムセクションがバック。

SONNY CRISS / Portrait Of Sonny Criss (prestige)
ソニー・クリス(as)ウォルター・デイビス(p)ポール・チェンバース(b)アラン・ドーソン(ds)
パーカー派のアルト奏者の中でも最も情熱的なソニー・クリスですが、このアルバムでもかなり凄いことんなってます。2曲目、完全に熱にうなされてるんじゃないかってほどに猛スピード。めくるめくアドリブが快感です。バラード曲もアドリブになるとクセなのかパラパラと吹きまくります。ちなみに本作、録音のせいでベース音がやや小さいため、ハードバップというよりはビパップの味わい。せっかくチェンバースがベースなんだからしっかりとベースも聴きたいところなんですが、やっぱクリスのアルバムはただただサックスの音だけを聴きたい気もするんで、これもアリかな…と。

LOU DONALDSON / Quartet,Quintet,Sextet (blue note /1952-54)
ルー・ドナルドソン(as)ホレス・シルヴァー(p)アート・テイラー(ds)アート・ブレイキー(ds)他
ブレイキー参加のセクステットでの4曲が物凄い。この頃のルードナはパーカー派としてバリバリ吹きまくるスタイルで、54年のジャズメッセンジャーズの「バードランドの夜」でも炸裂するそのアルトはここでも好調。パーカーを少しくつろがせて落ち着かせたような、そんな感じ。

JOHN COLTRANE / Quartet Plays (impulse /1965)
エルヴィン&マッコイのギリギリ感がとてもいい感じ。「トランジション」にも通じる。コルトレーンはさらに変わりつづけようという姿勢。変化というよりアウフヘーベンか。

JACKIE McLEAN / A Long Drink Of The Blues (Fantasy/1957)
この長くだらだらとしたA面は当時のプレスティッジでのセッションなどでもお馴染みのパターン。フラーのボーっとしたプレイが意外にマッチしてます。

JOHNNY GRIFFIN / The Little Giant (Riverside/1959)
ジョニー・グリフィン(ts)ブルー・ミッチェル(tp)ジュリアン・プリースター(tb)ウィントン・ケリー(p)サム・ジョーンズ(b)アルバート・ヒース(ds)
アンサンブルの粗雑さ、いやワイルドさがいかにもイーストコースト的。グリフィンは相変わらずのびのびとパワフル!しかしなんといってもこの「音」が素晴らしい。音圧の凄さはホンカーにも通じる。

SADAO WATANABE / Round Trip (1970.7.15/CBS)
Sadao Watanabe (sn,fl)Chick Corea (p,el-p) Miroslav Vitous (b) Jack DeJohnete(ds)

物凄い形相のナベサダです。珍しいです。時代の音楽といえばそれまでですが、バックの素晴らしさもあってか後世に残る素晴らしい内容になってます。

STANLEY TURRENTINE / Always Something There (blue note /1969)
う~ん、イージーリスニング…。素晴らしい。ストリングスとオケのアレンジはサド・ジョーンズ。プロデュースがデューク・ピアソン。タレンタインのサックスとポップスの相性は抜群にいい。


(文:信田照幸)


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