<SAX/その3>


MASSIMO URBANI / Go Max Go (1981/Philology) 

81年のマッシモ・ウルバーニ・カルテットのライブ音源。音は悪いが迫力は十分に伝わってきます。高音部になるとやけにカッコよくなります。フラジオの使い方が強引なんでしょうか。60年代半ばのジャッキー・マクリーンを思い浮かべてしまうほど。

SONNY CRISS / Jazz USA (1955/imperial)

ソニー・クリス(as)バーニー・ケッセル(g)ケニー・ドリュー(p)ビル・ウッドソン(b)チャック・トンプソン(ds)
う~む…。凄い!!ソニー・クリスのサックスの音は本当にハリがあって実に気持ちいい。この音でバリバリ吹いてくれるもんだから堪らない。B面ラストのスウィート・ジョージア・ブラウンなんか時速300キロくらいで吹っ飛ばして、あっという間に終ってしまいます。

WAYNE SHORTER /Introducing Wayne Shorter (Vee Jay/1959.11.10.)
ウェイン・ショーター(ts)リー・モーガン(tp)ポール・チェンバース(b)ジミー・コブ(ds)ウィントン・ケリー(p)
ショーターのデビューアルバム。ストレートなハードバップ。ショーターなのになぜこんなにもストレートにスイングしてるのかというと、原因はこのリズム・セクション。当事のマイルス・グループのリズムセクションです。ポール・チェンバースの軽快なウォーキングに乗って、気持ちよく飛ばします。ショーターの音楽性から見てこのノリはかなり珍しいのですが、別に当事のショーター以外のメンバーとショーターとの音楽的意識に差があったなんていうことでは無いと思うのです。のちの新主流派的な演奏はこのようなハードバップと土台として徐々に形作られていったのであり(ジャッキー・マクリーンの動きを見れば明らかだ)、ショーターだけにリズム面の多彩さや拍子の頻繁な変更等といった新主流派のアイデアが始めからあって(つまりはじめから天才で)それを求めていた、なんてことは到底思えない。むしろショーターはバックにこのように堅固なものを欲したのではないか。そしてその上でこそショーター独自の奇妙なアドリブラインを試すことができたのではないのかと…。自作曲で固める中、ラストにわざわざ「マック・ザ・ナイフ」を持ってくるあたり(しかもストレートに演奏するあたりに)、そんな気概がうかがえます。それにしてもこのアルバム、どうもポール・チェンバースのリーダー・アルバムに聞こえてしょうがないんですけど…。

WAYNE SHORTER /Second Genesis (Vee Jay/1960.10.11.)
ウェイン・ショーター(ts)アート・ブレイキー(ds)シダー・ウォルトン(p)ボブ・クランショウ(b)
前作録音後、ジャズメッセンジャーズに加入し、そこで揉まれて一年後に録音されたのがこの作品で、前作の2管からうって変わりワンホーンで勝負に出た(?)感のあるセカンドアルバム。もう出だしの「音」が完全にあのショーターの音で、グイっと引き込みます。バックのリズムセクションはジャズメッセンジャーズのファンキーなメンバー。ただピアノがシダー・ウォルトンのためにそんなに黒っぽくならず、ショーターの世界感を演出するのにピッタリといえるでしょう(でもボビー・ティモンズのピアノだったらどうなるのか、ちょっと聴いてみたい気もする…)。

WAYNE SHORTER /Wayning Moments (Vee Jay/1962)
ウェイン・ショーター(ts)フレディ・ハバード(tp)エディ・ヒギンズ(p)ジミー・メリット(b)マーシャル・トンプソン(ds)
ショーター3枚目のアルバム。メッセンジャーズつながりでハバードが入って2管。いっそのことカーティス・フラーも入って3管でやってほしかったところですが、まあそれはジャズメッセンジャーズのアルバムで。一曲一曲が短か目なのでやや物足りない気もしますが、コンパクトにまとまっていてこれはこれで良かったりします。ここまでの3枚のアルバムが僕が選ぶショーターの作品のベスト。(あ、あと「オデッセイ・オブ・イスカ」も入れてもいいか…)

WAYNE SHORTER /Night Dreamer (blue note/1964.4.29)
リー・モーガンの参加が光るアルバムですが、ジャズメッセンジャーズ時代のショーター~モーガンとはちょっと違ってどことなくミステリアス。スイング感がとぼしいと感じるのはメッセンジャーズ時代があまりにも凄かったからなのか、それとも本作がエルヴィンだからなのか…。しかしそれに変わる独特のあの「雰囲気」が出てきました。マイルス時代までずっとつづくこのアヤシイ「雰囲気」は60年代ショーターの専売特許。

WAYNE SHORTER /The Soothsayer (blue note / 1965.3.4)
頭でっかちのショーターはすでに前作「スピーク・ノー・イーヴル」で始まってしまっていますが、このアルバムの頭でっかち度は「オール・シーイング・アイ」ほどでは無いにしろ、結構なものです。しかし本作には6曲目「LADY DAY」という素晴らしい演奏がありまして、これがあるがために好きなアルバムとなってしまっています。本作のポイントはなんといってもマッコイ・タイナーの素晴らしいピアノで、特に「LADYDAY」でのマッコイ!最高です。

WAYNE SHORTER /Etcetra (blue note /1965.6.14.)
ワンホーンのショーターです。ベースのセシル・マクビーがちょっと…って思ってたんですが、あらためてよく聴いてみるとピアノのハービーがちょっと…って感じです。かなり地味な印象のアルバム。

WAYNE SHORTER /The All Seeing Eye (blue note / 1965.10.15.)
誇大妄想もここまでくると立派な芸術ってところでしょうか。オカルトっぽさはJUJUあたりでやめておけばそれなりにミステリアスってことで良かったと思うのですが…。しかしこのアルバム。ショーターの兄貴アラン・ショーターが参加しておりまして、アランの不思議なtPが聞けます。意外にいいかも。

WAYNE SHORTER /Adam's Apple (blue note / 1966.2.3and24.)
ショーターのワンホーン。冒頭のアダムズ・アップルがかっこいい~!リズムが当時流行りのリズムだったりするけれど「サイドワインダー」よりこっちの方がかっこいいかも?

WAYNE SHORTER /Schizophrenia (blue note / 1967.3.10.)
不思議な味わいのアルバム。フラーをもっと生かして欲しかった気もしますが、まあ、ショーターのリーダー作なのでこうなったのでしょう。

WAYNE SHORTER /Super Nova (blue note / 1969.8.29 & 9.2.)
ショーターの奇跡のアルバム。なんで突然こんな美しいアルバムが出来上がったんでしょうか?「ジンジ」でのヴォーカルが邪魔ですが、それ以外は文句ナシの内容。同時期のマイルス・グループ(ディジョネットがドラムの頃)の作品群よりはるかに凄いと思います。何故ショーターが突然ブラジルづいたのか僕は全く知らないんですが(アイアートの影響?)、ブラジルとショーターってかなり相性がいいですね。

WAYNE SHORTER /Native Dancer (CBS / 1975)
どっから聴いてもミルトン・ナシメントのアルバムなんですが、一応ショーターのリーダー作。ハービーのキーボードが邪魔なんですが…、でもローズだし、いいか…。

DEXTER GORDON / Go (blue note)
ソニー・クラーク・トリオを従えての熱演デックスです。冒頭「チーズケイク」は何回聴いても出だしも1音の微妙な遅らせ方が気になって、おかげで全く飽きません。

STANLEY TURRENTINE / Sugar (CTI)
このタイトル曲が好きなのです。かつてN.Y.に行ったときに何故かこの曲が頭にグルグルと回ってまして、こんな曲が頭に流れてたらこれがN.Y.のイメージになってしまうではないか~!!なんてあせってしまったことがあります。まあ、今じゃすっかりこの曲はN.Y.のイメージなのですがね…。実にイージーで素晴らしき作品。

PAUL DESMOND / with Modern Jazz Quartet (1971)
その昔は「東のMJQ」vs「西のデイブ・ブルーベック・カルテット」という構図があったそうですが、このアルバムは ブルーベック・カルテットの看板ポール・デズモンドがMJQのフロントだっていうことでそれなりに話題になったらしいですね。内容はクリスマス・ライブっていう感じで、雰囲気も穏やかです。デズモンドのアルトのまろやかさもミルト・ジャクソンのヴァイブと融合するとさらに魅力が増す感があります。

JOE HENDERSON /Tetragon (1971/milestone)
ジョー・ヘンダーソンの全盛期は間違い無くこの時代、70年代初頭です。「インビテーション」でやや物静かに始まりますが、これはジョーヘンのいつものパターン。ジョーヘンは徐々に調子を上げていくのです。このアルバム自体も曲を追うごとにどんどん盛り上がっていくように出来ています。

坂田明 / 海 LA MER ハルパクチコイダ (1998/DAPHNIA)

坂田明(as) フェビアン・レサ・パネ(p)吉野弘志(b)KUMIKO TAKARA(per,ds)
坂田明のバラード集。「ストレンジ・アイランド」「ルック・アット・ミー」「サイレント・プランクトン」などお馴染みの坂田ナンバーがオーソドックスなカルテットで演奏されます。

坂田明 / SILENT PLANKTON (1991/tokuma japan)

坂田明(as)ビル・ラズウェル(b)他
アンビエント+ジャズって感じの内容。とにかく坂田の曲が素晴らしい。坂田のアルバムの中でも比較的有名なものではないでしょうか?プランクトンのジャケットに坂田の気合いが見られます。このあと坂田は自身もお気に入りの「NANO SPACE ODESEY」という渾身の作品を作り上げます。


ART PEPPER / Meets The Rhythm Section(contemporary/1957)
アート・ペッパー(as)レッド・ガーランド(p)ポール・チェンバース(b)フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
ウエストコーストvsイーストコーストという構図ではありますが、ここでのペッパーはあまりウエストっぽく無い。それだけ自由奔放なのかな。それともバックの3人にのせられたか?

ARCHIE SHEPP / True Ballads (Venus /1997)
実はこのアルバム最初に聴いたときにはかなりの拒絶反応があったのです。シェップのあまりにもわざとらしい表現方法に「おいおい~…現代版サム・テイラーか?」って思ってしまったのでした。しかし最近はこれも違和感なく聴けてしまいます。60年代のシェップとは別人と考えればいいわけです。バックのジョン・ヒックス、ジョージ・ムラーツ、アイドリス・ムハマドがなかなかイージリスニング的なプレイ(これはVENUS特有ですが)をしてるのが素晴らしい(笑)。

LEE KONITZ / Motion(1961/verve)
リー・コニッツ(as)ソニー・ダラス(b)エルビン・ジョーンズ(ds)
ジャズの本質はアドリブにアリ!をそのまま実践したような一枚。何回聴いても素晴らしい。この「Motion」、CD3枚組のものもありますが僕が今持ってるのはオリジナルの5曲入りのもの。そのうち3枚組CDをゲットしてまたレビューいたします。

PHIL WOODS, GENE QUILL, SAHIB SHIHAB, HAL STEIN / Four Altos (Prestige)

フィル・ウッズ、ジーン・クイル、サヒブ・シハブ、ハル・スタイン(as)、マル・ウォルドロン(p)トミー・ポッター(b)ルイ・ヘイズ(ds)

LPに録音日が書いて無いのでよく分からないのですが、50年代の録音です。プロデュースはテディ・チャールズ。パーカー派のアルト奏者4人によるバトル・セッション。4バースの所なんかは一体どこが誰なのか分からなくなってますが、いいんです。パーカー直系のハイテンションのバップフレーズがこれだけ楽しめれば文句なし。パーカーのレギュラーグループのメンバーだったトミー・ポッターの参加が嬉しい。

JOHN COLTRANE / COLTRANE TIME (1958/united artists)
ジョン・コルトレーン(ts)セシル・テイラー(p)ケニー・ドーハム(tp)チャック・イスラエルズ(b)ルイス・ヘイズ(ds)

オリジナルはセシル・テイラー名義で「Hard Driving Jazz」というタイトル。コルトレーンの飽くなき探究心がセシルとの共演を生んだのでしょう。

MICHAEL BRECKER / Wide Angles (2003/verve)

マイケル・ブレッカー(ts)他 プロデュース:マイケル・ブレッカー、ギル・ゴールドスタイン
わざわざQINDECTETと銘打ってあることからも分かるようにグループの全員が有機的に絡み合った音楽になってます。バックのホーンセクションをカラオケがわりに吹くっていうんじゃなくて、ブレッカーのサックスとバックのホーン&ストリングス群が綿密に交感しあうというなんとも濃い音楽です。ブレッカーのサックスよりもむしろバックのほうが聞き物かもしれない、ってほどバックは面白いです。さて、このバックの中でも特に目立つのがアダム・ロジャースのギター。まるでエド・ビッカートやジョージ・ヴァン・エプスなどのように美しい響きのギターです。ボーっと聴いてるとエレクトリック・ピアノの音っぽいですね。曲でいえば好きなのは�@と�C。特にBROADBANDって曲はカッコイイ~ですね。ギル・ゴールドスタインのアレンジはギル・エバンスとクインシーをたして2で割りガンサー・シュラーをふりかけたような、そんな雰囲気です(これじゃワカラン?)。アブストラクトなフレーズが繰り返される曲を冒頭に持ってきたおかげでアルバムの印象もアブストラクトな感じ。でもこの都会的な雰囲気は好き。

CHARLES McPHRSON / Beautiful ! (1975/xanadu records)
チャールス・マクファーソン(as)デューク・ジョーダン(p)サム・ジョーンズ(b)ルロイ・ウィリアムス(ds)
パーカー派のアルト奏者チャールス・マクファーソンのワンホーン・アルバム。ミンガス・グループにいた頃からずっと地味な存在に甘んじていましたが、ここでもやはり地味。がしかし、この地味なバッパーは地味だからこそ面白いのかもしれません。地味とはいえ、アルトの音色なんかは艶やかで味があります。A-1での入り方なんかはパーカーそっくり。こういうのを聴くとパーカー好きの僕なんぞは嬉しくなってしまう。B面ラストではパーカー神が乗り移ったかのようなプレイを聴くことが出来ます。ところで僕はこのレコード聴くたびにどうしてもサム・ジョーンズのベースに耳を奪われてしまいます。録音が生々しいからなのか。サム・ジョーンズという人はバップな人だったのだなあ…。

SCOTT HAMILTON - WARREN VACHE / SKYSCRAPERS (1979/concord)
スコット・ハミルトン(ts)ウォーレン・ヴァシェ(cor,flgh)ハロルド・アシュビー(ts)ジョー・テンパリー(bs)ジョージ・マッソ(tb)ノーマン・シモンズ(p)クリス・フローリー(g)フィル・フラニガン(b)チャック・リッグス(ds)
このレコードの帯には「日本で初の最新鋭カッティング・マシーン、ノイマン(VNSー80)を使用したハイ・クオリティー盤」と書かれています…。ノイマンってなんですか?(爆)。それはそうと、スコット・ハミルトンです。ベン・ウェブスターとコールマン・ホーキンスを足して2で割ったようなサックス。スイング・スタイルってどこかハッピーです。このアルバムも一応モダンなのですが、でもやっぱスコット・ハミルトンなだけにスイング・スタイル。そしてハッピーな雰囲気でいっぱいです。ホーンセクションがバックについてて気分は摩天楼。あ、ちなみにこのアルバムの邦題は「摩天楼」です。ホーキンスやベン・ウェブではちょっとアクが強すぎってときにはこのスコット・ハミルトンがちょうどいいかも。スイング・テナーでありながらも、かなり洗練されているので実に気持ちよく聴けます。特にこのアルバムなんかはバックのホーン群のおかげで余計に洗練されて聞こえます。いかにもコンコードって感じののほほんとしたリズムセクションもナイス。

ROSARIO GIULIANI / Mr. Dodo(2002/videoarts music)
ロザリオ・ジュリアーニ(as,ss)ピエトロ・ルッソ(p)ダリオ・ロシグリオーネ(b)マルチェロ・ディ・レオナルド(ds)

僕の好きなアルトの音っていうのはたとえばパーカー、ソニー・クリス、キャノンボール、ジェシー・デイビスって感じなのですが、このイタリアのロザリオ・ジュリアーニはあと一歩でそれに近付くって感じで、なかなか良い。これでプレイスタイルがビバップだったら文句なしだけど当然のことモードも入った現代的奏法。でももったいぶらずに勢いにまかせてバリバリ吹くところなんか結構気に入ってます。だもんで、バラード曲は飛ばして聴きます…。

ZOOT SIMS / Down Home (1960/Bethlehem)
ズート・スムズ(ts)デイブ・マッケンナ(p)ジョージ・タッカー(b)ダニー・リッチモンド(ds)
所々ガラの悪いかけ声が聞こえるのはやはりダニー・リッチモンドでしょう(笑)。ズートはあまりにスムーズなスイング感なんで印象薄いかも。とはいえ本作はバックで聴ける。

SONNY STITT / 12 ! (1972/muse)
ソニー・スティット(as,ts)バリー・ハリス(p)サム・ジョーンズ(b)ルイ・ヘイズ(ds)
70年代に入ってもバップで貫き通したソニー・スティットのスカっとしたバップ・アルバム。ソニー・スティットやソニー・クリス等の生涯ビバップにこだわったアーチストっていうのは非常にかっこいいのだ。このアルバムはスティットの何度目かの絶頂期に録音されたもの。高速スレーズをさまざまなヴァリエーションで吹き切る姿は自分こそがパーカーの後継者だとでも言わんばかりの凛々しさに満ちています。バックのバリー・ハリス・トリオも聞き物。

JESSE DAVIS / Horn Df Passion (1991/concord)
ジェシー・デイビス(as)マルグリュー・ミラー(p)ルーファス・リード(b)ジミー・コブ(ds)他
1曲目の"C.P.TIME"や6曲目の"LI'L MAC"のようなアップテンポのものが凄く気に入ってます。ジェシー・デイビスはバラードのようなものよりアップテンポの方が好き。パーカーやクリスといったバップ系アルトの伝統をそのまま引き継ぐジェシー・デイビスだからこそ怒濤のビバップをやって欲しい。サックスの音色といいフレーズといいモロ僕の好みのサックス奏者。だからストレートにスドドド~って感じのアルバムを出して欲しい…。このアルバムはバックのトリオがあんまり好みじゃないんだけど、ジェシーデイビスの音だけひろってけばかなりイイ感じです。

CHARLS LLOYD/Forest Flower(1966/atlantic)
チャールズ・ロイド(ts,fl)キース・ジャレット(p)ジャック・ディジョネット(ds)セシル・マクビー(b)

2曲目の途中で飛行機が飛ぶ音が入ってるところなんか呑気な雰囲気でいいですね。

JOHN COLTRANE / Impressions(1961-63/impulse)
ジョン・コルトレーン(ts,ss)エリック・ドルフィー(bcl)マッコイ・タイナー(p)エルヴィン・ジョーンズ(ds)レジー・ワークマン(b)ロイ・ヘインズ(ds)
冒頭の「インディアナ」、訥々とソロを続けるトレーンを阻止するかのようなドルフィーの入り方がなんとも絶妙。あたかも、トレーンが不器用ながらも必死にやろうとしてることをドルフィーがあっさりやってのけているかのようにも感じます。そしてこのアルバムのメイン「インプレッションズ」。この怒濤のサックス・ソロは何度聴いても凄さが伝わってきます。トレーンのソロの組み立て方は一体どこで終るのかという見当が全くつかないのが特徴ですが、でもそこにこそ面白味があるといって良いでしょう。にしてもこのテイク、マッコイの出番が全くありませんね。

SONNY STITT / Sonny Stitt Plays (1956/roost)

ソニー・スティット(as)フレディ・グリーン(g)ウェンデル・マーシャル(b)ハンク・ジョーンズ(p)シャドウ・ウィルソン(ds)
パーカーの死の翌年、「アナザー・パーカー」といわれつづけたというスティットがアルト1本で録音した快作。倍テンポでパラパラと吹きまくる実に気持ちのよいプレイばかりのアルバムです。パーカーとまるっきり違うテンポの緩急のつけ方とフレーズへのストレートな入り方…。この端正さゆえにパーカーのように神格化されることがなかったスティットですが、このようにバリバリ吹いてくれるアルバムはなんとも爽快です。フレディ・グリーン入りのA面が音的に面白い。

JOE HENDERSON / JOE HENDERSON BIG BAND (1992-1996/verve)
ジョー・ヘンダーソン(ts)フレディ・ハバード(tp)ニコラス・ペイトン(tp)チック・コリア(p)ロニー・マシューズ(p)クリスチャン・マクブライド(b)ルイス・ナッシュ(ds)ジョー・チェンバース(ds)アル・フォスター(ds)他

僕の大好きな「RECORDA ME」(ジョー・ヘンダーソン作)が入っているのです。この曲は71年の超名作「IN PURSUIT OB BLACKNESS」(ちなみにこのアルバムではNO ME ESQUECAという曲名になってます)やマッコイ名義の91年のアルバム「New York Reunion」などにも入ってます。この曲のビッグバンド・ヴァージョンが入ってるってだけでこのアルバムはオッケーです。いや、この曲だけじゃなく他のテイクもなかなかいいんですが、なんといってもRECORDA ME!いや~、好きだなあ、この曲。…でもこの曲でのドラム奏者Paulo Bragaにはもうちょっと派手目にやってほしかったかな…。「IN PURSUIT OB BLACKNESS」版ではレニー・ホワイトとスタン・クラークがもうこれ以上ないというくらいの怒濤のノリで迫り、「New York Reunion」版の方ではアル・フォスターとロン・カーターが小技を効かせて静かに燃える炎のごときノリをかましてくれてる、ってのにPaulo Braga(ds)とNilsonNatta(b)ってばずいぶん地味なんですよねえ。でもまあジョー・ヘンのソロが素晴らしいからよしとしよう。

CHARLIE ROUSE & PAUL QUINICHETTE / The Chase Is On (1957/BETHLEHEM)

チャーリー・ラウズ(ts)ポール・クイニシエット(ts)ウィントン・ケリー(p)ハンク・ジョーンズ(p)フレディ・グリーン(g)ウェンデル・マーシャル(b)エド・シグペン(ds)
ベツレヘムといういまいち統一感のあるイメージのないレーベルの、これまた妙な人選のアルバム。レスター・ヤングっぽいプレイのポール・クイニシエットとモンクのアルバムでお馴染みチャーリー・ラウズのチェイス。バトルっていうよりチェイスですね、これは。もろ東海岸の人選なのにウエストコーストっぽいさわやかさがあるのはサクサクと静かに決めるエド・シグペンのせい。ラウズのちょっと変わったアクセントの付け方が目立ちます。実に味わい深いアルバムです。

BRANFORD MARSALIS / The Beautiful Ones Are Not Yet Born (1991/columbia)

ブランフォード・マルサリス(ss,ts)ロバート・ハースト(b)ジェフ・ワッツ(ds) 一曲のみウィントン・マルサリス(tp)
大量のレコードやCDに囲まれていながらもたまに何を聞いたらいいのか分からなくなって、さてどのアルバムを聞こうか…と迷うことがよくあるのですが、そんなときにこのアルバムを選ぶことが多いのです。大体なにを聞いたらいいか迷うときっていうのは濃いものをあまり聞きたくないってときなので、おそらく僕の中ではこのアルバムは「薄い」ってことになってるようです。いや、「薄い」とはいっても内容が薄いっていってるわけではなくて、単にクセがないってことなんです。この現代のジャズジャイアントをつかまえて「薄い」とか「クセがない」とはナニゴトか!とお叱りを受けそうですが、単に僕の中で「薄い」って位置付けになってるだけなので、そこんところよろしく(…って、なんのことやら)。ブランフォードのピアノレス・トリオとしてはこれは「トリオ・ジーピー」以来2作目になります。ややのんびりムードの「トリオ・ジーピー」に比べるとすいぶん余裕がなくなったというか、つんのめってるというか…。

BRANFORD MARSALIS / Trio Jeepy (1989/columbia)

ブランフォード・マルサリス(ts)ミルトン・ヒントン、デルバート・フェリックス(b)ジェフ・ワッツ(ds)

ブランフォードのアルバムの中でも人気のあるものなんではないでしょか、これ。余裕の1曲目からバリバリ吹きまくる10曲目まで。自分のすべてを出しましたってな感じの充実したアルバム。全体に流れるどこかのどかなムードはロリンズの「ウェイ・アウト・ウエスト」を彷佛させます。ピアノレス・トリオとしては次作の「The Beautiful Ones Are Not Yet Born 」の方が好きですが、こちらもなかなか良いですよ。

ART PEPPER / Living Legend (1975/contemporary)
アート・ペッパー(as)ハンプトン・ホーズ(p)チャーリー・ヘイデン(b)シャリー・マン(ds)

1960年の「インテンシティ」以来ずっと沈黙していたペッパーの15年ぶりの復活アルバム。すっかり変わったペッパーです。とにかく凄い。かつてジャッキー・マクリーンがフリーに近付いた頃の演奏スタイルを彷佛させるような気合いの入り具合。それまでのペッパー節ともいえるフレーズも健在ですが、ここではそれもブツ切り状態。特にA-1。ときおり発狂したようにジョー・ヘンダーソンのようなモード・フレーズを織りまぜます。サックスの音色がややペラペラになりましたが、それでも迫力は倍増って感じです。復活後のペッパーはどこか吹っ切れてる感じでいいです。

ROLAND KIRK / Third Dimension (1956/BETHLEHEM)

ローランド・カーク(manzero, stritch,ts)ジェームス・マディソン(p)カール・ブルイット(b)ヘンリー・ダンカン(ds)

非常にエモーショナルな表現をするカークのファースト・アルバム。すでにサックス同時吹きをやってます。音楽的にはジャズではなくR&Bインストです。ロッキンなノリで軽快に飛ばします。カークのルーツを探る上で非常に興味深いアルバム。カークといえば、ジャズに興味の無い人にも「ヴォランティアード・スレイヴリー」「ブラックナス」あたりが大人気ですが、基本的にこのロッキンでR&Bテイストでホンカー系のノリがあるからなんでしょうか。

BRANFORD MARSALIS /Bloomington (1991/columbia)

ブランフォード・マルサリス(ts)ロバート・ハースト(b)ジェフ・ワッツ(ds)
ブランフォードのピアノレス・トリオのライブ・アルバム。曲目はライブ版「The Beautiful Ones Are Not Yet Born」といった感じですが、こちらの方がエキサイティング。15分にも及ぶ一曲目はブランフォードのすべてを出し切るかのような壮絶な展開。ソプラノをバリバリ吹きまくる3曲目は20分もつづく。これほどの濃い内容なのにこのジャケットはなんなんだ!?この最悪のジャケさえなければブランフォードの人気作として君臨してたであろうと思うのは僕だけか?ジャケが与える印象って結構デカイと思うんですが…。まあ、何はともあれ素晴らしいアルバムです。

CANNONBALL ADDERLEY /Nippon Soul (1963/Riverside)
キャノンボール・アダレイ(as)ナット・アダレイ(cornet)ユセフ・ラティーフ(fl,oboe,ts)ジョー・ザヴィヌル(p)サム・ジョーンズ(b)ルイス・ヘイズ(ds)

内容が最高のこのアルバム。なのになんでこのタイトルとこのジャケット…。こんなタイトルじゃなければきっとキャノンボールの60年代の代表作ってことになってたんじゃないでしょうか?いくらなんでもニッポン・ソウルはないよなあ…。しかも浮世絵風ジャケ…。普通にLIVE IN JAPANでいいじゃないか!?ということでこのアルバムですが、とにかくすべてが素晴らしい。1曲目のNIPPON SOULなんてマーシー・マーシー・マーシーにも匹敵する名曲。曲の素晴らしさだけじゃなくて、キャノンボールとナット・アダレイの実に瑞々しい演奏!第2のパーカーとも言われたキャノンボールのパワフルかつスピーディ、そしてダーティな本性丸出しです。2曲目のEASY TO LOVEなんてもっと凄くて超高速で飛ばしまくるキャノンボールに周りがついていくのが精一杯ってな感じのバップ。ルイス・ヘイズとサム・ジョーンズのリズムもとにかく素晴らしい。

ART PEPPER / The Trip (1976/contemporary)
アート・ペッパー(as)ジョージ・ケイブルズ(s)デヴィド・ウィリアムス(b)エルヴィン・ジョーンズ(ds)

まるで60年代半ばのジャッキー・マクリーンのように時折フリーキーな音を発するペッパーは迫力満点。B-3なんかを聴くと音そのものが太くなっていることがはっきりと分かります。また、このアルバムではエルヴィンのプレイにも注目。B-3におけるやや派手目なエルヴィンがやけにかっこいい!

BILL HOLMAN / The Fabulous Bill Holman (1957/coral)

ビル・ホルマン(ts,arr)コンテ・カンドリ(tp)チャーリー・マリアーノ、ハーブ・ゲラー(as)、ルー・レヴィ(p)メル・ルイス(ds)マックス・バーネット(b)他
ウエストコーストらしい端正なビッグバンド・アンサンブルに溶け込んだなめらかなビル・ホルマンのソロがどことなく映画音楽っぽく聞こえます。このいかにも白人らしいストレートさと洗練された音が聞き物。いろどり豊かなアレンジも実に面白く、どんどん景色が変わっていくような音の連なりは快感。

GREG OSBY / Banned In New York (1998/blue note)

グレッグ・オズビー(as)ジェイソン・モラン(p)ロドニー・グリーン(ds)アツシ・オサダイ(b)
とにかくバリバリ吹きまくるライブ・アルバム。冒頭ミディアム・テンポで始まったかと思いきや、オズビーはハイテンションで飛ばします。これがずーっとつづくもんだからたまらない。ジャズはこうでなくちゃ、って言いたくなってくるほど理想的な展開のバップ・アルバム。どうせならピアノレスでやって欲しかった…。M-BASE~3D-Life Styleと脱線(?)していったオズビーも本気を出せばこのとおり。オズビーの金字塔。

KENNY GARRET / Standard Of Language (2003/warner)
ケニー・ギャレット(as,ss)Vernell Brown(p) Charnet Moffet(b)Chris Dave(ds)
まるでキャノンボールがジャイアント・ステップスに対抗してモード全開で作ったかのような、そんな感じの物凄いアルバム。とにかくケニー・ギャレットがバリバリ吹いてます。ケニー・ギャレットのイメージってOTBのせいでイマイチですが、このアルバムのように一心不乱にバリバリ吹いてくれれば文句なし。とにかく凄いです。怒濤のアルバム。

BILLY HARPER / Black Saint (1975/BLACK SAINT RECORDS)
ビリー・ハーパー(ts,cow bell)ヴァージル・ジョーンズ(tp)ジョー・ボナー(p)デヴィッド・フリーセン(b)マルコム・ピンスン(ds)

モード垂れ流しの熱いアルバム。ベースがちょっと軽すぎる(エレキっぽい)のがやや難点。しかしながらビリー・ハーパーの全力疾走的なサックスはいかにもこの時代って感じで面白い。それにしても1曲目の出だし…。きっとこのアルバム聴いた誰もが「ん?エリントンから始まるの?」って思ったんじゃないでしょうか?

SONNY CRISS / Up Up And Away (1968/prestige)
ソニー・クリス(as)タル・ファーロウ(g)シダー・ウォルトン(p)ボブ・クランショウ(b)レニー・マクブラウン(ds)
ギター入りということでなにやら雰囲気が華々しいのであります。復活したタル・ファーロウも絶好調とは言わないまでも素晴らしい演奏を聞かせてくれてます。さてこのアルバム、A面のトップがフィフス・ディメンションの「アップ・アップ・アンド・アウェイ」、B面のトップがボビー・ヘブの「サニー」と、ポップさを強調し、Prestigeも大衆にアピールしようと売る気満々です。ジャズロックなんかも台頭してきたこの時代、作り手もあの手この手でいろいろ考えていたんでしょうね。この時代にこの手のものはやたらと多い気がします。パーカー系のビバッパー、ソニー・クリスは音数が多く熱狂的に盛り上がるアドリブラインが特徴的ですが、60年代後半になってもそのスタイルは全く変わらず。ポピュラー曲でも相変わらずパラパラとうるさいくらいに盛り上げています。「サニー」での過剰なほどのコブシのつけ方なんか実に絶妙で、一歩間違えればサム・テイラーです。いや、間違わなくてもほとんどサム・テイラーです。とはいえB-2の「スクラッブル・フロム・ジ・アップル」ではきっちりバッパーとして主張しております。

CHARLES LLOYD /Of Course ,of course(CBS/1965)

チャールズ・ロイド(ts,fl)トニー・ウィリアムス(ds)ロン・カーター(b)ガボール・ザボ(g)

1965年のチャールズ・ロイドのアルバム。のちの「フォレスト・フラワー」等に見られるようなふわふわした感覚はここにはありません。硬派な音楽です。ロイドのサックスが実に力強い。こんなにハードなサックス奏者だったのに、ヒッピームーヴメントに乗ってか、あるいはロックの影響からか、ああいう人になっていった…。ロイドはA-1,2、 B-4などでフルートも吹いてますが、僕はサックスの方が好み。まさにコルトレーン直系のサックスです。にしても、トニー・ウィリアムスはやっぱスゴイ。このアルバムは1965年の録音。65年ってば、トニーとロンはマイルスのグループでとんでもないテンションの音楽をやってた時代です。あのテンションそのままに、トニーのしなやかで心地よいリズムきざみのドラムが聞けます。これ聴いてると、なんだかマイルスのトランペットが途中から入ってきそうで…。

SONNY STITT/SONNY STITT(1958/Argo)

ソニー・スティット(as,ts)バリー・ハリス(p)ウィリアム・オースティン(b)フランク・ガント(ds)

かつてチャーリー・パーカーに「お前は俺そっくりだな」と言われたこともあるというソニー・スティット。たしかに一見そっくりなのですがよく聴くと実は全く違う。スティットの方がフレーズが豊富なわりにはパーカーのように神扱いされなかったのにはわけがある。そこにはジャズという音楽の本質にかかわる重要な要素が横たわっています。スティットというのはとにかくうまくて、どんな複雑なフレーズも端正に吹きこなし、どんなスピーディーなフレーズも全く破たんもなく一気に吹ききります。しかしながらジャズという音楽は吹奏楽的にうまいとかそういうことはあまり関係ない。うまいだけの印象が残るスティットはその点ずいぶん損をしてます。そしてスティットというのは個性という点がやや薄い。ジャズの巨人とされるパーカー、ロリンズ、コルトレーン、デックス、マクリーン、ショーター、ゲッツ、コニッツ、オーネット…、彼等にテクニックでは優るようなスティットが彼等ほど人気がないというのは、やはり個性の問題か。フレーズの組み立て方は個性的なのですが、そういうのはかなり分かりづらい。やはり端正な一本調子で吹いているという印象が大きいのです。…とはいえ、ここまでバリバリ吹き切るスティットというのはある意味爽快で、特にこのアルバムのようなワンホーンものはとにかく面白いのです。どの時代をとっても同じように一定のレベルをクリアしてるスティットですが、ヴァーヴ等にも録音してたこの時代のスティットの音には何か物凄い勢いを感じます。

JACKIE McLEAN /Let Freedom Ring (1962/blue note)

ジャッキー・マクリーン(as)ウォルター・デイヴィスJr(p)ハービー・ルイス(b)ビリー・ヒギンズ(ds)
このアルバム以降の60年代ジャッキー・マクリーンは大好きです。ジャッキー・マクリーンのフリークトーンはいわゆる感情の自然な発露としてのフリークトーンではなく、かなり冷静にコントロールされているフリークトーンです。サックスをいじったことのある人なら分かると思いますが、音程がコントローンされてるフリークトーンというのはかなり繊細な技術が必要で、音から感じる「力まかせに感情を込めて思いきり吹く」という印象とは裏腹に相当気を使ってコントロールしなければなりません。だから音程まできっちりコントロールされたマクリーンのフリークトーンにはなにか嘘臭いものを感じることも事実。がしかし、フリークトーンはなにも感情の自然な発露でなければならないってこともないわけで、マクリーンのようにこれを単に技術のひとつとして使うのも音楽的には面白いもの。さて、このアルバムはマクリーンがフリーに近付いたときのもので、その最初期のもの。実に生き生きとした音です。この後の「ワン・ステップ・ビヨンド」に繋がるアルバム。マクリーンの独特のくぐもったような音もいい。

SONNY STITT/The Champ(1973/muse)
ソニー・スティット(as)ジョー・ニューマン(tp)デューク・ジョーダン(p)サム・ジョーンズ(b)ロイ・ブルックス(ds)
スティットはアップテンポの曲が最高です。このアルバムのA-1なんか、もう言うことなし。いつでもどこでもビバップをバリバリ吹いてくれるスティットの本領発揮って感じで、とにかく飛ばします。スティットの良さはこのように全速力で飛ばしまくる所にあります。かつてのジーン・アモンズやロリンズらとのチェイスもこの全速力のブロウで渡り合ってましたね。比較的軽いアルバムですがA-1のおかげで好印象。

SADAO WATANABE /Remembrance (1999/verve)

渡辺貞夫(as)ニコラス・ペイトン(tp、flugelhorn)サイラス・チェスナット(p)クリスチャン・マクブライド(b)ビリー・ドラモンド(ds)LOMELO/LUBANNBO(g)ロビン・ユーバンクス(tb)
僕はかなり昔からナベサダの音楽が好きだったのですが(「カリフォルニア・シャワー」なんて何回聴いたことか…)、大好きというほどになったのは実はこのアルバムがきっかけ。このアルバムにハマってからというもの、ナベサダの過去のアルバムをもう一度あらためて片っ端から聴きなおしてみて、そのハートフルさにすっかり虜になってしまったというわけです。だもんで、僕にとってはこのアルバムは何か特別な存在感があります。通算60作目の作品で、フュージョンではなく4ビートのジャズ作品です。曲もすべてナベサダのオリジナル新曲。クリスチャン・マクブライドのベースのノリがとにかく素晴らしく、おかげで全体的に安定している印象。ナベサダのサックスはビバップスタイルになってもいつもどおりハートウォーミングで綺麗なメロディに溢れています。そして何よりもこの個性!ちょっと聴いただけでナベサダだと分かるこの個性的な音。素晴らしい。ナベサダが世紀末に放った大傑作。

JACKIE McLEAN /THE JACKIE McLEAN QUINTET (jubilee/1955)

ジャッキー・マクリーン(as)ドナルド・バード(tp)マル・ウォルドロン(p)ダグ・ワトキンス(b)ロナルド・タッカー(ds)

ジャッキー・マクリーンの記念すべきファースト・アルバム。マル・ウォルドロンの重いピアノ、ドナルド・バードの伸びのあるトランペット、ダグ・ワトキンスのウォーキング、そこにジャッキー・マクリーンのあの音が絡む。55年のイーストコーストはこんなにもカッコよかったのだ。というわけでこのアルバム。この中ではなんといってもA-3のリトル・メロネエが素晴らしい。このアルバムでのマクリーンは所々パーカーのフレーズをそのまま吹いてるところなんかがあったりしてなかなか興味深いものがあります。

COLEMAN HAWKINS WITH THE RED GARLAND TRIO (1959/prestige)

コールマン・ホーキンス(ts)レッド・ガーランド(p)ダグ・ワトキンス(b)スペックス・ライト(ds)

1曲目ではなんだか口の締まりの悪いホーキンスですが…。でもくり返し聴いてたらこれはこれでいいんだという妙な確信に変わってきました。バラード演奏では他の誰もまねの出来ないような円熟の境地。ヨレヨレしてるようでシャキっとしてるようで、危うい感じのホーキンスとは対照的に、バックのガーランド・トリオはいつものように転がるようなキュートなスウィング感。ホーキンスのスウィング・スタイルのテナーとバップピアノのガーランドの微妙な違和感こそこのアルバムの醍醐味。ホーキンスとガーランドは実はもう40年代から一緒に活動してたそうで、ガーランドがマイルス・グループに入るきっかけってのがボストンのクラブでホーキンスのコンボでピアノ弾いてるガーランドをマイルスが見て、誘ったというものらしい。このアルバムはガーランドがマイルス・グループを抜けた翌年のもの。親父ホーキンスの元に帰ってきたガーランドは実にのびのびと演奏しています。


(文:信田照幸)


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