SAX /その5
一番下が最新記事です


DON BYRON / Ivey Divey (bluenote/2004) 

ドン・バイロン(cl, b-cl, ts)ジェイソン・モラン(p)ジャック・ディジョネット(ds)
ロニー・プラキシコ(b)ラルフ・アレッシー(tp)(2曲のみ)

ゴッタ煮音楽のイメージのあるドン・バイロン。最近はテナーサックスを吹いてますが、ドン・バイロンのアルバムでテナーサックスも使われるようになったのはこのアルバムから(1曲だけですが)。で、本作はそのドン・バイロンがストレートアヘッドなジャズを演奏したアルバムです。これがまあ実に素晴らしい。ちなみにマイルスの「in a silent way」のカバーなんてものまである(結構すごい)。

GREG OSBY / Zero.(blue note/1998)

Greg Osby(as) Jason Moran(p) Kevin McNeal(g)��Lonnie Plaxico(b) Dwayne Burno(b) Rodney Green(ds)

あの「3-D Lifestyles」(1993)と「Black Book」(1995)のせいでイメージ悪いグレッグ・オズビーですが、実はその後が物凄い。「Art Forum」(1996)、「Further Ado」(1997)、本作「Zero」、そして名ライヴ「Banned In New York」(1998)、と怒涛の名作を連発する。もはやM-BASEなんていう狭い枠に収まらず、バップもフリーもアバンギャルドもすべて盛り込んだ、とんでもない境地にまで一気に駆け上ります。全編アブストラクトな曲で統一された本作は10年以上経った今でも圧倒的に素晴らしい。もう「3-D Lifestyles」は無かったことにしてあげてもいいのではないか(笑)。 

ABRAHAM BURTON / The Magician (enja/1995)

Abraham Burton (as) Marc Cary (p) Billy Johnson (b) Eric McPherson (ds)

出だしはゆっくりと始まりながら途中やたらと盛り上がる、というパーターンで統一されてます。サックスの鳴りがとてもいいです。バラード主体のアルバムながら何故かバリバリ吹き捲くる印象が残る不思議さ。この手のサックスは結構好きです。 

JOHN COLTRANE / Ascension (impulse/1965)

John Coltrane(ts) Elvin Jones(ds) McCoy Tyner(p) Jimmy Garrison(b) Art Davis(b) Archie Shepp(ts) Pharoah Sanders(ts) Marion Brown(as) John Tchicai(as) Freddie Hubbard(tp) Dewey Johnson(tp)
コルトレーンの代表作のうちの一枚。問答無用の傑作です。なんとも安らぐ音楽。コルトレーンのアルバムの中でも比較的分かりやすいというか、とっつきやすいものでしょう。構成が単純だし、やってることもシンプルだし。複雑に聴こえるのは単に錯覚。音楽コンセプトを単純にすると聴くほうには複雑に聴こえてしまうという不思議。さて、僕 はこのアルバム聴くたびにエルヴィンとマッコイの凄さにやられます。とにかく凄い。尋常では無い 。あくまで定型リズムを崩すことのないエルヴィン。そして安直に不協和音を使わず、和音をつぎつぎに繰り出してホーン群に対応するマッコイ。この二人にとってはこれがギリギリのプレイだったことがよく分かるし、本当に最高のプレイ。翌年 コルトレーンの下を離れてしまうけど、ここまで行ったんだからもういいじゃないか、なんて思ってしまう。翌年からコルトレーン・グループに加入したラシッド・アリとアリス・コルトレーンはこの二人を超えたわけではなく、ただ単に全く違う種類のことをやっただけのこと。 


BOB MINTZER /Canyon Cove (Cheetah Jazz /2010)

Bob Mintzer(Ts, b-cl ,fl) Peter Erskine(ds) Larry Goldings(organ) Judd Miller(7,11,13のみEWI)

ボブ・ミンツァーの新譜はオルガントリオ。これはイイ。ボブ・ミンツァーのビッグバンドやイエロージャケッツ以外の作品(つまりスモールグループでの作品)ではQuality Time (1988/TVT jazz)がとにかく大好きなんだが、それにも迫る程の出来。いつもはあまり興味のないLarry Goldingsもここでは結構いい。3曲だけEWIが加わるけどこれがまた凄くイイ。一部サックスにフルートがかぶさる多重録音があるけどあまり気にならない。ボブ・ミンツァーはたまにこういうのがあるから油断ならないのだ。

Donny McCaslin / Perpetual Motion (2010 / Green Leaf)

Donny McCaslin(ts) Adam Benjamin(p,el-p) Tim Lefebvre(b) Antonio Sanchez(ds) Mark Guiliana(ds) Uri Caine(p, el-p) David Binney(as, electronics)

限りなくフュージョンに近いモダンジャズというか、モダンジャズ寄りのフュージョンというか�。演奏を聴かせるという点ではモダンジャズ寄りか�。どちらでもいいんだけど、ストレートにバリバリ吹くテナーは気持ち良い。今のニューヨークシーンがどれだけエキサイティングかよく知らないんだけど、こういうのを聴くとビバップ以降のニューヨーク・ジャズの伝統の強烈さってのをなんか考えてしまう。Donny McCaslinはストレートアヘッドに吹き捲くるだけでなく、結構攻めていて、3曲目のドラムだけをバックにしたブロウなんかはかなり聞き物。 

Mike DiRubbo / Chronos (Posi-Tone/2011)

Mike DiRubbo (as, ss) Brian Charette (org) Rudy Royston (ds)

アップテンポの曲聴いてると、ああやっぱこれだよな、とか思ってしまうんだが、実はMike DiRubboに関して全く知らない。しかし今さら誰それの影響がとか、そういうのどうでもよくなってしまう。とにかくバリバリとバップを吹き捲くってくれるのが気持ち良くて、そこだけで評価に値する。ハモンド入りだけどソウルジャズではなくあくまでモダン。ミディアムテンポの曲は主役がハモンドに移るような感じがするんだけどそこもなんか面白い。

CURTIS MACDONALD / COMMUNITY IMMUNITY (Green Leaf/2011)

Curtis Macdonald(as) Chris Tordini(b) Greg Ritchie(ds) Jeremy Viner(ts, cl) David Virelles(p) Michal Vanoucek(p) Travis Reuter(g) Becca Stevens(vo) Andrea Tyniec(vln)

Curtis Macdonaldのデビュー作。やけにアブストラクトな曲にアブストラクトなアドリブライン。リズムも変拍子気味。かなり奇妙なプログレッシブジャズ。もちろんバップフレーズなんか出て来ない。トリスターノがあのまま進化していったらこうなるんじゃないか的な雰囲気すらあったりする。少しコニッツっぽさもあるし。音楽から連想される風景が都会的で、そこんところがとてもいい。

HARRY ALLEN / Rhythm on the River (Challenge/2011)

Harry Allen (ts) Warren Vache (cornet) Rossano Sportiello (p) Joel Forbes (b) Chuck Riggs (ds)

ハリー・アレンのサックスはサクサクしてて本当に気持ちいい。ホーキンス系の王道スタイルながら、ハーレムジャズの匂いが無いので意外にカラリとした印象。本作ではウォーレン・ヴァシェが「臭さ」を持ってくるけど、景色がセピア色になるというか古ぼけるというか、やはりハーレムではなく洗練されたモダン・スイング。それにしても5曲目。このハリー・アレンはかなり最高。 

MARIUS NESET / Golden Xplosion(EDITION (RECORDS/2011)

Marius Neset(sax) Django Bates(p) Jasper Hoiby(b) Anton Eger(ds)

6曲目のピアノレスのトリオがあまりにもカッコイイんだが、これ聴くとジャンゴ・ベイツの過剰なキーボードはいらなかったんじゃないか、なんて思ってしまうのだ。でもアルバム単位で考えればジャンゴ・ベイツの全方向的に放射される攻めの音が深みを与えてるのかなあ、などとも思う。これがMarius Nesetの2作目のようだが、サックスだけに焦点を当てたsax+dsのデュオとかsax+b+dsのピアノレストリオ編成のアルバムなんかも聴きたい。

RAVI COLTRANE / Spirit Fiction (bluenote/2012)

Ravi Coltrane (ts, ss)
1,3,4,7,11: Luis Perdomo(p) Drew Gress(b) E.J. Strickland(ds)
2,5,8,9,10 : Ralph Alessi(tp) Geri Allen(p) James Genus(b) Eric Harland(ds) Joe Lovano(ts)

ラヴィ・コルトレーンのアルバムがブルーノートから出た。ここ1ヶ月くらいずっと毎朝これを聴いてるんだが、飽きずに何度も聴けるわけはといえば、スルー出来るから。要するにBGM的に聴き流せるのだ。ほぼオリジナル曲なので、耳タコなメロディーが出てくるわけでもなく、しかも覚えづらいような曲ばかりなのでいつでも新鮮。そもそも聴き流してるので覚えようって気もないんだが、なんとなく新鮮でそこそこいい感じのモーダルな演奏がつづくので、流しっぱなしがちょうどいい。ラヴィの演奏はいつもどおり、滑らかなんだけど記憶に残らないというか、上手いっていう印象ばかり残るというか。むしろLuis PerdomoとGeri Allenのピアノが印象的。あと、ドラムとベースの音質がなんかモコモコしてて、少し惜しい。そこは往年のブルーノート的な音が欲しかった。でも結構いいアルバムです。

PAUL QUINICHETTE / For Basie (presstige/1957)

Freddie Green (g) Paul Quinichette (ts) Shad Collins (tp) Nat Pierce (p) Walter Page (b) Jo Jones (ds)

とにかく何もかもが最高の1枚。ベイシー楽団のPaul Quinichetteがベイシー楽団のメンバーを揃えてやってみたという1957年のアルバム。Freddie Greenがとにかく最高。Freddie Greenのギターの音色だけですっかりベイシー色になるんだから凄いもんだ。Freddie Greenの凄さはベイシー楽団のすべてのアルバムで確認出来るが(個人的にimpulseの「COUNT BASIE and The KANSAS CITY 7」が最高に好き)、このアルバムもまたFreddie Greenの音色が素晴らしくよく出ていて最高(何せアンプを通さないアコースティックギターなもんだから録音によっては音が埋もれがちになるのだ)。あと、部外者のNat Pierce(白人)がベイシーそっくりに弾くのもとてもいい感じ。レスター風のPaul Quinichetteには悪いが、Freddie Greenばかりに耳がいく。

Joe Henderson / Four ! (verve/1968)

Joe Henderson (ts) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds)

ブルーノート時代よりさらにラフになったジョーヘンが素晴らしい。ジョーヘンは別格だ。これは「Tetragon」と同時期くらいのライブ音源。この時期のジョー・ヘンダーソンはもうほとんど無敵。バックがこれまた最強レベルのウィントン・ケリー・トリオ。68年といういろんな意味で微妙な時代ではあるものの、内容的にはむしろ60年代前半あたりまで遡ったバップのストレートな熱さを感じる。この時代のジャズロックやソウルジャズの波なんてまるで知らぬといった感じのケリー、チェンバース、コブのトリオの安定感もさすが。

Grant Stewart / Live at Smalls (Smallslive /2013)

Grant Stewart(ts) Tardo Hammer(p) David Wong(b) Phil Stewart(ds)

NYのライブハウスSmallsでのライブ。ここのライブは以前はSmallsのwebサイトから演奏をリアルタイムでタダで見れたので、土曜とか日曜の午前中から昼過ぎにかけてよく見てたものだ。今ではお金を取られるようになってしまったので見なくなってしまったが。で、このグラント・スチュアートのライブ盤。とにかくサックスの鳴りが凄くて、それだけでもう気持ちいい。ロリンズを敬愛しているとのことだが、テーマ部の音の運び方だけは少し似ているものの、基本的にはあまり似ていない。全体的に平坦で、むしろややモダン・スウィング寄りのノリもあったりする。concordっぽい保守性がまたイイ。この滑らかさはちょっとクセになるので何度も繰り返し聴いたりしてます。ちなみにこのLive at Smallsのシリーズは随分沢山出てるようだけど、僕が聴いたかぎりの範囲ではどれもこれも音のバランスがいい。特にドラムの音の感触は素晴らしく、このグラント・スチュアート盤もドラムの感触が最高。

Benjamin Herman / Cafe Solo (Dox Records/2013)

Benjamin Herman(as) Ernst Glerum(b) Joost Patocka(ds)

ピアノレスのサックストリオ。しつこいようだが、sax,b,dsという編成はかなり好き。で、この演奏、クドいわけでもなく、引っかかりもなく、驚きもなく、聴くというより聴こえて来るという感触。完全に空気。これがイイのだ。どこかのカフェの隅っこの方でさり気なく演奏してる風な感じ、しかも誰も気にも留めないような感じ、それがイイ。コニッツ的なノンビブラートなサックスだからこそ、こういったさり気なさが出せるってことなんだろうか。NYのカフェでこんなのに出会っちゃったらマックスでテンション上がるだろうな�(笑)。ちなみにラスト2曲でピアノが入るがこれはいらない。

Lou Donaldson / Lou Takes Off (blue note/1957)

Lou Donaldson(as) Donald Byrd(tp) Curtis Fuller(tb) Sonny Clark(p) Jamil Nasser(b) Art Taylor(ds)

50年代のルー・ドナルドソンはだいたい全部凄いんだが、特にこのアルバムなんかはその凄さがよく出ているようで、本当に面白い。ドナルド・バード、フラーとの3管にしても、ピアノにソニー・クラークが入ってるところにしても、いかにもブルーノートって感じだけど、この馬鹿みたいな勢いの良さはジャズメッセンジャーズにも張るのではないか。また、ちょうどこの時期にニューヨークに出てきたキャノンボール・アダレイもこの頃はこんな勢いのある演奏をしている(SAVOYの頃)。ルー・ドナルドソンは60年代に入るとソウル度を増していくと同時にどんどん落ち着いた味わい深い演奏になっていくけど、僕は50年代の飛ばしまくるルー・ドナルドソンが好き。

JIMMY WOODS / Conflict (contemporary/1963)

Jimmy Woods (as) Carmell Jones (tp) Harold Land (ts) Andrew Hill (p) George Tucker (b) Elvin Jones (ds)

メンバーの組み合わせが面白い。西海岸のハロルド・ランドにピアノがあのアンドリュー・ヒル。リズムセクションはエルヴィンとジョージ・タッカー。主役のジミー・ウッズはチコ・ハミルトンやcontenporary、pacific jazzなどでやってた西海岸の脇役。で、このジミー・ウッズの珍しいアルバムが意外にイーストコーストっぽい3管ハードパップだったりする。ジミー・ウッズがケン・マッキンタイヤーやドルフィーのような音圧であまりタンギング使わずに吹き捲くるのと、アンドリュー・ヒルの例のハーモニー感覚のせいで、なにやらちょっと面白い。あまり外れないドルフィーみたいな感触か。エルヴィンの怒濤のドラムは、63年ってことを考えればなんだかよく分かるというか。ジミー・ウッズがNYに出ていっていたら�、なんて事を思う。

SCOTT HAMILTON / Remembering Billie (Blue Duchess/2013)

Scott Hamilton(ts) Tim Ray(p) Dave Zinno(b) Jim Gwin(ds) Duke Robillard(g)

初期コンコード時代に比べて無駄な力みのようなものが無くなったような感じになって、何やら風格と凄みが増した現在のスコット・ハミルトン。サックスの鳴りが物凄い。かなり好きです。モダン・スウィング寄りの王道テナー。メインストリーム系のコンテンポラリージャズばかり聴いたあとにこういうの聴くと、ちょっと格の違いのようなものを感じてしまいます。このアルバムはビリー・ホリデイゆかりの曲ばかりを演奏したもの。

ARI BROWN / Groove Awakening (DELMARK/2013)

Ari Brown(ss,ts) Kirk Brown(p) Avreeayl Ra(ds) Dr. Cuz(per)

地味な実力派みたいなイメージのあるアリ・ブラウン。またお馴染みのDELMARKからのアルバム。サックスをふたつ一緒に吹いたりしてるけど、これが無理なく実に自然な感じで、とてもいい。なんといってもサックスの音の独特の鳴りがいい。サックスの音色だけで勝負出来る人が少なくなってきてる中、このように音のインパクトだけで満足出来るアーチストは貴重です。

PAUL QUINICHETTE /Basie Reunion (prestige/1958)

Freddie Green (g) Paul Quinchette (ts) Jack Washington (bs) Buck Clayton, Shad Collins (tp) Nat Pierce (p) Eddie Jones (b) Jo Jones (ds)

57年の「For Basie」の続編ともいえる作品で、こちらもまた超名作。「For Basie」とともに無人島盤候補だ。なんといってもフレディー・グリーンのサクサクしたギターが堪能出来るのが素晴らしい。ホーンアレンジも程よい感じで心地よい。メンバー的に完全に縮小版ベイシー楽団なんだけど、これと同時代のベイシー楽団(アトミック・ベイシー!)に全く引けをとらないどころか余裕があるぶんこちらの方が凄いんじゃなかろうかなんて思ってしまう。

JUSTIN ROBINSON / ALANA'S FANTASY (criss cross/2014)

Justin Robinson (as) Michael Rodriguez (tp) Sullivan Fortner (p) Dwayne Burno (b) Willie Jones III (ds)

BN時代のジェームス・スポールディングか、あるいは肺活量のあるケン・マッキンタイアーか、みたいな感じのウネウネしたサックスを吹くジャスティン・ロビンソンのハードバップ作品。個性派の少ない近年、この強烈な個性はちょっと貴重です。アップテンポの曲がどれも凄い。バラードとかは正直まるで興味無いけど。 

Oliver Nelson / Screamin' the Blues (New Jazz/1960)

Oliver Nelson(ts, as) Eric Dolphy(bcl, as) Richard Williams(tp) Richard Wyands(p) George Duvivier(b) Roy Haynes(ds)

オリバー・ネルソンはR&Bやホンカー系のコテコテな吹き方をあえてすることがあるのでそれほど好みではないのだが、アレンジが滅茶苦茶モダンなのでアルバムそのものは好みだったりする。ここではドルフィーもオリバー・ネルソンに合わせてかコテコテな吹き方をする場面もあったりするもののそんなに気にならない。3管アレンジはかっこいい。ちなみに有名な「The Blues and the Abstract Truth」はこの翌年の作品。 

Glenn Zottola / Reflections Of Charlie Parker (Inner City Jazz/2014)

Glenn Zottola(sax,tp) Don Abney(p) Jimmy Raney(g) Oscar Pettiford(b) Kenny Clarke(ds) Nat Pierce(p) Barry Galbraith(g) Milt Hinton(b) Osie Johnson(ds)

極上のイージーリスニング・ジャズ。半分のトラックにストリングスが入っていて、これがまたラウンジ度が最高。Glenn Zottolaのクセの無い真っ直ぐなサックスも好感が持てる。吹き方が物凄く滑らかで、さすがはシナトラやメル・トーメのバックをやってただけはあるという感じ。また、バディ・デフランコのいた頃のグレン・ミラー楽団にも在籍していたようで、全体的な雰囲気もグレン・ミラー的なスクエアさもあったりする(ライオネル・ハンプトン楽団にもいたようだ)。ホテルのラウンジで流れるような音楽。

Bunky Green / Playin' For Keeps (Cadet/1965-66)

Bunky Green (as) Billy Wallace (p) Cleveland Eaton (b) Marshall Thompson (ds) 他

少しソニー・クリス的な軽い熱狂感のあるサックスのバンキー・グリーンのアルバム。1曲目「Playin' For Keeps」の騒々しい感じが凄く面白い。ヤケクソ気味に大騒ぎするこのピアノは一体どうなってるのだ(笑)。サックスがやかましい上にピアノもやかましくて、聴いてて楽しくなってきます。ラストだけメンバーが違って賑やかなラテンになってますが、それまでのテンションから不自然でもない感じです。 

Stanley Turrentine / Another Story (1969/blue note)

Stanley Turrentine (ts) Thad Jones (flugelhorn) Cedar Walton(p) Buster Williams(b) Mickey Roker(ds)

なんかもうすっかり「Sugar」(1970/CTI)の大物風情パターンがここで出来上がってるわけで、これがブルーノートってのが多少違和感があるというか何と言うか�。ちなみにプロデュースはデューク・ピアソン。このアルバムの前までのタレンタインは例のビッグ・バンド・アルバムばかり出してたのでこれはこれで新境地みたいなものだったのかもしれない。で、このアルバムで気になるのがサド・ジョーンズ。ビッグバンドの花形トランペッターがビッグバンドのスタイルをやめたばかりのタレンタインのアルバムに突然出て来るのがなんだか不思議な感じがしないでもないが�、豪快なタレンタインには結構合ってます。このつぎのアルバム「Sugar」からはタレンタインはなんとなくフュージョンの人になってしまうので、これがタレンタインのモダン・ジャズのラスト。70年以降スターになっていくけど、個人的には、CTIではなくSteeple Chaseとかでモダンジャズをやって欲しかったなあ。

Charles Lloyd & The Marvels / I Long To See You (blue note/2016)

Charles Lloyd(ts, fl) Bill Frisell(g) Greg Leisz(pedal steel guitar) Reuben Rogers(b) Eric Harland(ds) Willie Nelson(vo) Norah Jones(vo)

前作「Wild Man Dance」(blue note/2015)でやっとECMから離れてくれたチャールズ・ロイド。誰がやっても同じようなヨーロッパ・サウンドになるECMではチャールズ・ロイドの真価は発揮出来ないとずっと思っていたのでうれしいかぎり(1989年から2013年まで16枚のアルバムをECMに残した)。で、本作は脱ECM後の第2作目。やはりロイドはアメリカが似合う(Atlantic時代の印象が強い)。ECMのヨーロッパ路線では違和感ありすぎるのだ。で、本作では何と言ってもビル・フリゼールの存在がでかい(フリゼールもECMを離れて真価を発揮したように感じる)。「Forest Flower」(1964)の裏主役がキースであるごとく、このアルバムの裏主役はビル・フリゼール。ここ数年のフリゼールのアルバムがどれも煮え切らないようなものばかりだったので嬉しい。また、1曲だけ僕の大好きなウィリー・ネルソンがボーカルで参加。これで一気にカントリーな雰囲気に。というかやっぱりほぼフリゼールの世界観。主役のロイド御大は相変わらず懐が深く、ECMで鍛えた(?)冷たい感触のバラード調も随所に見せつつ、例の語尾が早口になるようなフォレスト・フラワーなサックスも健在。

Joe Henderson / Inner Urge (bluenote/1964)

Joe Henderson(ts) McCoy Tyner(p) Bob Cranshaw(b) Elvin Jones(ds)

ケニー・ドーハムとの2管がつづいたジョー・ヘンダーソンはこのBN4枚目のアルバムで初のワンホーンとなる。前作「In 'n Out」同様エルヴィンとマッコイのコルトレーン・リズムセクションがバック。70年代のマッチョなジョー・ヘンダーソンもいいが、この時代のBN作品に共通する、爆発しそうでしないというか、理知的に抑制されたようなジョー・ヘンダーソンもいい。コルトレーン的展開の「El Barrio」はエルヴィンの例のドラムが凄いが、ジョー・ヘンダーソンのフレーズはコルトレーンと違ってバリエーションが少ない。そして少ない分だけ妙な迫力で迫ってくる。それにしてもジョー・ヘンダーソンを聴くたびにサックスの音色の独自性が凄いなあと思ってしまう。

Booker Ervin / Lament For Booker Ervin(ENJA/1965)

Booker Ervin(ts) Niels Pedersen(b) Alan Dawson(ds) Kenny Drew(p) Horace Parlan(p)

30分近く何かに憑かれたかのようにずっと吹きっぱなしの1曲目が物凄い。ひたすらブッカー・アービンのソロがつづく。もはやケニー・ドリューはただただバックに専念するのみ。ホンカーであればこういうパターンもありそうなものだが、ハード・バップのスタイルで他のメンバーには一切ソロを取らさないほど熱狂的にひとりで吹きまくるのはなかなか珍しい光景。何があったか知らないけど、とにかく唖然とする演奏。

Paul Gonsalves / Cleopatra Feelin' Jazzy (Impulse/1963)

Paul Gonsalves(ts) Hank Jones(p) Dick Hyman(org) Kenny Burrell(g) George Duvivier(b) Roy Haynes(ds) Manny Albam(per)

エリントニアンのアルバムを聴くときにはいつも多少エリントン・ブランドというフィルターのおかげで多少の割り増し感が加わるものだが、このポール・ゴザンザルヴェスのアルバムは(1曲目を除いて)バレルの強烈なモダン臭がそのへんの割り増し感を消しているかのよう。なので素直にゴンザルヴェスを聴くことが出来る。このアルバムでのゴンザルヴェスはいつものようにまろやかに、時にはぼんやりと、あるいはのらりくらりとしていて、味わい深い。 

Teddy Edwards / Teddy's Ready! (Contemporary/1960)

Teddy Edwards(ts) Joe Castro(p) Leroy Vinnegar(b) Billy Higgins(ds)

典型的なウエストコースト・ジャズよりやや黒いかなといった感じのアルバム。テディ・エドワーズのおおらかさと器用さの入り混ざったテナーも味わいがあっていいのだが、ここでは何と言ってもリロイ・ヴィネガーのベースが聴きもの。コンテンポラリー・レーベル特有の乾いた音がリロイ・ヴィネガーのウォーキングベースの小気味良さを際立たせる。

Frank Foster / Basie Is Our Boss (argo/1963)

Frank Foster(ts) Al Aarons(tp) Eric Dixon(ts,fl) John Young (p) Buddy Catlett(b) Phil Thomas(ds)

1曲目、フルート、トランペットに続いて出て来るフランク・フォスターのテナーの堂々たる音に惚れ惚れする。もう音色だけで十分というくらいに凄い。コールマン・ホーキンス直系というか、やはりテナーはこうでなくちゃと思わせるくらい。このアルバム、タイトルからも分かるようにベイシー絡みなのだが、このメンバーの中にさりげなく入ってる感のあるジョン・ヤングのピアノがとてもいい。音のタテへの鋭い切り込み方はエリントンを彷彿とさせるし、ミニマルな音使いはベイシーをも思わせる。

Jackie McLean / Presenting... (Ad Lib /1955)

Jackie McLean(as) Donald Byrd(tp) Mal Waldron(p) Doug Watkins (b) Ronald Tucker(ds) 

ジャッキー・マクリーンのファースト。同時期のキャノンボールやルー・ドナルドソンらと同様にパーカー直系の音だけど、マクリーンのアドリブは彼らのように滑らかではなく、途切れ途切れな感じ。それだけその場の即興性のスリルが感じられて面白い。ちなみにこれは「THE JACKIE McLEAN QUINTET」として出てるものと同じだが、こちらのジャケがオリジナル。

Benny Golson / The Modern Touch (riverside/1958)

Benny Golson(ts) J. J. Johnson(tb) Kenny Dorham(tp) Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b) Max Roach(ds)

ベニー・ゴルソンのせわしないサックスは好きでなくとも、ベニー・ゴルソンの作り出すハーモニー(いわゆるゴルソン・ハーモニー)は好きって人は多いのではないだろうか。このアルバムなんか全編に渡ってゴルソン・ハーモニーがばっちり決まっていてカッコイイ。とはいえ全体の印象は比較的地味。メンバーがメンバーなので派手になってもよさそうなもんだが、ゴルソンのリーダー作に特有のある種の自制のようなものが全体を覆っている感じ。しかし疲れているときなどはこの地味さ加減というか適度な保守性が妙に心地良かったりする。

Don Wilkerson / The Texas Twister��(Riverside/1960)

Don Wilkerson(ts) Nat Adderley(tp) Barry Harris(p) Sam Jones(b / 1,4,5,6) Leroy Vinnegar (b / 2,3,7) Billy Higgins(ds)

ブルーノート盤ではいつもグラント・グリーンと組んでソウル寄りテキサステナー風の演奏をしていたドン・ウィルカーソンも、このファーストアルバムではジョニー・グリフィンばりのバッパーぶりを見せる。特に1曲目とか物凄い。ブルースやバラードになるとアイク・ケベックのような細かいビブラートがやや目立つ。当時新人を発掘しまくってたキャノンボール・アダレイのプロデュース・アルバムです。ちなみにバリー・ハリスの人気盤「Barry Harris at the Jazz Workshop」(1960年5月15~16日)はこのちょうど3日前の録音。バリー・ハリス目当てでも結構いけます。というか、バリー・ハリスかなりいいです。

PETE BROWN / From The Heart (verve/1959)

Pete Brown(as) Reginald Ashby(p) Wally Richardson(g) Bill Pemberton(b) Clarence Stroman(ds)

スウィング時代の名手がヴァーヴに引っぱり出されてアルバム録音というパターンはよく見るが、このアルバムもそういった類の1枚。スウィング時代に主にビッグバンドで活動していたピート・ブラウンのレアなアルバム。にしてもこれほど個性的なサックス奏者もなかなかいない。ベニー・カーターをさらに柔らかくした音色で、レスター・ヤングよりさらに細い息で真っすぐに吹き、リズムに乗せて短い音をミニマルに吹いて行くという、なんとも珍しいサックス。何度聴いても魅力的。ポール・デズモンドなどはここから大きなヒントを得ているようだが、とにかくこういうサックスはあまり居ないので貴重。このアルバムはヴァーヴでありながらサイドメンの知名度が無いため(主役も知名度低いが)話題になることがあまり無いだろうけど、なかなかどうしてサイドメンも魅力的だ。3曲目の「Body &Soul」でのレジナルド・アシュビーのピアノソロでガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を引用するところなんか滅茶苦茶かっこいい。 

Dexter Gordon / At Montreux (prestige/1970)

Dexter Gordon(ts) Junior Mance(p) Martin Rivera(b) Oliver Jackson(ds)

1970年、モントルーでのライブ。とにかく凄いブロウ。60年代初頭に復活してきてから次々に凄いアルバムを連発していって、おまけに勢いまでつけてそのまま1970年を突破する。とにかくここらへんのデクスター・ゴードンは絶好調で、この年だけでも5枚くらいアルバムを出している。で、このアルバムの1曲目のサックスの鳴りと勢いがこの時代のデクスター・ゴードンを象徴している感じ。ジャズシーンがどのように移り変わろうと、デクスター・ゴードンには全く関係ない。自分の音一筋。全部一緒と言われりゃそれまでだが、ここまで凄いサックスだと文句も無いだろう。60年代に入って変化しつづけたロリンズの対極にいる。

Teo Macero and the Prestige Jazz Quartet (prestige/1957)

Teo Macero(ts) Teddy Charles(vib) Mal Waldron(p) Addison Farmer(b) Jerry Segal(ds)

のちにマイルスの片腕となるテオ・マセロがまだサッックスを吹いていた時代のアルバム。ちょうどミンガス・グループを抜けた後あたりか。テオ・マセロのサックスはどこかギル・メレのバリトンに近い硬質な音の感触があって、結構魅力がある。アルバムそのものはテディー・チャールズの方が存在感があるような気がするけど、全般的に涼し気で、コロンビア時代に開花するテオ・マセロのセンスに溢れています。多少四角張った感じというか、生真面目な雰囲気。

Houston Person & Ron Carter / Chemistry (Highnote Records/2016)

バリバリ吹くタイプだったサックス奏者が歳を取ってから吹く枯れたバラードはなかなかいいものだ。肺活量も体力も相当衰えているはずなのに、何故か音そのものに深い魅力がある。このヒューストン・パーソンの音もまた懐が深く、器の大きさを感じさせる。そして方や衰え知らずのロン・カーター。これがまた凄い。ペデルセンやレイ・ブラウンなどの堅実なベースではまず味わえないこの浮遊感のある独特のベースはやっぱり面白い。なかなかの名作。このヒューストン・パーソンとロン・カーターのコンビ作品は他に「Something in Common」(1994)「Now's the Time」(1999)「JUST BETWEEN FRIENDS」(2009)「DIALOGUES」(2009)などがある。

George Coleman / Amsterdam after dark (Timeless/1979)

George Coleman(ts) Hilton Ruiz(p) Sam Jones(b) Billy Higgins(ds)

アコーティック・ジャズ不毛の70年代後半にフュージョンではなくこんなストレートなワンホーン・アルバムを出すジョージ・コールマンはさすがとしか言いようが無い。やはりこういった正攻法は時代を超える。スタイル的にはマイルス・グループの頃から比べると多少ラフで奔放も吹くようになったかなという感じ。そしてここでのビリー・ヒギンズの細かいパーカッシヴなドラムがもうやたらとカッコイイ。ジョージ・コールマンは今年(2016年。81歳)新譜も出していて(「A Master Speaks」)、まだまだ健在なのでした。凄いなしかし。

Booker Ervin / The Space Book (Prestige/1964)

Booker Ervin(ts) Jaki Byard(p) Richard Davis(b) Alan Dawson(ds)

いつものように吹きまくるブッカー・アーヴィンも凄いが、ミンガス時代の朋友ジャッキー・バイアードも凄い。フリーすれすれに、あらぬ方向から音を放射してきます。ジャズ史の中でも独自の道を辿ったブッカー・アーヴィンのアルバムはどれも熱量が凄いです。 

Frank Wess / Jazz For Playboys (savoy/1956-57)

Frank Wess(fl, ts) Joe Newman(tp) Freddie Green(g) Kenny Burrell(g) Eddie Jones(b) Gus Johnson(ds) Ed Thigpen(ds)

ベイシー楽団のメンバーにバレルが混ざったセッション・アルバム。バレルの「Monday Stroll」(savoy/1957)と同メンバー。とにかくフレディー・グリーンがいるからスウィンギー。このザクザクと刻むリズムギターだけでも価値あり。そしてバレル。50年代のケニー・バレルの音の感触は別格で、どれを聴いても素晴らしい。スウィング・スタイルの面々の中に混ざってモダンな感触のフレーズをビシバシ決めていくところがカッコイイです。また、フランク・ウェスとケニー・バレルのコンビといえば同時期のサヴォイに「Opus In Swing」(savoy/1956)という名作があるけど、このアルバムも似たような内容で、アンサンブルがカッチリと決まっている。

Sonny Red / Images (Jazzland/1962)

Sonny Red(as) Blue Mitchell(tp) Grant Green(g) Barry Harris(p) George Tucker(b) Jimmy Cobb(ds) Lex Humphries(ds)

ベースのジョージ・タッカーが凄い。ホレス・パーランの「Us Three」でも物凄いベース弾いてたけど、ここでも凄いスウィング感。リズムセクションが凄いとそれだけで何となく聴けてしまうもので、ソニー・レッドとブルー・ミッチェルの2管もどこかジャッキー・マクリーンとリーモーガンのように聴こえるような気がしないでもない(失礼か)。ソニー・レッドの独特な篭ったようなサックスもまた良し。ブルーノートでのリーダー作「Out of the Blue」(1960)とドナルド・バードの1967年の諸作(どれも名作だ!)の印象があまりにも大きいソニー・レッドだけど、リーダー作はJazzlandが一番多い。

Johnny Griffin / The Jamfs Are Coming! (Timeless/1975-77)

Johnny Griffin(ts) Rein De Graaff(p) Art Taylor(ds) Henk Haverhoek,Koos Serierse(b)

ひたすらワイルドな演奏。steeple chase期のマクリーンにもやや通じる。もちろん、あのブルーノート時代のバリバリ吹きまくるハードパッパーぶりも健在だけど、凡百のソウルジャズなど軽く吹っ飛ぶほどのソウルフルでワイルドな演奏。音そのものの存在感が物凄い。音色だけでこれだけ聴かせるサックス奏者はなかなかいない。

Sonny Rollins / What's New? (RCA/1962)

Sonny Rollins(ts) Bob Cranshaw(b) Ben Riley(ds) Jim Hall(g) etc.

このアルバム、盤によって曲順や内容が微妙に違ってるというハンディがあるものの(アメリカ盤、イギリス盤、日本盤でそれぞれ違ってたり、LPとCDでも違ってたり)内容は超一級。まずは「If I Would Ever Leave You」でのベン・ライリーのドラムが物凄い(この曲はボサノバだけど、これは例のゲッツ・ジルベルトよりも2年も前)。これだけでも聴く価値が十分にあり。1962年のロリンズといえば復活作「The Bridge」やフリー突入の記録「Our Man In Jazz」といった個性的な有名盤もあるけど、このアルバムもまたかなり吹っ切れていて、コアな洗練されていないラテンや強烈なボッサなどもあって第2期ロリンズの迷走ぶり(?)がいい方に向かったアルバム。なんだかすごい生命力を感じる。

Booker Ervin with Dexter Gordon / Setting the Pace (Prestige/1965)

Booker Ervin(ts) Dexter Gordon(ts) Jaki Byard(p) Reggie Workman(b) Alan Dawson(ds)

チェイスといえばデクスター・ゴードン。というわけで、ブッカー・アーヴィンのグループにデクスター・ゴードンが乗り込み、A面全部で1曲、B面も全部1曲、という気合いの入り具合。重量級のデクスター・ゴードンは完全に横綱相撲という感じだが、少しギラついた感じのブッカー・アーヴィンのテナーも凄い。このアルバムは1965年西ドイツ録音。65年というのはデクスター・ゴードンのヨーロッパ時代の最も充実していた時期で、他にも凄いアルバムが沢山ある。ブルーノートの「Gettin' Around」や「Clubhouse」の他、SteepleChaseから5枚ほど録音がある。

Lester Young / The President Plays With The Oscar Peterson Trio (verve/1952)

Lester Young(ts) Oscar Peterson(p) Barney Kessel(g) Ray Brown(b) J. C. Heard(ds)
レスター・ヤングのテナーをひとことで言い表すと「軽やか」という言葉がピッタリくる。音色もフレーズもリズム感もすべて軽やかだ。王道テナーの豪快さや重々しさやマッチョな感じといったものの対極にある。この軽やかなレスター・ヤングをさらにスウィングさせているのが当時絶好調のオスカー・ピーターソン(というかオスカー・ピーターソンはいつでも絶好調ですね)。このケッセル入りのピーターソン・トリオがハーブ・エリス時代とはまた違った硬質のスウィングで引っ張る。カウント・ベイシー・オーケストラで軽やかにキメるレスターがそのままモダンな土台に乗ったという感じか。レスター・ヤングの作品の中でも際立ってモダンでかっこいいです。


JOE LOVANO / TRIO TAPESTRY (ECM/2019)

Joe Lovano(ts,ss) Marilyn Crispell(p) Carmen Castaldi(ds, per)

ジョー・ロヴァーノの新譜が素晴らしい。こういう編成だとECMにありがちな北欧の静かな音楽みたいになりがちなのだが、そこはジョー・ロヴァーノ。雰囲気としてはNY(ちなみにこれはNY録音)。どこかパーマネント・ヴァケーション(ジム・ジャームッシュ)の映像を思い浮かべてしまうような音になってます。サックスとパーカッションだけの1曲目なんてここ数年聴いたジャズの中でも最高のもの。マリリン・クリスペルのゆったりとした波のようなピアノが絡んでくるとさすがにECMっぽさが出てくるけど、サックスとパーカッションだけのパートの殺伐としたような雰囲気は本当に好き。センスのいいパーカッションを叩くCarmen Castaldiはこれから要注目。にしてもこれ、ECMらしからぬジャケに驚いた。マンフレッド・アイヒャーが最も嫌いそうな感じだが、何があったのか(笑)。

Clifford Jordan, John Gilmore / Blowing in from Chicago (blue note/1957)

Clifford Jordan, John Gilmore (ts) Horace Silver(p) Curly Russell(b) Art Blakey(ds)
クリフォード・ジョーダンはこの1957年にアルバムを3枚出してるけど(本作の他に「Cliff Jordan」「Cliff Craft」)、何故かソロ作はこの後1960年まで無い。しかもブルーノートはこの3枚のみ。なので1957年のクリフォード・ジョーダンの3枚は貴重だったりする。で、その中でも特に凄いのがこのアルバム。やはりリズムセクションというのは大事なんだなあとつくづく思った次第。この時期のアート・ブレイキーとホレス・シルヴァーのトリオだったらどんなアーチストがフロントに立とうがそれなりに凄いハードバップになりそうな勢いです。というわけでこのアルバム。ブルーノート1500番台のあの雰囲気もあるし、クリフォード・ジョーダンとジョン・ギルモア(このときすでにSun Raのメンバー)の熱も凄いし、リズムセクションのスウィング感も圧倒的だしで、ハードバップ全盛期の空気がぎっしり詰まってます。

Eddie "Lockjaw" Davis' Big Band / Trane Whistle (Prestige/1960)

Eddie "Lockjaw" Davis(ts) Richard Wyands(p) Wendell Marshall(b) Roy Haynes(ds) Eric Dolphy, Oliver Nelson(as) Clark Terry, Richard Williams, Bob Bryant(tp)  Melba Liston, Jimmy Cleveland(tb) Jerome Richardson, George Barrow(ts, fl) Bob Ashton(bs)
エディ・ロックジョウ・デイヴィスのビッグバンド編成のアルバムで、アレンジはオリバー・ネルソンとアーニー・ウィルキンスが担当。オーケストラ要員でエリック・ドルフィーが入っている。とにかくエディ・ロックジョウ・デイヴィスのぶっといサックスが圧倒的で、オケをも制圧するがごとく物凄い音圧で迫ってくる。オリジナル・バージョンの「Stolen Moments」が入っているけど、1曲目の「Trane Whistle」が凄い。じわじわと盛り上げていくソロは組み立て方といいスウィング感といい、いかにもホンカーという感じで物凄いの一言。あと、派手目なオリバー・ネルソンのオケも響きがカッコイイ。

Charles Lloyd & The Marvels / Tone Poem (blue note/2021)

Charles Lloyd(ts) Bill Frisell(g) Greg Leisz(pedal steel g) Reuben Rogers(b) Eric Harland(ds)
チャールズ・ロイドの新譜。チャールズ・ロイド&ザ・マーヴェルズ名義ではこれが3作目で、いちばん出来がいい。というか圧倒的に出来がいい。聴いてすぐ分かるように内容的には8割がたビル・フリゼールという感じだけど、内容が素晴らしいことには変わり無い。チャールズ・ロイドは1989年から2013年までECMに行ってしまって、あっちの人になっちまったかあ、と残念に思ってたんだけど、脱出してくれて本当に嬉しい。しかも脱出先がBlue Noteというのも嬉しい。で、本作はBlue Note移籍後の6枚目のアルバム。かつて「Dream Weaver」「Forest Flower」でキース・ジャレットやジャック・ディジョネットに、「Montreux 82」「A Night in Copenhagen」でミッシェル・ペトルチアーニに引っ張られてウルトラ級の名演を残したように、本作ではビル・フリゼールに引っ張られて最高のアルバムに仕上げている。にしてもビル・フリゼールはアクが強いなあ。

Willis Jackson  / Blue Gator (Prestige/1960)

Willis Jackson(ts) Jack McDuff(org) Bill Jennings(g) Milt Hinton, Wendell Marshall, Tommy Potter(b) Bill Elliot, Alvin Johnson(ds) Buck Clarke(conga)
コテコテホンカー系のウィリス・ジャクソンのアルバムですが、これはもうバックが凄いというか、1曲目Blue Gatorのバックの音の響きがイイ。曲によってベースやドラムが変わるのでトラックごとに感触が変わるけど、ホンカーのアルバムだと思えばそういうのはどうでもよくなる(凄い偏見だな)。気合い一発の3曲目Gator's Tailといい、コンガが楽しい感じの4曲目This Nearly Was Mineといい、この時代のプレスティッジのソウルジャズはいいなあと思えるアルバム。個人的にですがソウルジャズは65年くらいを境に(要するにブーガルー中心になるころに)退屈なものが多くなっていく印象。


(文:信田照幸)


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