SAX /その6
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John Coltrane / A Love Supreme: Live in Seattle (impulse/1965)


John Coltrane(ts, ss, per) McCoy Tyner(p) Elvin Jones(ds) Jimmy Garrison(b) Donald Garrett(b) Carlos Ward(as) Pharoah Sanders(ts) 
最近発掘された音源。コルトレーンの「至上の愛」のライブバージョン。1965年10月2日ワシントン州シアトルにて。時期的には「アセンション」「クルセママ」の4ヵ月後で、コルトレーン・グループにおけるエルヴィン&マッコイのほとんど最後の方の演奏になる(ちなみにエルヴィン&マッコイ入りの最後のスタジオ録音となった「メディテーション」は1965年11月で、このライブの翌月)。とにかく熱気が凄い。「アセンション」以降になるとエルヴィンの繰り出すパルスも激しくなり、マッコイも益々パワフルになるけど、このライブの異様なうねりはエルヴィン&マッコイがいよいよ最高の高みにまで上り詰めたかのようで感慨深い。その後のラシッド・アリ&アリスのいかにも発展途上のような音を知ってるだけに余計にこのエルヴィン&マッコイの凄味を感じる。他のメンバー陣も凄い。メロディよりも「音」で勝負をかけるファラオ、そのファラオとは対照的に細切れのメロディを組み合わせるようにソロを組み立てるカルロス・ワード、リズムに浮遊感を与えるようなジミー・ギャリソンとソナルド・ギャレットの二人のベースと、それぞれ勢いがある。コルトレーンはそれらの渾然一体となったカオスの中、まるでひとつの方向を指し示すかのようにリーダーシップを取る。

Bud Shank / Sunshine Express (concord/1976)

Bud Shank(as, fl) Fred Atwood(b) Larry Bunker(ds) Bobby Shew(tp) Mike Wofford(p)
70年代のconcordの音は本当に好きで、もはやアーチストよりもレーベルで選ぶような感じで聴いている。カール・E・ジェファーソンの名前があったらとりあえず聴きたくなるのだ。ECMなんかにもそういうファンは多いと思う。ECMほど極端ではないにしろ、concordの音もそれなりに個性的だ(ECMの場合はアーチストがマンフレッド・アイヒャーの道具ではなかろうかというほど皆同じ色に染まる)。というわけで本作もバド・シャンクだからというよりも70年代concordだから聴きたくなった。そして期待どおりにあの音なので嬉しくなってしまった。僕はウエストコースト・ジャズというのは実はあまり好んで聴かないのだが(ギターものは例外的に聴く)、concordだけは別なのだ。で、このアルバムなのだが、カッチリとしたアレンジと2管のソフトな音が往年の(50~60年代の)ウエストコースト的。でもconcordの独特な音の感触のおかげで僕は聴けるのだ。好みというのは不思議なもので、食べものの好みの根拠が自分でも説明がつかないように、音の好みも自分では説明できない。ただどういうわけかこういう音の感触が好みであるとしか言いようがない。concordの音が好きという人に遭遇したことは無いのだが、どこかにいるだろうか?

Dexter Gordon / Swiss Nights Vol1,2,3 (SteepleChase /1975)
  

Dexter Gordon(ts) Kenny Drew(p) Niels-Henning Ørsted Pedersen(b) Alex Riel(ds)
デクスター・ゴードンというのは別格で好きなサックス奏者。ブルーノート作品が圧倒的に好きで、もうそれだけでいいのではないかと思ったりもするのだが、こういうライブなどを聴くとやっぱりスティープルチェイスもいいなあと思ったりもする。スティープルチェイスにはデクスター・ゴードンのライブがいろいろと揃っている。で、中でもこのスイスでのライブは物凄い。熱気が凄いしテンションも高い。Vol1も2も3もすべて同じテンション。スタジオ録音のときとはまた違った表情のデクスター・ゴードンです。バックのケニー・ドリュー・トリオもかなり凄い(80年代のオシャレなケニー・ドリューとは別人のようだ)。ところで僕はジャズのバラード曲というのが苦手で、バラードになるとその曲だけ飛ばしたりすることも多いのだが、デクスター・ゴードンのバラードは別で、ちゃんと聴くことが出来る数少ないアーチストのうちのひとり。このライブでは少ないながらもバラード曲があって、たとえばVol.2のDarn That Dreamとか出だしの音からして迫力あるし、Vol.3のエリントン曲Sophisticated Ladyなんかはどのエリントニアンよりもかっこよくテーマを吹いてるのではないか。

Hank Mobley Featuring Sonny Clark / Curtain Call (blue note / 1957)

Hank Mobley(ts) Kenny Dorham(tp) Sonny Clark(p) Jimmy Rowser(b) Art Taylor(ds)
1984年までお蔵入りしてたわりにはかなり内容のいいハード・バップ。50年代ブルーノートのあの雰囲気だけでも満足出来ます。ハンク・モブレーとソニー・クラークに関しては前作のモブレーの1568番と変わらずな感じだけど、ここにケニー・ドーハムが入っていきなりカフェ・ボヘミア(1956年)な雰囲気が混ざってくるのが何ともいい。6曲中4曲がモブレーの作で、それらがどれもブルーノート・ハード・バップの原型のようなものばかりで素晴らしい。50年代のブルーノートはほんとにいいなあと思えるアルバム。

Harold Land / West Coast Blues! (Jazzland/1960)

Harold Land(ts) Wes Montgomery(g) Joe Gordon(tp) Barry Harris(p) Sam Jones(b) Louis Hayes(ds)
これはBarry Harris at the Jazz Workshopの翌日の録音で、そのメンバー3人が揃っている。というわけで当然内容のほうもとてもいい。元ブラウン=ローチ・クインテットの、というかウェストコーストの黒人テナーの代表格ハロルド・ランド。そしてパーカー、ディジー、ブレイキーらと共演歴もあるジョー・ゴードン。さらにこの2ヶ月前にThe Incredible Jazz Guitarを録音しているウェス・モンゴメリー。この3人がフロント。悪いはずがない。2曲目のチャーリー・パーカーの曲「Klactoveedsedstene」、サム・ジョーンズのベースの軽快なスウィング感に乗ってハロルド・ランド、ジョー・ゴードンと熱量の高いソロが進んで行く様はブラウン=ローチ・クインテットそのままな感じ。ちなみにそのあとのウェスのソロがどことなくケッセルを思わせ、そこが唯一ウェストコースト的という感じか。そしてそのあとにバリー・ハリスの最高のソロが続く。まるでパウエルのようだ。と、どこを聴いても他のアーチストが浮かんで来てしまうところがB級っぽいわけだが、それでも演奏の質が高いことには変わりない。

Hank Mobley / Workout (blue note / 1961)

Hank Mobley(ts) Grant Green(g) Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)
ジャズを熱心に聴き始めた時期から今に至るまで、ずっといい印象しかないアルバム。やっぱりカッコイイ。1曲目の出だし、フィリー・ジョー・ジョーンズのタイトなドラムからして只事ではない。というかフィリー・ジョー・ジョーンズの演奏の中ではマイルスのアルバム「Milestones」(1958年)に迫るくらいカッコイイのではなかろうか。そしてこのアルバムのひとつのポイントとなっているグラント・グリーン。この録音時期はちょうどグラント・グリーンのファーストアルバム「Grant's First Stand」(1961年1月)から約2か月後。そしてグラント・グリーンが最初にブルーノートに録音したとき(1960年11月。「First Session」として2001年にリリースされた)のバックメンバーがちょうど本作「Workout 」と同じくウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ。というわけで初期グラント・グリーンの溌剌としたプレイを聴くことが出来る(60年代後半以降のソウルフルなスタイルもそれなりに魅力はあるが個人的には初期の方が好き)。で、主役のハンク・モブレー。ミスター・ブルーノートと呼ぶにふさわしいひとりだと思っているのだけど、このアルバムでも例の少しくぐもったような独特な音色とスムーズで安定したフレージングが素晴らしいです。「Soul Station」「Roll Call」に並ぶ名盤。

Scott Hamilton / Close Up (1982 concord)

Scott Hamilton(ts) John Bunch(p) Phil Flanigan(b) Chuck Riggs(ds) Chris Flory(g)
スコット・ハミルトンがコンコードにいた頃はとにかく怒涛の如くアルバムを出しまくっていたけど、中でもカール・E・ジェファーソンがプロデュースしてた時代のものはそのどれもが高水準で楽しめた印象がある。このアルバムもまたそのうちのひとつ。とにかく王道テナーの音でモダンスウィング。本作はクリス・フローリーのギター入りで、これがなかなかいい味を出している。ただのカルテットよりも深みが増して面白い。コンコードの楽しさはこういう所にある。カール・E・ジェファーソンのギター好きのおかげだ。


(文:信田照幸)


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