フリージャズ(その1)


STEVE LACY / The Forest And The Zoo (森と動物園) (1966)

スティーヴ・レイシー(ss)エンリコ・ラヴァ(tp)ジョニー・ダイアニ(b)ルイス・モホロ(ds)
1966年録音

とにかく僕はこのアルバムが大好きで、それはそれは頻繁に聴いております。南アのブルーノーツを母体としたリズムセクションで、何故かブエノスアイレス録音。それぞれの音が分散されながらもひとつの絵(世界)を描いていくようで、抽象的な音が気持ちいい。

BARRE PHILLIPS / Camouflage (victo/1989)

バール・フィリップス(b)

バール・フィリップスのソロ。実にさまざまな表情が見られます。アルコでもピチカートでも、完全にノンイディオマティック・インプロヴィゼーション。どの瞬間の音を取っても新鮮。じっくり聴いてもヨシ、聞き流してもヨシ。 

EVAN PARKER / The Topography of the Lungs (1970/psi/INCUS)
 
エヴァン・パーカー(ss,ts)デレク・ベイリー(g)ハン・ベニンク(ds)

言わずと知れたINCUSレーベルの1番。ヨーロッパ即興の代表的名盤。psiレーベルからのCD化(LPからの盤起こし)で、なんとボーナストラック付き。なのでレコードで持ってる人も絶対に買い。デレク・ベイリーが何故このアルバムのCD化を拒み続けたのかは知りませんが(マスター音源を紛失してしまったことが原因とも言われる)、デレク・ベイリーの死によってようやくCDとして出回ることになりました。とらえ所の無いものが多いINCUSの中でも最も聴きやすいアルバムなので昔から人気があった作品。で、その聴きやすさの要因はといえば、ハン・ベニンクのドラムだったりする。エヴァン・パーカーもデレク・ベイリーも、ひたすら「音」の塊を出し続けているのですが、その音を構築していっているのがハン・ベニンク。

JIMMY LYONS / Other Afternoons (BYG/1969)

ジミー・ライオンズ(as)アンドリュー・シリル(ds)アラン・シルヴァ(b)レスター・ボウイ(tp)

セシル・テイラー・ユニットの当時の動きを理解する上で実はこのアルバムは重要。セシル・テイラ-抜きのセシル・テイラー・ユニットとでもいうべきか。ちょうど「The Great Concert of Cecil Taylor」の約2週間後の1969年8月15日にパリで録音されたアルバム。セシル・テイラー・ユニットの中枢ジミー・ライオンズ、アンドリュー・シリル、アラン・シルヴァというメンバーにレスター・ボウイが加わったもの。すべてジミー・ライオンズの自作曲で、かなり自由にソロを展開しており、セシル・テイラー・ユニットから離れたジミー・ライオンズの姿が浮き彫りになっています。セシル・テイラーの影響をモロに受けた曲作りではあるものの、それぞれがとても魅力的であり、気楽な感じのソロも興味深い。セシル・テイラー・ユニットではまずありえないようなB1のソロなんかは結構意外かも。ところで、本作はジミー・ライオンズのファースト・アルバムになります。本当に凄かった1962年頃(「カフェ・モンマルトル」の頃)にファーストを録音していれば…、と悔やまれるところですが、とりあえず60年代ぎりぎりでアルバムを出してくれていることを喜ぶべきか。なにしろジミー・ライオンズのセカンドアルバムはなんと本作の10年後の1979年。これほどまでに不遇なアーチストも他に居ないのではなかろうか…。年代順にジミー・ライオンズのアルバムを並べてみると、
Other Afternoons(1969)
Push Pull (1979)
Jump Up(Jimmy Lyons & Sunny Murray Trio) (1980)
Riffs (1980)
Something in Return (Jimmy Lyons/Andrew Cyrille) (1981)
Burnt Offering (Jimmy Lyons/Andrew Cyrille) (1982)
Wee Sneezawee (1983)
Give It Up (1985)
以上。たったこれだけ。このうち3作は双頭アルバムということになっているので、純粋なリーダー作は本作の「Other Afternoons」と「Push Pull」と「Riffs 」と「Wee Sneezawee 」「Give It Up」の5作。他にCD5枚組のThe Box Set(1972~1985年の音源を集めたもの)というのがあるものの、これはあんまりではないか。いくらセシル・テイラー・ユニットのツアーで忙しかったとはいえ、これほどの実力者が何故こんな不遇な目に遭うことになってしまったのだろうか。60年代前半(62年から64年にかけて)にはアルバート・アイラーとともにセシル・テイラー・ユニットで2管のフロントを務めたアーチストですよ。ジミー・ライオンズ自身に自分のアルバムを作る欲が無かったのかもしれませんが、ジャズ界にとってもこれは大きな損失だったのではあるまいか?ちなみに、このアルバムも今だにCD化されておりません…。 が、名作です。

John Lurie National Orchestra / Men With Sticks (1992)


ジョン・ルーリー(as,ss)ビリー・マーチン(per)カルヴィン・ウェストン(ds)1992年録音
知られざる傑作。延々と続くバックの8分の6拍子のビートに乗って、ジョン・ルーリーのノン・イディオマティックな即興演奏が繰り広げられる。最高です。ジョン・ルーリーはあらゆるイディオムやリズムから解放されつつも(というかジョン・ルーリーは元々モダンジャズのイディオムを使わないサックス奏者)奇妙なメロディのあるインプロを繰り広げていて、それまでのラウンジリザーズでの演奏とはかなり違っています。この当時、ジョン・ルーリーはモロッコの民俗音楽などを好んで聴いていたそうで、その影響も多少はあるのでしょう。しかしその後のラウンジリザーズの方向性から考えると、ここでは自分の音だけを集中的に探求していったという感じか。かなり濃密な時間が流れてます。98年のアルバム「Fishing With John」でも5曲ほどこのメンバーによる演奏が収められていますが、それらの演奏もこのアルバムと同じコンセプト。カルヴィン・ウェストンとビリー・マーチンの作り出すポリリズミックで時にはアンビエントなリズムを土台に、ジョンはリズムに乗るわけでもなく又リズムを無視するわけでもなく、のらりくらりと力を抜いたような自然体のサックス演奏をしていて、実にイイ。ジム・ジャームッシュの「パーマネント・ヴァケイション」という映画にジョン・ルーリーはサックス吹きの役で出ていますが、そのときのジョン・ルーリーの「奇妙なサックス吹き」の姿がそのままここにあります。かつては「フェイク」を標榜していた彼の音がここでは非常にリアルです。すべての「しかけ(テーマ、アレンジ、ドラマ性、など)」などをとっぱらってコアな部分だけを無防備につきつけます。


JOHN LURIE/Stranger Than Paradise 

JILL JAFFEE (viola) EUGENE MOYE(cello) MARY ROWELL(violin) KAY STERN (violin) ジョン・ルーリー(as)アート・リンゼイ(g)ダグラス・ボウン(ds)他

A面弦楽四重奏でジョン・ルーリーが作曲、エヴァン・ルーリーがオーケストレイション・アレンジ。この音楽に最初に出会ってからもう随分経つが、正直言ってこれほど好きな音楽もない。映画も最高だったが音楽の方も最高。大学生の頃、映画論講議の授業を取っていて、そのレポートで「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を細かく分析して提出したことがあります。それほどまでに何度も何度も繰り返し見たし、そのたびに繰り返し聴いた音楽です。今聴いても全く古くならない不思議な音楽。この音楽を聴くたびに気分が良くなる。意味もなく楽しい気分になる。とにかくこれほどまでに自分の波長とピッタリ合うものも他に無い。大袈裟にいえばこの音楽があって初めて今の自分があるとでもいう感じか。それほどまでに自分の価値観に影響を及ぼしました。B面ではラウンジリザーズの抜粋メンバーと弦楽を含む計9名でのニューヨーク・アヴァンギャルド風味の音楽。最も凄かった頃のアート・リンゼイが聴けます。永遠の名作。

JOHN LURIE /Fishing With John (1998/strange and beautiful)

ジョン・ルーリー(as,ss,他)カルヴィン・ウェストン(ds)ビリー・マーチン(per)エヴァン・ルーリー(key)トム・ウェイツ(vo)他

難病により演奏活動はもう不可能、なんていう噂が飛び交うジョン・ルーリーですが…、大丈夫なんでしょうか?ジョン・ルーリー大ファンとしては甚だ心配であります。お得意のジョークであることを願うばかりです。そして、ラウンジリザーズではなくジョン・ルーリー・ナショナルオーケストラでひさびさに来日してほしい!。というわけで、この「フィッシング・ウィズ・ジョン」。これは同名のビデオ映画(3本出ていて、これがまた全部最高!ジョンが主演で、ただいろんなゲストと釣りをするってだけの映画。)のサントラです。サントラとは言えとんでもなく素晴らしい内容になってます。曲ごとにメンバーが違ってたりしているわりにはアルバムとしての統一感があったりするところが不思議です。このうちの5曲はジョン・ルーリー・ナショナルオーケストラの演奏。これらはもちろん『メン・ウィズ・スティックス』に全く劣らない実に素晴らしい演奏。特に「Little」って曲はわずか2分の地味な曲なんだけど、ジョン・ルーリーの作品中最高傑作ともいえるほどの名曲名演。これはエンドレスで聴きたい。トム・ウェイツが歌う2曲は映画中トム・ウェイツとジョン・ルーリーが船に乗っているときに歌っていたもの。また、ジョン・ルーリーはギターも弾いてますがこれが何故だか素晴らしい(ちなみにこのつぎのアルバム『African Swim and Manny & Lo』ではジョンのギターが沢山聴けます)。ジョン・ルーリーのサントラ盤といえば『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と『ダウン・バイ・ロウ』というウルトラ級アルバムがありますが、このアルバムもそれらと並ぶ名盤。特にナショナルオーケストラの3人で演奏された5曲はジョン・ルーリーを代表する名演といえます。これほどまでにクォリティの高い作品を作っていたジョン・ルーリー、最近では絵を描いてばかりのようです…。また音楽に戻ってきてくれ~!

JOHN LURIE/Down By Law (made to measure/1987)

ジョン・ルーリー(as)エヴァン・ルーリー(p)アート・リンゼイ(g)マーク・リボー(g)ナナ・ヴァスコンセロス(per)ダグラス・B・ボウン(ds)他
映画「ダウン・バイ・ロウ」(ジム・ジャームッシュ監督)と「ヴァラエティ」(ベティ・ゴードン監督)のサントラ。言うまでもなく「ダウン・バイ・ロウ」ではジョン・ルーリーとトム・ウェイツの共演が話題になりました。ラウンジリザーズのメンバーを中心にしたメンバーで作られたこのサントラ盤はラウンジリザーズのものよりもジャジーな雰囲気。短か目の曲がつぎからつぎへと小気味よくつづきます。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「フィッシング・ウィズ・ジョン」などの名盤サントラに並ぶ作品です。6曲目、9曲目、13曲目あたりはあのジョン・ルーリー・ナショナルオーケストラの原形といえるでしょう。小品集といった趣き。

THE LOUNGE LIZARDS /Vioce Of Chunk(AGHARTA/1989)

ジョン・ルーリー(as,ss)エヴァン・ルーリー(p)ロイ・ネイザンソン(as,ts)カーティス・フォウルケス(tb)マーク・リボー(g)EJロドリゲス(per)エリック・サンコ(b)ダグラズ・ボウン(ds)

僕がはじめてニューヨークに行ったとき(1993年)、42丁目のグランドセントラル・ステーションのとなりのホテルというまさにニュ-ヨークのド真ん中に泊まってたんだけど、あるときミネラルウォーターを買いに42丁目から北に向かって歩いていたのだ。そこでやたらと気になったのが街のにおい。エスニック料理の匂いがそこかしこから漂ってくる。ダウンタウンに行くまでもなくミッドタウンでも世界中の料理屋があちこちにあるわけで。このラウンジリザーズのアルバムに漂うエスニックな香りはまさにあのときに感じたものと一緒。大都会の中心に居ながら何故かエスニック、という奇妙な感覚…。ジョン・ルーリーの生活感情もそんな感じだったんでしょうか。そんなわけで、このアルバム。前作「No Pain For Cakes」があまりにも好きだったのでこれは出てすぐに買った。当時物凄く評判が良かったアルバム。今聴くと最も充実していた時期のアルバムってことが分かる。1989年といえば、あの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」と「ダウン・バイ・ロー」の衝撃も薄れてきたころだけど、僕なんかはこの時期でさえひとりで勝手に盛り上がっていたのであった(笑)。僕は断然「No Pain For Cakes」の方が好きだったけど、このアルバムだって本当に素晴らしい。ジョン&エヴァンのルーリー兄弟が揃ったラウンジリザーズはこれが最後。エヴァンはこの後ラウンジリザーズを抜けます。

DAVID S. WARE / Godspelized(1996)

デヴィッド・S・ウェア(ts)マシュー・シップ(p)ウィリアム・パーカー(b)スージー・イバラ(ds)
1996年録音
セシル・テイラーのグループでサックスを吹いていたデヴィッド・S・ウエアの驚異のアルバム。一曲を除いてすべてウェアのオリジナル曲(ちなみにその一曲というのがサン・ラーのカバー。何考えてんでしょうね)。このアルバムは冒頭の1曲にすべてが集約されています。

ALBERT AYLER / Spiritual Unity (1964)

アルバート・アイラー(ts)ゲイリー・ピーコック(b)サニー・マレイ(ds)1964年録音
「咆哮」ではなく「うめき」。ESPの名盤。有機的な音の繋がりと繁殖が聴く者を異次元にトリップさせてくれます。

LOL COXHILL / Digswell Duets (1978/emanem)

ロル・コックスヒル(ss)サイモン・エマーソン(エレクトロニクス) 後半Veryan Weston(p)1978年録音
前半がサイモン・エマーソンとのデュオ、後半がVeryan Westonとのデュオという構成で、聞き物は前半部分。サックスとエレクトロニクスとのデュオという形にはなっているが、多重録音っぽいものなんかもあったりします。ロル・コックスヒルのサックスがどうのこうのっていうよりも、この2人が作り出す音空間が実に魅力的。静かでありながらもどこかとげとげしい。

ARCHIE SHEPP / On This Night (1966/impulse)

アーチー・シェップ(ts)ボビー・ハッチャーソン(vib)ヘンリー・グライムス(b)ラシッド・アリ(ds)JCモゼス(ds)ジョー・チェンバース(ds)デビッド・アイゼンソン(b)他

あの時代にしか通じないような1曲目は飛ばして、2曲目からず~っとシェップ節がつづきます。ワンホーンでピアノレスなんだから凄いに決まってるのですが、「マジック・オブ・ジュジュ」や「ワン・フォー・トレーン」、「ファイヤー・ミュージック」、などの名盤に比べても全く引けを取りません。いや、むしろ僕はこっちのほうが気に入ってます。ハッチャーソンのヴァイブが全体に深みを与えてるのはドルフィー「アウト・トゥ・ランチ」の場合と一緒。この硬質の音色はやはりイイ。輸入盤CDにはボーナストラックが5曲(!)もついて、しかもどれも物凄いです。

STEVE COLEMAN & DAVE HOLLAND / Phase-space(1991/DIW)

スティ-ブ・コ-ルマン(as)デイブ・ホランド(b)
スティーブ・コールマンの真骨頂。ECMでの「トリプリケイト」はここにジャック・ディジョネットを加えたトリオ作品で、それも凄くイイのだが、僕はこっちの方が好き。M-BASEでの作品群も面白いけどこのアルバムでのホランドとの壮絶なやりとりは何回聴いても素晴らしい。

DAVID S. WARE / Third Ear Recitation(1993/DIW)

デビッド・S・ウエア(ts)マシュー・シップ(p)ウィリアム・パーカー(b)ウィット・ディッキー(ds)
1曲目の「枯葉」。まさに「砕け散る枯葉」。いや、単にウルサイと言う言い方もあるが…。圧倒的、とはこのこと。

DAVID MURRAY / Lovers (1988/DIW)

デヴィッド・マレイ(te)デイブ・バレル(p)フレッド・ホプキンス(b)ラルフ・ピーターソンjr(ds)

マレイのアルバムってかなり沢山でていて、僕もかなりたくさん聴いてきたんだけど、自分的にはこのアルバムが間違い無くイチバン。バラード集なんだけど、マレイのいつもの予定調和的ソロもここではバッチリとはまってます。

ARCHIE SHEPP / Tha Magic Of Ju-ju(impulse/1967.4.26)
アーチー・シェップ(ts)ビーヴァー・ハリス(ds)デニス・チャールス(per)レジー・ワークマン(b)他

やはりA面がすべてでしょう。パーカッションをバックにただひたすらフリーブローイング。濃い!濃すぎる!あまりに濃いから聴く気にならない(…ことはない)。ねちねちと20分休みなしでズ~っとブロウしてるシェップの怨念というか執念というか…。天才肌のアイラーは意外にあっさりと永遠の名作「スピリチュアル・ユニティ」を作り上げてしまったような印象なのに対し、シェップは結構いろいろと考えていろいろやってる感じ。

John Surman/The Trio (Down/1970)

John Surman(bs,ss, bass clarinet) Barre Phillips(b)Stu Martin(ds)
ジョン・サーマンはECMに入ってからのやつも結構好きなアルバムもあったりするのだが、やはりこのアルバムを聴いたときのビックリ感は一番でかい。サックスをこんなにバリバリ吹いてくれるとなんだか意味もわからず盛り上がってしまう。でもこれ、実は売ったり買い戻したりをくり返してるアルバム。何故か聴きたくなるのはきまって激しい1曲目だけだったりするからなのか。

STEVE COLEMAN AND FIVE ELEMENTS / Def Trance Beat (NOVUS /1995)

ビバップもモードもまるごと飲み込んだような不思議なフレーズはかなり魅力的。数ある似たようなアルバムの中でもこのアルバムの1曲目は「お!」と思わせるポップさを持っていてなかなか気持良い。ファイヴ・エレメンツのアルバムではこれがいちばん好き。

GIL EVANS / STEVE LACY /Paris Blues(1987/OWL)

スティーヴ・レイシー(ss)ギル・エヴァンス(p, el-p)
実に美しいデュオ。ギルは曲によってエレピとピアノを使い分けています。レイシーのまっすぐな音とアイデア豊富なフレーズはやはり魅力的。全体的に寛いだ雰囲気があって気軽に聴けますが、聴き込んでもなかなか深い。ギルのプレイは簡潔にして無駄がなく、特にエレピのときなどは独特の色合いを感じます。

ERIC DOLPHY / The Illinois Concert (blue note)

エリック・ドルフィー(b-cl,as,flute)ハービー・ハンコック(p)エディ・カーン(b)J.C.モーゼス(ds)

1963年のライブ録音。ドルフィーとハービー・ハンコックとの共演ということで発売当時は発掘音源としてスイングジャーナル等で話題になったしCDショップでも大々的に売り出されていた。とにかくカッコイイ。ドルフィーのアルバムの中でも最上位にランクされてもいい作品。

ORNETTE COLEMAN/This Is Our Music(atlantic/1960)

オーネット・コールマン(as)ドン・チェリー(tp)チャーリー・ヘイデン(b)エド・ブラックウェル(ds)

オーネットの「フリー」とは、要するにマイクロトーナリティを使用するということ(ポール・ブレイがどこかで言ってた)。だからピアノを使わなくなるのは当然だし、ヴァイオリンやトランペットという楽器に手を出すのも理屈にあっている。故にフレーズ自体も超中間音によりあやふやな響きを帯びてくる。各楽器同士間の無機的な音の繋がりよりも有機的な音の流れを作り出す。それがいわゆるハーモロディックの基本要素。実に単純な理屈であり、オーネットの音楽的推移は論理的なのだ。わざわざプラスチック製サックスを使用していたのもそれらのことと無関係では無いかもしれない。ただ、それらはオーネットが計算してやった事では無く、オーネットのやってることを言葉で分析(?)してみるとそうなっています、ってだけの話。それらを分かりやすく言えば、サックスの正しい吹き方はともかく肉声と同じように気持ち良くただ自由に吹いてみましたってところでしょうか。で当然のことながらバップの機能コードによるアドリブという理論は完全に無視。そんなわけでこのアルバム。58年の「サムシン・エルス」、59年の「トモロウ・イズ・ザ・クエスチョン」「ジャズ、来るべきもの」「アート・オブ・インプロヴァイザーズ」「チェンジ・オブ・ザ・センチュリー」と、ずっとドラムを叩いてたビリー・ヒギンズに代わり、60年のこのアルバムからはエド・ブラックウェルに。3曲目などを注意深く聴くと例の細かく刻むパーカッシブなドラムは音楽上の必然性から生まれてきたものであることがよく分かる。そしてドラム以上に妙な動きを見せるのがベースのチャーリー・ヘイデン。初期オーネットの面白さはこのヘイデンのベースによるところが大きい。
2曲目のような抽象的な曲よりも、4ビートで飛ばす曲の方が不思議な力みたいなものを感じる。

ERIC DOLPHY /Iron Man (1963/Douglas Epic)

エリック・ドルフィー(as,bcl,fl)リチャード・デイビス(b)クリフォ-ド・ジョ-ダン(ts)ヒュー・シモンズ(as)プリンス・ラシャ(fl)ウディ・ショウ(tp)ボビー・ハッチャーソン(vib)J.C.モーゼス(ds)他
曖昧で不思議な印象のアルバム。冒頭の強烈な飛び方は、一体いつ着地するのか全く予測出来ないような展開だし、2曲目だってなんだか落ち着かない。A面ラストに至ってはバスクラとベースのデュオのままどんよりと終わっていく。B面になると曖昧さはさらに加速して、ビッグバンドより「大騒ぎ」な音でダリの絵のような音風景がつづくもんだからさらに落ち着かない。大騒ぎの後はフルートとベースの静かなデュオで寂しく終わって行く…。このような曖昧なイメージは普通はマイナス点になるところだけど、ドルフィーの場合は何故だかプラスなイメージ。聴き終わった後に残る後味がほどよい。

JOHN COLTRANE /THE OLATUNJI CONCERT (1967.4.23.)

ジョン・コルトレーン(ss,ts)ファラオ・サンダース(ts)アリス・コルトレーン(p)ジミー・ギャリソン(b)ラシッド・アリ(ds)アルジー・デウィット(bata-drum)ユマ・サントス(perc)

コルトレーンの最後のライブ録音。ジャズ界でおそらくもっとも真面目にジャズという音楽の可能性を模索して進化/変化させていったコルトレーンが、その途上ではまり込んだのがこのような地獄絵図的世界だった、というのはなんとも感慨深い…(笑)。雄叫び、というかほとんど叫び。うるさい(笑)。最後まで付き合ったジミー・ギャリソンは偉い。その最後の最後の曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」(また!)の冒頭ではそのジミー・ギャリソンの功績を讃えて(?)長い長いベースソロがあります。そのソロの素晴らしさに触発されてか、そのすぐ後のコルトレーンのソプラノサックスの素晴らしいこと。このあまりにも美しいソロこそがコルトレーンが地獄遍歴の果てに垣間見た彼岸だったのか…。(まあ、案の定その後のファラオの発狂ソロが台無しにしてくれてますが…笑)。ちなみにこの「マイ・フェイバリット・シングス」はテーマ部が出て来るまでに25分もかかってます(爆)。

ANTHONY BRAXTON / For Alto (deimark/1969)

アンソニー・ブラクストン(as)

あの油井正一著「ジャズ・ベスト・レコード・コレクション」でも紹介されていたので、この手のフリー系即興演奏のアルバムとしてはかなり有名な方ではないでしょうか。LPでは2枚組でしたがCDではコンパクトに一枚に収まり、かつてのLP時代の圧倒的な存在感も薄れてしまった感もあるような…(笑)。しかしながら内容ではますますその存在感が大きくなる一方。サックス一本の即興演奏って何度も繰り返して聴けるのは限られてきてしまいます(自分の場合)。本作はもちろん繰り返し聴きに耐える数少ない一枚。2曲目の「ジョン・ケージに捧げる」が無ければさらに高得点をつけてましたね…。とはいえ昔はこの「ジョン・ケージに捧げる」が一番好きなテイクだったわけで…、まあ、個人の感性なんていいかげんなもんです。サックス表現の多様性、なんていうことより、音楽的に面白い。一曲目の短い曲のなんと豊かなメロディ…。こういったメロディが溢れているからこそ何度も聴けるのかも。

ALBERT AYLER/ The First Recordings (sonet/1962)

アルバート・アイラー(ts)トービョン・フルトクランツ(b)スネ・スペングリー(ds)
アイラーは初期であればあるほど素晴らしい。これはまさに初期中の初期の音源で、アイラーの特質が実に分かりやすい形で現れたもの。A面すべてを占める I'L Remember April では4ビートだったりフリーだったりと変わり続けるリズムに、つかず離れずのアイラーが実に面白く、しかも「新鮮さ」に溢れてます。試行錯誤によって音が形作られていく様を目の当たりに出来ます。後年のマンネリっぽい馴れ馴れしさは全くありません。新しい音楽を創造していこう、というアイラーの情熱がダイレクトに伝わってくるようです。何かブツブツとつぶやいているようなB面の3曲も最高。


MICHEL DONEDA / SOLO LAS PLANQUES (SILLON/2004)

ミッシェル・ドネダ(ss)

ソプラスサックスによるソロ。とにかく凄い。素晴らしい。ついでに、おもしろい(笑)。こういうものについて哲学的なことを書く人は多いだろうし、「聴く」という行為を根本から捉え直すというような文章を書く人も多いであろうことは容易に想像つきますが、…なんというか、いろいろと考えさせられる「音」です。いや、別に考えなくてもいいんだけど。

STEVE COLEMAN / Invisible Paths: First Scattering (TZADIK/2007)

スティーヴ・コールマン(as)

ついに出たスティーヴ・コールマンのサックスソロのアルバム。うちではヘヴィ・ローテーションです。サックスソロのアルバムというのはずいぶん沢山ありますが、その中でもかなり聴き易い方でしょう。ノンイディオマティックな即興とは違い、いつも通りのフレーズ輪郭のはっきりした演奏。スティーヴ・コールマン独自のイディオムを最後まで貫き通すのはファイブエレメンツでの演奏と一緒。こうやってソロでずっと聴いていると、シンメトリーの幾何学模様が見えてくるかのよう。もうファイブエレメンツはやめにして、ソロか、デュオ、トリオあたりの小編成でのアルバムを沢山出して欲しい…。本作は、デイヴ・ホランドとのデュオ作「RHASE-SPACE」とともにスティーヴ・コールマンの最高傑作のうちのひとつと数えていいのでは。 


坂田明/百八煩悩 (OhraiRecords/2005)

坂田明(as, cl, b-cl)

坂田明のサックス・ソロ(たまにクラリネット)のアルバム。2枚組CD。フリージャズにありがちの発狂した騒音を垂れ流すというのとは正反対の演奏で、本当に素晴らしいサックスソロの即興演奏。じっくりと聴いてもヨシ、軽く聞き流してもヨシ、聞かなくてもヨシ。冬のよく晴れた日に、ウォークマンでこのCDを聴きながら見知らぬ土地を散歩しました。そのときのなんとも言えぬ心地よさというか、妙な感覚というか…。そのとき以来すっかり気に入ってしまった作品。

TERJE RYPDAL / TERJE RYPDAL(ECM/1971)

テリエ・リピダル(g)ヨン・クリステンセン(per)ボボ・ステンソン(el-p)トム・ハルヴェルセン(el-p)アリルド・アンデルセン(b)ビョルナル・アンデルセン(b)ヤン・ガルバレク(ts,flute,etc)
ノルウェーのギタリスト、テリエ・リピダルのECMにおける1作目。この頃のテリエ・リピダルのギターは、ソニー・シャーロックからの影響なんかもあったかも?意外にロック。

ENRICO RAVA/ ENRICO RAVA QUARTET (1978/ECM)
エンリコ・ラヴァ(tp)ラズウェル・ラッド(tb)JFジェニー・クラーク(b)アルド・ロマーノ(ds)
エンリコ・ラヴァといえば「森と動物園」(スティーブ・レイシー)なのですが、こちらも凄い。ラズウェル・ラッドとの双頭グループといった感じです。この2人の即興パートがなんとも素晴らしい。パーカッシヴなドラムも小気味よくて最高。ロスコー・ミッチェルのECM盤にも通じる不思議さが魅力。

KENNY WHEELER / Music For Large & Small Ensembles (1991/ECM)
CD2枚組におよぶケニー・ホイーラーの力作。ホイーラーってば「ヌー・ハイ」ですが、このアルバムはケニー・ホイーラーのラージ・アンサンブルのアレンジがポイント。ホイーラーのプレイにはあまりひかれませんが曲自体が面白いです。ホーン群のカラーリングが独特で、そこんところも聞き所。エヴァン・パーカーのプレイの独自さが際立ってます。ところでこのアルバム、2枚目の4曲目以降をカットしてCD一枚にまとめたほうがよかったのではないかなあ…。残りのテイク(スモールアンサンブルの方)はまた別アルバムとして聞きたいです。

PAUL BLEY / In Harlem (1966)

ポール・ブレイ(p)バリー・アルトシュル(ds)マーク・レヴィンソン(b)1966年録音

ブレイのアルバムの中でも得に気に入ってる一枚。ライブ。

ANTHONY DAVIS /Middle Passage (1984/gramavision)

アンソニー・デイビス(p)
アンソニー・デイビスのピアノソロのアルバム。現代音楽っぽいソロですが、意外に構成がしっかりしてるので聞きやすい。聞き込めばそれなりに楽しめ、BGMにしても結構いけるという音楽。ダラー・ブランドのように一定のリズムによる呪力のようなものは無いかわりに、小気味よいフットワークによるカラフルな色合いみたいなものがあります。

Paul Bley/Open, To Love(ECM)
ポール・ブレイ(P)
「間」が多く、それでいてメロディがほどよく組み立てられており、シンプル極まりない音楽。有名すぎるほど有名なアルバム。昔はよく聴いてたけど、今でもたまに聴きます。

MESSAGE FROM G.(懐かしいG.の訪れ)/ Friedrich Gulda (1978/MPS)


フリードリヒ・グルダ(ピアノ、ダブル・クラヴィコード、バス・リコーダー、口笛、朗読)
ウルズラ・アンダース(ドラムス、シンバル・ストリング、アルト・リコーダー、朗読)
LP2枚に渡って一曲がずーっとつづきます。グルダと奥さんとのフリー・インプロビゼイション。名前をふせてA面~B面への奇妙な流れを聴いたらサン・ラのようでもあり、ドン・チェリーのようでもあり、はたまた70年代のキース・ジャレットのようでもあり、インカス・レーベルのレコードのようでもあり…。C面なぞはチック・コリアとセシル・テイラーに向けて喧嘩を売っているかのよう(セシル・テイラーとはこの前年に共演盤があります)。D面にいたってはウェイン・ショーターの「モト・グロッソ・フェイオ」(1970)の続編か、とでもいった風情…。しかしどんなにフリーな即興であってもそこにはグルダならではの品格と洒脱さとしなやかさが備わっています。グルダの弾く「ジャズ」はあまりに毒が無さ過ぎるため多くのジャズ・ファンにとっては「ふーん」といった程度の価値しか無いので、本作もほとんど知られず闇に葬り去られました。が、このアルバムから伝わってくるのはグルダの持つ深い闇と狂気、そして底知れぬ創造性。というか、世紀の珍作?

Nik Baertsch / Stoa (ECM/2005)

ニック・ベルチュ(p, fender rhodes)シャー(b,cl,bcl)ビョルン・マイヤー(b)カスパー・ラスト(ds)アンディ・プパート(per)

スイスのピアニスト、ニック・ベルチュのECMデビュー盤。ニック・ベルチュのリーダーアルバムとしては通算7枚目。ミニマルを基盤に、即興演奏を織り交ぜ、しかもオーバーダブ無しでジャズ特有の緊張感や臨場感も感じさせます。かなりの日本マニアだそうで本作録音前には奈良に半年間滞在し、そのときに作った曲が本作に収められているとか。禅ファンクなどと言ってるそうですが、そういう名称はやめた方がいいのでは…(日本かぶれということではスティーヴ・コールマンがいますが、そういえば彼の音楽も変拍子だな…)。どこがどう「禅」なのかはよく分からないけど、サラリとした感触と、情緒的なべたつきを感じさせないメロディラインなどは、禅のイメージにもやや近いか?(無理があるか…?)何はともあれ、近年のECMでも珍しく個性的。

DAVE HOLLAND / Ones All (1995)

デイヴ・ホランド(b)
にしてもホランドのベースは個性的。「EMERALD TEARS」とともにマストアイテム。また、チェロだけを弾いてるアルバム「LIFE CYCLE」もマスト。

DAVE HOLLAND / EMERALD TEARS (1978/ECM)

デイヴ・ホランド(b)
いかにもECMなアルバム。デイブ・ホランドの中でも最も気に入ってるのがこれです。

BARRE PHILLIPS / Aquarian Rain (1992/ECM)

バール・フィリップス(b)アラン・ジュール(per)
いかにもECMって感じの寒々しさ漂う(笑)アルバム。バール・フィリップスの不規則なベースにテープコラージュやパーカッションがからんできたりして結構面白い空間を作り上げています。

DAVE HOLLAND / Note For Nothin' (ECM/2001)

デイヴ・ホランド(b)クリス・ポッター(ts,as,ss)スティーヴ・ネルソン(vib,marimba)ロビン・ユーバンクス(tb)ビリー・キルソン(ds)
変拍子をここまで使いながらも面白く聴かせてしまう手腕はM-BASEの連中には無いもの。フロントの2管が凄くイイ。変拍子ってことを感じさせないようなスムーズさ。

DAVE HOLLAND /Dream of the Elders (ECM/1995)

デイヴ・ホランド(b)スティーヴ・ネルソン(vib,marimba)エリック・ピアソン(ss,as)ジーン・ジャクソン(ds) <1曲のみ>カサンドラ・ウィルソン(vo)
端正で静かな印象のアルバム。スティーヴ・ネルソンのヴァイブのおかげでこのアルバムの全体の印象が決まってしまってると言ってもいいほど目立ってます。

DAVID HOLLAND/ BARRE PHILLIPS /Music From Two Basses (1971/ECM)

デイヴ・ホランド(b)バール・フィリップス(b,cello)

シンプルなジャケット・デザインがとてもいい感じ。ストイックな内容もこれまたいい感じ。ベース2本による即興演奏。ぜんぜん古くなってないのはマンフレッド・アイヒャーのセンスによるものか。ホランドのベースはソロ作品の「Ones All」や「Emerald Tears」を聴けばだいたいつかめるわけだけど、このアルバムではそれらの幾何学的ともいえる佇まいは無く、バール・フィリップスの閃光のごときベースによっていい具合に変化を起こしている。水と油のようなスタイルの2人による予測不可能な音の生成。

MASQUALERO / AERO (1988/ECM)

Arild Andersen(b) Jon Christensen(ds) Tore Brunborg(ts,ss) Nils Petter Molvaer(tp) Frode Alnaes(g)

テリエ・リピダルのデビュー作「テリエ・リピダル」にも参加していたベーシスト、Arild Andersenが中心となって作られたグループ、MASQUALEROの3作目のアルバム。このCDを買ったときにはまさかここに参加してるニルス・ペッター・モルヴェルがこんなにブレイクするなんて想像つかなかった…。だってここでも特に目立ってるってわけでもないし、個性的ってほどでもないし。まあ、モルヴェルなんてここでは置いておいて、このアルバム。典型的なノルウェーECMの世界。ジョン・アバークロンビーの「November」(1993/ECM)とかと似通った音空間。

WORLD SAXOPHON QUARTET / Revue (1982)
ブラック・フリー系特有の感情の自然な発露としてのフリークトーンもデヴィッド・マレイあたりになるともうすでにひとつの決まり技となってしまって、音楽的必然性をあまり感じないような気がするのですが、このグループ内でのマレイは意外に自然なプレイをしています。管楽器4人のみという編成のためにアレンジの制約が多いからっていうのもあるのかな。それはそうと、このアルバムはジュリアス・ヘンフィルが凄くイイ。ジュリアスの曲は全て良い!また事実上のリーダー、ハミエット・ブルーイットのバリトン・サックスも聞き所。ワールドサクソフォン・カルテットのアルバムではこれが一番好き。

WORLD SAXOPHON QUARTET / Requiem For Julius (2000)
亡くなったワールド・サキソフォン・カルテットの中心人物ジュリアス・ヘンフィルに捧げたアルバム。ジュルアスに変わってジョン・パーセルが入っていますが、これが実に素晴らしい。全体的にかつてのまとまりを失ってしまったように感じるけど、それはそれであり。

WORLD SAXOPHON QUARTET / Selim Sivad (1998)
親指ピアノやリトルインストゥルメンツなどが実に美しく入ってるアルバム。マイルス・デイビスの捧げたアルバムのため、すべてマイルスがらみの曲で統一されていますが、このアルバムはそういったこと抜きで楽しめます。

WORLD SAXOPHON QUARTET /Dances And Ballads (1987)
カッコイイなあ、って感じ?あるいは、いつもと同じって感じ(笑)。WSQの中でも安定してるアルバム。

WORLD SAXOPHON QUARTET /Rhythm And Blues(1989)
リズム&ブルースで統一されたアルバム。ハミエット・ブルーイットの低音がしっかりしているため、どれもリズミカルで面白い。ドック・オブ・ザ・ベイやナイト・トレイン等誰でも知ってる曲の面白いアレンジは聞き所か。

OREGON/In Concert (1975/vanguard)

グレン・ムーア(b,etc)ラルフ・タウナー(g,etc)コリン・ウォルコット(sitar,tabla,etc)ポール・マキャンドレス(oboe,etc)
シタールやタブラといったインド楽器の使用がいかにも70年代って感じ。牧歌的な部分とフリーインプロヴィゼイションの部分とが上手く解け合って独自の世界観を醸し出しています。ポール・マキャンドレスのオーボエとバスクラが冴えわたるA面が特に面白い。ちょっと70年代ヒッピーの匂いを感じます。

GEORGE LEWIS / Shadowgraph,5 (1978/black saint)

ジョージ・ルイス(trombones,sousaphone,etc)リロイ・ジェンキンス(vl)アンソニー・デイビス(p)ロスコー・ミッチェル(sax)ムハール・リチャード・エイブラムス(p)他、1978年録音
ジョージ・ルイスってばニューオーリンズジャズのクラリネット奏者の方が有名ですが、こちらはフリー系の方。このアルバム、まるでアコースティックなアンビエント、または単なる雑音、といった風情の音楽ではありますが、深いです。聴けば聴くほど味が出る。ドラムやパーカッションが居ない上非常に静かなので「間」が多い。そして、その「間」が凄くイイ!やかましいフリーはもうたくさんじゃっ!って人にはいいかも。点をポツリ、ポツリ、と打ってるような感じ。妙な「間」が多い。唯一ロスコー・ミッチェルが長いパッセージの音を吹きたがりますが、そこはAEOC。センスが違う。主役のジョージ・ルイスもテクニックひけらかしなんかは一切せず、センスで勝負、ってところが好感が持てます。

KAHIL EL'ZABAR 'RITUAL TRIO'/ renaissance of the resistance(1993/delmark)

カヒル・エルザバー(ds,thum piano,vo)アリ・ブラウン(ts,ss)マラカイ・フェイバース(b)1993年録音
サックス、ベース、ドラムスというトリオだと、同じシカゴAACM系のヘンリー・スレッギルのエアーなんかと同じ楽器編成ですが、こちらのほうが個人的にはお気に入り。なんでかっていうと、エルザバーのドラム&パーカッションがなんかナマナマしい、っていうのと、マラカイ・フェイバースのベースの存在感。エルザバーは親指ピアノなんかも弾いてていい感じの雰囲気の曲もあったりなんかします。サックスのアリ・ブラウンはコルトレーン直系っぽい演奏もしますがトレーンよりやわらかい演奏をします。なんとなくゼイン・マッセイなどに近い感じ(しかしアリ・ブラウンのリーダー作はそれほど面白くない)。このアルバムはカヒル・エルザバーのいろいろなドラムの音色が楽しめて、なおかつ全体的に統一した安定感があり(マラカイ・フェイバースのおかげか)、フリー系にしてはかなり聴きやすいアルバム。マラカイ・フェイバースはリズムキープだけのときにも独特の味を出してます。

ROBYN SCHULKOWSKY / NILS PETTER MORVAER / Hastening Westward (ECM/1995)

ロビン・シュルコウスキー(per) ニルス・ペッター・モルヴェル(tp)

すでにECMからのアルバムも出してたグループMASQUALEROのトランペーター、ニルス・ペッター・モルヴェルとパーカッションとのデュオ。すべて即興。モルヴェルは今やすっかりフューチャー/クラブ/NuJazz系の人になってしまいましたが、僕はこっちのモルヴェルの方が聴きやすいです。パーカッションが決してアフロ系にはならない。そこがECM。

BILLY MARTIN and G. CALVIN WESTON / Percussion Duets (AMULET/1995)

ビリー・マーチン(per)カルヴィン・ウェストン(ds,per)

ラウンジリザーズの2人によるデュオ作品。というより、メデスキ・マーチン&ウッドのマーチンとオーネット・コールマン・プライムタイムのカルヴィン・ウェストンによるデュオって言ったほうが分かりやすいのかな?でもこの95年当時はこの2人はラウンジリザーズのメンバーだったわけで、しかもこの2人ってばあのジョン・ルーリー「メン・ウィズ・スティックス」のメンバーでもある。あそこでカッコいいパーカッションたたいてたのがこの2人。このアルバムはず~っとこの2人によるパーカッションのデュオ。こまかく曲に分かれていますが、中身は全部即興のデュオ。パーカッションによるデュオってばミルフォード・グレイヴスの有名なアルバムがありますが、僕は断然こっちの方を取ります。このプリミティブなグルーヴ感は聴いてるだけで血が騒ぎます。また、ヴォリュームを絞って静かに聴いてもいける。

JAMES NEWTON / Echo Canyon (1984/celestial harmonies)

ジェームス・ニュートン(flute)
フリージャズ系のフルート奏者ジェームス・ニュートンのフルートだけによるソロアルバム。ライナーによると、ニューメキシコ州カーソン国立森林公園のエコー・キャニオンは侵食作用によって出来た自然の円形の土地で、そこで夜中に録音されたものとか。曲によってフルートの種類が違ってたりして、かなり凝ってます。ウッドフルートなんかは尺八みたいな音がしてます。野外録音なので当然コオロギの鳴き声や、早朝の小鳥達の鳴き声なども入っています。とにかく気持ちいいアルバムです。全曲インプロヴィゼーション。こういうのってありそうで無い。自然の音が入っていて楽器のソロいうと後から自然音をかぶせた気持ち悪いヒーリング音楽みたいなのばかりで、内容的に充実したものってあまり遭遇したことありません。ジェームス・ニュートンはフリージャズ系の人なので当然(?)ヒーリングっぽいものとは無縁の硬派な音楽。また、既製のジャズイディオムからも無縁の自由な音楽です。

DAVID DARLING / Cello(1992/ECM)

デヴィッド・ダーリング(cello)

チェロのソロ。チェロの落ち着いた音色で静かなメロディがつづく。水の中にでも潜っているような、あるいは上空2000メートルあたりを浮遊してるかのような…そんな気分。

DAVID DARLING / Dark Wood (1993/ECM)

デヴィッド・ダーリング(cello)

前作「Cello」よりもさらに静謐な雰囲気のアルバム。ここまでくるとミニマル~アンビエントとも言えるシンプルさ。チェロによる多重録音も決してうるさくならず、ひたすらアンビエントに展開。

DINO SALUZZI /ROSAMUNDE QUARTETT /KULTRUM (ECM/1998)

ディノ・サルーシ(bandoneon) 
ロザムンデ・カルテット:アンドレアス・ライナー(vln)サイモン・フォードハム(vln)ヘルムート・ニコライ(viola)アニア・レヒナー(cello)

このCDはいつでも取りやすい所に置いてある。ディノ・サルーシとロザムンデ・カルテットによる永遠の名作。この「ストレンジャー・ザン・パラダイス」的世界はかなりツボです。なにかと聴く機会が多く、密かな愛聴盤となっております。

JAMES NEWTON / James Newton In Venice (Celestial Harmonies/1987)

ジェームス・ニュートン(fl)

ヴェニスの教会で録音されたジェームス・ニュートンのフルート・ソロのアルバム。ドビュッシーの「シリンクス」と、賛美歌「アメイジンググレイス」の2つ以外はすべてフリー・インプロヴィゼイション。コルトレーン・ドリームという曲名のものがあるかと思えばバルトーク・ドリームなんて曲名のものがあったりして、興味深い。84年の驚異の即興演奏アルバム「Echo Canyon」と同様、静けさと飛翔感みたいなものを感じる即興演奏。

JAMES NEWTON/ Water Mystery (gramavision/1984)

ジェームス・ニュートン(fl)アンソニー・ブラウン(per)アラン・イオハラ(koto)エイプリル・アオキ(harp)ロバート・ミランダ(b)ジョン・カーター(cl)グレッグ・マーティン(oboe)他

ジェームス・ニュートンの日本趣味がそのまま出た珍品。フルートと琴のデュエットのA-1などはどっから聴いても尺八&琴なわけで、聴く人によってはトホホなわけですが、そこがまたヨシっていう見方も出来るのが大人ってもんです(笑)。A-2、A-3といくにつれ密度が濃くなってくるので、冒頭のエキゾチック・ジャパンはまあ許せるって気になってきます。とはいえ、B-2ではその琴が中華っぽいメロディを奏でるところなんかもあって、なんだかシューマイでも出てきそうなわけですが…。変なのはそこだけです。というか、聴き所がそこだったりするんだが…(笑)。

Louis Sclavis / Ad Augusta Per Augustia (NATO/1981)

ルイ・スクラヴィス(b-cl,cl,ss,voice) Jean Mereu(tp) AlainGilbert(tb) Alain Rellay(sax) Patrick Vollat(p)

このユーモアとバイタリティ。マーヴェラスバンドとワークショップ・ド・リヨンの面白さをそのまま持ってきたような、ルイ・スクラヴィスのリーダー作。音の生々しさは格別。また、ライブの臨場感がこれまた唯事ではなく、妙にアットホームで楽しげ。即興演奏にしては珍しいほど陽性の雰囲気。

山本邦山/夢幻界~銀界(paddle wheel/1996)

山本邦山(尺八)ゲイリー・ピーコック(b)

「銀界」をさらに濃くしたような一枚。無駄を一切省き、ますますコアな世界へと突入。「銀界」はまだモダンジャズ的雰囲気があったけど、こちらは即興真剣勝負、といった趣き。山本邦山のフットワークが意外に軽い。ゲイリー・ピーコックはやっぱりあのままだ。ひどいジャケットも何のその。なかなかにジャポニズムな音空間。 �

JOHN CAGE Meets SUN RA (1986)

ジョン・ケージ(voice) サン・ラ(key)

サン・ラが安物キーボードをギュイ~ンとかウニョ~ンとか弾き、ジョン・ケージがアァ~とかウゥ~とかいうボケた鼻歌を歌う、そして長い沈黙…。それだけから成り立っているアルバム。ジョン・ケージ・ミーツ・サン・ラ、というよりも、金星人と土星人の対話。音楽的にどうこうってことではなく、ジョン・ケージとサン・ラを合わせてみたらさぞ面白かろう、という企画が見事(笑)。このひたりの過去の作品を知ってることを前提として聴くアルバムではなかろうかと…。西洋音楽の彼岸と黒人音楽の彼岸との邂逅なんていう真面目な詮索が無と化すほどのインパクトはあります(笑)。 

JAMIE MUIR, DEREK BAILEY��/Dark Drug (INCUS/1981)

ジェイミー・ミューア(per)デレク・ベイリー(g)

これを買った人のほとんどは「太陽と戦慄」が頭にあったのではなかろうか(笑)。そもそもINCUSレーベルで「太陽と戦慄」みたいな大衆音楽なんか期待する方がおかしいのですが、だいたいジェイミー・ミューアってばMusic Improvisation Companyよりも「太陽と戦慄」の方で大衆には知られてるわけで、それはそれでしょうがない。かく言う僕も実は聴く前には「太陽と戦慄」的なものになるのか?なんていうこと考えてたように記憶しております(20年以上前の話ですが…)。そんなわけでこのアルバム、ジェイミー・ミューアとデレク・ベイリーのデュオです。この2人の共演はMusic Improvisation Company以来でしょうか。とても静かです。デレク・ベイリーのギターはノン・イディオマティックという「イディオム」に貫かれたものですが(笑)、いつも通りです。で、ジェイミー・ミューアはリトル・インストゥルメントをごちゃごちゃといじっている、と…。音楽的な盛り上がりみたいなものは皆無。そんなものは必要無い。この静かな即興の豊かな内容にほっとします。 �


(文:信田照幸)


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