フリージャズ(その5)


JOHN LURIE / The Days with Jacques (sony/1994)

ジョン・ルーリー(as, etc)

サントラ盤。邦題は「ジャック・マイヨールの海と夢 オリジナル・サウンドトラック」。ジョン・ルーリー作品としては一番知られていないものかもしれない。メンバーはジョン・ルーリー以外不明。ジャック・マイヨールの声とクジラの声などがたまに挟まる。とても静かな印象のアルバム。

The Moscow Composers Orchestra / Kings and Cabbages (Leo Records/1993)

ウラディミル・ミラー(p, cond) セルゲイ・レートフ(bs, b-cl, fl)他

名作。ロシアのウラディミル・ミラー率いるモスクワ・コンポーザーズ・オーケストラ(総勢18名)の作品。新ロシア・アヴァンギャルド期の熱気がそのままパッケージされているのか、非常に充実したアルバム。かなりすごい。リムスキー=コルサコフや初期のストラヴィンスキーのように音の色がカラフル。ロシアのフリージャズ界も相当深そうだ。他のモスクワ・コンポーザーズ・オーケストラのアルバムと違ってサインホ(voice)が入っていないのが良い。このアルバムはすっかり気に入ってしまった。

JIM BLACK / Splay (winter&winter/2002)

ジム・ブラック(ds)クリス・スピード(cl, ts) Hilmar Jensson(g) Skuli Sverrison(b)
オルタナ/グランジを経たポストロックといった感じのアルバム。ジャズの匂いはほとんど無し。しかしながら。1曲目のかっこよさはちょっと他に無い。クリス・スピードの音色が生きている。ジャケットが最悪なのが玉に傷。

AMA JAZZ / In One Breath (Leo Records/1996)

Alexander Brykin(el-b) Anatoly Tilsov(p) Valery Zhilin(ds) Vladisav Talabuyev(cl, sax)

ロシアのど真ん中にあるウラル連邦のグループ。ライナーノーツにReoRecordsのオーナLeo Feiginが、ガネリン・トリオを最初に聴いたときのようにミステリアスだ、と書いてます。このグループの音楽がミステリアスかどうかはともかく、たしかに妙な雰囲気があります。ピアノはほんとに捉えどころが無いし、サックス&クラリネットはジョー・マネリよりもウネウネしてるし、ベースがエレベだから妙にフットワークが軽くてしかもまたウネウネしてるし…。 で、このエレベのウネウネ感がなんだか心地よく感じてくるのが不思議。ラストの曲(In One Breath)とか本当に面白い。 

JOHN SURMAN / How Many Clouds Can You See ? (Deram/1970)

John Surman (bs, ss, b-cl) John Taylor (p) Barre Philips(b) Tony Oxley(ds) Harold Beckett (tp) Dave Holdsworth (tp) Mike Osborne (as) Alan Skidmore (ts, fl) Harry Miller (b)��Alan Jackson(ds) Malcolm Griffiths, Chris Pyne (tb) George Smith (tuba) John Warren (bs, fl)

ジョン・サーマン、バール・フィリップス、トニー・オクスレイ、ジョン・テイラーと、のちに大御所となる面々が揃ってるわけです。で、やっぱりこのカルテットによる演奏が素晴らしい。いや、他のホーン入りのも凄い。ジョン・サーマンという人は現在のECMでの不思議な活動を見るとなんだか脈絡が分かりづらいけど、この前後のアルバムが原点と考えればなんとなく理解出来る気になります。この1970年前後ジョン・サーマンは物凄い数のアルバムに参加しています。

SCOTT FIELDS / Denouement (clean feed / 2007)

SCOTT FIELDS(g) JEFF PARKER(g)�JASON ROEBKE(b)�HANS STURM(b)�MICHAEL ZERANG(ds) HAMID DRAKE(ds)

2007年のclean feedからの発売だけど録音は1998年で、これは再発盤(オリジナルはGeode)。ふたつのギター・トリオが一緒に演奏。淡々とした音風景。clean feedからの第1弾「Beckett 」とは随分印象が違います。単音主体に組み立てるふたつのギターの絡みはなかなか心地良いです。フォービートの3曲目が特にいい。 全体的にまったりとしたけだるさが漂います。

ELLIOTT SHARP / Octal : Book Are (clean Feed / 2008)

エリオット・シャープ(g)

低音弦が2本多い8弦のアコースティックギターでバキバキと物凄いソロ。特に1曲目が凄いことになってます。2006年の「SHARP? MONK? SHARP! MONK!」と同様パーカッシブなタッピング奏法が多い。ちなみにこの作品は「Scharfefelder」や「SHARP? MONK? SHARP! MONK!」(いずれもELLIOTT SHARP)とともにclean feedのGUITAR SERIESとして出たものです。

Tim Berne's Fractured Fairy Tales (JMT/1989)

Tim Berne(as) Herb Robertson(tp) Mark Feldman(vln) Hank Roberts(cello) Mark Dresser(b) Joey Baron(ds)

よくもまあここまでいろんなものを詰め込んだなあ、という感じ。音が分厚すぎて一度でお腹いっぱいになる。が、たまに聴くとなにやら盛り上がる。だってこのテンション。tpのHerb Robertsonがとても良い。

LOUIS SCLAVIS QUINTET / CHINE (LABEL BLEU/1987)
LOUIS SCLAVIS SEPTET / CHAMBER MUSIC (LABEL BLEU/1989)

LOUIS SCLAVIS (cl,b-cl,ss) FRANCOIS RAULIN(p,key) BRUNO CHEVILLON(b) CHRISTIAN VILLE(ds, per) DOMINIQUE PIFARELY(vln) 他

ルイ・スクラヴィスの87年「CHINE」と89年「CHAMBER MUSIC」の2枚組CD。どちらも原盤はIDA。正直ルイ・スクラヴィスの曲には何の魅力も感じない(おフランス的な部分がどうにも…)ので作曲部は結構つらいか…。が、凄いのは「CHINE」の4曲目RIVIERE SALEE。このセンスと技術はちょっと凄い。この曲だけでずーっとつづくようなアルバムでも作ってくれないかな。

MARC DUCRET / Detail (winter&winter/1997)
マルク・デュクレ(g)

マルク・デュクレのアコギのソロ。とても落ち着いた表情の演奏ばかり。とはいえよく聴けばいつもの変態フレーズが不意打ち的に飛び出してきたりする…。だもんで落ち着こうにも落ち着かない。そしてそんなところがイイ。

JOHN RUSSELL & ROGER TURNER / Birthdays (EMANEM/1996)

ジョン・ラッセル(g)ロジャー・ターナー(ds)

カリカリカリ、ごそごそごそ、カタカタカタ…。まあ、そんな感じ。いや、ほんとに(笑)。ちなみにこの続編ってのもあります(『THE SECOND SKY』)。実はこれ、ずっと何とも思って無かったんだけど、ある日、静かで意外にいいかもなんて思ってしまった。 

ODEAN POPE / Ebioto(knitting factory/1999)

Odean Pope (as) Tyrone Brown (b) Craig McIner(ds)

Odean PopeとTyrone Brownは70年代マックス・ローチ・グループ時代からのコンビ。どんなに吹き捲くっても何故か地味なOdean Popeがピアノレストリオでずっと演奏するとやっぱり地味だったりする…。とはいえこの味はOdean Popeならではとしか言い様が無いのがおもしろいところ。この安定感はほんとに独特。 

Workshop de Lyon / Cote Rue (ARFI/1998)

Maurice Merle (as,ss) Jean-Paul Autin(as,ss,b-cl) Jean Bolcato(b) Christian Rollet(ds)

モーリス・メルレとジャン・ポール・オーティンの2管がとてもいい感じ。おフランス的叙情性のある曲はどうも好きじゃないが聴いてるうちに慣れてきた。どの曲もよく練られているようで、ポップささえ感じられるのが面白い。スクラヴィスが居た頃と同様、どことなく漂うユーモア感が魅力になってます。 

JIM BLACK / Dogs Of Great Indifference (winter&winter/2006)

CHRIS SPEED(ts) HILMAR JENSSON(g) SKULI SVERRISSON(b) JIM BLACK(ds)

2000年のアルバム「ALASNOAXIS」から(あるいはHUMAN FEELから)ずっとJIM BLACKは一貫してこの路線。ロックっぽくても所謂ジャズロックというのとは全く違うところがイイのだ。 

HANK ROBERTS / Green (winter&winter/2008)

HANK ROBERTS(cello,vo,g) MARC DUCRET(g) JIM BLACK(ds,electronics)

どこかECM的な雰囲気もあります。また、良くも悪くもヴォーカルが印象的なのでHANK ROBERTS流フォークミュージックとでもいいたくなるような雰囲気でもあります(しかし僕はヴォーカルものは好きではない)。静かな中にときおり切り込んで来るマルク・デュクレがとてもいい。

Bernard Vitet / La guepe (FUTURA SON/1972)

Bernard Vitet(tp,etc) Jean-Paul Rondpierre(tp,etc) Jouck Minor(ss,bs,vln,etc) Francois Tusques(p,etc) Bebe Guerin(b), Jean Guerin(per,etc) Francoise Achard(voice) Dominique Dalmasso(magnetophones,tape)

ベルナルド・ヴィテのレアLPのCD版。混沌とした音空間が実に素晴らしい。voiceパフォーマーが居なかったらこの10倍は良かった(いや、100倍は良かった)。voiceパフォーマーが台無しにしていることを差し引いても、このカラフルで鮮やかな音は魅力的。ときおり聴こえてくるフランソワ・テュスクのピアノの独特のハーモニーも効いている。

Andrew Cyrille, Jeanne Lee, Jimmy Lyons / Nuba (black saint / 1979)

アンドリュー・シリル(ds,etc) ジミー・ライオンズ(as)ジーン・リー(voice, poetry)

セシル・テイラー・トリオの中核ジミー・ライオンズとアンドリュー・シリルだもんで見逃せない。この二人は「Something in Return」というデュオ作品もblack saintにありますが、こちらはvoiceを入れたトリオ。1曲目と7曲目の「Nuba」ではジミー・ライオンズがアイラー的な吹き方をしています。ジミー・ライオンズらしさが出ている2曲目と6曲目が好き。 

John Surman & John Warren / The Brass Project (ECM/1992)

John Surman (bs,ss,b-cl, p) John Warren (conductor) Henry Lowther, Steve Waterman, Stuart Brooks (tp) Malcolm Griffiths, Chris Pyne (tb) David Stewart, Richard Edwards(bass-tb) Chris Laurence(b) John Marshall (ds)

ジョン・サーマンと7人のブラス、それにドラムとベースという布陣。ジョン・ウォレンとの共演作は「 Tales of the Algonquin」がありますが、本作はそれと同様にジョン・サーマンのアルバムにしてはちょっと珍しいモダンジャズ的風味と響きがあります。で、僕はそこが気に入りました。「 Tales of the Algonquin」の続編みたいな感じか。ジョン・サーマンのソロはいつもどおり。ブラスのアレンジがなんだかいい雰囲気です。

RAPHE MALIK QUARTET / Companions (Eremite MTE/1998)

Raphe Malik(tp) Glenn Spearman(ts) William Parker(b) Paul Murphy(ds)

セシル・テイラー・グループにも在籍していたことのあるラフェ・マリクのリーダー作。ジミー・ライオンズのトリビュート・イベントでの演奏。だもんで1曲目の曲目は「Lyon's Jump」。ラフェ・マリクもウィリアム・パーカーもポール・ハンフリーも、かつてはジミー・ライオンズ・クインテットのメンバーでした(1983年「Wee Sneezawee」など)。また、サックスのグレン・スピアマンは70年代にセシル・テイラーのグループに在籍しているし、90年代にはウィリアム・パーカーともレコーディングしてます。そんなわけでこのアルバムのメンバーはそれぞれ旧知の仲。セシル・テイラーやジミー・ライオンズといった主役が居ないけど、だからこそ出来たのであろう4曲目(なんと4ビート)に、このグループの面白さを感じました。

Medeski Martin & Wood / It's a Jungle in Here (gramavision/1993)

John Medeski (p, organ) Billy Martin (ds) Chris Wood (b) Jay Rodrigues (as, ts) Dave Binney (as) Steven Bernstein (tp) Josh Roseman (tb) Marc Ribot (g)

MMWの初期のアルバム。ゲストを含めメンバーがラウンジリザーズとかぶるところがなんとも嬉しい。時代的に、ビリー・マーティンがジョン・ルーリー・ナショナルオーケストラに居たころだ。また、MMWのアルバムの中ではこのジャケが一番お気に入り。それはそうとこのアルバム、変な勢いみたいなのがあってなんだか好きなのだ。冒頭の2曲や、マーク・リボーが活躍する5曲目なんかは特に良い。

PAULO CURADO / The bird, the breeze and Mr. Filiano (clean feed/2008)

Paulo Curado (as, fl) Bruno Pedroso (ds) Ken Filiano (b)

フルートで始まる1曲目が絶品!これは美しい。こじんまりとしたドラムの感触がいいのか、一定のトーンで細切れフレーズをフルートがいいのか、なんだかありそうで無いような音です。2曲目以降のサックスもとてもよく、ある意味clean feedらしい演奏。こういうのに出会うからclean feedが好きなのだ。ちなみにPAULO CURADOはclean feedの本拠地ポルトガルのアーチスト。

MICHAEL BLAKE / Control This (clean feed/2009)

Kresten Osgood (ds) Michael Blake (sax)

マイケル・ブレイクの最新作。clean feedからはこれが2作目となる。clean feedからの1作目「Right Before Your Very Ears」ではベースが居たけど今回はドラムとのデュオ。僕は前作の方が好きだが、こちらもかなり良い。こういう編成ではアーチストのすべてが見えてくるようで、とても面白い。

PETER BROTZMANN OCTET/ THE COMPLETE MACHINE GUN (FMP/1968)
 
Peter Brotzmann(ts,bs) Willem Breuker(ts,bass-cl) Evan Parker(ts) Fred Van Hove(p) Peter Kowald(b) Buschi Niebergall(b) Han Bennink(ds) Sven-Ake Johansson(ds)

「For Adolphe Sax 」(1967)と10インチシングルの「Usable past」(1967)の翌年のアルバム。ブロッツマン最初期のものだが、とにかく物凄い。歪んだサックスの音色がかなり攻撃的。曲構成が意外にしっかりしているところがとてもいい。ウルトラ級の名作。 

Peter Brotzmann / Nipples (1969)

Peter Brotzmann (ts) Evan Parker (as, ts) Derek Bailey (g) Fred Van Hove (p) Han Bennink (ds) Buschi Niebergall (b)

名作。ヨーロッパ・フリージャズの黄金時代ともいえる時期の作品。Manfred SchoofやAlexander Von Schlippenbachの同時期のアルバムと同様に、熱気とクールさを兼ね備えている。音が音として自律しており、何か(感情など)のメタファー等になっているわけではない。デレク・ベイリーのギターも効いている。

STEPHAN MICUS / On The Wing (ECM/2006)

Stephan Micus (sattar, mudbedsh, classical guitar, nay, sho, hne, suling, Tibetan cymbals, gongs, hang, 14-string guitar, steel string guitar, shakuhachi, mandobahar, sitar)

ひとり多重録音てのはだいたいロクなものが無いという印象を持ってるのだが、このステファン・ミカスは別。エスニックな楽器ばかりを使いながら、それほどエスニックな雰囲気は無く、極めてECM的な世界観を持つ音空間。クォリティが非常に高い。こんな音楽は他に無い。どういうわけかこのアルバムをすっかり気に入ってしまって、ウォークマンに入れて、散歩しながら聴いてたりする。

TRANSIT / TRANSIT (clean feed/2005)

Jeff Arnal (per) Nate Wooley (ts) Reuben Radding (b) Seth Misterka (as)

clean feedの名盤。「森と動物園」をちょっとだけ髣髴とさせる雰囲気。これがなんともいい感じ。パーカッションのセンスが素晴らしいが、管のセンスも素晴らしい。tsの Nate Wooley とbの Reuben Raddingはclean feedではお馴染みの顔。

FRANCOIS TUSQUES / Le Nouveau Jazz (Mouloudji /1967)

Francois Tusques (p) Barney Wilen (ts) Beb Guerin, Jean-Francois Jenny Clark (b) Aldo Romano (d)

65年の「Free Jazz」のような芳醇な音を期待するとちょっと「あれ?」って感じに…。本作では楽器それぞれのソロパートを多めに取っており、全体的にスカスカの印象もあります。がしかし、前半のピアノトリオ演奏のなんともいえないねじ曲がり方など、かなり独特。バルネ・ウィランが登場すると何故かヨーロッパ臭が消える気が…。まあ、フランス的雰囲気は好きじゃないのでいいんだけど。

MANFRED SCHOOF / European Echoes (FMP/1969)

Manfred Schoof, Enrico Rava, Hugh Steinmetz (tp) Alexander von Schlippenbach, Fred Van Hove, Irene Schweitzer(p) Derek Bailey(g) Han Bennink, Pierre Favre(ds) Arjen Gorter, Buschi Niebergall, Peter Kowald(b) Evan Parker(ss) Gerd Dudek, Peter Brotzmann(ts) Paul Rutherford(tuba)

圧倒的。当時のヨーロッパの最強メンバー達による伝説の音源。これだけ混沌としていながらも構成がしっかりとしてるところがヨーロッパ的。アメリカにおけるフリージャズよりもさらにエントロピーが増大して、もはや取り返しのつかないような事態になる一歩手前といった危うさが美しい。ちなみにブロッツマンの「Nipples」のメンバーはすべてこの中にいる。ヨーロッパ・フリージャズの沸点を記録した壮絶なアルバム。

Anthony Braxton and Derek Bailey / Moment Precieux (Les Disques Victo / 1987)

Anthony Braxton(as) Derek Bailey(g)

アンソニー・ブラクストンとデレク・ベイリーのデュオ・ライブ。これはなんとも素晴らしい。ブラクストンの音の置き方の間(ま)というのは基本的にどうにも僕の好みではないんだけど、このライブに関してはぜんぜん大丈夫。むしろこういうのは好きだ。デレク・ベイリーのギターのリズムがあるからだろうか。いつものブラクストンよりサックスの流れがなめらかに聴こえる。

DON BYRON / Tuskegee Experiments (Nonesuch / 1992)

Don Byron(cl, b-cl) Bill Frisell(g) Lonnie Plaxico(b) Ralph Peterson, Jr.(ds)Reggie Workman(b) Edsel Gomez(p) Greta Buck(violin) Pheeroan akLaff(ds) Joe Berkovitz(p) Richie Schwarz(marimba) Kenny Davis(el-b) Sadiq(poetry)

ドン・バイロンのデビュー作。デビュー盤でありながらも、なんとも落ち着いた風情というか、なにやら貫禄すら漂います。ドン・バイロンのいろんな表情を見ることも出来、その後の面白いアルバムたちを予感させる演奏です。ドン・バイロンの原点。最高。ビル・フリゼールも効いてます。ちなみにこのアルバムの直前、ドン・バイロンは1989年から1990年までジェリー・ヘミングウェイ・クインテットに居ました。

JACKIE McLEAN / New and Old Gospel (bluenote/1967)

ジャッキー・マクリーン(as)オーネット・コールマン(tp)ラモント・ジョンソン(p)スコット・ホルト(b)ビリー・ヒギンズ(ds)

「Let Freedom Ring」あたりから徐々にフリーを取り込み、この作品でジャッキー・マクリーンが最もフリーに近づいたわけだが、この後のマクリーンを見ればこれがマクリーンの行き止まりだったことが分かる。あとはUターンするしかなかった。さて本作は全般的にオーネット色が非常に濃くほのぼのとしているので、マクリーンのファンにとってはちょっと物足りないものかも。僕はマクリーンのアルバムでは「Right Now」が最も好きなので、マクリーンを聴くにはこのアルバムにはやや不満。とはいえ、変わりダネということでは本作が一番か。また、オーネットの作品だと思えば特に問題ないって思えるところにオーネットの本質を垣間見る…。


(文:信田照幸)


free jazz (その1その2その3その4その5その6その7その8その9、)


HOME

inserted by FC2 system