フリージャズ(その6)


LOUNGE LIZARDS / No Pain For Cakes (Antilles/1986)

大学1年のときに買ったLP。大学時代に最もよく聴いたレコードのうちの一枚です。ほんとに何度聴いたか分からない。今でもラウンジリザーズのアルバムの中で最も好きなものです。このアルバムの魅力を語りだすとほんとに止まらなくなるのでなるべく手短に言えば、モダンジャズの文脈とは関係無い所から流れ込んできたN.Y.の土着音楽、といったところでしょうか。音空間に漂うエスニックな匂いは多民族都市N.Y.そのもの。さて、ラウンジリザーズはテオ・マセロがプロデュースしたファースト「LOUNGE LIZARDS」が一番人気があるようだけど、あれはいくらなんでも硬すぎる(「ハーレムノクターン」なんてひどすぎ)。ガチガチに制限のある中での表現はぜんぜん彼等の魅力を伝えていない。しかしながら4作目のライヴ盤「BIG HEART」でややほどけてきて、本作にて本領発揮。ファーストアルバム以来のスタジオ録音でもあります。「Stranger Than Paradise」や「Men With Sticks」といったジョン・ルーリーの問答無用の名盤にも迫るほどのアルバムです。ジョン・ルーリーのサックスはこのあたりから独自のスタイルになります。ジャケの絵はジョン・ルーリーの作品。現在ジョン・ルーリーは画家としても活動してます。ちなみにかつてラウンジリザーズに在籍していたメンバーはつぎのとおり。この豪華な面子を見よ。
John Lurie (as, ss) Evan Lurie (p, organ) Arto Lindsay(g) Steve Piccolo(b) Anton Fier(ds) Dana Vlcek(g) Danny Rosen(g) Peter Zummo(tb) Dougie Bowne(ds) Roy Nathanson(sax) Curtis Fowlkes(tb) Marc Ribot(g) Erik Sanko(b) E.J. Rodriguez(per) Brandon Ross(g) Al MacDowell(b) Calvin Weston (ds) Michael Blake(ts) Steven Bernstein(tp) Billy Martin(per) Jane Scarpantoni(cello) Bryan Carrott(marimba/vib) Michele Navazio(g) Oren Bloedow(b) David Tronzo(g) Ben Perowsky(per) Tony Scherr(b) Doug Wieselman(g, cl) Mauro Refosco(per) John Medeski(org) Kenny Wollesen(ds) Danny Blume(g) 

ALBERT AYLER / Spirits (1964)

Albert Ayler(ts,ss) Norman Howard(tp) Henry Grimes(b) Earle Henderson(b) Sunny Murray(ds)

このアルバム前後のディスコグラフィはこうなる。
1962. The First Recordings, Vol. 1&2
1963. My Name Is Albert Ayler
1964 .2.24. Spirits
1964 .2.24. Swing Low, Sweet Spiritual
1964 .6.14. Prophecy
1964 .6.14. Bells
1964 .7.10. Spiritual Unity
1964 .7.17. New York Eye And Ear Control
1964 .9.14. Ghosts (Vibrations)
というわけで本作は「My Name Is Albert Ayler 」(1963)のつぎのアルバムに当る。僕がフリージャズに本格的にはまるきっかけとなったのがこのアルバム。だもんで本作には結構思い入れが強い。アイラーのグループでリズムが定型リズムを刻まないものは本作が初めてとなるけど、1962年から1964年にかけてアイラーはセシル・テイラー・ユニットに参加し ているので、むしろこのスタイルが自然なのかもしれない(当時のセシル・テイラー・ユニットはジミー・ライオンズ&アルバート・アイラーがフロント)。また本作は1964年2月24日NY録音となるけど、同じ2月に(日にちは不明)NYでセシル・テイラーのグループにアイラーが参加しライブを行ってます。このアルバムにはアイラー在籍時のセシル・テイラー・ ユニットからHenry GrimesとSunny Murrayも参加し、当時のNYのフリージャズ・シーンの空気をそのまま伝えているような傑作です。 「Spiritual Unity」とともにアイラーのベスト。


MARC DUCRET / l'ombra di verdi (Screwgun/1999)

Marc Ducret(g) Bruno Chevillon(b) Eric Echampard(ds)

マルク・デュクレはいつでも中庸を行くというかなんというか、あまり極端にならぬ程度の変態ギター(笑)。このギターを存分に楽しむにはこのトリオ形式がいちばんかも。正直そんなに好きなギタリストでもないが、たまにふと聴きたくなる。

Spontaneous Music Ensemble / Karyobin (1968)

John Stevens (ds) Kenny Wheeler (tp/flh) Evan Parker (ss) Derek Bailey (g) Dave Holland (b)

ヨーロッパ即興の名盤。ある意味究極。拡散していく抽象的な音のバランス感覚はジョン・スティーヴンスのリズム感覚に拠る。散漫な感じは一切無く、緻密な音の連なり。何度聴いても引き込まれる。

RED Trio / RED Trio (clean feed/2010)

Gabriel Ferrandini (ds) Hernani Faustino (b) Rodrigo Pinheiro (p)

最近出たアルバムだがこれは凄い。名作。早くも今年のベスト盤候補。clean feedは本当に良いアルバムが多い。本作はポルトガルの3人組 RED Trio のデビュー盤です。アブストラクトな音の断片が集まったり散らばったり。圧倒的な1曲目はかなりの快感。ベースが素晴らしい。

Spontaneous Music Ensemble / Challenge(EMANEM / 1966)

JOHN STEVENS (ds) KENNY WHEELER(flugelhorn) TREVOR WATTS (as,ss) BRUCE CALE (b) JEFF CLYNE (b)

ヨーロッパ・フリージャズ・シーンの最重要グループSMEのデビュー作。フリージャズ的要素が色濃く残るものの、すでに「Karyobin」への布石とも取れる抽象性も見てとれる。SMEのアルバムの中でも何か生々しい生命力みたいなエネルギーが強く感じられて、結構好き。10曲目にEVAN PARKERとCHRIS CAMBRIDGEが加わったボーナストラック(1967年)が入っている。

MARC RIBOT / Spiritual Unity (PI Recordings/2005)

Marc Ribot(g) Roy Campbell (tp) Henry Grimes(b) Chad Taylor (ds)

マーク・リボーの代表作といってもいいのではないか。とにかく素晴らしい。アイラーの曲ばかり演奏したアルバム。Marc Ribot's Spiritual Unityとしてツアーも行っており、そのブート音源もある(2種類持ってるがどちらもとてもイイ)。アイラーとの共演歴のあるヘンリー・グライムスの存在感が強烈。

Alexander Von Schlippenbach's Globe Unity Orchestra / Globe Unity 67 & 70 (1967/1970)

Alexander von Schlippenbach (p) Peter Brotzmann (as) Peter Kowald (b) William Breuker (bs) Albert Mangelsdorff (tb) and Jaki Liebezeit (ds)
Evan Parker (ts,ss) Derek Bailey (g) Kenny Wheeler (tp) Paul Rutherford (tb) Han Bennink (ds)

これまたヨーロッパ・フリージャズ史においてはずすことの出来ない重要作。これはいいなあ・・・。しっかりとした構成の隙間から湧き上がる各ソロももちろん素晴らしいが、全体が渾然一体となって小噴火を繰り返す様が壮絶でもあり美しい。 

JACOB ANDERSKOV / AGNOSTIC REVELATIONS (ILK / 2010)

Chris Speed(sax, cl) Jacob Anderskov(p) Michael Formanek(b) Gerald Cleaver(ds)

デンマークのヤコヴ・アンデルシュコフ以外は皆ニューヨークでお馴染みの面子。だからなのか北欧的な雰囲気がありながらもどこか賑やかな感じに。ジェラルド・クリーヴァーのパルス状のドラムがなんとも素晴らしい。 

Anthony Braxton / Anthony Braxton's Charlie Parker Project (hut art/1993 )

Anthony Braxton(ss, as, contrabass clarinet) Ari Brown (ts,ss) Paul Smoker (tp, flugelhorn) Misha Mengelberg (p) Joe Fonda(b) Han Bennink (ds) Pheeroan AkLaff (ds)

アンソニー・ブラクストンがチャーリー・パーカーゆかりの曲をやるというプロジェクト。CD2枚分のボリューム。ライブ録音とスタジオ録音。本家チャーリー・パーカーの演奏に比べると相当生温いのだが、フリーというスタイルでやる面白さは格別。ライブの方がややテンションが高いか。音数もそれなりに多いのに何故か全体的に静かな印象。 

Vandermark 5 / Annular Gift (NOT TWO / 2009)

Ken Vandermark(ts, b-cl) Dave Rempis(as, ts) Fred Lonberg-Holm(cello) Kent Kessler(b) Tim Daisy(ds)

この単純明快で圧倒的な分かりやすさが人気の理由だと思うのだが、このなめらかなサックスを聴いてるだけでもなんだか気分よくなってきます。こういう人にはもう徹底的に吹きまくってもらいたい。電化チェロの歪んだ音がこれまた分かりやすいというかなんというか。 

David Liebman & Ellery Eskelin / Renewal (hatology/2007)

Ellery Eskelin(ts) David Liebman(ts) Tony Marino(b) Jim Black(ds)

2004年の「DFFERENT BUT THE SAME」(hatology)と同じメンバー。リーブマンが言うように、リーブマンとエスケリンはどちらがどちらだか分からない位似ている感じだけど、エスケリンの方が音に独特の表情があります。本作は「DFFERENT BUT THE SAME」のノリをさらによくした感じで、とにかく最高。バリバリ吹きまくるエラリー・エスケリンはもはや最強か。エスケリンはジェリー・ヘミングウェイのグループでもいつも素晴らしい音を出してますが、このアルバムでも素晴らしすぎ。また、ジム・ブラックのAlasNoAxisなノリがこれまた最強。特に1曲目。本当にカッコイイ。トニー・マリノのゴリゴリしたベースもジム・ブラックのスケールの大きなドラムにマッチしてます。

Wishful Thinking / Wishful Thinking (clean feed/2007)

Alex Maguire (p) Alipio C. Neto (ts) Johannes Krieger (tp) Ricardo Freitas (b) Rui Goncalves (d)

claen feedらしからぬフュージョン・ライクな作品。とはいえ音の生々しさは所謂フュージョンの対極にある。冒頭いきなりブレッカーブラザーズ風というか、ゆるいブレッカーズというか、そんなノリで始まるので油断していると聴いていると、あれあれ?ってな感じでフリーの方向へ持っていかれます。これが意外にかっこいい。ブラジル、ドイツ、イギリス、ポルトガルという多国籍軍団。

Derek Bailey / Ballads (2002)

Derek Bailey(g)

デレク・ベイリーが珍しくテーマ部をちゃんと弾いてる、ということ以外特に珍しくも無いアルバムなのだが、このテーマがあるのと無いのとではやはり随分と印象が違うもんなんだなあと思った次第。だってデレク・ベイリーの数あるソロの中でも本作は結構印象的なアルバムになってるんだから。テーマ部を弾いてるとはいっても1曲ごとに分かれてるのではなく、長いソロの途中途中でテーマ部が出てくるような感じ。このへんのセンスがすごくいい。デレク・ベイリーは60年代の途中までは普通(?)な弾き方をしてたわけだけど(1966年にリー・コニッツ、ギャビン・ブライアーズ、トニー・オクスレイ、とのカルテットで演奏した音源が好きです)、67年のSME以降あのようになっていくわけで。まあそれはそれで最高なんだけど、ソロ演奏作品となると僕なんぞはそう何度も聴けなくなる(正直途中で飽きる)。なので本作とか「Standards」とかは結構貴重です。

MICHAEL BLAKE / Kingdom of Champa (1997)

Michael Blake (te,ss,b-cl) Steve Bernstein (tp, cornet) Thomas Chapin (fl, b-fl, piccolo, bs) Marcus Rojas (tuba) Rufus Cappadocia (cello) Bryan Carrott; (vib) David Tronzo (g) Tony Scherr (b) Scott Neumann (ds) Billy Martin (per)

裏ラウンジリザーズとでもいうべき作品。90年代ラウンジリザーズのメンバー、マイケル・ブレイクのファースト・アルバム。サックスをフロントとして前面に押し出すわけではなく、それぞれの曲をグループ表現でまとめ上げるところなどはラウンジリザーズ譲り。個々のプレイがどうのというより、曲全体での完成度の方を見たい。とにかく曲のセンスが素晴らしく、僕なんぞは聴いてるだけで気分よくなってしまう。傑作中の傑作。

Matthew Shipp Duo With Joe Morris / Thesis (hatOLOGY/1997)

Matthew Shipp(p) Joe Morris(g)

ギターをジャーンと複数弦(和音)を弾いて誤摩化さず(フリーではやたらと多い)、単音できちんと弾き倒すジョー・モリスはかなり好きなフリー系ギタリスト。このアルバムはマシュー・シップとのデュオで、ちょっとした小品集のような趣き。僕はどうしてもマシュー・シップよりジョー・モリスの方に耳が行ってしまいます。 ちなみにジョー・モリスはベーシストとしても活動していて、ベースの方もとてもイイ。

JOE MORRIS / Joe Morris Quartet at the Old Office (Knitting Factory/2000)

Joe Morris(g) Mat Maneri(vln) Chris Lightcap(b) Gerald Cleaver(ds)

ジョー・モリス凄し。このアルバムではマット・マネリに合わせたかのようなうねりのあるグルーヴを基調にまったりと始まるけど、徐々にお馴染みのマシンガンのごとく連射するパルスが…。ジョー・モリスはg,b,dsのトリオも凄いんだけど、マット・マネリが入ることによって味わいがさらに深いものに。本当に素晴らしいライブ。74分目一杯入ってます。ちなみにこの同一メンバーでのアルバムは他にもあります。

JOE MORRIS / Singularity (AUM/2000)

Joe Morris(g)

ジョー・モリスのアコギによるギターソロ。ジョー・モリスはアコギになると普段のエレキとはまたちょっと違ったスタイルを取ります。バール・フィリップスとのデュオでも本作と同じようなスタイルでやってます。このソロアルバム、全編アコギで、密度が濃い。いろんな要素をギューっと詰め込んであるので、聴くほうも集中力が必要。

TOM RAINEY / Pool School (claen feed/2010)

Ingrid Laubrock (ts, as)��Mary Halvorson (g) Tom Rainey (ds)

小回りのきくようなこじんまりとしたドラムはジョン・スティーヴンスなどにも通じるし、しなやかでオーガニックな感触はスージー・イバラ(あるいはその師匠筋のミルフォード・グレイヴス)なんかにも近い。この小気味よさがなんとも気持ちいい。決して派手になり過ぎないギターとサックスもなかなかいい。12曲に分かれているけど、全1曲!みたいな長いインプロも聴いてみたい。とにかくほんとに気持ちいいドラムです。かなり最高。ちなみに本作はTOM RAINEYのファーストアルバム。

Joe Morris / Ken Vandermark / Luther Gray / Rebus(clean feed /2007)

Joe Morris (g)��Ken Vandermark (ts)��Luther Gray (ds)

うねるジョー・モリスと滑らかなヴァンダーマークのなんとも爽快な作品。clean feedが信用出来るのはこの手のものが多いから。ヴァンダーマークのフレーズにはモダンジャズの歴史が分散的に埋め込まれてあり、ジミー・ライオンズにもとても近い。その意味では非常に分かりやすいわけなんだけど、ジョー・モリスの強烈な変態うねうねギターが 絡むと何やら抽象的で立体的な空間が出来上がる。パルス状のドラムもイイ。これはかなり好きだな

KIRK KNUFFKE / AMNESIA BROWN (clean feed/2010)

Kirk Knuffke(tp) Doug Wieselman(cl, g) Kenny Wollesen(ds)

「Big Wig」に次いでKirk Knuffkeの2作目となるアルバム。こじんまりとした感触は前作と同じ。ドラムもいい感じにこじんまりとしてます。曲によってクラリネットとギターを使い分けるDoug Wieselmanもこれまたこじんまりとしてて、とても馴染んでいます。というわけで本作は地味なんだけど、3人のキビキビした動きがなんとも快感。草食系フリージャズとでもいえばいいんだろうか。

Joe Morris Bass Quartet / High Definition (Hatology/2007)

Joe Morris (b) Taylor Ho Bynum (tp) Allan Chase (ss,as,bs) Luther Gray (ds)

ギタリストのジョー・モリスがベーシストとしても一流であることを証明したような作品。いや、ジョー・モリスがどうのというよりも、これはアルバム自体が素晴らしい。ジョー・モリスのアルバムの中でもトップクラスじゃなかろうか。ジョー・モリスのベースは基本的にギターとそうあまり変わらないのだが、ギターよりはやや保守的か(定型リズムの曲調によるものかもしれない)。とはいえミンガス級の怒涛のうねりと疾走感はちょっとすごい。二人のホーンがこれまた素晴らしく、何度も何度も繰り返し聴きたくなる。ジャケ・デザインも最高ではないか。

DAVID S. WARE / Onecept (2010)

David S. Ware( ts, stritch, saxello) William Parker(b) Warren Smith(ds, tympani, per)

なんと、ウェアのファーストアルバムの「Passage to Music」(1988)以来となるピアノレス・トリオ編成のアルバム。前作「Saturnian」が手術後の復帰作となるサックスソロ(!)で、今回がピアノレストリオ。なにやら巨人が徐々に目を覚ましていくかのよう。気合い入ってます。ウェアのサックスは増々深みが出て来て、現在とんでもない境地に突入してるんじゃないか。個人的にはセシル・テイラー・ユニットで力任せにフリークトーンを吹き捲くってた70年代よりもこちらの方が好き。とにかくサックスの音色があまりに個性的。 ウィリアム・パーカーも相変わらず強烈。

DIE LIKE A DOG / fragments of Music, Life and Death of Albert Ayler (FMP/1994)

Peter Brotzmann(as, ts, tarogato) Toshinori Kondo(tp, electronics) William Parker(b) Hamid Drake(ds)

ブロッツマンにしては珍しくメロディーをヴィブラートを効かせて吹いてるけどそれはやはりテーマ部のみ。あとは容赦無く音の塊を放射しまくり。これに対する近藤が意外に面白く、エレクトリックtpのうねりをつけた音でブロッツマンのまわりを取り囲む。「Fragments of Music, Life and Death of Albert Ayler」ということなので近藤はドン・チェリー役か、はたまたノーマン・ハワードか。アイラーの音は感情を基にした肉声のようだが、ブロッツマンの音は感情とは関係なく、マシンガンから連射される弾丸のような音の塊。このライブアルバムでもやっぱり凄い。

WHIT DICKEY / Trio Ahxoloxha (Riti Records/2002)

Whit Dickey (ds) Joe Morris (g) Rob Brown (as)

ほとんどclean feedみたいなメンバー構成だけど、これはジョー・モリスのRiti Recordsからのアルバム。ペラペラの紙ジャケにCDのディスクがそのまま放り込んであるという何ともアバウトな仕様が潔い。で、肝心の内容だけど、三者のバランスがとてもよく、意外に聴き易い。ロブ・ブラウンも、ウィリアム・パーカーが居ないからか(?)フリークトーンはやや控え気味で、ジョー・モリスのフレーズのテンポに合わせたりしてる場面も多く見られる。Whit Dickeyのドラムのトーンが一定で安定してるところが聴き易さの要因かと。心地よさすら感じます。 �

ADAM LANE / New Magical Kingdom (clean feed/ 2006)

Adam Lane (b) Aaron Bennett (ts, ss) Darren Johnston (tp) Jeff Chan (ts) John Finkbeiner (g) Lynn Johnston (bs) Vijay Anderson (ds)

7拍子と4拍子の交差する1曲目がとにかくカッコイイ。なんという突進力。ほとんどミンガス級。他の曲もなかなか良く、ギターのJohn Finkbeinerが結構いい味出してます。一応このメンバーはフルスロットル・オーケストラと名前がついててて、このアルバムはフルスロットル・オーケストラとしては3枚目(clean feedでは1枚目)。

Jorrit Dijkstra / Pillow Circles (clean feed/2010)

Jorrit Dijkstra(as, lyricon, analog synth, crackle box) Tony Malaby (ts, ss) Jeb Bishop(tb) Oene van Geel(viola) Paul Pallesen(g, banjo) Raphael Vanoli(g) Jason Roebke (b, crackle box) Frank Rosaly(ds, percussion, crackle box)

どこかラウンジリザーズ的なところがあってかっこいい。ホーンがあまり厚かましくないのがいい。ギターがリフを刻んでるところなんか結構ポップかもしれない。静と動が交互にやってくる。Jorrit Dijkstraの作品というよりグループの作品といった味わい。

Jeff Parker & Scott Fields / Song Songs Song (2004)

Jeff Parker(g) Scott Fields(g)

スコット・フィールズ目当てで入手したアルバム。地味。びっくりするほど地味(笑)。1曲目はそうでもないかもしれないが、それ以降はほんとに地味。静かというのともちょっと違う。アンビエントというわけでもない。地味なのだ(笑)。そしてスコット・フィールズは地味だからイイのだ。

Peter Brotzmann & Hamid Drake / Brotzmann/Drake(2010)

Peter Brotzmann (ts, ss, tarogato) Hamid Drake(ds)

ブロッツマンはサックスソロもいいんだけど、やはりドラムがいると迫力が増す感じがする。このライブアルバムも何やらブロッツマンの凄みが浮き彫りになってて聴いてると妙に盛り上がる。2曲目の地中海的(あるいはアラブ・ヨーロッパ的)風味の曲調がとても良く、ブロッツマンの懐の深さがうかがえる。小技のうまいHamid Drakeのドラムも全編に渡って素晴らしい。

MARION BROWN / Solo Saxophone (1977)

Marion Brown (as)

先日亡くなったマリオン・ブラウンの70年代のサックス・ソロのアルバム。数あるサックス・ソロのアルバムの中でも神クラス。テーマ部から展開されて出て来るメロディ、音自体のゆらぎ、音の響き、どれを取っても文句なし。何度でも聴ける数少ないサックス・ソロのうちのひとつ。

MARION BROWN / Afternoon of a Georgia Faun (1970/ECM)

Marion Brown(as, zomari, per) Anthony Braxton(as, ss,cl, contrabass clarinet, chinese musette, fl, per) Bennie Maupin (ts, fl, bass clarinet, acorn, bells, wooden flute, per) Chick Corea(p, bells, gong, per) Andrew Cyrille (per) Jeanne Lee (voice, per) Jack Gregg (b, per) Gayle Palmore (voice, p, per) William Green (top o'lin, per) Billy Malone (african ds) Larry Curtis (per)

パーカッション主体で静かにはじまる音楽。緻密な音の置き方による何とも絶妙な間の取り方。マリオン・ブラウンのサックスやブラクストンのサックスを期待してもあまり出てこないので肩すかしを食うけど、リトル・インストゥルメンツのそれぞれの音の生命力を見れば、サックスにこだわる気もなくなってきます。とんでもない傑作。 

ANDERS GAHNOLD / Flowers for Johnny (Ayler Records/2003)

Anders Gahnold (as) Johnny Dyani (b) Gilbert Matthews (ds)

1983年と1985年のライブ。2枚組。Johnny Dyani の貴重な音源ということでわざわざAyler Records(あのJimmy LyonsのBoxセットも出してることだし、かなり信用出来るレーベルだ)から出て来たもの。スウェーデンのアルト奏者Anders GahnoldはちょっとOdean Popeに似た感じ。いや、Odean PopeとRob Brownを足して黒さを抜いたみたいな感じか。バップにルーツがある演奏なので完全に僕の好み。このライブ盤、僕はJohnny DyaniよりもAnders Gahnoldにどうしても注目してしまう。


(文:信田照幸)


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