フリージャズ(その3)


FRANCOIS TUSQUES / Free Jazz (in situ/1965)

Francois Tusques(p) Michel Portal(b-cl) Francois Jeanneau(sax, fl) Bernard Vitet(tb) Bernard Guerin(b) Charles Saudrais(per)

フランソワ・テュスクのピアノは所々オリヴィエ・メシアン的なコードの響きがあって(特に3曲目、4曲目)独特の品を感じさせます。また、全体としても、アメリカやイギリスなどのフリージャズには見られないような響きがあり、非常に美しい。これがあんまり気に入ったので、これに似たアルバムを探してるのだが、ぜんぜん見つからない…。それほどまでに響きが独特。ちなみにこれはフランス初のフリージャズといわれるアルバム。

Francois Tusques/1992 Le Jardin Des Delices (in situ/1992)

Fraocois Tusques(p) Isabel Juanpera (reading, text) Denis Colin (b-cl) Bernard Vitet(tp)Daniele Dumas(sax)Noel Mcghie(dr, perc)

舞台劇用にフランソワ・テュスクが作った音楽。各楽器のソロがたくさんあり、前半はやや静か。後半はグループとしてのアンサンブル。ベルナルド・ヴィテが聴けるのも嬉しいが、デュニ・コランやダニエル・デュマもなかなか良い。 名盤「FREE JAZZ」同様、実に素晴らしいアルバム。

BOB JAMES / Explosions (ESP/1965)

ボブ・ジェームス(p)バール・フィリップス(b)ロバート・ポザー(per)ゴードン・ムンマ(tape)ボブ・アシュレイ(tape)

ESPの名作。ボブ・ジェームスのセカンドアルバムに当たります。ファーストアルバムに少しだけあったアヴァンギャルド的要素が本作では全面的に展開されてます。フリージャズと現代音楽的が混ざりあった展開。今から見るとESPのカタログににボブ・ジェームスの名前があるのがちょっと不思議。のちのCTIやTappan Zeeなどのフュージョン~スムースジャズ時代(僕は結構好きなんだが…笑)の保守性からは想像もつかぬ程のアヴァンギャルドです。

ALAN SILVA / take some risks (in situ/1986)

Alan Silva(b) Roger Turner(per) Misha Lobko(cl) Didier Peti(cello) Bruno Girard(vln)

アルコでうにゅうにゅとやってたアラン・シルヴァが途中からピチカート奏法を始めますが、その前後がとても気に入ってます。ぎりぎりのところで秩序を保ってるところがいい。

Herve Bourde & Franco D'andrea / PARIS-MILANO (in situ/1991)

エルヴェ・ブルデ (as, ss, flute) フランコ・ダンドレア (p)

フランス人のエルヴェ・ブルデとイタリア人のフランコ・ダンドレアのコンビ、ということもあるのか、どこかヨーロッパ的な香りが…。in situならではの音楽という感じか。湿ったところが無くてカラリとしており、何度でも聴ける。意外な掘り出し物。

DENIS COLIN/ TROIS (in situ/1991)

denis colin(b-cl) didier petit(cello) pablo cueco(zarb & berimbau)

フランスのデュニ・コランのトリオ作品。地中海的というかアラブ的というか…、なんとも不思議な音楽。かなりおもしろい。デュニ・コラン・トリオとしては今まで3枚出しており、これはその1枚目。デュニ・コランは他にもいろいろなプロジェクト(ソロからビッグバンドまで)で活動していて、フランソワ・テュスクのアルバムにも参加したりしている。

ORNETTE COLEMAN / Skies Of America (columbia/1972)

オーネット・コールマン(as)デューイ・レッドマン(ts)チャーリー・ヘイデン(b)エド・ブラックウェル(ds)David Measham (cond) The London Symphony Orchestra

オーケストラとの共演盤。作曲はオーネット。濁った音のストリングスは、現代音楽としてはチープ、ジャズのウィズ・ストリングスものとしては重い、といった感じか。とはいえサードストリーム・ミュージックとして異彩を放っていることには変わりはないのだが。

HOWARD SHORE・ORNETTE COLEMAN / Naked Lunch (Milan /1991)

オーネット・コールマン(as)バール・フィリップス(b)デナード・コールマン(ds)Howard Shore (comp, cond) The London Philharmonic Orchestra

名作。オケとの融合具合が実にいい感じです。オーネット作品の中でも最も好きなアルバムのうちのひとつ。このアルバムが発表されたすぐ後、このメンバーで来日したときに、見に行きました。バックに大きなスクリーンがあって、そこに映画Naked Lunchの映像が流れ、その前でこのトリオが演奏してました。

JEAN-FRANCOIS JENNY-CLARK / Solo

ジャン・フランソワ・ジェニー・クラーク(b)

60年代にはドン・チェリーのグループに居たジェニー・クラークのウッドベース・ソロ。1994年のライブ録音。全編ピッチカート奏法なのでとても気に入ってます(アルコよりピッチカートの方が好きなのだ)。

ANDREW HILL / Smokestack (blue note / 1963)

アンドリュー・ヒル(p)リチャード・デイビス(b)エディー・カーン(b)ロイ・ヘインズ(ds)

アルフレッド・ライオンが最後の最後まで気にかけていたアンドリュー・ヒル。実に不思議な感触のあるピアニストです。本作は2ベースながらピアノトリオのように聴けるのでアンドリュー・ヒルのスタイルが分かりやすくなってます。動き回るベースとアンドリュー・ヒルの独特のハーモニー感覚との絡み合いが面白い。ロイ・ヘインズも最高。結構好きなアルバム。

Matthew Shipp / Equilibrium (Thirsty Ear/2003)

マシュー・シップ(p)ウィリアム・パーカー(b)ジェラルド・クリーヴァー(ds)カーン・ジャマル(vib)FLAM(syn, programming)

NYジャズシーンの裏の中心人物マシュー・シップのアルバム。ひんやりとした感触がなんとも心地よい。ヴァイブがなかなか効いてます。3曲目が特に好き。

JOHN GUNTHER TRIO / Permission Granted (CIMP/1997)

ジョン・ガンサー(as,ss,b-cl)Leo Huppert (b) Jay Rosen (ds)

ジャケと同じように演奏の方もどことなくユーモラス。ジョン・ガンサーの作る曲調のせいか。とはいえバリバリと吹いてくれるこのスタイルは魅力的です。ドラムのJay Rosenがなかなのクセ者で、とにかくおもしろい。こういうアルバムがあるからCIMP(Creative Improvised Music Projects)レーベルはあなどれない。こういうのを聴くたびに、僕はやはりリズムのないヨーロッパ即興系よりもリズムのしっかりしたアメリカ型フリージャズが好きなんだなあ、なんて思ったりする。

DJANGO BATES / Winter Truce (And Homes Blaze) (JMT/1995)

ジャンゴ・ベイツ(p, etc.)他

あらゆるジャンルの音楽をごちゃまぜに詰め込んでシェイクしたような音楽。フランク・ザッパの一番凄い頃の作品からロック的要素を抜いたらこうなるかも。とはいえビル・ブラッフォード譲りのロック的ダサさ具合もやや残ってます。プログレ好きな人もいけるかも。本作はジャンゴ・ベイツのピアノよりも全体の混沌を聴くアルバム。そもそもあまりに凄いごちゃまぜ感で、ピアノの存在感がほとんど無い程。シナトラでお馴染みの「ニューヨーク、ニューヨーク」のグチャグチャさ加減が笑える。

ALAN GIBERT , CLEMENT GIBERT / KIF KIF (arfi)

アラン・ジベール(tb)クレメント・ジベール(cl)

アラン・ジベールとクレメント・ジベールの親子によるデュオ。ゆったりと落ち着いた演奏がとてもいい感じ。Arfiレーベルはどういうわけかどれもこれも入手困難だけど、このアルバムだけは探すだけの価値あり。 

SEX MOB / Dime grind Palace (ropeadope/2003)

スティーヴ・バーンスタイン(tp)ブリガン・クラウス(as, bs)トニー・シェラー(b) ケニー・ウォルセン (ds) ラズウェル・ラッド(tb)他

ラズウェル・ラッドが参加してるので買ってみたアルバム。そもそも僕はジャムバンドというものには全く興味が無いのだけど、SEX MOBはよく言われる程ジャムバンド的では無い。結構きっちりと曲作りをしていて、短くまとめ上げています。ちなみにリーダーのスティーヴ・バーンスタインは元ラウンジリザーズのメンバー。だからなのか、所々かすかにラウンジリザーズの匂いが…。 �

Spring Heel Jack / Songs and Themes (Thirsty Ear / 2008)

Roy Campbell, Jr.(tp, flugelhorn, flute) John Coxon(electric guitar, acoustic guitar, bass guitar, sampler, violin, glockenspiel) John Edwards(b) Tony Marsh(ds) Orphy Robinson(vib) John Tchicai(as, ts, b-cl)��Ashley Wales (sampler) J. Spaceman(electric guitar) Rupert Clervaux (ds) Mark Sanders(ds)

まさに「現在の」ジャズ。スプリングヒールジャックの昨年出た最新作。スプリングヒールジャックはメンバーによって表情が変わるけど、今回のメンバーは最高。ロイ・キャンベルとジョン・チカイがとてもいい。で、よく見るとメンバーにオーフィー・ロビンソンの名前も…。な、なつかしい…。Ashley Wales とJohn Coxonのエレクトロニクスやサンプラーは今回は珍しく違和感なく聴けます。どこかECM的な雰囲気もある名作。

ITALIAN INSTABILE ORCHESTRA / Skies Of Europe (ECM/1995)

ジョルジオ・ガスリーニ(p)他

いきなり大袈裟がメロディーが流れてきて、あれ?とは思うものの、そのうちフリーなソロが出て来て安心する…、そんなアルバム。何度聴いてもそんな印象。各ソロも結構おもしろい。ところでインスタビレといえば何と言ってもセシル・テイラーとのアルバムThe Owner Of The River Bank (enja/2000)。あのアルバムでのずっと続く混沌が好きなわけだけど、本作Skies Of Europeはその片鱗が少しだけ顔をのぞかせます。 


(文:信田照幸)


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