フリージャズ(その8)


MACRO QUARKTET / LIVE AT THE STONE NYC ~ EACH PART A WHOLE(RUBY FLOWER RECORDS /2009)

Herb Robertson(tp, etc) Dave Ballou(tp, etc)�Drew Gress (b) Tom Rainey(ds)

100円盤買って当たりだったときのうれしさは、仮面ライダーカードでラッキーカードが出たとき(カードホルダーがもらえる)のうれしさに相当する。このCD、2年位前ディスクユニオンの年末セールで100円で買ったものなんだが、大当たり。当時うれしくて毎日のように聴いてた。で、数ある100円盤から何故このCDを選んだかといえば、Ton Raineyの名前があったから。Ton Raineyにハズレなし。僕は相当好きです。このアルバムは音が分散していく抽象的な演奏がずっと続きます。Herb Robertsonとか正直あまり興味無かったんだけど、これで開眼。Winter & Winterのアルバムとかちゃんと聴き直してみよう。にしてもこれ、ほんといいアルバム。安売りコーナーにあったら買っといたほうがいいですよ。

JACKIE McLEAN / 'Bout Soul (blue note/1967)

Jackie McLean (as) Woody Shaw (tp) Grachan Moncur III (tb) Lamont Johnson (p) Scott Holt (b) Rashied Ali (d) Barbara Simmons (voice)

ジャッキー・マクリーンのアルバムなのにドラムがラシッド・アリという(笑)。それはともかく…。モードからフリーへと足を突っ込みかけたマクリーン。形式としてのフリーはマクリーンにとって意外に不自由だったのではないかと思うのだが、アルバムとしてはかなりカッコイイ。ドラムがフリー、ピアノはモードというこのリズムセクションだけでも相当面白いってのに、この3管。おまけにコルトレーンの死後2ヵ月後ってこともあってか、なんだか熱い。3ヶ月前の「New And Old Gospel」のほのぼの感はどこへやら。トレーンの元へ届けとばかりに凄まじい内容。また、ラシッド・アリのパルス状のドラムが意外に繊細な技の上に成り立っているのも分かる。ラシッド・アリの最高の演奏のうちのひとつなのではないか。

ROB PRICE / At Sunset (Gutbrain Records / 2004)

Rob Price(g) Joey Baron(ds) Ellery Eskelin(ts) Trevor Dunn(b)

エラリー・エスケリン・トリオ・プラス・ギターみたいな感じで聴いてしまうんだけど�。ロブ・プライスのギターはどこかロッキンなノリ(笑)があるというか、サーフミュージックやカントリーのにおいもするというか、ジャズサイドからはちょっと距離を置いたところにある。ラウンジリザーズがかっこいいってのと同じような意味でロブ・プライスのギターはかっこいい。実際ラウンジリザーズの雰囲気にも似て、いかにもなNYアンダーグラウンドの音。エラリー・エスケリンが全開です。

Spontaneous Music Ensemble / Bare Essentials 1972-3

John Stevens(per, cornet) Trevor Watts(ss)

これはかなり好きなアルバム。ほとんど小鳥の鳴き声のようなトレヴァー・ワッツのサックスが凄い。CD2枚分、やってることはずーっと一緒なんだが、小鳥の鳴き声ってのはそういうもんだと思えば問題ない(笑)。たまにジョン・スティーブンスがトランペットを吹いたりする。既成のフレーズやパターンから解放された音。

Evan Parker , Paul Rutherford , Barry Guy , John Stevens / 4,4,4, (Konnex/1979 & 1992)

1-5(1979): Evan Parker(ts,ss) Paul Rutherford(tb) Barry Guy(b) John Stevens(ds)
6 (1992): John Stevens (tp, ds) Roger Smith(g) Nigel Coombes(vln)

6曲目の音源が一緒に入ってるってことは、これ、Spontaneous Music Ensembleって扱いでいいのかな?細かいパルス状のドラムを叩き出すジョン・スティーヴンスが本当にかっこいい。トランペット吹かなけりゃこの人ほんとに最高なのだが(別に吹いてもいいんだけどさ)。エヴァン・パーカーは相変わらずメロディなんか吹く気全く無しで、ただの「音」そのものが噴き出してくる。いつも同じなんだけど、この抽象的な音はやはり魅力的。ストリングス主体の6も地味ながら面白い演奏。

DAVID S. WARE / Planetary Unknown (AUM/2011)

David S Ware (ts, stritch) Cooper Moore(p) William Parker (b) Muhammad Ali (ds)

デヴィッド・S・ウェアのニューカルテット。なんと、ピアノがマシュー・シップじゃないってのが驚き。何があった?ドラムは何度か変わったけど(今回も変わってるけど)、マシューシップとウィリアム・パーカーはいつも一緒にいただけに・・・。とはいえCooper Mooreになってもたいして変わらん気もするが(いや、7曲目では本領を発揮する)。ウェアは数年前病気でヤバイって情報が流れたけど見事復活。復活してからサックスソロ、トリオ、と2枚の凄いアルバム出し、本作は復活後3枚目に当たる。これまた開き直ったかのような凄みが(笑)。ウェアの場合、サックスの「音」が圧倒的なのだ。音がでかいとかそういう意味じゃなく、いろんな意味で音の存在感が物凄い。ひょっとしてウェアは今が一番凄いんじゃないか、ってくらいに音が凄い。

ELLIOTT SHARP / Aggregat (clean feed / 2012)

Elliott Sharp (ts、ss, g )��Brad Jones (b)��Ches Smith (ds)

clean feedレーベルのエリオット・シャープ盤にハズレなし。これもまた凄い。いきなりエリオット・シャープがサックス吹いてるんだが・・・(笑)。これがまた素晴らしい。いっそのことサックス吹きとしてアルバム出してみたら結構いけるのではないかと。本業のギターの方は相変わらずの変態フレーズの嵐。また、ドラムはトム・レイニーのように細かいパルスを叩き出してて、これまた心地よい。ちなみにサックスの曲とギターの曲とが交互にやってきます。 

Jeff Clyne, Ian Carr, Trevor Watts, John Stevens / Springboard(1966)

Jeff Clyne(b) Ian Carr(tp) Trevor Watts(as) John Stevens(ds)

このメンバーと録音年代を見ただけで名作の匂いがするんだけど(笑)、実際内容も凄い。S.M.E.の「Challenge」(1966-67)と同年の録音で、どこかアメリカ経由のフリージャズの感触が残る。裏S.M.E.みたいな存在か。4ビートの曲もあるけどJohn Stevensの4ビートは結構貴重。

JAMAALADEEN TACUMA / For the Love of Ornette (Jazzwerkstatt/2011)

Jamaaladeen Tacuma (b) Ornette Colemane (as) Tony Kofi (ts) Wolfgang Puschnig (fl) Yoichi Uzeki (p) Justin Faulkner(ds) Wadud Ahmad (spoken word) David Haynes(finger drums)

去年出たジャマラディーン・タクマのアルバム。オーネット入りなのでなんかオーネットのアルバムのように錯覚してしまう。オーネットは基本的にどこで何をやっても一緒なのでバックによって選ぶしかない。で、1曲目のこのリズム。これは最も好きなパターンだ。このようにパルス状に拡散されたリズムに弱い(笑)。このパターンだとなんだってよく聴こえるのだ。ところで、ジャマラディーン・タクマといえば80年代~90年代初頭にかけてのあの諸作なわけだが、あれらのおかげですっかりジャズファンには見放されてるようなところがあるような気もするけど、このアルバムはファンク色押さえ気味で結構いい感じです。

Henry Threadgill / Tomorrow Sunny/The Revelry, Spp (Pi Recordings/2012)

Henry Threadgill(as, fl) Jose Davila(tb, tuba) Liberty Ellman(g) Christopher Hoffman(cello) Elliot Humberto Kavee( ds) Stomu Takeishi(b)

細かい所にまで神経が行き届いているような、計算され尽くした感じの1曲目からして名作の匂いが�。それぞれの楽器が細切れにリズムを取って絶妙なバランス感覚の上に成り立ってます。

Ivo Perelman, Joe Morris, Gerald Cleaver / Family Ties (Leo Records / 2012)

Ivo Perelman(ts, kazoo, mouthpiece) Joe Morris(b) Gerald Cleaver(ds)

どことなくclean feedっぽい面子と構成なわけだが、もうこれ見ただけで当たりではないか。Joe Morrisはギターよりもベースの方がいいのではないかって思えるほど。ギターと同じようにうねうねと弾いてるんだけど、ベースだとなんだか凄みが出る感じ。Gerald Cleaverの細かいドラムはいつでもどこでも気もちいいが、やっぱりここでも気持ちいい。Ivo Perelmanは最初カズー吹いてて、ちょっと面白い。意表をつかれた。

Igor Lumpert Trio / Innertextures Live (clean feed / 2012)

Igor Lumpert (ts) Christopher Tordini (b)��Nasheet Waits (ds)

いかにもclean feedという感じのサックス・トリオ。なんかclean feedは昔からこういうのが多くてうれしい。こうなると最早サックス奏者の個性とかどうでもよくなってきて、clean feedというひとつの大きなグループみたいに思えてきた(AEOCとかJCOAとかARFIみたいに)。

Jimmy Lyons / The Box Set (Ayler Records / 1972-1985)

CD1: Jimmy Lyons(as) Raphe Malik(tp) Hayes Burnett(b) Sidney Smart(ds) 1972
CD2: Jimmy Lyons(as) Hayes Burnett(b) Henry Letcher(ds) 1975
CD3: Jimmy Lyons(as) Hayes Burnett(b) Henry Letcher(ds) 1975 & Jimmy Lyons(as) 1981
CD4: Jimmy Lyons(as) Karen Borca(bassoon) Paul Murphy(ds) 1984
CD5: Jimmy Lyons(as) William Parker(b) Paul Murphy(ds) 1985

72年から85年までのジミー・ライオンズの未発表レア音源をまとめたAyler Recordsのボックスセット。基本的に72年のも85年のもテンションが変わってないのが面白い。1時間以上のサックスソロが入ってる3枚目は貴重。ひとつのモチーフをどんどん変化させていくというセシル・テイラーの方法論とほぼ同じ。ジム・ジャームッシュ「パーマネント・ヴァケイション」の冒頭、NYの路上でひとりサックスを吹く人が出て来るが(僕の大好きな場面)、まるでそこで流れるサックスのように取り留めが無く、魅力的。 

Jimmy Giuffre / Free Fall (Columbia/1962)

Jimmy Giuffre (cl, ts, bs) Paul Bley(p) Steve Swallow(b)

ジミー・ジュフリーのフリーフォーム。とはいえ、どこか現代音楽っぽい。ベルクとかヴェーベルンあたりにありそうな感じ。なにげに聴く機会の多いアルバムです。これが1962年ってのも凄いが、コロンビアからこういうのが出るってのも凄い(ひょっとしてこれは現代音楽扱いだったのかな)。ちなみにジミー・ジュフリーのアルバムを最初から追っていくと、キャピトル→アトランティック→ヴァーヴ、と来て、コロンビアとなる(しかしコロンビアはこれ一枚)。このアルバムを最後にというかこのアルバムを転機として、この後少しばかり沈黙することになる。 

Jimmy Lyons / Push Pull (Hat Hut / 1979)

Jimmy Lyons(as) Karen Borca(bassoon) Hayes Burnett(b) Munner Bernard Fennell(cello) Roger Blank(ds)

ジミー・ライオンズにカレン・ボルカはつきものだが、正直言うとカレン・ボルカ無しで、しかもサックス・ドラム・ベースのトリオ編成でレギュラーグループを作って欲しかった。セシル・テイラー・ユニットでのジミー・ライオンズとソロ作でのジミー・ライオンズの違いみたいなものが明確になってただろうし、他の楽器に邪魔されずにジミー・ライオンズを聴けたのになあ、とか思ったりする(別にカレン・ボルカはいらないとか言ってるわけではない)。で、このライブアルバムは例のごとくカレン・ボルカ入り。当時のロフトジャズ的雰囲気がかっこいい。にしてもこの出だし、セシル・テイラー・ユニットでのジミー・ライオンズとは若干違い何かに追われるかのように随分余裕の無いジミー・ライオンズです。

JOHN TCHICAI / JOHN TCHICAI WITH STRINGS (treader/2005)

John Tchicai (as., b-cl) John Coxon(samples, etc), Ashley Wales(samples, etc), Mark Sanders(per)

treaderレーベルの紙ジャケのシリーズは、エヴァン・パーカーの「Evan Parker with Birds」というウルトラ級の名盤があるので、なんだか信用出来る。しかもこのジョン・チカイのアルバムは「Evan Parker with Birds」でも重要な役割を果たしているJohn Coxon&Ashley Wales入り。ジョン・チカイのバックをこの二人が作る。でも「Evan Parker with Birds」のときのようなサウンドスケープではなく、打楽器や弦楽器などを含むアンビエントな感触。要するにSpring Heel Jackのジョン・チカイのソロ版とでも言ったら分かりやすいだろうか。冒頭はまるで「パーマネント・ヴァケイション」(ジム・ジャームッシュ)の最初の部分の音楽のようで最高にかっこいい。全般的に静かでアンビエント。

ERIC REVIS / City Of Asylum (clean feed / 2013)

Andrew Cyrille (ds) Eric Revis (b) Kris Davis (p)

アンドリュー・シリルがclean feedに降臨!ちょっと驚いた。それはそうと、このアルバム相当いいです。ピアノのKris Davisのアブストラクトな音の散らばらし方がなんともバランス良くて、ちょっとツボ。マシュー・シップが最近どうも「?」な感じになってきたので、こういうピアニストは貴重。このアルバムはベースのEric Revisのリーダー作だけあって、ベースもゴンゴン(ガンガンという感触ではない)と中心で気持ちよく鳴ってます。そしてアンドリュー・シリル。最初の2曲なんてあのアキサキラ当時の叩き方そのままだったりして、個人的に超盛り上がります。

PETER EVANS / Zebulon (More Is More Records/2013)

Peter Evans(tp) John Hebert(b) Kassa Overall(ds)

ここ数年のフリージャズで圧倒的に面白いのがこのPeter Evans。数年前のclean feed作品で初めて知ってからというもの、目が離せなくなった。このアルバムはトリオ編成なのでPeter Evansの音空間を全部埋め尽くすような凄まじさもよく出てるし、パスルを刻むリズムセクションだってかっこいい。

Charles Gayle Trio / Streets (Northern Spy / 2012)

Charles Gayle(ts) Larry Roland(b) Michael TA Thompson(ds)

やっぱこういうのは落ち着くなあ�(笑)。デヴィッド・S・ウェアが居なくなってしまった今、この手のスタイルはチャールズ・ゲイルくらいしか信用できない。というわけで、とにかくこれは最高のアルバム。サックスの音色だけですべてが許されるというか、やっぱホンモノは違うよなあ的な納得感が得られるというか。僕は落ち着きます。

Steve Coleman And Five Elements / Functional Arrhythmias (Pi Recordings/2013)

Steve Coleman(as) Jonathan Finlayson(tp) Anthony Tidd(el-b) Sean Rickman(ds) Miles Okazaki(g)

スティーブ・コールマンの新譜。しかしまあ、何にも変わらない(笑)。この変わらなさが凄いかもしれない。もう30年くらい同じことやってんのだ。ただ、今回はほんの少しだけトランペットに人間味が見え隠れするというか、いつもの無機質感がちょっとやわらいだような気もしなくもない。ミディアムテンポの5曲目が凄くいい。 

Ken Vandermark & Paal Nilssen-Love / Lightning Over Water (2014)

Ken Vandermark(reeds) Paal Nilssen-Love(ds)

この手の長尺フリーブロウイングだったらブロッツマンかヴァンダーマークかという感じなわけだが、ブロッツマンがノイズ寄りなのに対しヴァンダーマークはモダンジャズ寄り。ヨーロッパとアメリカの違いみたいなものか。このアルバムのヴァンダーマークはとにかく熱くて凄い。

The John Lurie National Orchestra / The Invention of Animals (Amulet / 2014)

John Lurie(ss, as) Calvin Weston(ds) Billy Martin(per)

20年以上待ったジョン・ルーリー・ナショナル・オーケストラの新譜が未発表ライブ音源入りのベスト盤というね・・・(「Men with Sticks」と「Fishing with John」から数曲。プラス未発表音源が約19分)。ジョン・ルーリーの病状を考えればしょうがないところかもしれないけど、いっそのこと全編未発表音源にして欲しかった。とはいえこの未発表音源のライブはなかなか素晴らしいので、とりあえずこれで満足しなければ。

The Ames Room / Struggling In Public (norwegianismrecords / 2014)

Jean-Luc Guionnet(as) Clayton Thomas(b) Will Guthrie(ds)

フランスの3人組。2011年にはclean feedからもアルバムを出している(「Bird Dies」)。本作は5作目くらい(たぶん)。ARFIの面々やドネダらのようにひねりを効かせるようなことはなく、意外にストレートに攻めてくるところが凄くイイ。Jean-Luc Guionnetのサックスは音の存在感だけで聴かせるようなところがあって、そこもまたイイ。分厚いリードを使ってるんだと思うけど、硬い音の塊が吹き出してくる感じ。また、どこかロリンズのEast Broadway Run Downに似てたりする。

Jack DeJohnette / Made In Chicago (ECM/2015)

Jack DeJohnette(ds) Henry Threadgill (as, fl) Roscoe Mitchell (as,ss, bass recorder, baroque flute) Muhal Richard Abrams (p) Larry Gray (b, cello)

シカゴでのライブ。AACMの猛者達は現代でもやっぱり猛者だった。ロスコー・ミッチェルのナチュラルなサックスの存在感が凄い。もうこれだけでアート・アンサンブルの香りがするというか。音がつぎつぎに生成を繰り返すようなイメージはアート・アンサンブルを聴いたときの印象と一緒。ただ、リチャード・エイブラムスやディジョネットのアクも強いので根本的に別物だが。最近聴いたフリー系の中では結構印象深かったアルバム。

Derek Bailey / Mirakle (Tzadik/1999)

Derek Bailey(g) Jamaaladeen Tacuma(b) Calvin Weston(ds)

オーネットのプライム・タイムのリズムセクションに乗っかるデレク・ベイリー。心なしかデレク・ベイリーもファンキーです。個人的に滅茶苦茶好きなアルバムで、デレク・ベイリーのアルバムの中でも特別好きなアルバムだったりする。デレク・ベイリーという人はオーネットと同じくどんなリズムセクションでもいつもの音を出す人で、Tzadikにはドラムンベースがバックになってる珍盤なんかもある。このアルバム、どこかアート・リンゼイ在籍時のラウンジリザーズ的な匂いもあったりするところがイイ。ちなみにカルヴィン・ウェストンは当時ラウンジリザーズ及びジョン・ルーリー・ナショナル・オーケストラのメンバー。

John Tchicai, Archie Shepp / Rufus (Fontana/1963)

John Tchicai(as) Archie Shepp(ts) Don Moore(b) J. C. Moses(ds)

ニューヨーク・コンテンポラリー・ファイヴの「Consequences」と同日録音で、このアルバムはニューヨーク・コンテンポラリー・ファイヴからドン・チェリーを抜いた編成。最初に聴いてから随分経つと思うけど、これが何度聴いても最高。初期のシェップは全部最高だがジョン・チカイも凄い。この時期のNYC5の作品はどれも素晴らしい。シェップは1960~61年のセシル・テイラー・グループ時代から1962年のビル・ディクソンとのカルテットを経て、この1963年のNYC5の活動へと至り、そして1964年にはimpulseの「Four For Trane」を皮切りに黄金のimpulse時代へと繋がる。このアルバムは発展の最中というか変化の途上にある荒々しさが面白い。

LARRY YOUNG / Of Love And Peace (blue note/1966)

Larry Young(organ) Eddie Gale(tp) James Spaulding(as, fl) Herbert Morgan(ts) Wilson Moorman III(ds) Jerry Thomas(ds)

セシル・テイラーの「Unit Structures」(1966年3月録音)にも参加してるエディ・ゲイルがいるのが嬉しい。このアルバムは「Unit Structures」の4ヵ月後の録音(1966年7月)。とりあえずラリー・ヤングはマッコイのごとくコードをつぎつぎと繰り出してきますが、フロントの3人がフリー。ジェームス・スポールディングもいることだし新主流派といったほうが通りは良いかもしれないけど、エディ・ゲイルに敬意を表してフリー扱い。A面(最初の2曲)が物凄い。ブルーノートの前2作(「Into Somethin'」「Unity」)はドラムがエルヴィンだったけど、このアルバムではアンドリュー・シリル的なパルスを叩き出すドラムがアルバムの基本トーンを決めてます。 

Ornette Coleman / New York Is Now! (blue note/1968)

Ornette Coleman(as, vln,tp) Elvin Jones(ds) Jimmy Garrison(b) Dewey Redman(ts)

オーネットが亡くなったのにたいしたニュースにもならなくてちょっと驚いた。今どきはもうそんなもんなのかなあ・・・。で、オーネットのアルバムの中で僕が昔から比較的よく聴くのがこのアルバム。エルヴィン&ジミー・ギャリソンのコルトレーン・リズムセクションが物凄いけど、オーネットはどんなバックであれ変らずいつも通り。1曲目、オーネットのあと、デューイ・レッドマン登場時のサックスの異様さは何度聴いても鳥肌もの。このアルバムの魅力の半分はこの部分にあるのでは、というくらいに凄い。ちなみにこのときにはもうアルフレッド・ライオンは引退しておりプロデュースはフランシス・ウルフ。

Peter Brotzmann / Munster Bern (2015/Cubus Records)

Peter Brotzmann(reeds)

ブロッツマンのソロライブ。アラビック・モードで穏やかに展開される1曲目が特に素晴らしい。モロッコあたりの音楽のようにも聴こえてくる。いつもグループでやるような熱い音ではなく、冷たい音。いつものブロッツマンのように音の塊を投げつけるのではなくメロディを奏でてます。3曲目の静けさもとてもいい。名演。

Joe Fiedler Trio / I'm In (Multiphonics Music / 2015)

Joe Fiedler(tb) Rob Jost(b) Michael Sarin(ds)

clean feedにもリーダー作があり、セシル・テイラーとも共演歴があり、おまけにウィントン・マルサリスのリンカーン・ジャズ・センター・オーケストラにもいたことのあるJoe Fiedlerの最新盤。以前よりもより形式のある曲調になってきたような感じ。3人の比重が対等で、とても緻密なインタープレイが聴けます。縦横無尽に動くベースのRob Jostも凄い。マンゲルスドルフの「トライローグ」な感じも多少ある。

Milford Graves & Bill Laswell / Space / Time ・ Redemption (Tum Records/2014)

Milford Graves(ds) Bill Laswell(b)

ミルフォード・グレイヴスのドラムの特異さは、心臓の鼓動・血液の循環・呼吸という次元からリズムを捉えるというところにあるようだが、この最新作は60年代のESPの諸作よりもオーガニックな感触があって、どことなくその理屈が分かるような分からないような。ビル・ラズウェルのスペイシーなベースが気持ちいい。

SAM RIVERS / Hues (impulse/1971-1973)

Sam Rivers (ss, ts, fl, p) Avild Andersen, Richard Davis, Cecil McBee (b) Barry Altschul, Norman Connors, Warren Smith (ds)

4つのライブからピアノレス・トリオだけ集めたアルバムになってるけど統一感がある。いわゆるブラックパワーと言われた時代のエネルギーのようなものを感じます。スタジオ・リブビーの初期ロフトジャズの自由感などもあったりして、当時の空気感も楽しめる。1973年の「Streams」(impulse)が長尺の曲だけで出来てるのに対しこちらは短い曲の集まりで、なにやら「Streams」への道筋を音で説明されてるようにも思えてくる。このあたりの混沌としたようなエネルギーが1974年に出た大編成の「Crystals」(impulse)へと繋がっていく。

John Carter & Bobby Bradford / Self Determination Music (Flying Dutchman/1970)

John Carter(as) Bobby Bradford(tp) Henry Franklin, Tom Williamson(b) Buzz Freeman(ds)

まるでジョン・スティーヴンスやサニー・マレイのよう(今だったらトム・レイニーか)にアブストラクトなパルスを繰り出すドラムとブンブン唸る二人のベースというだけでもう勝手に名盤決定と判断してしまうのだが、それに加えて(というかこちらがメインだが)オーネットにゆかりのあるジョン・カーターとボビー・ブラッドフォードのフロントがこれまた面白いのだから、やはり名盤と断定。1970年の音源だがclean feedの新作と言われても違和感ないくらい新鮮な音。

Bill Barron / Motivation (Savoy/1972)

Bill Barron (ts) Kenny Barron (p) Chris White (b) Al Hicks (ds)

セシル・テイラーの「Love for Sale」(1959年)やミンガス・グループに参加してたビル・バロンの滅茶苦茶かっこいいアルバム。全開せサックスを吹き倒す1曲目は名演。演奏スタイルはフリーとまではいえないかもしれないけど、ドルフィーがフリーならビル・バロンもフリーといった感じでフリーに分類してみた。このアルバムは1曲目の物凄いサックスがすべてみたいなところもあるけど、ドラムのアル・ヒックスも全体を通してかなりカッコイイ。ビル・バロンの弟のケニー・バロンも相当攻めている。

Barry Altschul / The 3dom Factor ( TUM Records/2013)

Barry Altschul(ds) Jon Irabagon(ts) Joe Fonda(b)

いつものことだけどバリー・アルトシュルのドラムはパーカッシブで小気味いい。このアルバムでは定型リズムながら全方位から音が飛び出していくようで、スケールが大きい。サックスのJon Irabagonはかなり器用でどんなリズムにも瞬時に対応するバイタリティを持っており、ピアノレス・サックス・トリオとしてもじゅうぶんに楽しめます。何故かブランフォード・マルサリスのピアノレス・トリオのアルバム群などを思い出す。

David S. Ware / Go See the World (Columbia, 1998)

David S. Ware(ts) Matthew Shipp(p) William Parker(b) Susie Ibarra(ds)

これが出たのはあの超絶盤「ゴスペライズド」が出てデヴィッド・S・ウェア界隈が盛り上がってた時期。そんなこともあってメジャーに移籍したこのアルバムはとにかく楽しみだったのだが、「ゴスペライズド」系は1曲くらい(4曲目)。あとはアブストラクトなフリージャズ。ちょっと肩透かしを食らった気もしたのだが、その後のデヴィッド・S・ウェアを見るとこれが通常運転だったのかもしれない。とりあえず2曲目のカークもビックリの循環奏法は物凄い。ちなみに大手コロンビアからはこのアルバムと2000年の「Surrendered」の2枚が出たのみ。なんか実力が十分あるのにスターになり損ねた感があるというか。「ゴスペライズド」のようなアルバムを作っていれば大衆人気を獲得出来たようにも思うのだが・・・。僕は今でもシェップやアイラークラスのサックス奏者だったと思ってます。

Don Pullen / Capricorn Rising (Black Saint/1976)

Don Pullen(p) Sam Rivers (ts, ss, fl) Alex Blake(b) Bobby Battle(ds)

ドン・プーレンってばジョージ・アダムスとの双頭グループで有名ですが、こちらはサム・リヴァースとのコンビ。プーレンのピアノが若干セシル・テイラー気味なのがとても興味深いところです。妙な和音の塊が四方八方に飛び散ります。あと、演奏の熱量が凄い。僕の好きなドン・プーレンは基本的に80年代の新生ブルーノート以降の聴きやすいものだったりするのですが、ここまで熱いとやはり無視できないというか何というか。「まあとりあえず落ち着け!」とでも言いたくなるようなサム・リヴァースのエネルギーに引っ張られてるのでしょうか。何気にブンブンと勢いよくすっ飛ばすベースも凄いです。

Peter Evans Quintet / Genesis (More Is More/2016)

Peter Evans(tp) Ron Stabinsky(p) Tom Blancarte(ds) Jim Black(ds, live processing) Sam Pluta(live processing)

ピーター・エヴァンス・クインテットの2015年のヨーロッパ・ツアーでのライブ録音。毎度のことながらピーター・エヴァンスの音は理知的というか理性にコントロールされたもので、本能的にブワ~ってやるものとは正反対にある。そのせいか真剣に聴いてるとお腹いっぱいになって疲れてくるのだが、それでもたまに聴くと物凄い充実感を味わえるというか、この圧倒感に打ちのめされる。


(文:信田照幸)


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